
シリンダーヘッドの方はバルブガイドの交換を行いました。ガイドは純正ではなくTFDオリジナルのベリリウム銅合金製です。バルブの通る穴はバルブステム径よりも小さく仕上げてあり、従ってこのままではバルブがガイドに通りません。この状態からリーマを通して徐々に穴を大きくしていきます。通すリーマの径を0.01mm単位で大きくしていってバルブステムが通るところまで拡大します。

こうすることによってガイド穴とステムのクリアランスを0.01mm単位で管理できます。計測すると判明しますが、8本あるバルブのステム径は必ずしも同一ではありません。個々のバルブステム径に合わせた穴径に仕上げます。従ってこのバルブはここに使う、という決まりが発生する場合もあります。他のバルブに入れ替えるとステムが通らなかったりガタガタだったり、ということになるわけです。
ちなみにTFDで使用している材質のバルブガイドの場合、ガイドとステムのクリアランスはほぼゼロの設定で、バルブが抵抗なくガイドの中で動く状態であればOKです。その状態でヘッドを組み立てます。この材質で製作したガイドの性能は秀逸で、耐摩耗性は勿論のこと潤滑性も非常に優れており、狭いクリアランスで組んでも焼き付きなどのトラブルは発生せず、ある程度の慣らし運転を行った後には適正なクリアランスに落ち着き、その後その状態で長期間安定します。街乗り、レースを問わず、次回のオーバーホール時にガイド交換が必要になるケースは非常に稀です。ただしこれはガイドの材質によるもので、他の材質のガイドでクリアランスゼロの設定をやるとバルブとガイドが焼き付いたりする可能性があると思います。

ガイドを入れ替えると少なからずバルブの角度が変化し、そのままではバルブフェースとバルブシートが正しく当たらなくなります。それをシートカットで対処します。

左側がシートカットを施したのちにバルブとのすり合わせを行い、当たりの確認まで終了したバルブシート。右側は未施工でこれからです。

4か所ともシートカットとバルブとのすり合わせが終了しました。

こちらはバルブの方です。バルブフェースに擦り合わせの痕跡が付いています。シートと当たる位置は出来るだけ外側になるようにしています。当たり面の位置が実質的なバルブの傘径ということになります。ただし摺合わせ部の外側に当たらない部分を少しだけ残すようにしています。
例えばオリジナルより大きいビッグバルブを入れた時に、その当たり面の位置がそれまでと同じ位置でバルブフェースの内側の方にあったとすればビッグバルブの意味がありません。当たり面の円周長とバルブリフト量の積が混合気の吸入量と考えれば理解出来ると思います。

シリンダーヘッドの組み立て中です。

デスモクアトロエンジンの懸念であるロッカーアームのメッキ剥離です。今のうちであればロッカーアームの交換のみでOKですが、症状が進むとカムシャフト側にもダメージが発生してしまいます。

シリンダーヘッドが完成しました。

ピストンが上死点に来た時のピストンとシリンダーヘッドの隙間、所謂スキッシュクリアランスの計測と調整を行った後、ヘッドを取り付けます。ヘッドを組み付けてエンジンの形になったところでバルブタイミングの計測と調整を行っています。

エンジンが完成しました。