2023年09月30日
DUCATI SUPERMONO スーパーモノ・レストア記 その15
フロントアクスル周りです。この時代のブレーキディスクローターの材質は鋳鉄です。1993年の888コルサは確かに鋳鉄ローターで、1994年の926コルサからステンレスローターになりましたから、この年式は丁度切り替わりの時期ですね。ディスクローターのディメンジョンは当時のYAMAHA TZ250に使用されていたものと同一だと思われます。
フューエルタンクのマウロ・ルッキアリのサインですが、タンクにマーカーペンで記してあるだけなのでこのまま放置すると消滅してしまうことは明らかです。パーツクリーナーで拭いたりワックスをかけたりすれば簡単に消えてしまうでしょう。このままという訳にはいきません。
そこでペイント屋さんにお願いしてクリア塗装をオーバースプレイしてもらいました。勿論塗装前に脱脂は必要なのですが、そのあたりは流石プロフェッショナル、うまく処理してくれました。これで一安心です。
それにしてもこのフューエルタンク、斬新というか何というか、かなり独特は形状ですね。
この3点のカウルは純正部品の新品です。社外品ならともかくとして、今時こんな部品は手に入りませんよね。なんだかもったいなくて取り付けを躊躇する気分になってしまいました。
と言いながら外装を取り付け、ひとまずバイクは完成しました。こうしてみると本当に美しいというか何というか‥‥言葉が見つかりません。素晴らしいデザインだと思います。今迄のどのバイクにも似ていません。斬新ですが、それなのにまさに宝石のような美しさを持ったバイクです。
このデザイン、本当のところは誰の作品なのでしょうか?このデザインの流れでインジェクション仕様になった900/1000SSとか749/999系に変遷していくのですが、一般的にスーパーモノとこのシリーズは同一デザイナーの作品と言われていますよね。私にはどうしてもそうは思えません。スーパーモノに関しては、実はタンブリーニさんが関わっていて、監修等を担当していたとすれば納得できるのですが。
それと個人的な意見ですが、このバイクは純粋にレーシングマシンとしてのこの佇まいで完璧に完成されてしまっているのではないでしょうか?この状態にヘッドライト、ウインカー、テールランプ、といった保安部品を取り付けた姿を想像すると、私は急に幻滅を感じてしまいます。それがストリート仕様が発売されなかった理由だったり……、しないですかね?
Posted by cpiblog00738 at
11:47
2023年09月23日
DUCATI SUPERNOMO スーパーモノ・レストア記 その14
ここからは車体関係のレポートとなります。基本的にエンジンのレストア作業終了後に着手した作業ですが、中にはエンジンの作業と並行して行っていた作業もありますのでその点はご承知おきください。
フロントフォークのオーバーホールです。作業内容としてはバラして部品を綺麗にして不具合が無いかを点検し組み立てる、ということになりますが、一つ問題となるのがフォークシールです。この手のフロントフォークの場合、インナーチューブ径が42mmです。純正オイルシールのサイズは42x54x10.5というサイズです。このサイズのオイルシールは現在なかなか入手が出来ません。今回使用したシールは42x54x11.0というサイズで厚さが0.5mm大きいですが、何とか問題無く使用することが出来ました。しかしこのオイルシールは日本製ではないので経験的に耐久性に難があります。要するにオイル漏れが始まるまでの時間が短い、ということです。まあこれに関しては致し方ないですね。使えるものがあるということだけで感謝しています。
リアホイールですが、こちらの箱入りの方は何と新品です。この純正のリアホイールサイズは5.00x17です。もう1本、5.25x17というサイズもありまして、こちらはリペイント済みです。当時の指定タイヤサイズは155/60-17というサイズですが、それに近いサイズは現在では160/60サイズとなります。この160/60サイズのタイヤを5.00と5.25のホイールで履き比べてみて、その違いと感触を試してみるということになりますね。
これはリアブレーキマスターのホルダーです。本来、純正部品はカーボンで製作されているものですが何故かアルミの削り出し部品になっています。削り出しには違いないのですが、どう見てもグラインダーで削り出したと思われる力作?です。これをこのまま使用するのはいくら何でも有り得ない感じです。とはいえ代替え部品はありませんから、何かしらの解決策を考えなければなりません。
いろいろ考えた結果、グラインダー削り出しのこの部品をフライスで仕上げて使用することにしました。かなり時間と手間がかかって苦労しましたが、これなら及第点という仕上がりになったのでこれを使用することにしました。
冷却水ホース、ブリーザーホースです。ここに写っているものは純正部品の新品です。しかし新品を用意できなかったホースもあります。それは既存品を使用するか、似たようなサイズのホースの代替品を探して使用するしかありません。
車体を本格的に組み立てています。いろいろな部品を仮組して状況を確認し、問題無ければ正式に取り付け、という手順です。部品を付けたり外したりの繰り返しで、二度手間、三度手間は当たり前、という状況です。
例えばインジェクター。やっとエンジン始動テスト迄こぎつけたところで診断機に繋いでインジェクターの動作テストをしたところ、インジェクターが動作しません。
チェックしたところ、長期間の放置によってインジェクターのバルブが固着したという結論に達し、インジェクターを新品に交換しました。せっかくバイクの形になっているのにまた分解して作業のやり直しです。上記は一つの例ですが、実際にこんな事の繰り返しです。しかしこういったレストア作業にこの手の展開はつきものです。
Posted by cpiblog00738 at
09:15
2023年09月16日
DUCATI SUPERMONO スーパーモノ・レストア記 その13
エンジンにオイルクーラーを始めとするその他の部品を取り付け、何とかエンジンは完成にこぎつけました。しかしここで一点気になることが見つかりました。エンジンとオイルクーラーを往復している純正のオイルホースです。経年劣化していて見れば見るほどヤバそうな雰囲気が漂ってきます。最初の方でご紹介した、フィッティングが割れたブレーキホースのイメージが重なります。
そこでホースは新たに作り直すことにしました。色が純正と同じ青と金ということで、今回はPro Goldというブランドのものを使用しました。改めて、これでエンジンの作業はめでたく終了ということになりました。
Posted by cpiblog00738 at
09:31
2023年09月10日
DUCATI SUPERMONO スーパーモノ・レストア記 その12
エンジン左側の発電機周りを組み立てます。このエンジンは独特で、フライホイールと発電機が乾式になっています。乾式クラッチと同じような構造で、エンジン左側カバーの外側にフライホイールと発電機が存在して、その外側をまたカバーが覆っています。
発電機のコイルとローターのセットです。純正の新品部品です。チェックするとローターに「KOKUSAN JAPAN」の刻印があります。日本製なのですね。フライホイールを固定するナットやワッシャーも当然ながら専用部品です。
シリンダーヘッド、ピストン、シリンダー等を仮組して、バルブタイミングの計測と調整を行っています。バルブタイミングを指定値に調整してからバルブとピストンのクリアランスをチェックするので、今のところはあくまで仮組です。
バルブタイミングが決まった状態になったところで、一旦シリンダーヘッドを取り外し、バルブリセスに粘土を置いて再び組み立て、クランキングさせます。そうすると画像のようにバルブリセスの中にバルブが入った痕跡が残ります。粘土の厚さがバルブとピストン間のクリアランスということになります。ミニマムクリアランスはINTAKEが2.5mm、EXHAUSTが2.6mmと指定されています。今回は特に問題無い範囲に収まっていました。全てが純正部品で、バルブタイミングも指定値の通りになっていますから、当たり前と言えば当たり前です。しかしパフォーマンスアップを狙って社外ピストンや社外のカムシャフト等を使用した場合は特に注意が必要ですね。
今迄エンジンは仮組でスキッシュクリアランスの調整やバルブタイミングの調整を行っていたので、ヘッドガスケットは今迄使用していた中古品を使用していました。しかし最終的には当然ですが新品のヘッドガスケットを使用します。
クラッチ関係の部品です。クラッチディスクは摩材が焼結タイプの現行モデルの純正部品で、使用する枚数を減らし、全体の厚さを調整して使用します。クラッチドラムは専用品ですが、既存のものを再使用します。
クラッチスプリングは新品で996RS等と共通部品。クラッチプレッシャープレート等は888/926Racingと共通部品で、これも新品を使用します。
クラッチスプリングは新品で996RS等と共通部品。クラッチプレッシャープレート等は888/926Racingと共通部品で、これも新品を使用します。
こちらはオイルクーラーからシリンダーヘッド、クランクケースへと続くオイルラインです。これも新品です。シリンダーヘッドにオイルをデリバリーするのと、その先はクランクケースに繋がっていて、そこではダミーコンロッドのエンジン側のピボットにオイルを供給するようになっています。
Posted by cpiblog00738 at
20:00
2023年09月03日
DUCATI SUPERMONO スーパーモノ・レストア記 その11
このエンジンは様々な専用部品で構成されているのですが、セルモーターの取り付け部が残されているということはやはり公道仕様の開発も少なからず視野に入っていたと考えられます。純粋にレース用バイクとして開発されたのであれば、セルモーターは不要ということでクランクケースにセルモーターの取り付け部分は存在しなかったと思います。
これは1次減速のクランクシャフトに取り付けられている方のギアです。ギアの厚さが996の3分の2くらいですね。スーパーモノ専用部品です。
こちらはエンジン左側です。発電機とフライホイールが乾式になっているので、この状態でエンジン左側カバーを取り付け、その外側に発電機のローターやコイル等を取り付けます。シフトコントロールアーム周りですが、シフトペダルが付くシャフトと軽量穴あきのアームの部分は専用設計、その先のシフトドラムをひっかけて回すアームの部分は市販車と共通部品です。
ピストンとシリンダーを仮組しています。これからスキッシュクリアランスの測定と調整を行います。スキッシュクリアランスの調整は厚さの異なるシリンダーベースガスケットを使用し、その中から丁度良い暑さのものを選択するという方法で行います。
Posted by cpiblog00738 at
08:13