2023年08月13日

DUCATI SUPERMONO スーパーモノ・レストア記 その8

IMG_1400IMG_1401 シリンダーヘッドの組み立て中です。懸念であるロッカーアームのメッキ剥離等の問題はありませんでした。また組まれているバルブスプリングですが、ストリートバイクと同じ部品となっています。一般的にコルサの場合は線径の細い反力の弱いスプリングが用いられていることが殆どなのですが、スーパーモノの場合は何故かストリートバイクと同じ部品が組まれています。この件はパーツリストでも確認済みです。とりあえず今回はオリジナルに忠実に、ストリートバイクと同じ部品で組み立てました。

IMG_1412 エキゾースト側のカムシャフトホルダーの形状が特殊ですが、ここにウォーターポンプが取り付けられることになります。ところが作業を進めていくとこの部分に問題があることが発覚しました。画像ではまだオイルシールが取り付けてありませんが‥‥。



DSC00767 これがこの部分に使用する純正のオイルシールです。オイルシールにサイズが記されていますが、φ17.46xφ28.58x6.3となっています。かなり特殊なサイズではないでしょうか?これをカムシャフトホルダーに取り付けてみたところ、全く勘合締め代がありません。つまり固定されないということです。ガバガバで容易に脱落します。ホルダー側の内径を計測したところφ28.8mmです。何をどう間違えてこうなってしまったのかは不明ですが、とにかく完全にこれはNGです。ホルダー側のハウジングの内径を間違えて仕上げてしまったのでしょうか?内側に通るカムシャフトのシャフト外径はφ17.5mmなので、本当に必要とされるオイルシールのサイズは呼びでφ17.5xφ28.8x6.0というサイズとなります。しかしそのサイズのオイルシールはどう考えても入手不可と考えられます。とにかく何らかの解決策を講じる必要があります。


IMG_1468 いろいろ考えた末に講じた解決策がこれです。φ17xφ30x6というサイズの国産オイルシールを利用し、30mmの外径を29mmに加工しました。加工は取引先の試作屋さんにお願いしました。MHSAタイプのオイルシールは外側部分もゴムで覆われていますが、経験上この手のものは上手く加工すれば外径を1mm程度削り落として使用することが可能であると分かっていました。この程度の研削であれば外側のゴム部分はまだ残ります。φ28.8mmの穴に外径29.0mmのオイルシールですから、締め代は0.2mmでOKです。

 問題は内径で、今度のものは0.50mm穴が小さいということになります。そこのところは優秀な日本製オイルシールに無理を聞いてもらって、そのままカムシャフトを押し込んで使用することにしました。 


IMG_1476IMG_1478 国産加工のオイルシールを取り付けたカムシャフトホルダーです。この状態で現在までにサーキットを100km以上走行していますが、特に問題は発生していないので大丈夫そうです。


IMG_1409 シリンダーヘッドの組み立てが終了しました。緑色に陽極酸化処理されている部品はマグネシウム製です。






IMG_1444 さて、シリンダーヘッドの組み立てが終了しましたので次はクランクケース周りの作業を開始します。これはコンロッド大端のメタルではなく、クランクシャフト両端を支持するクランクケース側のメタルです。当時のドゥカティエンジンの場合、レーサー、ストリートバイクを問わず、この場所はボールベアリングが使用されていましたが、スーパーモノのみがハーフメタルを使用していました。(その昔に存在したパラレルツインの500/350GTエンジン等の例外はあった模様ですが)その後この方式が登場するのは2013年のパニガーレエンジンまで待たねばなりません。


IMG_1446 クランクケースは新品を使用します。何故なら今回のレストアの一番の目的は、このバイクをレースで走らせることだからです。オリジナルのエンジンナンバーが入っているクランクケースはかなり使い込まれており、状態は悪いと認識していますから使用せずに保管しておきます。しかしこのオリジナルクランクケースはエンジン番号がフレーム番号とマッチングしていますから、このバイクと常にセットということになりますね。

 クランクケースに装着されているのはハーフベアリングを取り付けるための特殊工具です。これを用いてハーフベアリングをクランクケースに圧入します。

 
IMG_1450 ハーフベアリングの取り付けが終了しました。マーカーで数字が記してありますが、0.052がメタルクリアランス、1.995と1.998が使用したハーフベアリングの厚さです。ちなみにメタルクリアランスの規定値は0.031〜0.065mmと指定されています。

 また、画像を見るとハーフベアリングの中央に穴が開いているのが確認できますが、これはオイルラインの給油口です。この穴の奥のクランクケース側にも穴があって、そこからオイルが圧送されてきます。つまりハーフベアリングを装着する場合はこの穴を合わせる必要があるということです。この穴位置を合わせずに適当な位置にハーフメタルを装着してしまうとこの部分にオイルが供給されなくなり、エンジンに致命的なトラブルが発生することになります。


IMG_1452 こちらはクランクシャフトの両側に使用されるスライドメタルです。クランクケースにクランクシャフトを組んだ状態でのクランクシャフトの左右のクリアランスは0.07〜0.17mmと指定されていますから、その範囲に収まるように厚さを調整します。



Posted by cpiblog00738 at 10:34