2023年08月28日
DUCATI SUPERMONO スーパーモノ・レストア記 その10
メタル合わせが終了しました。記してある数字は実測したメタルクリアランスです。例えば手前のコンロッドでは垂直方向のクリアランスが0.054mm、斜め45度方向のクリアランスが0.074mmと0.078mmということです。メタルクリアランスの指定値は0.040〜0.068mmとなっていますが、この値は垂直方向のクリアランスで判定します。
勘違いしやすいのですが、ハーフベアリングを装着した状態でのコンロッド大端部の形状は真円ではありません。ごく僅かですが上下方向に潰されたような楕円っぽい形状になっています。つまり縦方向の径より横方向の径の方が大きいということです。
その理由は、エンジンが排気行程から吸気行程に移ってピストンとコンロッドが上死点から引き下げられる時、慣性力によってコンロッドには引き延ばされる力がかかります。その際に大端部が縦に引き伸ばされて縦長の穴になろうとするのです。この現象はクローズインと呼ばれていますが、そうすると大端部の横方向の穴径が小さくなります。その変化量がメタルクリアランスの数値を超えてしまうとメタルコンタクトが発生してしまい、大端部焼き付きの原因となる可能性があるのです。
そのためこの変化量を見越して大端部の形状は僅かですが横長の潰れたような形状になっているという訳です。
どのような方法でこの形状を作り出すかはメーカーによって異なるらしいですが、ドゥカティの場合はハーフベアリングの厚さで調整しています。コンロッド本体の大端部の穴は真円に加工してあります。そしてハーフベアリングは中央部が一番厚く、外側へ行くほど薄くなるような形状になっています。例えば中央部の厚さが1.484mmのハーフベアリングが現在手元にありますが、斜め45度の方向で同様に厚さを計測すると1.474mmと1.472mmという計測結果となります。計測していませんが最端部はさらに薄くなっていると思われます。ハーフベアリングの厚さを変化させて対応しているということですね。
クランクシャフトにコンロッドを取り付けました。このタイプのコンロッドボルトの締め付け方法は以下の通りです。
・締め付け前のボルトの全長を計測する。
・最初に15Nmで締め付ける。
・次に角度で38度締め付ける。
・次に再び38度締め付ける。
・締め付け後のボルトの伸びは0.13〜0.17mmの範囲に入っていること。
・締め付け前のボルトの全長を計測する。
・最初に15Nmで締め付ける。
・次に角度で38度締め付ける。
・次に再び38度締め付ける。
・締め付け後のボルトの伸びは0.13〜0.17mmの範囲に入っていること。
ちなみに写真に写っているコンロッドに記してある数字ですが、コンロッドボルトの頭の脇に記してあるのが最終的な締め付けに要したトルクで単位はNm。コンロッドの側面に記してある数字は使用したハーフベアリングの厚さの下二桁です。
以前に他の個体のスーパーモノのエンジンをオーバーホールしたことがありますが、その時の経験からエンジン側のピンの消耗が激しい印象がありました。そこで今回はエンジン側のピンを新たに製作しました。ピンの黒色はDLCコートを施したための色です。
シフトドラムです。こちらもスーパーモノ専用部品です。他のエンジンとの互換性はありません。画像はありませんが、シフトフォークは他車種と互換性があります。空冷400とか600のギアボックスの2軸間が狭いタイプ用のシフトフォークと共通です。
Posted by cpiblog00738 at 07:54