2022年04月29日
28年前ですか
こんなのあるよ、とイタリアの友人から連絡が来ました。
5:33あたりですね。若いです!
当時は何とも思わなかったんですが、今改めて考えてみるといろいろな意味で凄いところにいますね。今まで誰も知らなかったポット出のプライベートチームとライダーです。
第1ヒートのレースでは1周目、2周目ともに6位で帰って来て3周目に転倒、再スタート。ほぼ最後尾の36位から21位まで追い上げてチェッカー。帰ってきたバイクを見たら転倒時に左のステップバーが無くなっていて、シフトレバーも曲がってあらぬ方向を向いていました。「左足はサイレンサーの上に置いて、シフトは曲がったレバーを蹴り込んだり蹴り上げたりして運転してたッス」とのことでした。あきれ返るほど凄いヤツでした。
レースウィークの練習走行時にコース上で初めて芳賀選手に遭遇したフォガティ選手に、「あいつは誰だ!」と言わしめた、という逸話を思い出しました。
Posted by cpiblog00738 at
08:27
2022年04月21日
2022年04月08日
748Sエンジンオーバーホールその6
シリンダーヘッドの方はバルブガイドの交換を行いました。ガイドは純正ではなくTFDオリジナルのベリリウム銅合金製です。バルブの通る穴はバルブステム径よりも小さく仕上げてあり、従ってこのままではバルブがガイドに通りません。この状態からリーマを通して徐々に穴を大きくしていきます。通すリーマの径を0.01mm単位で大きくしていってバルブステムが通るところまで拡大します。
こうすることによってガイド穴とステムのクリアランスを0.01mm単位で管理できます。計測すると判明しますが、8本あるバルブのステム径は必ずしも同一ではありません。個々のバルブステム径に合わせた穴径に仕上げます。従ってこのバルブはここに使う、という決まりが発生する場合もあります。他のバルブに入れ替えるとステムが通らなかったりガタガタだったり、ということになるわけです。
ちなみにTFDで使用している材質のバルブガイドの場合、ガイドとステムのクリアランスはほぼゼロの設定で、バルブが抵抗なくガイドの中で動く状態であればOKです。その状態でヘッドを組み立てます。この材質で製作したガイドの性能は秀逸で、耐摩耗性は勿論のこと潤滑性も非常に優れており、狭いクリアランスで組んでも焼き付きなどのトラブルは発生せず、ある程度の慣らし運転を行った後には適正なクリアランスに落ち着き、その後その状態で長期間安定します。街乗り、レースを問わず、次回のオーバーホール時にガイド交換が必要になるケースは非常に稀です。ただしこれはガイドの材質によるもので、他の材質のガイドでクリアランスゼロの設定をやるとバルブとガイドが焼き付いたりする可能性があると思います。
こちらはバルブの方です。バルブフェースに擦り合わせの痕跡が付いています。シートと当たる位置は出来るだけ外側になるようにしています。当たり面の位置が実質的なバルブの傘径ということになります。ただし摺合わせ部の外側に当たらない部分を少しだけ残すようにしています。
例えばオリジナルより大きいビッグバルブを入れた時に、その当たり面の位置がそれまでと同じ位置でバルブフェースの内側の方にあったとすればビッグバルブの意味がありません。当たり面の円周長とバルブリフト量の積が混合気の吸入量と考えれば理解出来ると思います。
ピストンが上死点に来た時のピストンとシリンダーヘッドの隙間、所謂スキッシュクリアランスの計測と調整を行った後、ヘッドを取り付けます。ヘッドを組み付けてエンジンの形になったところでバルブタイミングの計測と調整を行っています。
Posted by cpiblog00738 at
09:31
2022年04月03日
748Sエンジンオーバーホールその5
エンジン腰下がひと段落したのでシリンダーヘッドの作業を開始しました。カーボンを落として綺麗にしたところですが、ヘッド面の腐食が気になります。腐食している部分から鑑みると冷却水による腐食と思われますが、はっきりとした原因は不明です。腐食が発生していない個体も見受けられますから、クーラントとのマッチングの問題なのでしょうか?
ヘッド面を研磨しました。機械加工ではなく手作業で、定盤上でのすり合わせです。機械加工でも良いと思いますが、研磨の取り代が大きくなることと機械をセットする手間を考えると摺合わせが妥当な場合が多いです。すり合わせでは取り切れない深度の腐食であれば機械加工で対処するしかありませんが。
まだちょっと腐食跡が散見されますが、機能的と精神衛生的に問題無い範囲なので深追いはしません。
シリンダーヘッド内部部品です。カムシャフト支持はプーリー側がボールベアリングで反対側がローラーベアリングです。プーリー側のボールベアリングとオイルシールは交換しますが、反対側のローラーベアリングとオイルシールは再使用します。主な理由は部品の価格で、ベアリングとオイルシールで1セット¥7,000-位します。オイルシールだけでも交換したいところですが、オイルシールを取り出すためにはベアリングを取り外す必要があり、その場合はベアリングの内輪にプーラーをかけて引き抜くのでベアリングの再使用は避けたいです。すると必然的にベアリングとオイルシールの両方を交換することになります。経験的にこの部分は非常に余裕を持った造りなので問題が起こる可能性は非常に低いです。逆にプーリー側はベルトのテンションがかかるのでストレスが大きいです。それとロッカーアームのメッキの剥離は要チェックです。この個体の場合でも数本発覚しています。こればっかりは交換で対応するしかありません。
バルブガイドを取り外しました。バルブガイドを取り外す場合、TFDではガイドを燃焼室側に抜いて取り外す場合が多いです。その理由は特にエキゾーストガイドに関してですが、カーボンが強固に固着したガイドをカムシャフト側に抜くとカーボンが固着した部分がガイド穴を通り抜けるのでガイド穴の内壁にキズが付く可能性が高いからです。
こちらはエキゾーストバルブで、バルブフェースの荒れというか凹みはカーボン等の異物を噛みこんだためと考えられていますが、インテークバルブの方も程度の差こそあれ同じような状態なので噛みこむのはカーボンだけとは限らないようです。
Posted by cpiblog00738 at
09:17