2025年01月23日

998Rレストア-8

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 エンジン始動確認と調整を一通り終え、車体を組み立てています。各部品を綺麗に掃除しながら作業を進めていきます。しかしこのような部品(フューエルタンクとエアボックス間のガスケット)は経年劣化で要交換ですね。同様にブローバイのキャッチタンクからエアボックスに繋がるホースも交換しました。



DSC02309 こちらはフューエルタンク内部の燃料ポンプ関係の部品です。燃料ポンプ本体、燃料フィルター、燃料ホースの3点は新品に交換しました。レベルゲージのナットもお約束の通り割れていたので、TFDオリジナルのアルミ製ナットに交換しました。




 プラグコードですが、入庫時にはオリジナルではない(当時流行っていた?)社外の部品が取り付けられていました。オリジナルに戻したかったのですが、998系の純正プラグコードは既に廃番になっており、入手困難な状況になっています。
 当時の社外品は、これを付ければ性能アップ、みたいな謳い文句のものが多かった印象でしたが、自分の意見としてはプラグコードはノーマルで十分だと思います。当時のレーシングマシンのRSにもノーマルに準じたものが使われていましたし、そもそもエンジンの調子が悪かったとすればそれはプラグコード以外の問題であることが殆どで、それを、プラグコードをこれに交換すれば調子良くなりますよ、という話の持って行き方はおかしくないですか?

 DSC02322しかし無いものは無いので代わりのものを取り付けるしか方法がありません。そこで今回はこれを使用しました。永井電子の製品で、大昔からたまにお世話になることがあったシリコンプラグコードです。今となってはプラグコードを必要とするのは4輪2輪共に主に旧車ということになりますが、需要は少なからずあると思うので頑張って造り続けて欲しいと思います。998R用という既存の製品が存在しましたが、注文時にそれを基に長さを変更して製作していただきました。こういった小回りが利くのも良いと思います。

DSC02325 取り付けるとこんな感じになります。自分の好みとしてはやはり色はクロが良いと思うのですが、選択肢はこの色しかありませんから仕方ありません。まあ、カウルを付けてしまえば見えませんし。





DSC02334 ということでその他にもいろいろとありましたが、バイクは完成し、無事に予備検査も取得しました。現在は登録中で書類が所轄関係機関を行ったり来たりしていると思われます。

  

Posted by cpiblog00738 at 18:53

2025年01月01日

998Rレストア-7

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シリンダヘッドの組み立て作業に取り掛かりました。まず気になるのがカムシャフト軸受けに残された痕跡で、カムシャフトとの当たりの強さが気になります。この痕跡はカムプーリー側の軸受けに散見されます。理由は明白で、タイミングベルトのテンションで2本のカムシャフトが内側に引っ張られてその結果軸受けに強く押し付けられるからです。ベルトの張り過ぎ?とも言えますが、メーカーの指定値で張り調整するとだいたいこんな感じになりますから、メーカーとしては想定内なのかもしれません。これが原因となって壊れてしまうことは無いと思われます。しかし軸受けの状態を目の当たりにしている自分としてはやはり気持ち悪いので、ベルトのテンションはかなり弱めに調整することが多いです。
 テスタストレッタエンジンの場合はカムが軸受けに直接載っていますが、デスモクアトロエンジンの場合はカムをボールベアリングで支持しています。この場合でもカムを支持しているベアリングが内側に押し付けられて、その結果ベアリングのハウジングの内側の当たりが強く、ヘッド側のアルミがツルツルピカピカになっている場合が多いです。そうなるとおそらくハウジングの真円度も崩れていると思われます。


DSC02227DSC02228 シリンダヘッド組み立て中です。この眺めは随分昔にフェラーリのエンジンの写真で見た記憶があります。何のエンジンだったかは記憶にありませんが、もしかするとプロトタイプで実際に車体に載って公道を走ることは無かったエンジンなのかもしれません。フェラーリの場合は片バンク6発ですから、これが6連装ということでかなり凄い眺めだった記憶があります。要するにテスタストレッタは元々フェラーリのテクノロジーだったということになるのでしょうか?


DSC02229 シリンダヘッドが完成しました。組み立てにかかる時間はデスモクアトロヘッドよりもこちらの方が短時間で済むことが多いです。それは構造上テスタストレッタヘッドの方がバルブクリアランスの調整がやりやすいからだと思います。




DSC02230 エンジンの腰上を組み立てます。シリンダスタッドボルトの溝にはオーリングが取り付けられてエンジンオイルがスタッドの穴に侵入しないような構造です。しかし稀な例ですが、クランクケース内の内圧でエンジンオイルがこのオーリングのシールを突破してスタッドボルト内に侵入し、結果としてヘッドナットの周りからオイルが漏れることがあります。
 使用されている純正のオーリングの規格はAS568-011で内径φ7.65mm、線径1.78mmです。似たような大きさのオーリングでP8という規格のものが存在していて(こちらの方が一般に良く知られていると思います)、こちらは内径7.8mm、線径1.9mmです。こちらの方がちょっと太い感じですよね。ちょっときついかな?くらいのフィーリングで普通に組めるので、自分の場合はこのオーリング(材質はFKM-70、所謂バイトン)を使って組み立てることが多いです。随分長い事使っていますが、効果は有るみたいでヘッドナット迄オイルが上がって来るトラブルは今のところ皆無です。勿論オーリングが収まる場所に異物が入り込まないように気を使って組みたてるのが大切なのは言うまでもありません。

DSC02232 腰上が組み上がったところでバルブタイミングの計測と調整を行っています。いつも言いますが、この作業は非常に重要です。






DSC02233DSC02234 ということで漸くエンジンが完成しました。外観も綺麗になってレストア前と比較すると見違えるほどです。ウォーターポンプのホースユニオンはアルミ製のものに交換済みです。オリジナルはスチール製で錆びるのが早く、何時も何とかしたいと思っていましたが、2000年代後半からアルミ製の純正部品が入手可能になり、それからはデフォルトでアルミ製部品に交換するようにしています。


DSC02235 早速エンジンを車体に載せています。冷却水のホースはサムコのシリコンホースです。デフォルトの色は青ですが、やはり黒の方が雰囲気が良いと思います。高価なホースではありますが、今や純正部品だと廃番で入手不可なものも混在しますし、有ったとしても価格は税込みで6万円を超えますから選択肢としてはサムコをはじめとする社外部品とならざるを得ません。
 写真ではエアボックス無しの状態でファンネルやインジェクターが装着されていますが、この状態でとりあえずエンジンの始動を試みます。この状態であれば調整ともし不具合が出現した場合への対処が容易であるからです。
 そして先程外部の燃料タンクを接続してエンジンの始動を試みましたが、やはり初期トラブルは出現しました。想定内のトラブルでしたが、前側気筒のインジェクターが燃料を噴きません。目視できる状態で作業しているので一目瞭然です。もしエアボックスとタンク等が装着された状態であれば不具合の原因の特定にかなり余計な時間を費やすことになったでしょう。トラブルの原因は長期間放置されたことにより燃料通路内部に残留していたガソリンがガム化してインジェクターノズルが固着したことによるものです。重症の場合はインジェクターを取り外して清掃することになりますが、今回は無理やり片肺のままエンジンを始動させるとエンジン始動とともに眠っていたインジェクターの方も目を覚ましました。クランキング時のインジェクターへの開弁信号の数はたかが知れいていますが、エンジンが始動すれば送られる信号の数が桁違いに多くなるのでびっくりして目覚めるんでしょうね。(笑)

 ところで申し遅れましたが、

皆様、あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いいたします。

 今日は午後イチからエンジン始動に向けていろいろと作業をしておりました。スロットルボディーの初期セッティング中にスロポジの不具合が発覚し、部品を交換したりと想定外の事態もありましたが結果的に無事にエンジンの始動と調整を終えることが出来ました。
 作業が遅れてお待たせしてしまっている仕事が多々あり、お客様にご迷惑をおかけして大変申し訳ありません。遅れを取り戻すのがとりあえず年初の目標となります。何卒宜しくお願い申し上げます。

さ〜て、酒、酒、と。
  
Posted by cpiblog00738 at 18:13