2024年10月26日

851SP3

IMG_4010 先日この欄でご紹介した851SP3を商品情報欄にアップしました。改めて写真を見ると、上手く表現できませんが今時のバイクにはない高級感というか独特な雰囲気を感じます。お問い合わせをお待ちしています。  

Posted by cpiblog00738 at 09:22

2024年10月15日

888コルサエンジン再生-9

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 エンジン左側のカバーを組み立てます。写真は発電機のコイルです。クランクシャフトに取り付けてある発電機のローターはコルサ専用の幅が狭い軽量タイプなので、本来であればカバー側にもそれ専用の幅の狭い専用のコイルが使用するべきなのですが、今回はあえて幅の広いストリート用のコイルを組み合わせることにします。コルサ純正の発電機の出力は180Wということになっていて、現在においては若干出力が不足している印象が否めません。メーター、ラップタイマー、シフター、等の装備を後付けするのが一般的になっています。最近使われることが多いリチウムバッテリーも鉛バッテリーと比較して高めの充電電圧を要求してきます。180Wの発電量だと発電不足で、例えばコースインゲートでアイドリングさせながらコースインを待っていたらバッテリーが上がってエンジンが止まってしまった、というような実例も幾つか見ています。かといってローターまでストリート用にしてしまうのは気分的に躊躇してしまうので、今回はコイルのみ大型にしてみました。少しは発電量が多くなると期待しています。使用する916系アルミ製のカバーもストリートバイクの部品なのでそのままコイルが取り付け出来るのも都合が良いです。コイルからのケーブルは新たに引き直しました。

DSC02011 組み立てが終了したエンジン左側カバーです。ウォーターポンプのローターとカバーは916系のものを使用しています。それ以前のモデルの部品からローターの翅の形状が改善されて特にエンジン回転が低めの時の冷却水圧送効率が上がっているということです。翅の形状が変わったのでウォーターポンプカバー内部の形状もそれに合わせて変更が施されています。


DSC02016DSC02015 クラッチAssyは何を使用するかまだ未定ですが、ひとまずこれでエンジンが完成です。
 それとお伝えし忘れていましたが、エンジンマウントボルトの太さが888はφ10mm、S4は12mmです。ということでこのエンジンのクランクケースに開いている穴の大きさはφ12mmです。性能の事だけ考えるとフレーム側の穴をφ12mmに広げてφ12mmのエンジンマウントボルトを使用するのが良いと私は認識しています。経験的に車体剛性がかなり上がる効果があるようで、888系レースバイクの持病であるストレートでの振られ等も明らかに改善されます。しかしまず今回はオリジナルのコルサフレームに改造はしない方向性で進めたいので、クランクケースの穴にカラーを挿入することでオリジナルのφ10mmのマウントボルトを使用することにします。

 以上で今回のレポートは終了です。次はまた別の話題性のある?バイクについてのレポートを掲載する予定です。


  
Posted by cpiblog00738 at 10:09

2024年10月11日

888コルサエンジン再生-8

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 こちらはクランクケースのシリンダー取り付け面に存在するオイル通路です。実際には使用されていないのですが、何故か2001年前後のエンジンには車種によってはこのオイル通路が存在している場合があります。実際にこのオイルラインは生きていて油圧がかかる場所となっており、そしてここに取り付けられるシリンダー側にはオイル通路が存在せず、オイル通路はここで行き止まりとなっています。しかしシリンダーベースガスケットに塗布された液体ガスケットのみでシールしてあるためにオイル漏れのトラブルが頻発します。そのトラブルの原因をつぶしておくためにこの穴にネジを切ってボルトで封印しました。


DSC01999 シリンダーヘッドガスケットです。シリンダー径がφ94mm用ですが、右が当時モノ(当然ですが現在は廃番)、左が現行品です。ご覧になるとわかりますが、厚さが異なります。旧タイプの厚さは約1.2mm、現行品は約0.45mmです。オリジナルを優先するのであれば旧タイプを使用するべきなのでしょうが、今回は実際にレースで走らせようというエンジンですから信頼性が高いメタルガスケットの現行品を使用します。


DSC02000 現行品を使用するとヘッドガスケットの厚さが約0.75mm程度薄くなり、その結果スキッシュクリアランスに問題が発生します。それに対応する調整はシリンダーベースガスケットの厚さを変更して対応します。写真のようにシリンダーベースガスケットには数種類の厚さが異なるものが存在します。コルサの純正部品にはこの他にも0.25mm、0.35mm、というものが存在しましたが、現在は廃番になっています。目指すスキッシュクリアランスを得るためには複数枚を重ねて使用することもあります。この手のベースガスケットはガスケットというよりはスキッシュ調整用のシムとして認識した方が正しいかもしれません。


DSC02001 今回は厚さ1.0mm(正確には0.99mm)のベースガスケットを組んでスキッシュクリアランスが約1.03mmとなりました。これに関しては実際に組んでスキッシュクリアランスを実測しながらの調整が必要で、結構手間がかかります。今回は前後とも同じベースガスケットとなりましたが、前後で異なる厚さのガスケットが必要になることの方が実は多いです。


DSC02002DSC02004 スキッシュの調整が終了したのでシリンダーとヘッドを取り付け、エンジンは完成が見えてきました。






DSC02005 タイミングベルト周りの部品を取り付けて、バルブタイミングの計測と調整を行っています。この手のバイクの場合、バルブタイミングはカムシャフトとタイミングプーリーの位置決めを行う特殊な形状のキーを使用します。スタンダードのストレートなキーを使用することもありますが、段差が設けられていてプーリーの取り付け位置を故意に変化させるオフセットキーというものを使用する場合が多いです。
  
Posted by cpiblog00738 at 12:16

2024年10月10日

888コルサエンジン再生-7

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 シリンダーヘッドの作業を開始します。分解したシリンダーヘッド構成部品です。緑色の陽極酸化処理が施された部分がある部品はマグネシウム製です。ロッカーアームのスリッパー面のメッキ剥離はありませんでした。ただしロッカーアームに関しては外観の色がまちまちで、メッキの剥離のために後から交換されたであろうものも幾つか混在しています。


DSC01983DSC02007a バルブです。綺麗に磨いた後にリフェース済みです。この当時のコルサのバルブには「C.MENON」の刻印が入っています。憧れの部品でしたね。材質はニモニックと呼ばれる耐熱鋼で、耐熱温度は900〜1,100度と言われています。そういえば昔エンジンダイナモでコルサエンジンを回していた時に、排気温度をモニターしていたら軽く900度は超えていましたからバルブの焼損を避けようと考えるとこういった材質のものが求められたのだと思います。ちなみにバルブの傘径はINがφ36mm、EXがφ31mmです。


DSC01985 バルブシートのリフェース中です。この写真は一番外側の段差になった部分をなだらかになるように切削しているところです。このエンジンのバルブシートはポートの断面積を広く確保する目的のためだと思いますが、特に当たり面の内側に余裕がなくギリギリです。そのためにガイド交換をしてバルブの角度が少しでも変化すると当たり面の確保が難しかったです。


DSC01986 バルブガイドの交換、バルブシートのリフェース、バルブとシートの擦り合わせ&当たりの確認が終了したシリンダーヘッドです。すいません、写真がピンボケでした。




DSC01991 シリンダーヘッドの内部部品を組み立て、ヘッドが完成しました。ヘッド組み立て中の写真も紹介したかったのですが、すいません、撮り忘れました。






DSC01997 ピストンリングです。合口のピン角を黒染め?の色が落ちるくらいに軽く耐水ペーパーで磨きました。左側がオリジナルのまま、右が磨きを行った合口です。ごく稀にですが、このピン角が何かのきっかけでリング溝に食い込んでトラブルが発生した経験があるからです。




IMG_5024 これは前述したトラブルの写真です。このエンジンではなく別のエンジンに使用していたピストンです。オイルリングの溝に問題が発生しているのが判ると思います。リング合口のピン角がリング溝に食い込んで行って、その結果リングの合口が重なるという結果になりました。そうするとリングの張力は保てませんから盛大なオイル上がりが発生します。


  
Posted by cpiblog00738 at 18:27

2024年10月04日

888コルサエンジン再生-6

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 左の写真はメンテナンスのためにセルモーターを分解したところです。セルモーターはTFDに在庫がかなりあるので、その中から時代的に合致するもので程度が良さそうなものを選択しました。
 右の写真はメンテナンスが終了し、組み立てる直前の写真です。コミュテーターは研磨してリフレッシュしました。オイルシール、ブラシセット、オーリング類は新品に交換です。

DSC01964 エンジン左側の部品は一通りメンテナンスが終了したので組み立てました。タイミングギアが軽量穴も無くコルサっぽくないですが、コルサの純正部品なのでそのまま再使用しています。シフトアームとシフトリターンスプリング2個は新品に交換済みですが、これらに関しては調整に苦労します。特にシフトアームは当時の部品と若干形状が変わっていて、そのまま組むとシフトダウンが上手く作動しない例も見受けられます。それについての調整は現物合わせとなり、苦労します。

DSC01969 オイルポンプです。左がS4、右が888コルサの部品です。取り付けや外観はほぼ同一と言って良いですが、細かい相違もあります。ギアの形状が異なるのは一見して判りますが、矢印で示した穴の大きさが違います。この部分はオイルの吸い込み口で、オイル吸い込みの効率を上げて油量を確保しようという意思が現れています。ちなみに内部の通路も広がっています。


DSC01970 こちらは反対側からの眺めですが、こちら側から見た双方の形状は大きく異なります。左のS4の方は凸部分に新たな機構が追加されています。これは油圧のレギュレーターで、油圧が高い場合にリリーフバルブが開いて油圧を適正値にコントロールするようになっています。888コルサ等の当時のエンジンにもこういった機構は存在していましたが、それはクランクケース左右の合わせ面に存在していました。ポンプ本体にこの機構が備わっていた方がメリットが多いのだと思います。

DSC01971 そして今回使用しているクランクケースはS4の部品なので、クランクケースの合わせ面にリリーフバルブは存在しません。ということで今回使用するポンプは必然的にS4の部品ということになります。ギアの取り付けには互換性がありますから、ギアをスワップして対応します。



DSC01972 部品が揃ったのでエンジン右側を組み立てています。オイルポンプ本体はS4の部品になりましたが、オイルポンプギアとクランク1次ギアのセットはコルサ純正部品です。




DSC01974 クラッチ側のカバーはコルサ純正のマグネシウム製カバーをそのまま使用します。しかしオイルポンプの形状が変わってカバーと干渉する部分が出現するので、その点は対策が必要です。矢印の部分がそれです。リューターでちょっと削って対応します。
  
Posted by cpiblog00738 at 16:51

2024年10月03日

888コルサエンジン再生-5

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 こちらはシフトドラムです。下から、今迄使用していた888レーシングのオリジナル、ST4に使用されていたST4のオリジナル、999系のオリジナル、です。シフトドラムが回転した時の位置決めストッパーの機構が、888の場合は右端、ST4と999は左端、になります。また、よく観察するとシフトフォークを動かす溝の形状も異なるのが判ります。888とST4は同一形状ですが、999だけ溝の形状がスムーズというか直線的でガクガクしていません。時代が進むにつれて進化しているということです。今回はシフトフィーリングを優先して999系のシフトドラムを採用することにします。

DSC01942 ミッションのカウンターシャフト(スプロケットが付くシャフト)です。写真は888コルサのオリジナルのレーシングミッションです。レースで使用した場合によくみられるシャフトの曲がりは皆無です。ドッグの傷みも非常に少ないです。意外にもかなり状態が良かったのでこのまま使用します。もちろんサークリップや痛んだワッシャー等の消耗品は新品に交換します。


DSC01943 ミッションのメインシャフト(クラッチが付くシャフト)です。こちらも問題ありません。状態は良好です。このシャフトにはクラッチのプッシュロッドが通るので、そのためのニードルベアリングとオイルシールが存在します。サークリップ等と合わせてそれらも新品に交換します。



DSC01945DSC01946クランクシャフトとミッション関係のシム調整を行い、それが完了したら左右のクランクケースを合わせて組み立てます。幸いなことにここまでは想定外の事態も無く、順調です。



 次にエンジンのセルフスターター機能を取り付ける作業に取り掛かります。前述したようにコルサにその機構は存在しません。この当時は押し掛けがデフォルトです。普通に対応しようと考えると、P7、P8タイプのECUが使われているストリートバイクのフライホイール周りを移植するのが手っ取り早いです。例えば851/888系、916SP/SPS系、等のバイクの部品です。

DSC01992DSC01962 左コルサオリジナルのフライホイールです。非常にシンプルで格好良いです。
 そして右がストリートバイクのそれです。ストリートバイクの部品の方は鋳肌もむき出しで残っているし、自分の評価としてはレース用部品としてイマイチです。


DSC01957 そこでコルサ純正フライホイールを加工してストリートバイクの純正フランジ等の部品と組み合わせ、格好良いフライホイールAssyを製作することにしました。旋盤でコルサ純正フライホイールを加工しています。そこそこ硬い材質なのでチップを何度か交換しながら、飛散する非常に熱い切粉と格闘しながらの作業です。


DSC01947DSC01963 左は加工が終了したコルサ純正フライホイールと、それに組み合わせるストリートバイク純正のフランジ、リングギア、ワンウェイベアリング、です。
 右はそれらを組み立てたところです。ちゃんとしたレーシングパーツになりました。

  
Posted by cpiblog00738 at 10:41

2024年10月02日

888コルサエンジン再生-4

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 今迄使用されていた純正オリジナルのクランクケースです。クランクシャフト支持のベアリングは通常のボールベアリングではなくローラーベアリングが採用されています。この頃の数年間、コルサとスーパーバイクにこのタイプのベアリングが採用されていました。ボールベアリングだと点接触ですがローラーなら線接触なので、大きな荷重を受け止めるのにはローラーベアリングの方が適しているのではないかという考えのもとにそうなったのだと考えられます。ストリートバイクだと888SPS、SP5も同じローラーベアリングが採用されました。しかし翌年の1994年型926レーシングからもとのボールベアリングに戻ってしまいました。おそらくメリットがあまりなかったのだと思います。ローラーベアリングの場合はクランクシャフトにイニシャルプリロードがかけられませんしね。

DSC01912 そして今回はこのクランクケースを使用して組み立てることになりました。これはST4のクランクケースです。クランクケースにスイングアームが取り付けてあるタイプでシリンダースタッドボルトのピッチが共通の部品を探すとこのタイプになります。年式的に新しいため、当時の部品と比較して材質と鋳造方法がアップグレードされていて強度的に優位性があるのが一番大きな理由です。このクランクケースを使用する場合はそれなりに対応が必要な項目が幾つもありますが、そのほぼ全ての対応した結果はアップグレードになるので、今回の使用目的がレースということを鑑みてこのクランクケースの採用となりました。

DSC01923 まず最初に、ST4にはオイルクーラーが無いのでオイルフィルター取り付け部を覗くとこんな眺めになっています。このままオイルフィルターを取り付けただけで使用すると、オイルポンプから圧送されたオイルはバイパス通路を通ってしまってオイルクーラーにオイルが回らないということになります。中央のオイルフィルター取り付けニップルの横にある丸い穴がバイパスです。


DSC01944 そのためにここにはバルブを取り付ける必要があります。スプリングの板状のバルブでバイパスをふさぐことになります。何かのトラブルでオイルクーラーへのホースが詰まったりしてオイルの行き場がなくなると、油圧でこのバルブが押し開けられてオイルがオイルクーラーをバイパスするようになっています。
 話は変わりますが、新車時にオイルクーラーが無いタイプのこの手のバイクにオイルクーラーを後付けした場合、この作業を行わないとオイルは殆どオイルクーラーを通過しないことになるので、せっかくオイルクーラーを後付けしても油温は下がらない、という事態が発生します。

  
Posted by cpiblog00738 at 20:47