2022年01月22日
ハーフメタル
オーバーホール中のエンジンから取り外したコンロッド大端部に使用されていたハーフメタルです。表面の銀色部分が無くなって下地の銅色が見えています。左の2個がコンロッドの本体側に使用されていたもの、右の2個がコンロッドのキャップ側に使用されていたものです。ドゥカティ2気筒エンジンの場合、メタルの負担が大きいのはコンロッド本体側になります。キャップ側の方は本体側と比較するとダメージは少ないことが多いのですが、今回の場合でもキャップ側のメタルにはまだ何となく銀色が残っています。
この状態でもエンジンは普通に動いていたようです。焼損は発生していませんでした。クランクピンは流石に良好な状態とは言えませんでしたが、再使用が憚れる状態でもなかったので再使用しました。コンロッドも当然ながら再使用しましたが、メタルクリアランスが0.050mmとなるようにメタル合わせを行った結果、使用したメタルの厚さは1.480〜1.488mmとなりました。
画像のメタルの厚さを計測したところ、本体側が1.408mmと1.410mm、キャップ側が1.463mmと1.464mmでした。取り外したメタルと新品メタルの厚さの差から計算すると、分解前のメタルクリアランスは0.14mm前後であったと考えられ、この数字でもエンジンは機能するのだとちょっと驚きました。とは言え、このまま走行していたらとても近い将来にコンロッド大端部の焼損という事態になったと考えられます。
Posted by cpiblog00738 at
09:09
2022年01月07日
クラッチ
取り外してみるとこんな感じです。純正部品のクラッチプレートセットの場合、使用し続けると摩材が減って厚さが減少するよりも先にバスケットと勘合するツメの部分の消耗が進みます。勘合部の隙間が大きくなるほどクラッチの打音が大きくなりますが、いきなり音量が変化するのではなく少しずつ音が大きくなっていくのでオーナーさんはなかなか気づかない場合が多いのでしょうね。
Posted by cpiblog00738 at
07:48
2022年01月06日
タイミングベルト
タイミングベルトのトラブルです。90年代にはこの手のトラブルが多かった印象がありますが、時代とともにベルトの品質が向上し、最近はあまり目にすることがありません。初期においてはベルトの品質の問題で、まず最初にベルトが破断するというパターンが多かった印象ですが、近年においては何らかの原因が有ってそのためにベルトトラブルが起きる場合が多いです。
このエンジンの場合はテンショナベアリングの破損です。テンションプーリーのベアリングが分解してしまってプーリーが脱落、→それによってバルブタイミングが狂ってバルブとピストンが衝突、→バルブが曲がってカムシャフトの回転が止まってロック、→ベルトが無理に引っ張られて破壊、という順番だと推測されます。もちろんすべては一瞬のうちですけど。
テンショナベアリングを観察すると、ベルトの張り調整する右側の方はプーリーがどこかへ飛んで行って無くなり、ベアリング内側のレースのみが残っている状態です。左の固定側の方もベアリングが爆発寸前の状態で、元々はシール付きのグリス封入型のベアリングですが、シールが無くなって内部のボールがむき出しです。手で回すとゴリゴリ言いながらかろうじて回転するという状態です。
一般的にタイミングベルトの交換を行う場合、ベルトとともにテンショナベアリングも同時に交換するのが望ましいですが、ベルトのみの交換で済ませている場合が多いようです。例えばクルマの場合はベルトとテンショナベアリングの交換はセットで行う、というのが常識になっていますが、機構的には全く同様ですからね。
1990年代のドゥカティの市販レーシングマシンだったコルサの場合、メーカーが指定していたベルトとテンショナベアリングの交換サイクルは共に走行500kmごとでした。ベルトは市販ストリートバイクと同じ部品、ベアリングは同サイズながら値段が何倍もする高級品だったにもかかわらずです。
ベルト交換を行う時はベアリングに状態も気にしてほしいですね。プーリーを手で回してみれば、その感触でその良否はある程度判別できると思います。また、作業者はその程度のスキルは持っているべきだと思います。
Posted by cpiblog00738 at
09:30