2022年04月08日

748Sエンジンオーバーホールその6

IMG_4925 シリンダーヘッドの方はバルブガイドの交換を行いました。ガイドは純正ではなくTFDオリジナルのベリリウム銅合金製です。バルブの通る穴はバルブステム径よりも小さく仕上げてあり、従ってこのままではバルブがガイドに通りません。この状態からリーマを通して徐々に穴を大きくしていきます。通すリーマの径を0.01mm単位で大きくしていってバルブステムが通るところまで拡大します。

IMG_4926 こうすることによってガイド穴とステムのクリアランスを0.01mm単位で管理できます。計測すると判明しますが、8本あるバルブのステム径は必ずしも同一ではありません。個々のバルブステム径に合わせた穴径に仕上げます。従ってこのバルブはここに使う、という決まりが発生する場合もあります。他のバルブに入れ替えるとステムが通らなかったりガタガタだったり、ということになるわけです。
 ちなみにTFDで使用している材質のバルブガイドの場合、ガイドとステムのクリアランスはほぼゼロの設定で、バルブが抵抗なくガイドの中で動く状態であればOKです。その状態でヘッドを組み立てます。この材質で製作したガイドの性能は秀逸で、耐摩耗性は勿論のこと潤滑性も非常に優れており、狭いクリアランスで組んでも焼き付きなどのトラブルは発生せず、ある程度の慣らし運転を行った後には適正なクリアランスに落ち着き、その後その状態で長期間安定します。街乗り、レースを問わず、次回のオーバーホール時にガイド交換が必要になるケースは非常に稀です。ただしこれはガイドの材質によるもので、他の材質のガイドでクリアランスゼロの設定をやるとバルブとガイドが焼き付いたりする可能性があると思います。

IMG_4927 ガイドを入れ替えると少なからずバルブの角度が変化し、そのままではバルブフェースとバルブシートが正しく当たらなくなります。それをシートカットで対処します。





IMG_4928 左側がシートカットを施したのちにバルブとのすり合わせを行い、当たりの確認まで終了したバルブシート。右側は未施工でこれからです。






IMG_4929 4か所ともシートカットとバルブとのすり合わせが終了しました。







IMG_4935 こちらはバルブの方です。バルブフェースに擦り合わせの痕跡が付いています。シートと当たる位置は出来るだけ外側になるようにしています。当たり面の位置が実質的なバルブの傘径ということになります。ただし摺合わせ部の外側に当たらない部分を少しだけ残すようにしています。
 例えばオリジナルより大きいビッグバルブを入れた時に、その当たり面の位置がそれまでと同じ位置でバルブフェースの内側の方にあったとすればビッグバルブの意味がありません。当たり面の円周長とバルブリフト量の積が混合気の吸入量と考えれば理解出来ると思います。


IMG_4936 シリンダーヘッドの組み立て中です。







IMG_4937 デスモクアトロエンジンの懸念であるロッカーアームのメッキ剥離です。今のうちであればロッカーアームの交換のみでOKですが、症状が進むとカムシャフト側にもダメージが発生してしまいます。





IMG_4938 シリンダーヘッドが完成しました。







IMG_4941 ピストンが上死点に来た時のピストンとシリンダーヘッドの隙間、所謂スキッシュクリアランスの計測と調整を行った後、ヘッドを取り付けます。ヘッドを組み付けてエンジンの形になったところでバルブタイミングの計測と調整を行っています。



IMG_4944 エンジンが完成しました。









Posted by cpiblog00738 at 09:31