2024年10月04日
888コルサエンジン再生-6
左の写真はメンテナンスのためにセルモーターを分解したところです。セルモーターはTFDに在庫がかなりあるので、その中から時代的に合致するもので程度が良さそうなものを選択しました。
右の写真はメンテナンスが終了し、組み立てる直前の写真です。コミュテーターは研磨してリフレッシュしました。オイルシール、ブラシセット、オーリング類は新品に交換です。
エンジン左側の部品は一通りメンテナンスが終了したので組み立てました。タイミングギアが軽量穴も無くコルサっぽくないですが、コルサの純正部品なのでそのまま再使用しています。シフトアームとシフトリターンスプリング2個は新品に交換済みですが、これらに関しては調整に苦労します。特にシフトアームは当時の部品と若干形状が変わっていて、そのまま組むとシフトダウンが上手く作動しない例も見受けられます。それについての調整は現物合わせとなり、苦労します。
オイルポンプです。左がS4、右が888コルサの部品です。取り付けや外観はほぼ同一と言って良いですが、細かい相違もあります。ギアの形状が異なるのは一見して判りますが、矢印で示した穴の大きさが違います。この部分はオイルの吸い込み口で、オイル吸い込みの効率を上げて油量を確保しようという意思が現れています。ちなみに内部の通路も広がっています。
こちらは反対側からの眺めですが、こちら側から見た双方の形状は大きく異なります。左のS4の方は凸部分に新たな機構が追加されています。これは油圧のレギュレーターで、油圧が高い場合にリリーフバルブが開いて油圧を適正値にコントロールするようになっています。888コルサ等の当時のエンジンにもこういった機構は存在していましたが、それはクランクケース左右の合わせ面に存在していました。ポンプ本体にこの機構が備わっていた方がメリットが多いのだと思います。
そして今回使用しているクランクケースはS4の部品なので、クランクケースの合わせ面にリリーフバルブは存在しません。ということで今回使用するポンプは必然的にS4の部品ということになります。ギアの取り付けには互換性がありますから、ギアをスワップして対応します。
クラッチ側のカバーはコルサ純正のマグネシウム製カバーをそのまま使用します。しかしオイルポンプの形状が変わってカバーと干渉する部分が出現するので、その点は対策が必要です。矢印の部分がそれです。リューターでちょっと削って対応します。
Posted by cpiblog00738 at
16:51
2024年10月03日
888コルサエンジン再生-5
こちらはシフトドラムです。下から、今迄使用していた888レーシングのオリジナル、ST4に使用されていたST4のオリジナル、999系のオリジナル、です。シフトドラムが回転した時の位置決めストッパーの機構が、888の場合は右端、ST4と999は左端、になります。また、よく観察するとシフトフォークを動かす溝の形状も異なるのが判ります。888とST4は同一形状ですが、999だけ溝の形状がスムーズというか直線的でガクガクしていません。時代が進むにつれて進化しているということです。今回はシフトフィーリングを優先して999系のシフトドラムを採用することにします。
ミッションのカウンターシャフト(スプロケットが付くシャフト)です。写真は888コルサのオリジナルのレーシングミッションです。レースで使用した場合によくみられるシャフトの曲がりは皆無です。ドッグの傷みも非常に少ないです。意外にもかなり状態が良かったのでこのまま使用します。もちろんサークリップや痛んだワッシャー等の消耗品は新品に交換します。
ミッションのメインシャフト(クラッチが付くシャフト)です。こちらも問題ありません。状態は良好です。このシャフトにはクラッチのプッシュロッドが通るので、そのためのニードルベアリングとオイルシールが存在します。サークリップ等と合わせてそれらも新品に交換します。
次にエンジンのセルフスターター機能を取り付ける作業に取り掛かります。前述したようにコルサにその機構は存在しません。この当時は押し掛けがデフォルトです。普通に対応しようと考えると、P7、P8タイプのECUが使われているストリートバイクのフライホイール周りを移植するのが手っ取り早いです。例えば851/888系、916SP/SPS系、等のバイクの部品です。
そして右がストリートバイクのそれです。ストリートバイクの部品の方は鋳肌もむき出しで残っているし、自分の評価としてはレース用部品としてイマイチです。
そこでコルサ純正フライホイールを加工してストリートバイクの純正フランジ等の部品と組み合わせ、格好良いフライホイールAssyを製作することにしました。旋盤でコルサ純正フライホイールを加工しています。そこそこ硬い材質なのでチップを何度か交換しながら、飛散する非常に熱い切粉と格闘しながらの作業です。
右はそれらを組み立てたところです。ちゃんとしたレーシングパーツになりました。
Posted by cpiblog00738 at
10:41
2024年10月02日
888コルサエンジン再生-4
今迄使用されていた純正オリジナルのクランクケースです。クランクシャフト支持のベアリングは通常のボールベアリングではなくローラーベアリングが採用されています。この頃の数年間、コルサとスーパーバイクにこのタイプのベアリングが採用されていました。ボールベアリングだと点接触ですがローラーなら線接触なので、大きな荷重を受け止めるのにはローラーベアリングの方が適しているのではないかという考えのもとにそうなったのだと考えられます。ストリートバイクだと888SPS、SP5も同じローラーベアリングが採用されました。しかし翌年の1994年型926レーシングからもとのボールベアリングに戻ってしまいました。おそらくメリットがあまりなかったのだと思います。ローラーベアリングの場合はクランクシャフトにイニシャルプリロードがかけられませんしね。
そして今回はこのクランクケースを使用して組み立てることになりました。これはST4のクランクケースです。クランクケースにスイングアームが取り付けてあるタイプでシリンダースタッドボルトのピッチが共通の部品を探すとこのタイプになります。年式的に新しいため、当時の部品と比較して材質と鋳造方法がアップグレードされていて強度的に優位性があるのが一番大きな理由です。このクランクケースを使用する場合はそれなりに対応が必要な項目が幾つもありますが、そのほぼ全ての対応した結果はアップグレードになるので、今回の使用目的がレースということを鑑みてこのクランクケースの採用となりました。
まず最初に、ST4にはオイルクーラーが無いのでオイルフィルター取り付け部を覗くとこんな眺めになっています。このままオイルフィルターを取り付けただけで使用すると、オイルポンプから圧送されたオイルはバイパス通路を通ってしまってオイルクーラーにオイルが回らないということになります。中央のオイルフィルター取り付けニップルの横にある丸い穴がバイパスです。
そのためにここにはバルブを取り付ける必要があります。スプリングの板状のバルブでバイパスをふさぐことになります。何かのトラブルでオイルクーラーへのホースが詰まったりしてオイルの行き場がなくなると、油圧でこのバルブが押し開けられてオイルがオイルクーラーをバイパスするようになっています。
話は変わりますが、新車時にオイルクーラーが無いタイプのこの手のバイクにオイルクーラーを後付けした場合、この作業を行わないとオイルは殆どオイルクーラーを通過しないことになるので、せっかくオイルクーラーを後付けしても油温は下がらない、という事態が発生します。
Posted by cpiblog00738 at
20:47