2024年06月04日

888SP4 再生 その3

DSC01456 ピストンの点検中にピンボスの軽微なカジリの発生が発覚しました。キズ部分を磨いてこのまま再使用しても問題は無いかもしれませんが、それはあくまで代替え部品が無い場合の対応と考えます。TFDに中古良品のピストンの在庫が幾つかあるので、今回はそれを使用することにします。
 もう片方のピストンを点検したところ、こちらはピンとピンボスの勘合がきつく、印象としてはピストンに歪みがあってピンボスの整列が正しくない印象でした。ということでこの際ピストンは2個とも交換することにしました。

DSC01460 ピストンとシリンダーです。ピストン重量はほぼ同一です。シリンダーは既存の部品の再使用ですが、状態に問題はありません。






DSC01461DSC01462 クランクシャフトです。結構な頻度で発生するトラブルですが、クランクピンのプラグが緩んで外れかけています。M20のネジになっていますが、この当時はネジロックを塗布して組んであるだけなので、緩んで飛び出してくることがままあります。飛び出した部分はクランクシャフトを支持しているボールベアリングのアウターレースに接触して少しずつ削れて行くのでこのような模様が付きます。
 組み直す時にはプラグの端をポンチで打って雌ネジと軽くカシメてしまうので再発の心配はありません。

DSC01465 コンロッドです。チタニウム製ではなくスチール製ですが、H断面の削り出しです。ただしコンロッドボルトは使い捨ての安価なタイプが使われています。SPSやSP5だと専用の高価なボルトが使用されていて差別化が図られているのですが、この安価なタイプのボルトは現行車種のものが使用可能で、現在でも普通に入手できるのでかえって好都合です。


DSC01466 クランクシャフトにコンロッドを組んだところです。ハーブメタルの選定が重要な作業です。ちらっと見える83という数字は使用しているメタルの厚さで、1.483mmということです。69と見えるのはコンロッドボルトを指定の方法で締め付けた時に要した締め付けトルクで、69Nmということです。ちなみに締め付けトルク管理ではなく締め付け角度で管理しているので、結果的にトルクの方にバラツキが出現します。48と見えるのはメタルクリアランスで、0.048mmということです。

DSC01470 こちらはミッションのメインシャフト(クラッチが付く方のシャフト)です。この頃はニードルベアリングが金属製のリテーナーを使用した分割式です。もう少し時代が進むとリテーナーが樹脂製の一体式になります。サークリップは交換、グルーブワッシャーは目視でダメージのあるものだけ交換します。
 もう片方のカウンターシャフト(スプロケットが付くシャフト)の方も同様に作業しましたが、すいません、写真を撮り忘れました。いずれにせよ両者とも特に問題は無く、状態は良好でした。

DSC01471DSC01480 さて、シフトドラムの位置決めの機構についてです。例えばシフトドラムが回転して2速に位置に来ればギアが2速に入るということになるのですが、ドラムをその位置に留めておく機構が存在します。その機構が916から変更されています。詳しいことは省きますが、オーナー様からその点を刷新してほしいとのご要望をいただきましたので対応しました。クランクケースに加工を施し、916のシフトドラムとギアストッパーのロッカーアームを取り付けました。これでシフトのフィーリングがかなり改善されたということになります。


Posted by cpiblog00738 at 08:47