2022年08月23日

1098Rエンジン修理オーバーホール その1

 自分がレースで使用している996RS01の車体に1098Rのエンジンを載せた車両のお話です。今年のレースもこの車両を使用する予定でしたが、今年(2022年)のシーズンが始まった3月の筑波サーキット初走行時にエンジントラブルが発生し、それからしばらくの間放置状態になっていました。
 その時の状況ですが、コースインして13周目の最終コーナーをスロットル全開で立ち上がったところ通常と異なる違和感のある振動を一瞬だけですがエンジンから感じました。しかしその後1コーナーに侵入しインフィールドを走行すると何の違和感もありません。その時は先程の症状は単なる気のせいかとも思いましたが、そのまま2ヘアをクリアして立ち上がりでスロットルを全開にしたところ、先程と全く同じ違和感を感じました。その時点で即走行を中止しピットイン。持ち帰ったバイクは仕事のスケジュール上触ることも出来ずそのまま保管状態となりました。
 それから半年近く経過し、やっと仕事が落ち着いてきて時間が取れるようになったので、お盆休みを利用して原因究明と修理オーバーホールを行うこととなりました。

DSC00106 エンジンを降ろして分解しています。この時点まではクランクケースにクラック発生を疑っていました。エンジンから振動が発生した場合、そのパターンの頻度は非常に高いです。ところが点検してもそれらしいものは発見できません。こんな筈では、、、という感じなのですが。



DSC00113 そこで何気なく取り外したエンジン右側のクラッチカバーを見ると、おかしなことになっているのを発見しました。クランクシャフトの右端を支持しているメタルブッシュが手前に飛び出してきています。この場所はクランクシャフトへオイルを供給するオイルラインになっている肝心要の部分です。ブッシュの状態は欠損部分も有り、ボロボロです。画像は既にオイルシールを取り外した状態ですが、ブッシュがオイルシールを突き破って手前に飛び出していました。当然オイルシールも状態はボロボロです。クランクケース側のクランクシャフトを支持しているボールベアリングに問題が発生してクランクシャフトに振れが発生したのが原因ではないかと考え、各部を点検しました。しかし意外ですが特に問題はありません。

 そこでとりあえずクランクケースを分解してクランクシャフトを取り出しました。クランクにコンロッドを組んだままの状態でコンロッドを動かしてみると縦方向、横方向共に過大なガタも無く違和感はありません。そこでコンロッドを取り外そうとコンロッドボルトを緩めると、片側のコンロッドの動きが悪くなりました。

DSC00108 コンロッドを取り外してみるとこのような状況になっていました。動きが悪くなった方(前側気筒)のメタルにトラブルが発生しています。コンロッドボルトが締まっている状態ではコンロッド大端部の締め付けによってメタルの内径は真円を保っていたのですが、ボルトを緩めてそのタガが外された瞬間にメタルが焼けた内側に反ってコンロッドの動きが悪くなったということです。


DSC00109 メタルを観察すると大きめの異物の混入がトラブルの原因ではないかと疑われます。異物は先述のクラッチカバーのブッシュもしくはオイルシールの破片でしょう。問題無いもう片方のコンロッドのメタルの状態は特に問題ありません。
 こうなるとトラブルが発生した方のコンロッドが再使用可能かどうかが問題ですが、今回は問題無いと判断しました。経験上メタルがコンロッド大端の中で回転してしまうとコンロッド側も摩耗してしまいNGですが、今回はそうなっていませんでした。

 そして何より一番の懸念はクランクシャフトのクランクピン部分です。1098Rのクランクシャフトは既に入手不可という状況になっていますので、既にお金で解決できる問題ではありません。


Posted by cpiblog00738 at 10:19