2018年12月16日

クランクケース合わせボルト

IMG_0744 車種によってクランクケース左右を締結しているM8のボルトの中に中空になっていてオイルラインの働きをしているものが1本あります。ボルトの中心にφ3.5mmほどの穴が開いていて、それがボルトの首下にあるφ2.0mmくらいの穴とつながっていてオイルジェットに行くオイルの通路になっています。  
 このボルトがヤワで締め付ける時にすぐに伸びてしまうんですね。M8のボルトですから締め付けトルクは23〜25Nm位は掛けたいところです。しかしこのボルト、モノによっては20Nm位から伸び始めてしまい、それ以上トルクがかけられなくなることが良くあります。

IMG_0747 左が伸びてしまったボルト、右が正常なボルトです。伸びてしまった方は途中からネジピッチが広がっているのが判ると思います。クランクケース左右の締結にはM8のボルトがほかにも多数使用されていますが、それらは中空では無いので特に問題は起こりません。いずれにせよボルトの強度が足りないのが原因です。


IMG_0750 ボルトの頭に数字が書いてありますね。伸びてしまう方のボルトの頭のペイントを取り除くと8.8という数字が表れます。黒い方(クロモリと呼ばれている材質のボルト)には12.9という数字が見えます。この数字はボルトの強度区分を表しています。最初の数字は最小引っ張り荷重、次の数字が降伏荷重を表します。
 具体的に言うと、8.8は1平方ミリメートル当たり80キロの引っ張り荷重に耐え、80キロの8割の64キロまでは弾性変形で荷重を抜けば元の長さに戻るということです。12.9なら120キロまで切れずに120キロの9割の108キロまでは元に戻る、ということです。この数字を見ればボルトの強度が一目瞭然です。

IMG_0749 で、当然ですが伸びないボルトも製作しています。強度区分12.9のボルトに穴をあけて製作したのがこれです。最近製作を思いついたわけではなく、ずいぶん昔から自分のエンジンにだけ使っています。(笑)今迄多くの使用例がありますが、さすがに伸びた例は皆無です。締め込んでいくときの剛性感が全く違って安心感があります。最近は穴の開いていない方の合わせボルトもこの手のボルトを使い始めました。ただ表面処理が黒染めなので耐食性を考えて競技車両のエンジンにしか使っていませんが。こっちの方が締め込んて行くときの感触に安心感があって良いんです。弱いボルトだと弾性変形内とはいえボルトが伸びてくる感触が雌ネジが壊れて抜けてしまう前触れの感触ではないかと疑ってしまい、精神衛生上非常に良くないのです。










  

Posted by cpiblog00738 at 19:55

2018年12月12日

開けられたことのないエンジン

IMG_0731 手持ちの999R05エンジンですがこれをベースに競技専用のエンジンを製作することになりました。保管している時には気にしていませんでしたが、いざ開けてみると殆ど新車時のままで開けられた形跡があるのはフライホイール側のカバーだけでした。TFDに来る前もレース専用車だったのですけどね。開けられていないかどうかの判断基準は主に液体ガスケットの状態です。新車時のエンジンは各接合面にグレーのシリコンガスケットが過剰に塗布されているのでそのはみ出し方が独特です。そこに透明や黒のシリコンガスケットが使われていたりすれば開けた履歴があるのは一目瞭然ですし、新車時と同じガスケットを使用したとしてもあんなに派手にはみ出すほどは使いません。純正と見分けがつかないようにわざと多く使う人もいるかもしれませんが、その場合は例外ですけど。
 何はともあれ開けられたことのないエンジンには非常に安心感があります。おかしなことをされていないことが保証されますからね。安心して作業を進めることが出来ます。  
Posted by cpiblog00738 at 20:21