2024年07月04日
888SP4 再生 その8
エキパイを加工して取り付けています。こちらは左側で、角度だけ合わせてそのまま取り付けると本来の姿よりも少し短くなってしまうので、少しパイプを足して延長もしています。
右側ですが、こちらはちょっと手こずりました。元々レース専用設計のエキパイなのでストリートバイク用のステップと干渉してしまいます。レーサーの右側ステップ周りはコンパクトでもう少し高い位置にあるのですね。
これにて今回のレポートは終了です。長期間の眠りから覚めて久しぶりに公道走行に復活です。おめでとうございますと言いたいです。
話は変わりますが、次にもう一台、同様に長期間放置してしまった名車のレストアが控えています。事情が許されるようであればそれのレストア記もご紹介できるかもしれません。お楽しみに。
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11:42
2024年06月30日
888SP4 再生 その7
さて、作業は車体周りに移ります。フロントブレーキディスクはオリジナルの鋳鉄製です。さすがに16年間放置されていると、保管場所が室内だったとはいえ錆が酷いです。そのまま走行すればそのうち綺麗になるでしょう、という考えもありますが、パッドは新品に交換する予定なのでディスクも出来る範囲で錆を落としました。右が既存の状態、左が手作業でオイルストーンによる研磨を行った状態です。ここまで綺麗にしておけば短期間のうちにディスクの表面は綺麗な状態になると思います。
ステアリングヘッドのベアリングを交換しています。この時代はテーパーローラーベアリングが採用されています。ボールベアリングの場合はボールが点でレースに接触しますが、ローラーベアリングの場合は線で接触します。そう考えるとこのタイプは非常にタフなベアリングと言えると思います。しかしこの時代はベアリングを護るシールが設けられていません。つまりベアリングは外部の環境にさらされていてゴミや水等は入り放題。それを護るのはグリスだけです。そういった意味では頻繁に状態の確認、ベアリングの交換等が必要とされるでしょう。
エキパイを取り付けました。前述の通りエキパイは90年代当時にWSBを走っていたバイクのものです。さすがに立て付けが良いとは言えず、エンジンやスイングアームに干渉しないように数か所切った貼ったで形状を整えています。
ウォーターポンプカバーの色が周りと異なりますが、、内部のインペラーとともに916の部品に交換してあります。特にエンジン低回転時の冷却水の圧送能力が改善されます。
フロントフォークのメンテナンス中です。このフォークは純正ではありません。純正はオーリンズの初期型GPフォークですが、このフォークはそれより一つ世代が新しいGPフォークです。おそらくカワサキ用ではないかと推測します。何はともあれ当時最高峰とされていたフォークです。インナーチューブ径が42mmで、今となってはシールの入手に苦労するのですが…。何とオーナー様はこのフォーク用の純正シールを何台分も所有しておられました。さすがに保管期間が長いので材質的な劣化が懸念されましたが、保存状態が良かったおかげで外見は問題無し、触ってみた感触もOK、ということでその部品を使用して作業を進めさせていただきました。
冷却水関係のホースは当然ながら新品に交換しますが、純正部品ですべてそろえることはもはや難しい状況です。ということでSAMCO製のホースを調達しました。色はいろいろと選択可能ですが、今回は黒を選択しました。
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09:37
2024年06月26日
888SP4 再生 その6
エンジンが概ね組み上がったところで、バルブタイミングの計測と調整を行っています。この作業はかなり重要です。TFDではバルブタイミングをメーカーの指定値に合わせています。バルブタイミング変更、というようなマイルールの暴挙は行いません。カムの摩耗によって開弁時間が少なくなっているような場合はそれなりに考えた上で最適と思われるタイミングを設定しますが、その場合でも基準となるのはメーカーの指定値です。
さて、エンジン以外の作業に取り掛かります。これはスロットルボディーですが、結構酷い状態です。フューエルホースとクランプ等は新品に交換します。不安なのはインジェクターが正常に作動するかどうかですが、結果的に4個のうちの1個が動作不良を起こしていました。ガム化したガソリンでノズルが固着するというよくあるトラブルです。
車体の組み立てですが、まず最初にエンジンにスイングアームを取り付けます。この時に後方気筒のエキパイを仮付けしておきます。今回使用するこのエキパイは1990年代にWSBで実際に使用されていたもので、純正ノーマルとは太さや形状が異なるため、車体が組み上がった後では取り付け不可能になる可能性があるからです。このエキパイはオーナー様に持ち込んでいただいたもので、アンドレアス・メクロウ号に使われていたもの、ということで入手されたそうです。
WSB仕様のエキパイと組み合わせて使用する目論見で持ち込んでいただいたスリップオンサイレンサー(新品)ですが、残念ながら取り付け角度が全く合いません。そのまま差し込むとこんな感じになってしまいます。これは後から切った貼ったの作業で何とかします。
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23:06
2024年06月25日
888SP4 再生 その5
新品のバルブガイドを取り付けました。TFDオリジナルのベリリウム銅合金製です。ベリリウム銅合金と言っても種類はいろいろな種類が存在し、バルブガイドに使用すると秀逸なもの、バルブシートに使用すると性能を発揮するもの、等いろいろです。用途を間違えると期待した性能を発揮しない場合があり、材質の選択には注意が必要です。以前にベリリウム銅合金製のバルブガイドなのに短期間でガイドが摩耗して穴が広がり、バルブステムとのクリアランスが過大になってしまった個体を見たことがあります。選択を間違えるとそういったことが発生するということです。
左奥のシートはリフェースと使用するバルブとの擦り合わせが終了しています。手前の2ヶ所は作業前です。
この当時のヘッドの表面処理はアルミの地肌の上にクリアコートが乗っているだけです。洗浄その他の作業でどんどん剥がれていきます。オーナーの方はエンジン外観は気にせず、あくまでエンジンの調子の良し悪しにこだわるということでしたのでそのまま組み立てていきます。
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10:06
2024年06月07日
888SP4 再生 その4
クランクケース内部の部品を仮組しています。各部品はシム調整によってその位置が決定されます。クランクシャフトであればコンロッドの位置がシリンダーの中央になるように調整します。ミッションシャフトやシフトドラムであればギアの送り、噛み合い具合等の加減を見ながら最適と思われる位置に各部品を調整します。かなり細かくて面倒な作業ですが、正しく行えばギアチェンジの良好な感触を獲得できます。ただし乱暴なギアチェンジを行ってシフトフォークを曲げたりすればせっかくの調整も元の木阿弥となってしまいます。
ここがポート内に問題があった場所ですが、バルブガイドがおかしなことになっています。割れて欠けた?融けた?状況は確認できましたが何が起ったのかは判りません。ただガイド以外に問題は無さそうなので、ガイド交換を行えば問題なさそうな印象です。
ガイド交換はオーバーホール作業に於いてルーティンです。抜いたガイドは銀色のものがインテーク、銅色のものがエキゾーストです。エキゾーストの方が過酷な環境に置かれるので高級な材料で製作されていると思われます。
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08:47
2024年05月31日
888SP4 再生 その2
とりあえず出来ることから作業を進めていきます。ちなみにこのエンジンの走行距離は1万キロ以内なので、基本的には良い状態を保っていると予想しています。しかし出だしから前述のような問題が露呈していて不安を感じているのも事実ですが。
エンジン左側のカバー類です。ウォーターポンプのローターとカバーはオーナー様の希望により916系の部品に交換予定です。ローターのプロペラの形状が改良され、それに合わせてカバーの内部形状も変わり、冷却水の圧送能力が高められています。
セルモーターを分解しています。オイルシールとベアリングは新品に交換します。ブラシセットは交換しようかどうか迷いましたが、ブラシの減りは大したことは無く状態も良いので再使用することにしました。コミュテーターは研磨によるリフレッシュで対応しました。
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09:16
2024年05月29日
888SP4 再生 その1
不動となっている888SP4のレストアをご依頼いいただきました。今回はその作業の様子をご報告していきたいと思います。
まずバイクの状態ですが、屋内保管ではあるものの放置期間は16年にわたります。オーナー様は仕事の都合で長期間の海外勤務となり、その間の保管場所は非常に環境の良い場所を確保したものの、さすがに16年という期間は長すぎたようです。
バイクは陸送で運ばれてきました。まずは燃料タンク内部の状態を確認しようとしましたが燃料キャップに鍵を差し込んで回そうとしても鍵が回りません。何をやってもいうことを聞かないので、仕方がなくキャップのフランジごと取り外しました。するとキャップの裏はこんな感じで、瞬く間に辺りに異臭がたちこめます。腐ったガソリンの臭い、これは強烈ですね。これでは鍵が回らないのにも納得です。
とりあえずこの粉の件は棚上げして他の作業を進めていきます。最悪の場合これ等の部品が使えなくても代わりの部品は何とかなるのでそんなに心配はしていませんが。
Posted by cpiblog00738 at
09:43