2019年05月24日

ヘッドガスケット吹き抜け?

 走行の度に冷却水通路の内圧が上がって、走る度に大量の冷却水がキャッチタンクに溜まる場合があります。何らかの理由で燃焼ガスが冷却水通路に吹き抜けているのが原因です。そのために冷却水通路内の内圧が急上昇し、ラジエーターキャップのバルブを押しのけて冷却水が吹いてしまうのです。原因は殆どの場合ヘッドガスケットの吹き抜けです。稀にシリンダ壁にクラックが発生して燃焼室とウォータージャケットが通じてしまったという例も見ています。参考までに、ヘッドガスケットの吹き抜けが原因だった場合、単純にヘッドガスケットを新品に交換しただけでは吹き抜けの症状がすぐに再発すると考えて間違いありません。その理由は、ヘッドガスケットが吹き抜ける場合は多かれ少なかれ既にヘッド面とシリンダ面が歪んでしまっているからです。ということで、ヘッド面とシリンダ面を研磨するなどして平面を出したうえでガスケットの交換を行うことが必須です。
 で、今回のトラブルですが、エンジンは104mmボアの998/999Rです。キャッチタンクに水が戻るので燃焼ガスの吹き抜けは間違いないのですが、このエンジンのヘッドガスケットは一般的な板状のものではなく、Wills Ring とかCooper Ring と呼ばれているタイプのもので、細いリング状の形状をしている部品です。
 付け加えますとドゥカティに使われているこのリングの内部は空洞のドーナツ形で、内部には高圧のガスが充填されている模様です。取り外す時にドリルで細い穴をあけますが、穴が開いた瞬間に「プシュッ」と音がするのでそれは間違いないと思います。
 そして冷却水通路はオーリングでシールしてありますから、燃焼ガスが冷却水通路に侵入する可能性は無いのでは?と考えました。そうするとシリンダのクラックでしょうか?

IMG_1052 実際にヘッドを外してみるとこんなになっていました。冷却水通路のオーリングが内側に吹き抜けています。このタイプのガスケットの場合、街乗りでは特に問題無いのですがレーシングユースでは恒常的に少しづつ燃焼ガスが吹き抜けます。画像のシリンダ上面についた縞模様からもそれを窺い知ることが出来ます。走行時間が何時間かを過ぎるとヘッドとシリンダの接合面からタールのような燃焼ガスとオイルの混合物と思われるものが滲みだしてきます。この症状は当たり前なので特に気にしなくてもOKという認識です。高性能として知られるWills Ringタイプのガスケットですが、ドゥカティに純正採用されたのは後にも先にも998/999Rだけだったというのは、性能的な評価がイマイチ芳しくなかったということでしょうね。良ければ後継モデルにも使用され続けたと思われます。

IMG_1053 で、話を戻しますと、吹き抜けた燃焼ガスの圧力でオーリングが内側に落ちてしまったということです。設計上このオーリングは内側からの水圧に耐えるものであって、外側からの圧力がかかることは想定外だったということでしょう。





IMG_1060 ところが、こちらのシリンダをご覧ください。このシリンダは製造時期が後の対策型と思われるものですがオーリングの溝の形状が異なっています。オーリングが内側に動かないように内側もちゃんと壁になっています。これなら内外両方向からの圧力に対応できます。ちゃんと対策してありますね。初期シリンダーに当たった場合は残念でした、ということでした。(笑)

Posted by cpiblog00738 at 17:26