2023年10月17日

DUCATI SUPERMONO スーパーモノ・レストア記 その17

DSC00678 さて、2023年の2月、今までの懸念だった空燃比の改善を試みました。シャーシダイナモに載せてスロットル開度ごとの空燃比を測定し、フューエルマップを書き換えて対応します。シャーシダイナモ上で走らせ、空燃比を測定し、それによって得られた空燃比データを頼りにマップを書き換え、もう一度走らせて結果を確認する。この作業を何度か繰り返します。測定1回、書き替え1回で決まるほど作業は甘くはありません。同じ作業を何度か繰り返す必要があります。


DSC00689 空燃比を計測するためにはエキパイに空燃比センサー取り付けますが、そのためにはエキパイに取り付け用のボスが必要です。しかしオリジナルのエキパイにそのようなボスは存在しません。その場合、通常はボスをエキパイに溶接して取り付けることになりますが、何せ相手はスーパーモノです。オリジナル状態をモディファイしてボスを取り付けることはしたくありません。

 その対応としてボスを取り付けたアダプターを製作し、それをクランクケース下のエキパイの接合部に割り込ませました。そうするとサイレンサー位置が本来の位置からずれておかしな取り付けになりますが、実際にサーキットで走行するのではなくシャーシダイナモ上で走らせるだけなのでそれで問題はありません。
 
 また、TFDのシャーシダイナモはバイクを載せるスロープが無いので、バイクを電動ホイストで吊り上げてシャーシダイナモ上に載せています。その結果シャーシダイナモ上でエンジンを始動することになりますが、スーパーモノにはセルモーターが装備されていません。シャーシダイナモ上でリアホイールスターターを使用してのエンジン始動となりますから、その点でもいろいろと面倒なことが多いのです。


DSC00679 まずは1回走らせて測定してみました。今迄はこの状態で走行していたということです。測定したスロットル開度は11.4度から82度までの11段階です。ちなみにここではスロットル開度82度が全開です。%表示ではなく角度表示なのでここで100の数字は出て来ません。
 
 グラフを見ると、空燃比はまるで合っていませんね。今迄コーナー立ち上がりで不具合を感じたのはエンジン回転数が5,000rpm前後ですが、グラフにしてみるとどのスロットル開度でもそのあたりの空燃比は濃すぎます。逆に7,000rpm前後の範囲では極端に空燃比が薄いスロットル開度もあります。


DSC00680 何度かフューエルマップを書き換えた結果のグラフです。本音を言えばもう少し詰めたかったところはありますが、経験上これ以上セッティングを詰めてもその結果を実走行で体感できない場合が多いです。それに加えて将来的にもエンジンに負担をかけたくないという思惑もあり、ちょっと濃い目の空燃比でOKとしました。



DSC00769 パワーチェックのグラフです。計測された最高出力は8,760rpmの時に64.3馬力でした。エンジンはまだアタリが付いた状態とは言えないので、暫く走行して慣らしが進めば5%程度の出力アップが期待できると思います。
グラフをチェックするとかなりフラットな印象です。参考のために発生しているトルクを計算してみました。計算してみた結果、6,500rpm〜8,500rpmの広い範囲でトルクは5.4kgm前後をキープしています。トルク特性はかなりフラットと言えます。

 何はともあれ空燃比セッティングが終了したのでエンジンのパフォーマンスはかなり改善されたと予想されます。次の目標としてはこの状態で筑波サーキットでのレースに出場したいと考えております。勿論いたずらに走行距離を延ばすのは避けたいと思っておりますが、もう1〜2回くらいはレースで走らせてください、という感じです。

今回のレポートはひとまずこれで終了です。何かご不明な点やご興味がある点があればメール等にてお問い合わせください。解る範囲で、ですが真摯に対応させていただきます。

 前にも書きましたが、あと数回レースで走らせた後にこのバイクは売却を考えております。価格は応談となりますが、今のご時世ですから勿論安くはありません。それでもご興味がある方いらっしゃいましたら、ご連絡をお待ちしております。

チーム・ファンデーション代表 名越公一     2023年10月 記
  

Posted by cpiblog00738 at 07:55

2023年10月08日

DUCATI SUPERMONO スーパーモノ・レストア記 その16

 とりあえずバイクが完成したのが2020年の5月23日のことでした。そして同じく5月30日、エンジンに火が入ります。



 特に問題無くエンジン始動確認が終了し、安堵しました。

 次はサーキットでの実走行ですが、それはちょっと間が開いて2020年9月19日のことでした。場所は富士スピードウェイです。
 
 スーパーモノのオリジナルカウルにはオイル受けの部分が存在しません。当時はそういったものの装着が義務付けられていなかったからです。その状態で走行可能なのはFISCOのみ、ということで富士スピードウェイに行ってきました。その時の様子は以下です。




 この時はまずこのバイクがバイクとして正しく機能するかどうかの確認でした。何かしらのトラブルが起きるのではないかという一抹の不安はありましたが、いざ走行を開始してみると特に問題無く走行出来ました。シケイン等の低速コーナーからの立ち上がりでは明らかに燃調が合っていない症状が認められましたが、FISCOの長いストレートではノーマルのファイナル(15x36)にもかかわらず6速ギアでエンジンは10,000rpm以上回りました。

 とにかく大きな問題はなく、概ねOKという結論が出て安心しました。今回の目的はあくまでも完成検査。この時の走行距離は約23kmでした。 


IMG_3635IMG_3636 さて、純正のオリジナルカウルを装着している限り、レース出場や筑波サーキットでの走行は不可能です。ということでオイル受けを装着したレース用のカウルを製作しました。

 まずは素材の入手から始めなくてはなりません。純正と同形状のFRP製のカウルを販売しているショップがアメリカにあり、そこからアッパーカウルと左右のサイドカウルを取り寄せました。この時代のバイクのカウルは搬送の利便性を考えていませんから、いざ段ボール箱でカウルを梱包すると超巨大です。なんじゃこりゃ、というくらい大きな段ボールがアメリカから届きました。商品代金と送料がほぼ同額というちょっと理不尽な感じでした。 

 それを知り合いの業者さんに持ち込んで加工をお願いしました。左右サイドカウルの底部を繋いでしまい、その代わりサイドカウルを上下分割式に改造してもらいました。繋いだ底部に仕切り板を取り付けてオイル受けになるようにしました。フィッティングを終えてから改めてペイントを施していただき、完成した姿がこの画像です。これでレース出場が可能です。バイクがこの状態まで出来上がったのが2020年の年末のことでした。

 開けて2021年になりましたがなかなか走行する機会に恵まれず、やっとその機会が訪れたのは11月23日のことでした。場所は筑波サーキットです。20分の走行枠でしたが、周回数は15周。慣熟走行から少しずつペースを上げ、タイム的には6秒台に入ったくらいでした。
 
 しかし実はこの走行でトラブルが発生してしまいました。それは何かというと、ブレーキをかけてフォークが沈み込むとフロントタイヤがカウルに激しく干渉するのです。ラジエーターの下あたりで左右のカウルが連結しているのですが、その部分にタイヤが干渉します。走行中に強くブレーキをかける場面でフロントからガツガツという突き上げ感があったのですが、原因はそれでした。その対策ですが、このカウルはレース用に製作したもので純正のオリジナルではありませんから、干渉する部分を惜しげもなく切り飛ばして対応しました。

 また前回走行したFISCOで感じたタイトコーナー立ち上がりにおける燃調の不具合は、ここ筑波でも明らかに感じられました。ちゃんと走らそうと思うのであれば、シャシダイに載せて燃調のセッティングが必要だと改めて確信しました。

 さて、次の走行は2022年6月19日。場所は富士スピードウェイ。MAXのレースです。天候にも恵まれレース日和ではありましたが、場所がFISCOですからスーパーモノで大排気量車と一緒のレースはちょっと厳しいです。とはいっても、今回の目的はスーパーモノがFISCOの長いストレートを全開で走行する姿を皆さんにお披露目したいということなので、レースの結果には全く拘っていませんでした。


20220619_141510 グリッドは後ろの方ですが、ストレートが遅いのでスタート直後に後ろから突っ込まれる可能性を考えるとかえって良かったかもしれません。予選タイムは2分7秒台。決勝でも6秒台でした。2分は切れるだろうと思っていたのですが、全くお話になりませんでしたね。以前748Rで1分55秒、空冷DS1100エンジンを748の車体に載せたバイクで1分54秒、くらいのタイムは出ていたので2分は切れるだろうとタカをくくっていたのですが…。FISCOの場合は少なくともエンジン出力が90馬力くらい出ていないと2分は切れないのでしょうか。そのあたりにしきい値があるのかもしれません。


image01a でもストレートで抜かれてコーナー進入で抜き返すというレースはここ暫くありませんでしたから、それはそれで楽しめました。まあ、何はともあれ転倒しなくて何よりでした。





 
 ストレートではスーパーモノの全開走行の排気音をグランドスタンドに響かせて、それを皆さんに聞いてもらうことが出来て良かったです。

 やはり今回のレースでもタイトコーナー立ち上がりにおける燃調の不具合をかなり感じました。ということで早急にその問題を解決して、次回の筑波サーキットでのレースにバイクを持ち込みたいと考えました。
  
Posted by cpiblog00738 at 11:10