2015年11月29日

シフトフォーク

今回はシフトフォークについてのお話です。
レースをしているような人はこの部品に関係するトラブルを少なからず 体験している筈です。
要するに皆さん気合を入れてシフトアップやシフトダウンをするので、この部品を曲げたり折ったりしていますね。
その結果のミッショントラブルです。

013この画像はシフトフォークで、右が通常使用されているノーマル、左はコルサやRSに使われているスペシャルな部品です。 
RS部品の方はピンの部分が凝った造りになっています。
ノーマルは一体式でピンはただの棒ですが、RSの方はワンサイズ細いピンに筒状のものが組み合わさるようになっています。



018違う角度から見るとこうなります。
左がノーマル、右がRSです。






RSの方に付属の筒をかぶせるとこうなって、ノーマルと同じ外形寸法になります。 014
ピンと筒は緩い嵌め合いで、筒はクルクル回転するようになっています。






008シフトフォークがどのように使われているかというのがこの画像です。 
溝のある筒状の部品がシフトドラムで、シフトペダルを踏んだり掻き上げたりするとこでドラムが決まった角度だけ回転し、それによってシフトアップや シフトダウンが出来るのです。
シフトフォークのピンはドラムの溝にはまっているので、ドラムが回転すると溝のとおりに位置が変化します。
フォークが溝に沿って移動し、ここに居れば 1速、あそこに行けば2速、というようなニュアンスです。

010ドラムの溝とフォークのピンは当然ながら常に接触しており、ドラムが回転すると溝の側面とピンは摺動することになります。
要するに擦られながら移動するということです。
ピンと溝の接触部分は常に決まっていますから、長期間使用すると当然ながら決まった場所に摩耗が発生します。
この画像のピンのようにです。 


015この画像は両方ともノーマルで、右が新品、左が使い込んでピンが摩耗したものです。






エンジンオイルの寿命について、よく言われていることがあります。
シフトのタッチが悪くなってきたらそれはオイルの寿命だと。
で、大抵の場合オイル交換をすればシフトのタッチは元に戻ります。
この現象が起こる理由は今迄書いた上記のようなことだと私は考えています。
要するにオイルの性能が劣化してくるとドラムの溝とピンの接触面がカジリ気味になり、その結果シフトのフィーリングが悪化する。
新品のオイルにすればこのカジリ気味の症状がある程度緩和されてフィーリングが改善する。
私はそのように考えています。

以上の事を理解すると、RS部品の優位性がよく解ると思います。
ピンがコロ状になっているのでドラムの溝の中を動く時に回転し、理論的には擦られることが無いのです。
それによって動きもスムーズになり、当然シフトフィーリングも滑らかになります。
シフトミスも減るでしょう。

私事になりますが、上記のオイルの劣化でシフトフィーリングが悪くなる件、正直なところ私は個人的に感じた事が無いのです。自分の場合はサーキット走行だとオイル交換のインターバルが非常に短い(せいぜい200km位)せいもあるとは思いますが、一番の要因は自分のエンジンにはもれなくRS部品のシフトフォークが入っているからだと思います。

020で、この画像です。
これはノーマルのシフトフォークを元にして製作したものです。
ノーマル部品のピン部分をRS部品の寸法と同様に細く加工し、そこに被る筒も製作しました。
外見上はRS部品と同一になっています。
問題があるとすれば材質に関してです。
ピン部分は機械加工しただけで特に熱処理などは行っていませんが、RS部品の方もピン部分にヤスリをかけてみた感触では特に熱処理を行っている形跡もなく柔らかいのでたぶん一緒です。
問題は筒状の部品の方で、ホンモノのRS部品の方は表面が機械加工ではなく研磨で仕上げてあるように見えるので、かなりの硬度になっていると予想できます。
しかし同じようなものを製作する事は可能ですが、コストが半端ではなくなり、現実的な価格での供給が難しくなります。
ということで今回は既存の材料でギリギリ機械加工が可能な硬度を持った材料を使って製作してみました。
まだ試作段階ですが、おそらくシフトフォークの加工と筒状部品の製作で一組あたり1万円を大幅に下回る価格で提供できるのではないかと思います。(バイク1台にフォークは3本必要です)

最初はまず私が自分のエンジンに組んで、自分で乗って、材質的に問題ないか、作動に問題は無いか、実際にテストしてみます。
実際問題としてこの部品を交換するためだけでエンジンを開けるのは非現実的なので、実際はエンジンオーバーホールの時に一緒に組むことになると思いますが、誰か人柱になってくれる方は居ませんか?(笑)

  

Posted by cpiblog00738 at 11:07

2015年11月28日

1993年型888コルサエンジン

先日ちょっと手を付けた888コルサエンジンの続きです。
腰下も分解して内部の部品を確認しました。

クラッチは当時のコルサ純正、ドラムがアルミ製の軽量クラッチです。008
ケースカバーも緑色の防錆処理(おそらくDOW19)が施された当時のコルサ純正部品です。





009ケースカバーを外したその内部の1次ギアを始めとする部品です。
これ等もコルサ純正部品ですね。
1次減速ギアには軽量穴があり、歯の幅も現行よりはかなり狭いです。
見難いですが、オイルポンプギアも歯幅がかなり狭いコルサ部品です。




0101次ギア等を取り外すとクランクシャフト支持のベアリングが良く見えます。
見慣れたボールベアリングではなく、ローラーベアリングです。
ここにローラーベアリングが使われていたのは91年から93年までの888コルサと市販車の888SPS、888SP5だけです。
このベアリングを使用することはそれ以降一切ないので、クランクに支持このベアリングを使用することで得られるメリットはあまり無かったのかもしれません。


011エンジン右側のフライホイール周りです。
こちらはSP5の部品で組み立てられていますね。
コルサと違ってセルモーターが装着されていますから致し方ありません。
 




 012取り出したクランクとコンロッドのAssyです。
クランクはウェブの内側が切削によって軽量され、ウェブにタングステン系のヘビーウェイトが打ち込まれたコルサ純正です。
コンロッドはパンクル製の削り出しH断面のスチール製、これもコルサ純正です。




013ミッションは一般的にコルサミッションと呼ばれているクロスレシオのコルサ純正品。
程度もかなり良さそうです。
街乗り車のSPミッションの2速から5速の間に1速から6速までを詰め込んだようなクロスレシオです。
街乗りはちょっと無理っぽいです。
   
Posted by cpiblog00738 at 22:55

先日のオイル漏れ修理の結果

先日のオイル漏れ修理の続きです。

009ケースカバー内側の眺めです。
白く見えるのがエポキシ樹脂です。
通常は内側からの処理はあまりやらないんですが、今回はクラックの周りのケース形状を考えて内側もやりました。




010外側はこんな感じです。
通常の場合、クラックの周辺のケース外側は凹面であることが多いのですが、今回は凸面です。
なのでエポキシ樹脂の厚みが稼げません。
なので内外両面から処理を行いました。




そしてバイクは無事に納車され、先日筑波を走行してきたとのご報告を早速頂きました。
それによりますと、30分を2本走ってオイル漏れは出現しなかったということです。
何せ前回は筑波2周でオイル漏れ発生が確認できましたからね。
これでオイル漏れ修理は成功。
作業は終了です。

   
Posted by cpiblog00738 at 21:35

2015年11月25日

切ってみました

捨てる予定のシリンダヘッドがTFDには幾つも有って、産廃業者さんを呼ぶたびにその時にゴミと一緒に捨てようと思うのですが、いつもなんとなく捨てないでとっておいてありました。
そこで今回思い立って、そんなヘッドを真っ二つに切って内部の様子を見てみることにしました。

008これは98年型916レーシング(996cc)です。 
ポートの美しさが際立ちます。
ポートは最初からこの状態で、私は手を入れていません。





003一方こちらはテスタストレッタエンジン(998か999だったと思います)で、レース用に製作したものです。 市販車のエンジンなので元々のポートは鋳肌のままです。
それを私が研磨しました。
916レーシングのポートと比較すると・・・・、完全に負けてますね・・・・。



004双方を比較しやすいように並べてみました。
バルブの挟み角はテスタストレッタの方が小さくなっていますが、インテークポートの角度に関してはほぼ同じに見えます。
エキゾーストポートの角度は明らかに異なりますが。
でもこうして見るとデスモクアトロも大したものです。負けていませんね。
ただカムシャフトの支持がプレーンとボールベアリングというように全く異なり、その分の重量差は決定的に大きいと思います。
よく見ると冷却水通路の出来も新しい方が良さそう、というか、今迄の状態を基により良いものにしていると思います。
暫くは捨てず置いておきます。
いろいろと興味深いです。


   
Posted by cpiblog00738 at 18:57

2015年11月21日

先日のオイル漏れの続きです

先日オイル漏れの修理で後気筒の腰上をバラしてみたものの、はっきりした原因が見つからなかったエンジンの続報です。
オーナー様に一度バイクを引き取ってもらい、実際にサーキットを走行してオイル漏れの症状がいまだに存在するかどうかを確認してもらいました。
走行の目的はオイル漏れの有無を確認することで、もしオイル漏れが発生した場合は何処から漏れたのかを確認することが必要です。
走行開始後もしオイル漏れがあった場合は、ずっと走り続けてしまうと漏れたオイルの量が多くなり、走行の風圧でオイルがいろいろなところへ拡散してしまい、オイル漏れの場所が確認できなくなってしまいます。
そこで走行時はコースインしても1周ごとにピットインして、オイル漏れの確認をしていただくようにお願いしました。
オイルが漏れ始めたところを観察できるようにです。
で、その通りに走行してもらった結果、やはりオイル漏れは発生しました。
前回の修理では問題が発覚しなかったので、予想通りの結果ではありますが。
でも今回はオイル漏れの場所をある程度特定することが出来ました。

オイル漏れは左側のケースカバー周りからでした。
腰上ではなかったのですね。
漏れたオイルはそのうち風圧でエンジンの上に回って行き、ヘッド周りをオイルだらけにした後、リアシリンダ後側の窪みに溜まります。
だいたいオイル漏れを発見するのはこの状態になった時です。
どこから漏れているのしても、最終的にはだいたい同じような状況になります。

004で、ケースカバーのどこから漏っているのか、確認する作業を行いました。
ケースカバーを外して洗浄し観察しましたが、今回はかなり手強く目視ではなかなか見つけることが出来ません。
そこでスプレー式のクラックチェッカーを使用しました。
流石にクラックチェッカーと言うだけの事はあり、見事にクラックを見つけることが出来ました。


003クラック部分の拡大画像です。

 





005今回はなんとなくケースカバーの内側からチェックを開始しましたが、勿論 外側もクラックチェッカーに活躍してもらいました。
ちゃんとクラックが確認できます。





006拡大画像です。

今回のクラックは比較的珍しいケースです。
というのは、ケースカバーにクラックが入る場合はたいていケースカバーを外側から見て窪みの部分に発生することが多いのです。
今回は逆ですね。 内側から見ての窪み部分、外側から見ると出っ張りの部分に発生しています。

今回の修理は部品交換ではなく、クラックの部分をエポキシ系樹脂で覆うことで対応します。
エポキシで 大丈夫なのか?という疑問を持つ方も沢山いらっしゃると思いますが、大丈夫なエポキシを使います。
エポキシにもいろいろありまして、今回のようなケースで使用するのは2液性で硬化しても有る程度柔軟性を持ったままになるものです。
デスモクアトロの時代のエンジンカバーはレースで使用すると頻繁にクラックが入りましたが、いちいち部品交換しているとお金がかかってしょうがないので当時思いついた苦肉の策です。 
90年代に全日本のレースに参戦している時にこのエポキシで修理したケースカバーが、自分のエンジンやお客さんのエンジンに現在でも何の問題もなく使われています。 
少なくとも15年以上は経過しているのに!
ちなみに今でもそのケースカバーのエポキシ部分を爪で押すと、爪の痕が大きく残るほどの柔軟性を保っています。
そのために振動や熱歪みにも耐えるのですね。
そのような実績があるので、この修理方法にはかなりの自信を持っています。
それにこのケースカバー、さっき価格を調べたら税込で約10万円しますしね。
   
Posted by cpiblog00738 at 21:02

2015年11月14日

1098エンジン

027さて、いつの間にかエンジンが組み上がりました。
とりあえず完成というか、区切りの良いところまで出来上がったので、暫くは溜まってしまった本来の仕事に戻ります。 
ジェネレーターカバーは当然ですが1098のものではありません。
ピックアップが2個なので、15年ほど昔のバイクの部品です。
追加ピックアップ分の取り付けボスは溶接で付け足す手も有りますが、場所的にどうしても熱による歪みが発生してしまい、オイル漏れしないように組み付けるのには気を使います。
なので今回はこの仕様です。
一見車種不明ですね。

028エンジン左側の眺めです。
クラッチはとりあえずその辺にあったものを取り付けました。






このエンジンを載せる車体は今のところ手持ちの996RS01にする予定です。
エンジンを動力計に載せて燃調その他のセッティングを出す前に、まずエンジンを車体に載せ、ハーネス関係と排気系を製作してバイクの形を完成させます。
動力計でのセッティングはそれからですね。
作業再開はしばらく先になりそうですが、その時にはまた記事をアップしますのでお楽しみに。
   
Posted by cpiblog00738 at 21:20

2015年11月13日

1098エンジン

022ピストンはピスタルを使用しています。
こちらは前側気筒です。






023こちらは後側。
2個のピストンの重量差は0.1グラムです。
ピスタルはこのあたりの精度が非常に高いですね。





024 ヘッドを組み付けてバルブタイミングの計測と調整を行っています。







025こちらはエンジン右側からの眺めです。 
普通の1098エンジンとはちょっと雰囲気が違う、と思った方は正解です。
クラッチカバーは他車種のものですし、タイミングベルトのプーリー等も同様です。
歯付きのプーリーは他車種のアルミ製のものを使用しています。
テンショナのプーリーも他車種のものです。
元々使用されていたオリジナルのテンショナプーリーはプラスチック製で、ベアリングとプーリーが一体として製作されています。
自分の感覚ではこの部品をレースで使用するのはちょっと不安に感じました。
ということで他車種のスチール製のプーリーを使用することにしました。
   
Posted by cpiblog00738 at 09:30

2015年11月12日

オイル漏れ修理

何処から漏れているのかよく解らない、オイル漏れというのは大抵そんなものですが、それでもそのうち原因が判明する場合が殆どです。
でも今回のオイル漏れは手強いです。
本当に何処から漏れているのか、判別出来ません。
それでもとりあえずは後バンクからであることは確実と判断できるので 、後バンクに手を付けます。

で、ここまでバラしました。001
ここまでの行程で原因は判明せずです。
こういった原因がよく解らない場合はクランクケースのクラックが原因であることも多いので、綺麗に清掃してじっくり観察しましたが、それらしきものは発見できませんでした。




002次はヘッド周りです。
カバーを全て外して点検し、ガスケットとオーリングを新品に交換して組立てます。
此処でも明らかに原因らしきものは発見できませんでした。





しょうがないので元のように組み立てます。
競技専用車両なのでその辺を試乗してオイル漏れの確認をするわけにはいきません。
組み上がったらFISCOに出かけて実際に走行してみるしかないですね。
もし症状が改善されていたら、今回の作業では気付かなかった原因が有って、それが今回の作業で たまたま対策されたということでしょう。
症状が改善されなかった場合は、しょうがないので今度はエンジンを降ろして全バラです。   
Posted by cpiblog00738 at 19:43

2015年11月11日

1098エンジン

014さて、クランクケースの組み立てを開始です。
いつものことですが、各部品のシム調整にはかなりの時間と手間がかかります。
クランクシャフトに適度なプリロードをかけ、尚且つコンロッドの位置をシリンダの中心に持ってくるためのクランクシャフト左右のシム調整。 シフト操作がちゃんと機能するように各ギアの噛み合いを揃えるためのミッションシャフト、シフトドラム左右のシム調整。
これ等の調整を完璧とはいかないまでも納得できる範囲に収めるまでには、何十回の単位でケースを合わせては割る、という行為を繰り返します。

015それらの作業を終了後、改めてクランクケースの左右合わせ面に液体ガスケットを塗布してケースを組み立てます。


 



018次は腰下左右の組み立てです。 
こちらは右側で、一次ギア、オイルポンプ等があります。
今回はテストの意味で減速比が本来と異なる部品を組んでみました。
何をしたか、画像を見れば解る人には解ると思います。
これが良いかどうかは 実際に走行し、尚且つかなり走り込んでみないと評価は出来ないと思いますが、他人がやらない事(出来ない事、しない事)はとりあえずやってみたいですよね。


020こちらは左側、フライホイール、タイミングギア、シフト機構等があります。
フライホイールに4個のトリガーが付いていたり、タイミングギアがトリガー1個を残して加工されて いたりとノーマルからはかなり異なる眺めですが、このエンジンの制御はMotecで行うため、こういった仕様になります。




021フライホイールの組み付け位置も通常とは異なります。
スプラインを一山ずらして組んであります。
目的は始動性の向上ですが、こういったアイデアを即実行に移せるのがMotec等の高性能なフルコンの良いところですね。
高額なだけの事はあると思います。
ちなみに同じフルコンでもM197ではこういった芸当は出来ません。   
Posted by cpiblog00738 at 11:19

2015年11月03日

ミッション

製作開始した自分用のエンジンは1098がベースです。
1198よりも1098の方がエンジンに余裕があるみたいなので、あえて1098を選びました。
それと1098の方が流用できるそれ以前のモデルの部品が多いのです。 

007まずミッションです。 
今回ミッションは1098のものをほぼそのまま使用します。
所謂SPミッションというやつです。
こいつが初登場したのは851のSPシリーズに採用された時ですが、レシオはその時から変わっていません。
ただしノーマルをそのまんま使用するのはつまらないので、レース専用ということでちょっとだけモディファイしてあります。(内容は秘密です)
 
010クランクです。 
既にダイナミックバランスが施されています。
凶器の雰囲気が素敵です。
今回はヘビーウェイトは無しにしました。(コストが高いもんで)
 



013クランクにコンロッドを組み付けたところです。 
御覧の通りコンロッドは街乗り車純正のチタンコンロッドです。
ノーマルの鉄コンロッドからの変更なので重量はかなり軽量となり、そのためクランクウェブはかなりそぎ落とされているのです。
こういった部品の流用が出来るのは1098の方なのです。
1198の方はコンロッドの長さが短いので流用できるチタンコンロッドは1098R、1198Rの部品しかありません。
このコンロッドの中古品が出回ることはまずないので、欲しければ新品しか選択肢は有りません。でも超高価なので現実的ではないのです。   
Posted by cpiblog00738 at 23:33

2015年11月02日

オイルフィルターの奥

002オイルフィルターを外すと奥の取り付け部分はこうなっています。
見慣れた景色だと思います。 
スプリングとゴムを組み合わせた部品が付いていますが、これは何でしょう?





003オイルフィルター取付のユニオンボルトを外してその部品を外すとこうなります。
ゴムの奥にはオイルラインらしき穴があります。
実はこの穴、まさにオイルラインで、ゴムの部品はこの穴を塞いでいるのですね。
何故穴を塞いであるかというと、この穴が塞がっておらずに解放されているとオイルクーラーに行くはずのオイルが近道をしてオイルクーラーに行かずに戻ってきてしまうからです。当然オイルは冷えません。
オイルクーラーに過度の油圧がかかってオイルクーラーが膨らんだりしないように、また何かの原因でオイルクーラーに行くオイルホース等のオイル通路が塞がってしまった時でもエンジンにオイルが回るように、何かそのような緊急事態が起こった時にはスプリングが開いてゴムのバルブが開きます。
要はリリーフバルブになっているわけですね。

004ところがせっかく存在するこの機構、実際には機能するような事態が起こることは皆無のようです。
伝統的にコルサやRSのエンジンでは、強制的にオイルをオイルクーラーに行かせるためにこのリリーフバルブ用の穴を最初からプラグで塞いでしまっています。
画像はそのプラグを穴に打ち込んだところです。
このプラグはコルサの純正部品で、自分がレース専用のエンジンを製作する場合は必ずこの作業を行っています。

005プラグを打ち込んだら外れてこないように周りをポンチでカシメます。
そしてフィルター取り付けユニオンを再び取り付けて作業終了です。

で、こんな作業をしているということは、即ち現在レース用のエンジンを製作中ということです。(自分用です)
暇を見てやっていますが、作業の様子は進捗状況に合わせて公開していく予定です。





   
Posted by cpiblog00738 at 20:26

2015年11月01日

1993年型888コルサエンジン

006先日入手した1993年型888コルサのエンジンをバラしています。
実際に開けてみないとこのエンジンの内容が判りません。 もしかしたら中身がノーマルになっている可能性だってあるので、とりあえず中身の確認です。
まずヘッドをバラしました。
間違いなく92年製造の1993年型 コルサのヘッドです。
ヘッド上面のエキゾースト側に施された削り込みの 加工は当時から憧れましたね。
これはフロントタイヤとの干渉を少しでも軽減するための苦肉の策です。 
それでも実際はタイヤとの干渉は避けられず、走行後は 此処に黒々としたタイヤ痕が付いたものです。

009燃焼室側です。
バルブ径はφ37mmとφ31mmでオリジナルです。
長年使い続けてきただけあってガイドはガタガタ。
またシートには何度かのシートカット履歴があり、そのために奥まで削り込まれてバルブは燃焼室の奥に沈み込んだ状態です。 
ガイドとシートは交換が必要です。
で、このまま内部の確認だけで済ますか、修復にかかるかちょっと迷いましたが、結局はこのままレストアに突入することに。
満足に動かないエンジンではただの置物にしかなりませんからね。
そういう事で、とりあえずガイドはTFDオリジナルのベリリウム銅製のものに早速入れ替えました。
シートの交換は外注に出す予定です。
シートの製作と交換の作業も自分でやりたいのはやまやまですが、現状ではちょっと難しいのです。
近いうちには内製出来るようにしたいですね。
効率的には外注の方が良いとは思いますが、自分でやらないと気が済まないタイプなので自分の気持ちが優先となります。

001バルブです。
ステムエンドに「C.MENON」と刻印されていますが、これが当時のコルサ純正バルブの証です。これがメーカーの名前なのかどうかは知りません。
チタンバルブになるまでのニモニック製スチールバルブには必ずこの刻印を見ることが出来ます。748RSのバルブも同様です。
チタンバルブになってからはデル・ウエスト製ですね。


カムシャフトです。003
インテーク、エキゾースト共に「G」カムで、当時の仕様に間違いありません。
インテークのGカムは888SPS、SP5、916SP、のストリートバイクにも使用されていましたが、エキゾーストのGカムが使用されていたのはコルサ系だけです。
コルサ系のインテークカムは最初は「G」から始まり、「431」、「450」、「471」と仕様が進化していきましたが、エキゾーストカムに関しては最終モデルの996RS01までずっと「G」がそのまま使用されていました。
エキゾーストのGカムがあまりに優秀で仕様変更の必要が無かったのか、それともエキゾーストカムは頑張って開発したところで性能的な向上が見込めなかったので放置されたのか、そのどちらなのかは不明ですが。
   
Posted by cpiblog00738 at 10:46