2022年06月08日

チタンバルブ

 先日エンジンブローしたエンジンはチタン製のバルブを使用しています。一般的にチタンバルブをリフェースするのはNGということになっていますが、その理由は硬質な酸化被膜がリフェースにより除去されてしまい、その結果バルブフェースの摩耗が著しく進行するからだと理解しています。

IMG_5018 このバルブはこのエンジンに使用していたものです。リフェースして使用していました。しかしバルブフェースの状態は良好で、少なくとも異常な摩耗は発生していません。自分の経験上ドゥカティのチタンバルブはリフェースして使用しても短時間で問題が発生することは無いと認識しています。個人的な推測ですが、燃焼ガスその他にさらされる影響で何らかの酸化被膜のようなものが構成され、その効果摩耗が抑えられるのではないかと思っています。それに加えてデスモドロミック機構なのでバルブをバルブシートに強い力で押し付けることが無いのも要因の一つのような気がします。

IMG_4492 ところがこんな事例も経験しています。これもリフェースして使用していたチタンバルブですが、ある時を境にエンジン始動が困難になり、分解してみたところバルブフェースが画像のような状態になっていました。私としてはリフェースして使用して問題は起こらないと認識していたので非常に意外だったのですが、巷で言われている異常摩耗というのはこれですね。
 私がリフェースしたチタンバルブを使用して組んだエンジンの数は相当数ありますが、この状況は初めての経験です。いろいろと原因を調べたところ、今まで問題無かったエンジンの使用状況と一つだけ明らかに異なる条件でこのエンジンは使用されていました。それはガソリン添加剤の使用です。おそらく添加剤の優秀な洗浄作用でバルブフェースが常にクリーンな状態に保たれ、その結果酸化被膜のようなものが生成されなかったのではないでしょうか。
 ところで私がチタンバルブまでリフェースしてしまう理由ですが、それはあくまでバルブフェースとバルブシートの当たりを最優先しているからです。新品バルブを使用すれば良いじゃないかという声も聞こえますが、例えば999Rのチタンバルブの価格は1本約5万円、1098Rであれば約8万円です。8本全部交換したらと考えると、全く現実的では無いと思います。それに加えて私の経験上、新品バルブといえども全数が完全無欠の状態であるとは言えないのです。新品なのにセンターが出ていなくて振れがあるバルブも実際に存在します。新品バルブを使用する場合、それがスチール製であれば私はたいていの場合まず最初にバルブリフェーサーでリフェースしてしまいます。チタンの新品の場合は流石に躊躇して考えに考えた末にどうするか決定しますが。言えることは優先されるのはバルブとシートの当たりが正しく出ているかで、バルブフェースに荒れや振れが有る場合にそのまま再使用する選択肢は有り得ない、というのが私の認識です。あ、それはあくまで使用目的がレースの場合で、バルブとシートの当たりが多少おかしくてもバイクはそれなりに走りますから街乗りの場合は持ち主の考え方次第ではあります。



Posted by cpiblog00738 at 11:33