
さて、クランクです。プラグを外してクランクピン内部その他も洗浄済みです。特に問題無い状態です。クランクギア取り付けのテーパーになっているシャフト部分(奥側)は磨いて綺麗にしてあります。テーパーで嵌めこむギアの場合、ここが荒れている個体が多く、それがギアの取り外しに苦労する原因となります。

気になるコンロッドメタルの状態ですが、まあまあ標準的なコンディションです。ドゥカティのこの手のエンジンの場合、コンロッド本体側のメタルの方がキャップ側のそれよりもダメージが大きいです。

メタル合わせ中です。メタルクリアランスは2本とも0.048mmに揃いました。使用メタルの厚さは1.485mmとか1.479mmとか、写真で見える数字の通りです。千分の一単位の計測値が本当に正しいのかという意見もありますが全くその通りで、温度によって千分の一単位の数値はコロコロ変化しますのであくまで目安ということになります。

クランクにコンロッドを組み付けました。コンロッドボルトは使い捨て部品なのでメタル合わせを行う時は今迄使用していたボルトを使用します。メタル合わせ終了後にコンロッドをクランクに組む際に新品ボルトを使用します。

こちらはミッションのカウンターシャフト(スプロケットが付くシャフト)です。特に問題ありません。街乗りで丁寧に乗られていたミッションは非常に程度が良いです。いつもサーキットで酷使されていた部品ばかり見ているのでなおさらそう感じるのかもしれませんが。一度外したサークリップは新品に交換します。

こちらはミッションのメインシャフト(クラッチが付くシャフト)です。こちらも問題ありません。非常に綺麗な状態です。サークリップに加え、クラッチプッシュロッド用のニードルケージとオイルシールは交換します。ここには写っていませんがシフトフォークの状態も同様に良好です。

ミッションのシム調整を行っています。ミッションシャフト2本とシフトドラムの左右(この写真では上下になります)にはシムが存在していて、そのシムを変更することによってシャフトとドラムの位置を変更できます。例えばドラムのシム変更は行わずにシフトフォークの可動範囲が一定であるとすると、各ギアのドッグの勘合深さの調整はミッションシャフトの位置に依存します。写真のメインシャフトを例にとると、下側のシムを薄く、その分上側のシムを厚くしたとします。するとシム厚の変更分だけシャフトは下に下がります。その結果シフトフォークで動かされているギアの上側のドッグはその分深く勘合するようになり、逆に下側のドッグの勘合は浅くなります。この方法で全てのギアのドッグの噛み合い具合が良好になる状態を探します。実際には妥協点を探す感じですが。こうして良好な状態に調整したミッションも走行中に無理なシフト等を行った結果シフトフォークを曲げてしまえば一発で台無しになってしまうんですねどね。

クランクシャフトも同様なシム調整を行います。クランクの場合はコンロッド位置がシリンダーの中央に来るようにする調整と、クランクケースを閉じた時にクランクシャフトにかかるプリロードの調整です。写真は全ての調整が終了してクランクケースを合わせて組み立てる直前の状態です。

クランクケースの左右を合わせて腰下を組み立てた状態です。