2019年07月27日

ピエロボンフレーム

IMG_1310 中古のピエロボンフレームを商品情報にアップしました。興味のある方は覗いてみてください。ノーマルと比較してかなりの高剛性なのでちょっと手強いかもしれませんが、乗りこなせる方、如何ですか?  

Posted by cpiblog00738 at 22:51

2019年07月26日

916SPS 1997 その3

IMG_1241 その後作業は順調に進んでいます。クランクケースを閉じる寸前の状態です。各部品の位置決めのためのシム調整は地味ながら非常に重要な作業です。例えばギアの入り具合はミッションシャフトとドラムの位置関係、それとシフトフォークの状態によって決まりますから、組んであった通り元に戻すだけということはあり得ません。


IMG_1293 バルタイの計測と調整を行っています。916/996SPSの場合は最初からタイミングシャフト側のプーリー2ヶ所に10度のオフセットキーが使われています。工場出荷時に最初から組んであるのですからその目的は当然ながらバルブタイミングを適正な値にすることなのですが・・・・。今までの経験から言えることは、その状態ではかなり正しい数字からはかけ離れたバルタイになっています。


IMG_1294 エンジンの完成です。







IMG_1304 エンジンを車体に載せ、ベンチ室内でエンジンを始動してスロットルボディーの調整を行っています。この段階では燃料は外部のタンクから供給しています。この状態の方がスロットルボディーにアクセスしやすいので作業効率が良いのです。
 



IMG_1306 完成です。  
Posted by cpiblog00738 at 09:48

2019年07月09日

916SPS 1997 その2

916SPSの続きです。

IMG_1229 クランクです。最初からヘビーウェイト入りです。何故か1次ギア側のウェブに3個、もう一方のフライホイール側のウェブには2個、打ち込まれています。常識的に考えると左右対称になりそうなものですけど、この3個と2個の組み合わせは結構目にした記憶が有ります。この状態でバランスはとれているということなのでしょうけど、なぜこうなっているのか理由は解りません。


IMG_1232 さて、コンロッドです。すでにお伝えした通りこのコンロッドの材質はスチールです。で、ハーフメタルですが2個の小さな穴が開いています。






IMG_1236 メタルを外すとこうなっています。溝状のオイル通路になっていて中央に穴が開いています。ちなみにコンロッドのキャップ側にはオイル通路は存在しませんから、メタルに穴が開いている必要はありません。穴あきのメタルは非常に高額(万単位の値段です)なので、自分が組む場合はキャップ側には穴のない普通のメタルを組むことが多いです。


IMG_1234 この穴が何処に通じているかというと、此処、小端部です。つまり大端部を潤滑するオイルの一部がコンロッドの真ん中の穴を通って小端部分まで来て、ピストンピンを潤滑するという訳です。凝ってますね!
 このシステムは888SPSやSP5にも使われていましたが、その時はメタルに開いている穴は3個でした。いつの間にか品番変更になって穴が2個のタイプになっています。

IMG_1235 メタルの裏側はこんな感じです。オイル通路の跡が明瞭に確認できます。しかし考えてみるとオイル通路の跡が付いている部分は荷重を受け止めないということになります。自分の考えでは、この部分は出来るだけ単位面積あたりにかかる荷重を小さくしたい場所なので、そういった意味でこの状況はあまりよろしくないかもしれません。何はともあれ理由は不明ですがこのシステムはこのエンジン以降は使われなくなりました。ここまでしなくてもオイル飛沫の管理や小端部に開けるオイル穴の最適化でピストンピンの潤滑に問題は無いという結論に達したのかもしれません。

IMG_1238 メタル合わせの後、再び組み上げられたクランクとコンロッドです。  
Posted by cpiblog00738 at 21:49

2019年07月05日

レーシングパーツ

IMG_1172 こんな部品が売りに出ていたので購入しました。999RS、もしくは999F03/04のフライホイールです。でもよく目にするこの手の部品とは外見的に趣が異なります。





IMG_1174 構成部品はこんな感じで、セルモーターによるエンジンスタートが可能な構造です。正規のパーツリストには載っていないと思います。そもそも何故こんなものが存在するのかというと、これはAMAのスーパーバイクレースに対応するために製作されたものだったと記憶しています。AMAのレースにはレギュレーションがWSBと異なるところが散見されます。当時そうしたルールの中に、セルフスターターでエンジンスタートが可能でなければならない、というのが有ったと記憶しています。ファクトリーマシンでもセル付きだったということですね。そうした流れでファクトリーが製作した部品です。
 ピックアップ用のトリガー(羽)の数も通常とは異なります。普通は4枚羽なのですがこの部品は倍の8枚羽です。これについては使用しているECUが対応出来なければ使いようが無いのですが、こうすることによってより細かな制御が可能となります。自分のバイクはMotec制御なのでこの辺は何とでもなります。そのうち付け替えて試してみますが、果たして私がその違いを体感できるのでしょうか?
  
Posted by cpiblog00738 at 11:18

2019年07月03日

916SPS 1997

IMG_3526 1997年型916SPSです。TFDの倉庫に長い間(10年以上)眠っていました。走行距離は実走行で2,000km未満です。長期間TFDに仕舞い込んであったとは言え、元々は何処かからか縁あってやってきたバイクで私が携わっていたバイクではありません。走行距離が少ないとはいえ、TFDに来るまでにどこの誰に何をされているかわかりませんし、年代物なのは確かなのでレストア作業に着手しました。ちなみにこのバイクの行き先は既に決まっていますので悪しからず。
 1997年型は996になった最初のモデルです。この年式はまだチタンコンロッドは採用されておらず、コンロッドはPANKL製の削り出しH断面スチールコンロッドが使われています。チタンコンロッドが採用されるのは翌1998年型からです。チタンコンロッドではない代わりにと言っては何ですが、97年型のクランクにはヘビーウェイトが打ち込まれた状態でバランス取りされています。コルサやRSのクランクには普通にヘビーウェイトは使われていますが、市販街乗りバイクでこの916SPS1997以外にヘビーウェイト入りのクランクが使われているのは私の記憶では888SPS、888SP5、748R2002、それと1098R、1198Rくらいではないでしょうか。(他にもあったかもしれませんが今は思い出せません。それとパニガーレ以降は私は門外漢で知識がないため除きます)
 1996年の全日本のレースシーズンが終わった頃にドゥカティコルセから来年のコルサは996ccになるというインフォメーションが来ました。レースレギュレーションではスーパーバイクのホモロゲモデルも同じ排気量であることが求められるので、来年は996の街乗り市販車が出るんだ、とピンときて、すぐに当時の輸入元の村山モータースに97年に出る996のバイクを注文した思い出が有ります。その時はまだ発表も何もされておらず、輸入元の人も半信半疑だったのですけれどね。購入したTFDのそのバイクはまず最初にエンジンを組みなおし(と言ってもチューニングはせずにノーマル状態のままでちゃんと組みなおしたというレベルです)、そして黄色く塗られて当時のバイク雑誌にたびたび登場したので記憶にある方も多いかもしれません。
 当時某雑誌でゼロヨン&最高速という有名な連載記事があって、そのバイクでFISCOで行われた最高速チャレンジに出場した覚えがあります。その時にFISCOのストレートで記録した最高速は270km/hだった記憶が有ります。メーター読みではなく光電管もしくはスピードガンによる計測だったので実速です。今のレベルで考えてもなかなか立派な記録だと思います。

IMG_1166 作業していて今更ながらに感心するのは、例えばこのインテークポートの仕上げです。ガイドは新品に交換してありますがそれ以外はドノーマル。工場出荷時のままです。中央の仕切りは鋭利な刃物状態で下手をすると手が切れます。何かの拍子に虫とかが吸い込まれたりしたら虫の体が真っ二つになりそうです。常識では考えられませんよね、この仕上げ。デスモクアトロ系のエンジンのポートはおしなべてこんな感じになっていますが、特にこの97年型SPSは気合が入っているように感じます。

IMG_1168 こちらはエキゾーストポート。同様にガイドは新品になっていますがその他は工場出荷時のままです。エキゾーストポートなんてちょっと走ればカーボンが付着して真っ黒になってしまうのに・・・・。




IMG_1170 こちらはヘッドのロッカーピンを塞ぐ蓋で、ドゥカティがセントラルカバーと呼んでいる部品です。ガスケットではなくオーリングでシールしています。916レーシング95からコルサにはもれなくこの部品が使われていて私的には見慣れた部品だったのですが、市販街乗りバイクでこの部品が使われたのはこの916SPS97のみです。今後ここは全部のモデルでオーリング式になるんだろうなあと当時思った記憶が有りますが、なぜか街乗りバイクで採用されたのはこのバイクだけでそれ以降は普通のガスケット仕様のままでした。

 まあポートがどうとか、なんだかんだ言っても結局馬力が出てる方が偉いでしょ!という言い分もありますが(特に最近世の中がこのような風潮になってきている気がします)、これは趣味の世界の話ですから。趣味の世界は結局自己満足に帰結すると私は考えます。これを仕事にしている私でさえ、普段はエンジンの奥に有って見えない部分をエンジンを開けたときに目の当たりにして、改めて凄いと思ったり感心したり良いなと思ったりすることは多いです。

 続きはまた後で。
   
Posted by cpiblog00738 at 19:46