
エンジン右側のクラッチカバー周りです。シール類やベアリングを取り外し洗浄済みです。

1次ギア内側のオイルシールですが、街乗りバイクで旧タイプの黒いオイルシールが使用されている場合は高い確率でこのようにシールとハウジングが焼き付いています。シール単体で取り外すのはなかなか困難で、ベアリングごと裏側からプレスで押して取り外します。それでも焼き付いたシールのゴムがギア側に残ってしまいますので、これをカッターの刃や細かい耐水ペーパーで綺麗に除去します。現行のオイルシールは茶色で、おそらく材質はバイトン製となっており、これが使用されていると焼き付いている確率はかなり低いです。

シリンダーとピストンです。シリンダーの上面は定盤の上で擦り合わせて面出しをしてあります。またシリンダ内壁は軽くホーニングを施してクロスハッチを付け足しています。両者ともに状態に問題はありません。ピストンリングは合口隙間が広くなってきていますので予防整備の意味も込めて新品に交換します。

クラッチAssyです。スリッパークラッチではなくノーマルですが、バスケットが48歯のタイプに交換されており、プレートセットもそれに合わせたものに変更されています。クラッチドラムは旧タイプの総アルミ製で、そのために表側のワッシャーとの接触面がワッシャーの形状に摩耗して凹んでしまっています。現行のドラムはワッシャーの接触する部分にスチールが鋳込まれており、摩耗が最小限になるようになっています。なのでドラムは現行の部品に交換します。

エンジン左側カバーです。交換部品は既に外されていて洗浄済みです。ウォーターポンプのシールはここを開けたら必ず交換したい部品の一つです。冷却水ホース用のユニオンはスチール製の部品がオリジナルですが、スチール製のオリジナルは非常に腐食しやすいので最近のモデルに使用されているアルミ製の部品に交換します。

洗浄済みのクランクケースです。今回ベアリング類は交換せずに再使用します。

クランクケースの後方気筒シリンダーベースにあるこの穴、これはオイルラインですが実際には何の役目も果たしておらず、エンジンが組み上がった状態に於いてはシリンダーの下面で蓋をされています。916等のモデルも同じ構造になっていましたが、916等の場合はここにオーリングが使用されていてオイル漏れが発生しないようになっています。しかし(私の記憶では)何故か2001年型のみ、いろいろな車種においてこの場所のオーリングが省かれてしまっているようです。その結果シーリングはベースガスケットに塗布した液体ガスケットのみに頼ることとなり、オイル漏れが頻発します。このオイルラインは他のオイルラインと全く同様の油圧が加わりますから、せいぜい幅が3mm程度の場所を液体ガスケットのみでシールするのは無理が有ったということです。

この穴はオイル漏れの原因となるのでこの機会に塞いでしまいました。穴にネジを切ってシール材を塗布したイモネジをねじ込みました。
ちなみにこのオイルラインはこの手のエンジンを最初に設計した時点でヘッドへ行くオイルラインとして存在していたと思われます。851系のエンジンの中にはシリンダーの中にも続きのオイルラインが存在してそれがシリンダー側面の穴に繋がっていて、その穴を銅ガスケットを用いたボルトで蓋をしてあったモデルが有りました。当時はいろいろと試行錯誤があったと思われ、その名残ということでしょう。