2023年07月30日
DUCATI SUPERMONO スーパーモノ・レストア記 その6
2023年07月26日
DUCATI SUPERMONO スーパーモノ・レストア記 その5
2023年07月24日
DUCATI SUPERMONO スーパーモノ・レストア記 その4
作業を開始するにあたって、まずは手を付けられるところから始めようということで、リアサスのオーバーホールを行いました。シリンダーも取り外し、表面処理をやり直しました。内部の仕様は特に変更せずノーマルのままです。
こちらはオリジナルのブレーキホースですが、経年劣化でブレーキホースのフィッティングが割れてしまっています。
そこでブレーキとクラッチのホースは新品を用意しました。イタリアのFREN TUBO製です。純正部品とは言えませんが、FREN TUBO社の製品ラインナップ中にドゥカティのスーパーモノ用という製品が存在するので、それを取り寄せました。
ここまで進捗した時点で本業が忙しくなり、暫く作業は中断ということになりました。そして3年ほど経った2014年、このまま放置はまずいということで本業の合間を縫って作業再開しました。
2023年07月16日
DUCATI SUPERMONO スーパーモノ・レストア記 その3
さて、このバイクのレストア作業で一番のネックとなっていたことがあります。それは何と致命的なことに、クランクシャフトが無い、ということです。箱詰めの部品の中に2本のクランクシャフトが存在してはいたのですが、その両方が使い物になりません。画像はそのうちの1本で、焼き付いたクランクピンを溶接で盛って仕上げてありますが、肉盛りの溶接が足りずに表面を既定の寸法に仕上げても溶接のビードが残ってしまっています。また、左右のクランクを支持するジャーナル部も偏摩耗しており、真円度が保たれていません。計測場所によって直径が異なり、そのバラツキは0.09mmあります。ちなみにこのエンジンのクランク支持はこの時代のドゥカティとしては一般的なボールベアリングではなく、コンロッドの大端部と同じ構造のハーフベアリングです。0.09mmというこの数字は正規のメタルクリアランスのほぼ2倍程度ありますから、このまま組んで使用したら秒殺でエンジンが逝ってしまうのは確実です。
正直に申し上げてレストア作業が滞った一番の要因はこのクランクシャフトでした。当然ですが新品のクランクシャフトなどというものは既に廃番で入手不可です。いくら探し回っても中古部品すら出て来ません。ドゥカティの他車種の部品の流用を一瞬考えましたが、軸受けの径がまるで異なるのでそれは一見して不可能なことが判ります。そこで残された手は新造、ということになり、国内のクランクシャフトを製造してくれそうなところにこの画像を送って、製造可能かを問い合わせました。これは2011年のことだったと記憶しています。
何社かに問い合わせをしたのですが、返答は殆どが無しの礫でした。しかしその中で1社だけ真摯な対応をしてくれた会社がありました。モータースポーツ関係ではかなり有名な四国にある会社です。二輪四輪問わずメーカーの仕事も請け負っていて、その技術力もピカイチという評判で、流石だなと感心しました。正確な数字は覚えていませんが、見積金額は確か200万円だったと記憶しています。ただし1本ではなく、最低ロットの4〜5本の価格だったと記憶しています。
1本あたり40〜50万円なら、世の中にはクランクがダメになって走れないスーパーモノがそれなりに存在していると思われるので、それの修理に使えばOKと考え、この会社にお願いしようと半ば決心しました。
ところがこのタイミングで朗報が飛び込んできました。純正新品クランクシャフトが見つかったとの連絡です。見つけてくれたのは親しいイタリア人の友人のルカです。見つけた場所はアメリカでした。以前から探してもらってはいたのですが、それまでは伝手をたどってもなかなか見つからないという連絡が来るばかりでした。
もし新品のクランクシャフトが存在するのであれば、それはレーシングチームやショップではなく、例えばスーパーモノの新車をコレクションしているようなマニアの方が、スペア部品としてストックしているというようなシチュエーションであろうと予測し、そっち方面を当たってみたところで運よく探り当てたという感じです。
価格は1本で7500ドルとのことでした。十分高額ではありましたが、その価格でも躊躇なく購入を決意しました。何しろクランクシャフトが無ければバイクがバイクとして成り立ちませんし、それに加えて純正部品であることの価値はとてつもなく大きいと認識していたからです。この機会を逃したらおそらく新品の純正部品には一生巡り合うことは無かったでしょう。
結局はルカがいろいろと交渉してくれてディスカウントしてもらい、日本円にして70万円くらいで入手することが出来ました。これでヒマラヤよりも高い?ハードルを一つ乗り越えることが出来ました。荷物が届いてモノを確認した時の安堵感は半端では無かったです。
2023年07月09日
DUCATI SUPERMONO スーパーモノ・レストア記 その2
このバイクがTFDにやって来た時はほぼバラバラ状態。エンジン等は分解されて箱詰め。その他部品も分解されて単独な状態でした。足りない部品も多々ありそうでしたし、果たして本当に生き返らせることが出来るのか?この時点ではかなり不安に思える状況でした。
しかし、画像のようにフレーム番号は#3番、エンジン番号もマッチングしていて#3番。フューエルタンクには当時このバイクに乗っていたワークスライダーのマウロ・ルッキアリ選手のサイン入りです。以上のことからこのバイクは飛びぬけて貴重な個体であることが窺い知れます。このバイクに関する履歴や書類は所持していませんが、フレーム番号が#3番ということで調べれば容易に素性が明らかになるのではないでしょうか?
また、かなりの量の純正新品部品も付属していました。例えば新品のアッパーカウル、サイドカウル左右、ラジエーター、クランクケース等、枚挙にいとまがありません。レストアに際してはこの他にも膨大な数の新品部品を使用しましたが、その全てをここで紹介することは不可能なのでそれらについてはレストア中の記事の中で紹介させていただきます。
2023年07月02日
DUCATI SUPERMONO スーパーモノ・レストア記 その1
TFDにやって来た時このバイクはかなりひどい状態で、とても走行できる状態ではありませんでした。レストレーションを行わなければとずっと思い続けていましたがなかなか手を付けることが出来ませんでした。機会があるごとに少しずつ手を付けていたとはいうものの、作業の進捗は思うようには進みません。
そんな状況の中、ようやくレストアが完了してとりあえずエンジンの始動にたどり着いたのが2020年の5月。初走行をFISCOで行ったのがその年の9月。その後ちょっと間が開いて次の走行を筑波サーキットで行ったのが2021年の11月。その次の走行が2022年の6月に行われたFISCOでのレースへの出場。走行履歴は以上が全てで、この時点までの走行距離は127kmです。
今回はこのバイクがTFDに来た時からの顛末、及びレストアの様子を詳しくご紹介します。今回の記事でこのバイクの素性を洗いざらいご紹介しますのでご期待ください。
また、私は将来的にあと何回かこのバイクでレースに出場しようと考えておりますが、その後は売却を考えております。ご興味をお持ちの方がいらっしゃいましたらご検討いただけるとありがたく思います。よろしくお願い申し上げます。