2022年01月06日

タイミングベルト

IMG_4610 タイミングベルトのトラブルです。90年代にはこの手のトラブルが多かった印象がありますが、時代とともにベルトの品質が向上し、最近はあまり目にすることがありません。初期においてはベルトの品質の問題で、まず最初にベルトが破断するというパターンが多かった印象ですが、近年においては何らかの原因が有ってそのためにベルトトラブルが起きる場合が多いです。
 このエンジンの場合はテンショナベアリングの破損です。テンションプーリーのベアリングが分解してしまってプーリーが脱落、→それによってバルブタイミングが狂ってバルブとピストンが衝突、→バルブが曲がってカムシャフトの回転が止まってロック、→ベルトが無理に引っ張られて破壊、という順番だと推測されます。もちろんすべては一瞬のうちですけど。

IMG_4611 テンショナベアリングを観察すると、ベルトの張り調整する右側の方はプーリーがどこかへ飛んで行って無くなり、ベアリング内側のレースのみが残っている状態です。左の固定側の方もベアリングが爆発寸前の状態で、元々はシール付きのグリス封入型のベアリングですが、シールが無くなって内部のボールがむき出しです。手で回すとゴリゴリ言いながらかろうじて回転するという状態です。
 一般的にタイミングベルトの交換を行う場合、ベルトとともにテンショナベアリングも同時に交換するのが望ましいですが、ベルトのみの交換で済ませている場合が多いようです。例えばクルマの場合はベルトとテンショナベアリングの交換はセットで行う、というのが常識になっていますが、機構的には全く同様ですからね。
 1990年代のドゥカティの市販レーシングマシンだったコルサの場合、メーカーが指定していたベルトとテンショナベアリングの交換サイクルは共に走行500kmごとでした。ベルトは市販ストリートバイクと同じ部品、ベアリングは同サイズながら値段が何倍もする高級品だったにもかかわらずです。
 ベルト交換を行う時はベアリングに状態も気にしてほしいですね。プーリーを手で回してみれば、その感触でその良否はある程度判別できると思います。また、作業者はその程度のスキルは持っているべきだと思います。


Posted by cpiblog00738 at 09:30