2020年02月15日

これはこれでアリですね

 先日のスイングアーム、理想を言えば表面処理は陽極酸化処理で仕上げたかったのですが、、、、。例の茶色い陽極酸化処理をいつもお願いしているところに相談してみたのですが、大きすぎて処理槽に入らないので出来ません、と残念な回答が。それではといろいろ考えた結果、結局化成処理という表面処理で行くことにしました。化成処理は陽極酸化処理と比較すると明らかに耐食性は劣りますが、この際仕方がありません。ペイントという選択肢もあったのですが、個人的にスイングアームにペイントはちょっとふさわしくない、と思っているので、化成処理だとどうなるのかという興味を優先しました。化成処理にもいろいろありますが、その中でも一番耐食性が優れているというタイプで施工していただきました。今時の流れでは環境にやさしいクロムフリーの方法が主流みたいですが、それに逆行した6価クロムをバリバリに使用するタイプだそうです。

137_3757 これは随分前にやった化成処理で、キンキラに仕上がるタイプですが、耐食性はあまり良くありません。
ビクロマートと呼ばれているタイプだと思います。今回の化成処理はこれではないタイプです。




IMG_2276 今回のやつはこんなタイプです。化成処理はキズが付きやすく、そこから腐食が発生しやすいということでクリアコートをかけてあります。今回使用したのはツヤ消しのクリアです。ツヤ有りも試してみましたが、ツヤ消しの方が格好良く見えたのでそうしました。これはこれで悪くないと思います。


IMG_2278 あとは腐食に対してどのくらい持つかということですね。経過を見守ることにします。





IMG_2294 スイングアームに付属部品の取り付けが完了しましたが、なかなか格好良いのではないでしょうか?エキセントリックハブにはいつもの陽極酸化処理を施しました。

  

Posted by cpiblog00738 at 23:49エンジン/メンテナンス

2020年01月28日

スイングアームの脱皮

IMG_2170 マグスイングアームの塗装がボロボロになってきたので何とかしたいとのご相談を受けました。この塗装はかなり昔のパウダーコートですね。マグネシウム製の製品にパウダーコートを施す場合は適正な下地処理を行わないと塗料の密着が悪く、こんな状態になっているものをよく見かけます。



IMG_2171 試しに塗膜が浮いているところをつまんで引っ張ってみました。笑えます。このスイングアームの表面処理をどのような方法で行うのかはまだ未定ですが、いずれにせよ既存の塗膜は剥離が必要です。最初は知り合いの塗装業者に塗装の剥離をお願いしようと考えていましたが、これなら自分でやっても何とかなるかも、とやってみました。


IMG_2173 パリパリと気持ちよく剥がれるので止められなくなり(笑)、気付いたらいつの間にか脱皮終了です。
 パウダーコートが悪いとは言いませんが、少なくともこのスイングアームの場合は完全にNGです。工場などの鉄の扉とか、ガードレールとかにはパウダーコートはよく使われていて優れた耐久性を発揮しているという話もありますから、要は適材適所という話になるのでしょうね。少なくともこのスイングアームがペイントされた時代においては、マグネシウム製品にパウダーコートはNGだったとということです。今は技術が進んで優れた下地処理の方法が確立していて、こうした問題は解決しているのだと思います。
  
Posted by cpiblog00738 at 10:57エンジン/メンテナンス

2019年12月24日

エンジンがかからない?

 2000年代前半のバイク、例えば998シリーズ等の話ですが、「セルモーターは回るんですがエンジンがかからないんです。でも何かの拍子にかかるんです。かかってしまえばそれからは普通なんです。」という話を今でもまだ聞くことが有ります。

IMG_1896 その原因はだいたいこれです。サービスマニュアルにちゃんと書いてあります。キーをONにしてから15秒以内にエンジンをかけないとエンジンがかからなくなるようになっている、という事です。壊れているわけではなく、これが正常なのです。15秒経過してエンジンがかからない状態になったとしても、その時にセルボタンを押すとセルモーターは回るんですね。だから余計ややこしい。
 例えばバイクに乗る時にまずキーをONにしてインジケーター(例えばニュートラルランプ)を見て通電を確認する。それからヘルメットを被り、グローブを装着する。そしておもむろにセルボタンを押す。多分キーをONにしてから15秒以上経過しています。セルは回れど、エンジンは絶対にかかりません。さすがにおかしいと感じたあたりでいったんキーをOFFにするでしょう。そしてもう一度ONにしてセルボタンを押します。今度はエンジンが始動します。そういうことです。
 この年代のバイクに乗っている方はサービスマニュアルを確認してみるのが良いですね。まあそんなことをしなくても、キーをONにしたら15秒以内に始動すれば良いだけのことですが。
  
Posted by cpiblog00738 at 18:57エンジン/メンテナンス

2019年12月03日

あるある

IMG_1832 整備中のこの996、妙に車高が低いように感じます。。。。なんで?







IMG_1834 という訳でスプロケットを外してみました。エキセントリックハブが逆を向いてます。そりゃ低く感じるわけです。この状態だと正規の状態と比較して25mm程度車高が下がります。足付き性は良くなりますけど、それ以外は良いことは無いような気が。ちなみにこの状態になっている916系は何年かに1台くらいの頻度で目にします。


IMG_1835 これが正規な状態です。チェーンの張り調整を行っていて、エキセントリックハブを回しているうちに反対を向いてしまったのでしょう。正規の状態からチェーンを張ろうとしてハブを左回りに回していくと、リアブレーキキャリパーサポートの回り止めのピンが干渉して、ある位置からそれ以上ハブが回らなくなりハブが逆向きになることは有りません。でもハブを右回りに回していくとハブは回り続けて逆向きになるまで回ってしまうんですね。  
Posted by cpiblog00738 at 18:36エンジン/メンテナンス

2019年11月11日

断線

 筑波走行中にエンジンが不調になりピットイン。最初は空ぶかしはOKだけど8,000rpm以上回らない、という状態だったのですが、時間がたつにつれて症状が酷くなり、最後には片肺状態に陥りました。
 そんな状態でTFDに入庫。試しに外部の燃料タンクから燃料を供給した状態でエンジン始動を試みると前バンクのインジェクターから燃料が出ていません。しかしこれで少なくとも燃料タンクに問題は無いことが確認できました。
 次はインジェクター交換を試みましたが症状は変わらずで、これでインジェクターに問題は無いことが確認できました。そうなると問題があるのはECUもしくは配線のどちらかということになります。
 このバイクのECUはM197ですが、交換してテストする代わりの部品が無いのでとりあえず配線をテスターで探ってみることに。その結果、前バンクのインジェクターに繋がる信号線の導通が無いことが判明。通常断線などは配線がどこかに挟まったとか、外観的に削れているとか、そういった外から見て確認できる場合が殆どなのですが、今回はそれらしき状況は発見できません。仕方が無いので導通を計りながら配線のいろいろな場所を押したり引いたり曲げたり伸ばしたりしてみます。するととある部分を曲げ伸ばしすると導通が復活したり切れたりする症状が発生しました。しかしその部分はどう見ても外見的には正常っぽいです。しかし仕方が無いので半信半疑でその部分を切開してみると。。。。

IMG_1772 ちゃんと切れていました。しかも揃った状態でバッサリという感じです。いったい何が起こったのか理解できません。繰り返し書きますが、外見的には全く問題のない状態です。とりあえず切れたところを繋いでバイクは正常に戻ったのですが、イマイチ釈然としません。う〜ん、どういう事なんでしょう????  
Posted by cpiblog00738 at 17:07エンジン/メンテナンス

2019年10月25日

デスモクアトロ用フルエキ

IMG_1704 デスモクアトロエンジン用のフルエキが入荷しました。モトコルセ製、φ54mmです。価格は¥100,000-(税別)です。状態を確認していただいたうえでご検討よろしくお願いします。




IMG_1703 残念ながら転倒によるものと思われる目立つ凹みがあります。転倒の際にステッププレートが内側に入り込んで押されてしまったようです。ステッププレートの裏なので車体に装着するとステッププレートに隠れて目立たない凹みではあります。



IMG_1699 凹み部分のアップです。転倒によると思われるダメージはこれ以外には見当たりません。






IMG_1700 こちらはフロントパイプの下側です。オイルキャッチアンダーカウルに接触していたようでその痕跡が残っています。






IMG_1701 片側のみですが、サイレンサーの筒にはサイレンサーバンドが当たったと思われる小さな凹みが有ります。






IMG_1702 サイレンサーの筒をよく観察すると小さなえくぼ程度の凹みが数か所見受けられます。サイレンサー部にモトコルセのシリアルプレートのようなものは存在しません。




IMG_1698 使用履歴の有る中古品なのでそれなりの傷や汚れは有ります。サーキットで使用していた履歴はありますが、サーキットでの走行時間は数時間程度とのことなので嵌めあい部分の消耗やガタは大きくないです。上記で紹介した以外の目立つキズや凹みは有りません。

 ご検討よろしくお願いします。  
Posted by cpiblog00738 at 14:55商品情報

2019年10月20日

マグネシウム製カバー

IMG_1666 ウォーターポンプカバーを外したらこんなです。マグネシウム製部品の中に水を入れてはダメですよね。アルミ製の部品よりかなり軽量なので本気のレースの場合はアリですが、その場合は毎年交換が前提でしょう。経験的には長持ちしてもせいぜい2年くらいでしょうか。そのあとは飾り物にするのが良いと思います。


IMG_1675 ちなみに内側はこんなに綺麗なんですけどね。  
Posted by cpiblog00738 at 00:05エンジン/メンテナンス

2019年09月15日

ピストン割れ 最新

IMG_1436 昨日の筑波TT予選中に発生した不幸な出来事です。タイムアタックに入ろうとしたまさにその時にエンジンが失速。その直後の運転手の適切な対応のおかげでピストンのみの交換で済みそうです。




IMG_1440 定番のピストン真っ二つパターンです。エンジンが速いってことです。レースになるとピストンも消耗品です。ピストン2個で約10万円。タイヤ2セットとほぼ同じ価格。ピストン1セットとタイヤ2セット、どちらが長持ちかというと、圧倒的にピストンです。ピストンを責めては可哀そうです。
  
Posted by cpiblog00738 at 19:46エンジン/メンテナンス

2019年09月03日

チェーンのトラブル

002 チェーンがエライ事になっています。ローラーが割れてます。割れた場所以外のローラーにも明らかなダメージが認められます。原因は何なのでしょう?
 チェーン自体はDIDのERV3ですから問題の有るわけもありません。このパターンの問題が起こる場合の多くは使用しているスプロケットに原因があると私は考えています。リアではなくエンジン側のスプロケットです。純正以外のスプロケットで一見して歯の形状が純正と異なって見えるものが有ります。簡単に表現すると、歯が短い、歯の高さが低い、頂点が低い、という感じの製品です。そうしたスプロケットを使用した場合、加速中は問題無いのでしょうが減速時のチェーンの上側がたるんだ時にチェーンのローラーがスプロケットの歯の上に乗り上げる状態になるのだと思います。とはいっても完全に乗り上げるほどチェーンの長さに余裕はありませんから部分的に乗り上げた状態でチェーンには物凄い引っ張り力がかかります。その結果として画像のようなことが起こると私は考えます。ローラーにスプロケットの頂点の角が食い込むというか突き刺さるのです。ローラーが割れるところまで行かなくても、そうしたスプロケットの場合はチェーンの伸びが著しいという特徴が有ります。
 もしこの記事が気になった方は自分のバイクのスプロケットをちょっと覗いて確認してみるのが良いかもしれません。純正に準じた形状のスプロケットを使用していても、歯が折れている可能性もありますから。  
Posted by cpiblog00738 at 14:53エンジン/メンテナンス

998Rのシートカウル

IMG_1419 998Rの未使用新品シートカウルが入荷しました。ドライカーボン製で超軽量。新品デッドストックですが、今回は定価の半額で提供させていただきます。定価で購入するとなると20万円を超えるシロモノです。このチャンスをお見逃しなく。
 近日中に商品情報にアップする予定です。  
Posted by cpiblog00738 at 10:22商品情報

2019年08月26日

8枚羽のフライホイール

IMG_1172 先日入手した8枚羽のフライホイールを自分のバイクに取り付けてみました。実は自分のバイクが先日から不調で、前回の筑波TTでは予選中にエンジンが片肺になりそのままリタイヤということになりました。そのレース直前の練習走行から症状が出始めたのですが原因が判らず、とりあえずピックアップを交換してレース当日に臨んだのですが結果的に改善されていなかったということでした。片肺の症状もその時によって不調をきたすシリンダが異なるという非常に厄介な状態で、とりあえず原因究明のためにロガーで拾うデータ量を大幅に増加させた状態でシャシダイに載せ、原因を追究しました。その結果、シャシダイ上では片肺の症状は再現できなかったのですが回転信号にノイズが入ってエラーになっていることが判明。ピックアップからECUまでの配線をシールド線に交換してテストしてみようとも考えたのですが、せっかく入手したフライホイールがあるのでそちらを使ってみようということになりました。今まではクランク1回転に付き信号の数が4個でしたが、今回からは倍の8個となり、クランク角度の精度が単純に倍になりました。これなら多少のノイズが入ったところでECUがクランクの位置を見失うことにはなりにくいと考えました。

IMG_1391 取り付けるとこんな眺めになります。タイミングギアのトリガーも位置が合わなくなるので新たに製作しました。そして先日筑波サーキットにて試乗を行い、問題が解決していることを確認できました。良かったです。
 電気周りに関してはOKならOK 、NGならNG、と物事がはっきりしている印象が有りますが、今迄OKだったものがある時を境にNGになってしまう、ということを極稀に経験します。今回もその一連の出来事だったのでしょうか?しかし今まで4枚羽で問題無かったのが8枚羽の部品を入手したタイミングで問題発生という、何か不思議な出来事でした。  
Posted by cpiblog00738 at 13:20レース

2019年08月20日

シャシダイでの燃調セッティング

IMG_1375 先日行ったシャシダイでの燃調セッティング中のひとコマです。季節的に非常に気温が高く、十分な換気を行っているにもかかわらずダイナモ室内の気温は35.9度。ほぼ外気温と同じかちょっと高いくらいでしょうか?こうなると心配なのは水温ということになります。もしラジエーターに送風機で風を当てるだけで対応していたとしたらセッティング開始直後に水温が上がりきってしまってセッティングどころではなくなってしまいます。しかしTFDのダイナモ室には室外に貯水槽が備えられており、このタンクとエンジンをサーモスタットを介して直結すれば水温の心配は皆無となります。今回の場合はこの気温の中、例えば30分間連続でエンジンを回しっぱなしでデータの収集を行っても水温は70±3度の範囲から全く動きません。水温に関しては外部水タンクにお任せして、設置してある送風機をオイルクーラーやエンジン本体、タイヤ等に向けることが出来ます。
 唯一の問題は、携わる私が暑くてたまらないということでしょうか。(笑)

  
Posted by cpiblog00738 at 10:59エンジン/メンテナンス

2019年08月07日

888SP4

IMG_1378 極上ピカピカのプレミアムな中古車が入庫しました。数年前に私がイチから製作した1992年型888SP4です。唯一の欠点は、もうやる事無い、ということでしょうか?
 自分で言うのも何ですが、こいつは凄いです。その理由は、私の気の済むように製作させていただいたバイクだからです。これが自分のバイクだったらこのようにしたい、ということを全て具現化させていただきました。

IMG_1379 エンジンは勿論フルオーバーホール、その際にニシムラコーティングにて耐熱塗料でリペイント。フレーム関係も同じくニシムラコーティングにてリペイント。そして特筆すべきは外装のペイントで、加藤塗装によるコンクールコンディションの段差無し、ピカピカの仕上がりです。ロゴやゼッケンはステッカーではなくペイントで、ステッカーの上からクリアを厚塗りしたような仕上がりではなく、段差無し、面出しも秀逸でまるで鏡です。
 ビッグブレンボにそれ用のディスク、フォークは純正オーリンズとは一味違う92年型GPフォーク。時代にマッチした3本スポークのマルケマグホイール。タンクは特注のアルミ製。当時モノのあらゆる消耗品は交換済み。その他書ききれません。とにかく実物をご覧になってほしい逸品です。
 値段はこれから決めます。(笑)

追記:このバイクの製作記はTFD歳時記で紹介されています。レストア開始が2013年5月なので、そこから新しい方へ遡っていただければレストアの詳細が全てご覧いただけます。

追記-2:価格は¥2,600,000-(税別)となりました。

  
Posted by cpiblog00738 at 11:02商品情報

2019年07月27日

ピエロボンフレーム

IMG_1310 中古のピエロボンフレームを商品情報にアップしました。興味のある方は覗いてみてください。ノーマルと比較してかなりの高剛性なのでちょっと手強いかもしれませんが、乗りこなせる方、如何ですか?  
Posted by cpiblog00738 at 22:51商品情報

2019年07月26日

916SPS 1997 その3

IMG_1241 その後作業は順調に進んでいます。クランクケースを閉じる寸前の状態です。各部品の位置決めのためのシム調整は地味ながら非常に重要な作業です。例えばギアの入り具合はミッションシャフトとドラムの位置関係、それとシフトフォークの状態によって決まりますから、組んであった通り元に戻すだけということはあり得ません。


IMG_1293 バルタイの計測と調整を行っています。916/996SPSの場合は最初からタイミングシャフト側のプーリー2ヶ所に10度のオフセットキーが使われています。工場出荷時に最初から組んであるのですからその目的は当然ながらバルブタイミングを適正な値にすることなのですが・・・・。今までの経験から言えることは、その状態ではかなり正しい数字からはかけ離れたバルタイになっています。


IMG_1294 エンジンの完成です。







IMG_1304 エンジンを車体に載せ、ベンチ室内でエンジンを始動してスロットルボディーの調整を行っています。この段階では燃料は外部のタンクから供給しています。この状態の方がスロットルボディーにアクセスしやすいので作業効率が良いのです。
 



IMG_1306 完成です。  
Posted by cpiblog00738 at 09:48エンジン/メンテナンス

2019年07月09日

916SPS 1997 その2

916SPSの続きです。

IMG_1229 クランクです。最初からヘビーウェイト入りです。何故か1次ギア側のウェブに3個、もう一方のフライホイール側のウェブには2個、打ち込まれています。常識的に考えると左右対称になりそうなものですけど、この3個と2個の組み合わせは結構目にした記憶が有ります。この状態でバランスはとれているということなのでしょうけど、なぜこうなっているのか理由は解りません。


IMG_1232 さて、コンロッドです。すでにお伝えした通りこのコンロッドの材質はスチールです。で、ハーフメタルですが2個の小さな穴が開いています。






IMG_1236 メタルを外すとこうなっています。溝状のオイル通路になっていて中央に穴が開いています。ちなみにコンロッドのキャップ側にはオイル通路は存在しませんから、メタルに穴が開いている必要はありません。穴あきのメタルは非常に高額(万単位の値段です)なので、自分が組む場合はキャップ側には穴のない普通のメタルを組むことが多いです。


IMG_1234 この穴が何処に通じているかというと、此処、小端部です。つまり大端部を潤滑するオイルの一部がコンロッドの真ん中の穴を通って小端部分まで来て、ピストンピンを潤滑するという訳です。凝ってますね!
 このシステムは888SPSやSP5にも使われていましたが、その時はメタルに開いている穴は3個でした。いつの間にか品番変更になって穴が2個のタイプになっています。

IMG_1235 メタルの裏側はこんな感じです。オイル通路の跡が明瞭に確認できます。しかし考えてみるとオイル通路の跡が付いている部分は荷重を受け止めないということになります。自分の考えでは、この部分は出来るだけ単位面積あたりにかかる荷重を小さくしたい場所なので、そういった意味でこの状況はあまりよろしくないかもしれません。何はともあれ理由は不明ですがこのシステムはこのエンジン以降は使われなくなりました。ここまでしなくてもオイル飛沫の管理や小端部に開けるオイル穴の最適化でピストンピンの潤滑に問題は無いという結論に達したのかもしれません。

IMG_1238 メタル合わせの後、再び組み上げられたクランクとコンロッドです。  
Posted by cpiblog00738 at 21:49エンジン/メンテナンス

2019年07月05日

レーシングパーツ

IMG_1172 こんな部品が売りに出ていたので購入しました。999RS、もしくは999F03/04のフライホイールです。でもよく目にするこの手の部品とは外見的に趣が異なります。





IMG_1174 構成部品はこんな感じで、セルモーターによるエンジンスタートが可能な構造です。正規のパーツリストには載っていないと思います。そもそも何故こんなものが存在するのかというと、これはAMAのスーパーバイクレースに対応するために製作されたものだったと記憶しています。AMAのレースにはレギュレーションがWSBと異なるところが散見されます。当時そうしたルールの中に、セルフスターターでエンジンスタートが可能でなければならない、というのが有ったと記憶しています。ファクトリーマシンでもセル付きだったということですね。そうした流れでファクトリーが製作した部品です。
 ピックアップ用のトリガー(羽)の数も通常とは異なります。普通は4枚羽なのですがこの部品は倍の8枚羽です。これについては使用しているECUが対応出来なければ使いようが無いのですが、こうすることによってより細かな制御が可能となります。自分のバイクはMotec制御なのでこの辺は何とでもなります。そのうち付け替えて試してみますが、果たして私がその違いを体感できるのでしょうか?
  
Posted by cpiblog00738 at 11:18レース

2019年07月03日

916SPS 1997

IMG_3526 1997年型916SPSです。TFDの倉庫に長い間(10年以上)眠っていました。走行距離は実走行で2,000km未満です。長期間TFDに仕舞い込んであったとは言え、元々は何処かからか縁あってやってきたバイクで私が携わっていたバイクではありません。走行距離が少ないとはいえ、TFDに来るまでにどこの誰に何をされているかわかりませんし、年代物なのは確かなのでレストア作業に着手しました。ちなみにこのバイクの行き先は既に決まっていますので悪しからず。
 1997年型は996になった最初のモデルです。この年式はまだチタンコンロッドは採用されておらず、コンロッドはPANKL製の削り出しH断面スチールコンロッドが使われています。チタンコンロッドが採用されるのは翌1998年型からです。チタンコンロッドではない代わりにと言っては何ですが、97年型のクランクにはヘビーウェイトが打ち込まれた状態でバランス取りされています。コルサやRSのクランクには普通にヘビーウェイトは使われていますが、市販街乗りバイクでこの916SPS1997以外にヘビーウェイト入りのクランクが使われているのは私の記憶では888SPS、888SP5、748R2002、それと1098R、1198Rくらいではないでしょうか。(他にもあったかもしれませんが今は思い出せません。それとパニガーレ以降は私は門外漢で知識がないため除きます)
 1996年の全日本のレースシーズンが終わった頃にドゥカティコルセから来年のコルサは996ccになるというインフォメーションが来ました。レースレギュレーションではスーパーバイクのホモロゲモデルも同じ排気量であることが求められるので、来年は996の街乗り市販車が出るんだ、とピンときて、すぐに当時の輸入元の村山モータースに97年に出る996のバイクを注文した思い出が有ります。その時はまだ発表も何もされておらず、輸入元の人も半信半疑だったのですけれどね。購入したTFDのそのバイクはまず最初にエンジンを組みなおし(と言ってもチューニングはせずにノーマル状態のままでちゃんと組みなおしたというレベルです)、そして黄色く塗られて当時のバイク雑誌にたびたび登場したので記憶にある方も多いかもしれません。
 当時某雑誌でゼロヨン&最高速という有名な連載記事があって、そのバイクでFISCOで行われた最高速チャレンジに出場した覚えがあります。その時にFISCOのストレートで記録した最高速は270km/hだった記憶が有ります。メーター読みではなく光電管もしくはスピードガンによる計測だったので実速です。今のレベルで考えてもなかなか立派な記録だと思います。

IMG_1166 作業していて今更ながらに感心するのは、例えばこのインテークポートの仕上げです。ガイドは新品に交換してありますがそれ以外はドノーマル。工場出荷時のままです。中央の仕切りは鋭利な刃物状態で下手をすると手が切れます。何かの拍子に虫とかが吸い込まれたりしたら虫の体が真っ二つになりそうです。常識では考えられませんよね、この仕上げ。デスモクアトロ系のエンジンのポートはおしなべてこんな感じになっていますが、特にこの97年型SPSは気合が入っているように感じます。

IMG_1168 こちらはエキゾーストポート。同様にガイドは新品になっていますがその他は工場出荷時のままです。エキゾーストポートなんてちょっと走ればカーボンが付着して真っ黒になってしまうのに・・・・。




IMG_1170 こちらはヘッドのロッカーピンを塞ぐ蓋で、ドゥカティがセントラルカバーと呼んでいる部品です。ガスケットではなくオーリングでシールしています。916レーシング95からコルサにはもれなくこの部品が使われていて私的には見慣れた部品だったのですが、市販街乗りバイクでこの部品が使われたのはこの916SPS97のみです。今後ここは全部のモデルでオーリング式になるんだろうなあと当時思った記憶が有りますが、なぜか街乗りバイクで採用されたのはこのバイクだけでそれ以降は普通のガスケット仕様のままでした。

 まあポートがどうとか、なんだかんだ言っても結局馬力が出てる方が偉いでしょ!という言い分もありますが(特に最近世の中がこのような風潮になってきている気がします)、これは趣味の世界の話ですから。趣味の世界は結局自己満足に帰結すると私は考えます。これを仕事にしている私でさえ、普段はエンジンの奥に有って見えない部分をエンジンを開けたときに目の当たりにして、改めて凄いと思ったり感心したり良いなと思ったりすることは多いです。

 続きはまた後で。
   
Posted by cpiblog00738 at 19:46エンジン/メンテナンス

2019年05月24日

ヘッドガスケット吹き抜け?

 走行の度に冷却水通路の内圧が上がって、走る度に大量の冷却水がキャッチタンクに溜まる場合があります。何らかの理由で燃焼ガスが冷却水通路に吹き抜けているのが原因です。そのために冷却水通路内の内圧が急上昇し、ラジエーターキャップのバルブを押しのけて冷却水が吹いてしまうのです。原因は殆どの場合ヘッドガスケットの吹き抜けです。稀にシリンダ壁にクラックが発生して燃焼室とウォータージャケットが通じてしまったという例も見ています。参考までに、ヘッドガスケットの吹き抜けが原因だった場合、単純にヘッドガスケットを新品に交換しただけでは吹き抜けの症状がすぐに再発すると考えて間違いありません。その理由は、ヘッドガスケットが吹き抜ける場合は多かれ少なかれ既にヘッド面とシリンダ面が歪んでしまっているからです。ということで、ヘッド面とシリンダ面を研磨するなどして平面を出したうえでガスケットの交換を行うことが必須です。
 で、今回のトラブルですが、エンジンは104mmボアの998/999Rです。キャッチタンクに水が戻るので燃焼ガスの吹き抜けは間違いないのですが、このエンジンのヘッドガスケットは一般的な板状のものではなく、Wills Ring とかCooper Ring と呼ばれているタイプのもので、細いリング状の形状をしている部品です。
 付け加えますとドゥカティに使われているこのリングの内部は空洞のドーナツ形で、内部には高圧のガスが充填されている模様です。取り外す時にドリルで細い穴をあけますが、穴が開いた瞬間に「プシュッ」と音がするのでそれは間違いないと思います。
 そして冷却水通路はオーリングでシールしてありますから、燃焼ガスが冷却水通路に侵入する可能性は無いのでは?と考えました。そうするとシリンダのクラックでしょうか?

IMG_1052 実際にヘッドを外してみるとこんなになっていました。冷却水通路のオーリングが内側に吹き抜けています。このタイプのガスケットの場合、街乗りでは特に問題無いのですがレーシングユースでは恒常的に少しづつ燃焼ガスが吹き抜けます。画像のシリンダ上面についた縞模様からもそれを窺い知ることが出来ます。走行時間が何時間かを過ぎるとヘッドとシリンダの接合面からタールのような燃焼ガスとオイルの混合物と思われるものが滲みだしてきます。この症状は当たり前なので特に気にしなくてもOKという認識です。高性能として知られるWills Ringタイプのガスケットですが、ドゥカティに純正採用されたのは後にも先にも998/999Rだけだったというのは、性能的な評価がイマイチ芳しくなかったということでしょうね。良ければ後継モデルにも使用され続けたと思われます。

IMG_1053 で、話を戻しますと、吹き抜けた燃焼ガスの圧力でオーリングが内側に落ちてしまったということです。設計上このオーリングは内側からの水圧に耐えるものであって、外側からの圧力がかかることは想定外だったということでしょう。





IMG_1060 ところが、こちらのシリンダをご覧ください。このシリンダは製造時期が後の対策型と思われるものですがオーリングの溝の形状が異なっています。オーリングが内側に動かないように内側もちゃんと壁になっています。これなら内外両方向からの圧力に対応できます。ちゃんと対策してありますね。初期シリンダーに当たった場合は残念でした、ということでした。(笑)  
Posted by cpiblog00738 at 17:26エンジン/メンテナンス

2019年05月06日

修復完了です

IMG_0990 派手に逝ったエンジンですが、修復完了しました。あまりにも派手な壊れ方だったので内部部品の破損がそもそもの原因のように見えましたが、分解してみると単純にクランクケースの寿命が尽きて割れてしまった、という結論でした。
 クランク、コンロッド、ミッション等の主要部品は各部の計測を行って状態を確認しましたが、特に問題無いことが確認できました。

IMG_0991 当然ながら割れてしまったものは交換です。クランクケース、ジェネレーターカバー、後方気筒のシリンダ、等は交換しました。結果的にはそんなに大したことが無くて良かったです。もちろんそれなりの重整備になりましたが、最初に感じた「エンジン全損」のイメージからするとラッキーな結果でした。


  
Posted by cpiblog00738 at 20:21エンジン/メンテナンス