2022年08月29日

エンジンブロー

 お客様のエンジンが筑波サーキット走行中にブローアップ。私もその場所に居合わせており、急遽バイクを持ち帰り修理となりました。パッと見てオイル受けのカウルに冷却水が溜まっていて、ふとエンジンの下から上を見上げると前側気筒のシリンダーが割れている、、、。出場予定の筑波TTのレースまで約2週間ちょっと。果たしてエンジンの中はいかなる状態になっているのでしょうか?

DSC00139 エンジンを降ろしてスタンドに載せ、まずはベルトカバーを外すとこんな状態です。前側気筒のカムシャフトがロックして回らなくなったようで、タイミングシャフト周辺のベルトの山が無くなってしまっています。カムプーリーの上にベルトの破片が乗っかっています。



DSC00141 前側気筒のヘッドを外すと燃焼室はこんな感じです。ピストンが派手に当たってバルブは4本とも曲がっているようです。






DSC00143 ピストン側はこんなです。







DSC00146 シリンダーを取り外すとシリンダーにピストンが付いてきてしまいました。ピストンがピストンピン穴から上下に分かれてしまったようです。






DSC00149 クランクケースの方を覗くと、コンロッドにピストンピンが付いたままです。






DSC00150 シリンダーは縦に割れています。







DSC00153 シリンダーの内壁です。結構派手にやられちゃってますね。中央のキズはコンロッド小端部によるもの、左右はピストンピンの両端によるものでしょう。その衝撃でシリンダーが縦に割れてしまったということです。





DSC00163 ピストンです。クランクケース内に散乱していた主な破片も集めてみました。






 状況が判明したところでどのような方向性でレースに間に合わせるのかを検討したところ、部品取りのエンジン部品を使用してこのエンジンを修理することになりました。この時代のドゥカティエンジンの凄いところはこんな壊れ方をしても結構使える部分が多いということです。自分はそれが当たり前だと認識しているのですが、他メーカーのエンジンの事情を聞くとどうもそうでも無いようで、こんな壊れ方をしたらエンジンは全損で何も使えないのが普通らしいです。
 で、概要ですがクランクは計測したところ特に問題無いので再使用。前側気筒のコンロッドは流石に曲がりがあるので中古品に交換。壊れたピストンとシリンダーは中古品に交換。前側気筒のシリンダヘッドは丸ごと中古品に交換。そんな感じで作業しました。
 つつがなく作業は終了して、先程シャシダイに載せて10分間ほど検査試運転を行い不安要素も払拭しました。あとはこのエンジンにレースで頑張ってもらうだけです。



Posted by cpiblog00738 at 17:38