2015年12月20日

ある事件

003ちょっと前の事ですが、1198のお客様から連絡を頂きました。
いつものように自分でオイル交換をしようとしてオイルを抜いたら小さな部品が出てきました、とのことです。
何かの削りかすみたいです、と仰っていたので、その出てきた部品を送ってくださいとお願いしました。
そして送られてきたのがこれです。
私にはピストンリングのエキスパンダーが細切れになったものに見えました。
でもお客様にお話を聞くと、それまでレースで普通に走っていたし(サーキット走行専用車です) 、現在エンジンを始動しても特に異音等は聞こえないといいます。
オイルリングのエキスパンダーがオイルパンに落ちるということはかなり派手にピストンが割れていることを意味するので、その話を聞くと私もイマイチ自分の予想に自信が持てなくなりました。

丁度この事件が起こった直後のタイミングで、お客様は新たに入手したエンジンにエンジンを載せ替えたので、この不思議なエンジンは暫くTFDに置きっぱなしになっていました。
で先日、一体どうなっているのだろうという好奇心に抗うことが出来ず、頼まれてもいないのにエンジンを開けてみることにしました。
降ろしたエンジンは後バンクの排気ポートにかなりのオイル気があったので、トラブルは後バンクだと予想して後ろのヘッドとシリンダを外しました。

001ヘッドを外したところです。
一見したところ特に問題は無さそうです。






次の段階はシリンダを上に引き上げて外します。
しかしシリンダがなかなか上に抜けて来ません。
この段階でやはり何かしらのトラブルが発生していることを確信しました。
こういった状況の場合は、シリンダのスカートが割れて広がり、クランクケースに引っかかってしまっていることが多いのです。

002やはりその通りでした。
画像の通りシリンダはスカートが明らかに割れてしまっています。






003シリンダを引き抜く前にシリンダの下に紙ウエスを詰め込みました。
シリンダを引き抜いた瞬間にバラバラになった何かしらの部品がクランクケース内に落下する可能性があるからです。





004ピストンのスカートが見えるところまでシリンダを引き抜きました。
バラバラになった部品は既にケース内に落下した後のようです。






005う〜ん、結構派手に逝ってしまっていますね。
お客様から送られた部品の破片はやはりオイルリングのエキスパンダーだったのですね。





006外したピストンはこんなです。
こんな状態でもバイクは大した異音も無く、結構普通に走るとは、ドゥカティってかなり偉大だと再認識しました。





007ちなみにシリンダはこんな状態です。
こっちもこんな状態だと、もう少しでシリンダのスカートが4cmx5cmくらいクランクケース内に落下するところでした。
さすがにそこまで行けばガラガラという異音とともにエンジンは停止してしまうでしょうが。



とりあえず原因というか状況が確認できたので自分的には納得です。
エンジンはバラけていると場所をとるのでとりあえずは形だけ元通りに組んでおきました。



 

Posted by cpiblog00738 at 00:11