2024年07月04日

888SP4 再生 その8

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 エキパイを加工して取り付けています。こちらは左側で、角度だけ合わせてそのまま取り付けると本来の姿よりも少し短くなってしまうので、少しパイプを足して延長もしています。




DSC01596 右側ですが、こちらはちょっと手こずりました。元々レース専用設計のエキパイなのでストリートバイク用のステップと干渉してしまいます。レーサーの右側ステップ周りはコンパクトでもう少し高い位置にあるのですね。




DSC01597a 取り付け後の後ろ姿です。格好がつきました。








DSC01599DSC01600 ここまで来ればほぼ完成です。







DSC01601 16年ぶり?に車検を取ります。取り付けてあるアッパーカウルは形状がちょっとおかしいのと色も合っていませんが、これは車検用に間に合わせで取り付けたものです。
 これにて今回のレポートは終了です。長期間の眠りから覚めて久しぶりに公道走行に復活です。おめでとうございますと言いたいです。

 話は変わりますが、次にもう一台、同様に長期間放置してしまった名車のレストアが控えています。事情が許されるようであればそれのレストア記もご紹介できるかもしれません。お楽しみに。
  

Posted by cpiblog00738 at 11:42

2024年06月30日

888SP4 再生 その7

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 さて、作業は車体周りに移ります。フロントブレーキディスクはオリジナルの鋳鉄製です。さすがに16年間放置されていると、保管場所が室内だったとはいえ錆が酷いです。そのまま走行すればそのうち綺麗になるでしょう、という考えもありますが、パッドは新品に交換する予定なのでディスクも出来る範囲で錆を落としました。右が既存の状態、左が手作業でオイルストーンによる研磨を行った状態です。ここまで綺麗にしておけば短期間のうちにディスクの表面は綺麗な状態になると思います。


DSC01578 ステアリングヘッドのベアリングを交換しています。この時代はテーパーローラーベアリングが採用されています。ボールベアリングの場合はボールが点でレースに接触しますが、ローラーベアリングの場合は線で接触します。そう考えるとこのタイプは非常にタフなベアリングと言えると思います。しかしこの時代はベアリングを護るシールが設けられていません。つまりベアリングは外部の環境にさらされていてゴミや水等は入り放題。それを護るのはグリスだけです。そういった意味では頻繁に状態の確認、ベアリングの交換等が必要とされるでしょう。

DSC01544 エキパイを取り付けました。前述の通りエキパイは90年代当時にWSBを走っていたバイクのものです。さすがに立て付けが良いとは言えず、エンジンやスイングアームに干渉しないように数か所切った貼ったで形状を整えています。
 ウォーターポンプカバーの色が周りと異なりますが、、内部のインペラーとともに916の部品に交換してあります。特にエンジン低回転時の冷却水の圧送能力が改善されます。


DSC01576 フロントフォークのメンテナンス中です。このフォークは純正ではありません。純正はオーリンズの初期型GPフォークですが、このフォークはそれより一つ世代が新しいGPフォークです。おそらくカワサキ用ではないかと推測します。何はともあれ当時最高峰とされていたフォークです。インナーチューブ径が42mmで、今となってはシールの入手に苦労するのですが…。何とオーナー様はこのフォーク用の純正シールを何台分も所有しておられました。さすがに保管期間が長いので材質的な劣化が懸念されましたが、保存状態が良かったおかげで外見は問題無し、触ってみた感触もOK、ということでその部品を使用して作業を進めさせていただきました。


DSC01581 ブレーキキャリパーのメンテナンス中です。本体は2ピース構造のキャリパーですが、ブレンボ社からのお達しがあって左右の締結を解いての分解はしません。この状態のまま清掃、シール交換を行います。





DSC01585 キャリパーはすっかり綺麗になりました。フォークも元々の状態が良かったのでほぼ新品?というような佇まいです。






DSC01587 冷却水関係のホースは当然ながら新品に交換しますが、純正部品ですべてそろえることはもはや難しい状況です。ということでSAMCO製のホースを調達しました。色はいろいろと選択可能ですが、今回は黒を選択しました。




DSC01592 ここまで組み立てが進むとだんだんそれらしくなってきました。完成までもう一息です。
  
Posted by cpiblog00738 at 09:37

2024年06月26日

888SP4 再生 その6

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 エンジンが概ね組み上がったところで、バルブタイミングの計測と調整を行っています。この作業はかなり重要です。TFDではバルブタイミングをメーカーの指定値に合わせています。バルブタイミング変更、というようなマイルールの暴挙は行いません。カムの摩耗によって開弁時間が少なくなっているような場合はそれなりに考えた上で最適と思われるタイミングを設定しますが、その場合でも基準となるのはメーカーの指定値です。


DSC01521 DSC01522エンジンが完成しました。







DSC01523 さて、エンジン以外の作業に取り掛かります。これはスロットルボディーですが、結構酷い状態です。フューエルホースとクランプ等は新品に交換します。不安なのはインジェクターが正常に作動するかどうかですが、結果的に4個のうちの1個が動作不良を起こしていました。ガム化したガソリンでノズルが固着するというよくあるトラブルです。


DSC01525 フューエルタンクです。これはオーナー様に持ち込んでいただいたスペアのタンクで、今回はこちらを使用します。既存のものの再使用はちょっと無理そうでした。




DSC01530 リアサスです。これも結構草臥れています。バンプラバーはとっくに崩壊していて存在していません。とりあえず出来る範囲でですが綺麗にしてオーバーホールします。




DSC01532 分解したリアサスです。外見は酷い状態に見えますが、内部は当然ですがかなり綺麗な状態です。






DSC01533 リアサスのメンテナンスが完了しました。このくらいの状態になればOKでしょう。






DSC01534 DSC01535車体の組み立てですが、まず最初にエンジンにスイングアームを取り付けます。この時に後方気筒のエキパイを仮付けしておきます。今回使用するこのエキパイは1990年代にWSBで実際に使用されていたもので、純正ノーマルとは太さや形状が異なるため、車体が組み上がった後では取り付け不可能になる可能性があるからです。このエキパイはオーナー様に持ち込んでいただいたもので、アンドレアス・メクロウ号に使われていたもの、ということで入手されたそうです。

DSC01536 リアスイングアームの下側にフェンダーを取り付けました。この部品も当時のコルサ専用部品で憧れた方も多かった気がします。






DSC01538 WSB仕様のエキパイと組み合わせて使用する目論見で持ち込んでいただいたスリップオンサイレンサー(新品)ですが、残念ながら取り付け角度が全く合いません。そのまま差し込むとこんな感じになってしまいます。これは後から切った貼ったの作業で何とかします。



  
Posted by cpiblog00738 at 23:06

2024年06月25日

888SP4 再生 その5

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 新品のバルブガイドを取り付けました。TFDオリジナルのベリリウム銅合金製です。ベリリウム銅合金と言っても種類はいろいろな種類が存在し、バルブガイドに使用すると秀逸なもの、バルブシートに使用すると性能を発揮するもの、等いろいろです。用途を間違えると期待した性能を発揮しない場合があり、材質の選択には注意が必要です。以前にベリリウム銅合金製のバルブガイドなのに短期間でガイドが摩耗して穴が広がり、バルブステムとのクリアランスが過大になってしまった個体を見たことがあります。選択を間違えるとそういったことが発生するということです。

DSC01511 バルブシートをリフェースしています。ガイドを交換するとガイドの角度(バルブの角度)が交換前の状態から少なからず変化し、バルブフェースとバルブシートが密着しない状態になるのでこの作業は必須です。
 左奥のシートはリフェースと使用するバルブとの擦り合わせが終了しています。手前の2ヶ所は作業前です。


DSC01518 バルブとシートの作業が終了したのでシリンダーヘッドの組み立てに取り掛かりました。
 この当時のヘッドの表面処理はアルミの地肌の上にクリアコートが乗っているだけです。洗浄その他の作業でどんどん剥がれていきます。オーナーの方はエンジン外観は気にせず、あくまでエンジンの調子の良し悪しにこだわるということでしたのでそのまま組み立てていきます。

DSC01519 シリンダーヘッドの組み立てが完了しました。緑色に見えるカバー類はマグネシウム製で、当時のコルサの純正部品です。






  
Posted by cpiblog00738 at 10:06

2024年06月07日

888SP4 再生 その4

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 クランクケース内部の部品を仮組しています。各部品はシム調整によってその位置が決定されます。クランクシャフトであればコンロッドの位置がシリンダーの中央になるように調整します。ミッションシャフトやシフトドラムであればギアの送り、噛み合い具合等の加減を見ながら最適と思われる位置に各部品を調整します。かなり細かくて面倒な作業ですが、正しく行えばギアチェンジの良好な感触を獲得できます。ただし乱暴なギアチェンジを行ってシフトフォークを曲げたりすればせっかくの調整も元の木阿弥となってしまいます。

DSC01479 DSC01478クランクケース左右を合わせて組み立てたところです。






DSC01481 DSC01485クランクケースの左右を組み立てていきます。







DSC01486 クラッチは今迄ノーマルでしたが、今回はお客様が持ち込まれたスリッパークラッチを使用します。






DSC01488 概ね腰下が組み上がりました。シリンダーとピストンを仮組しておきます。







DSC01489 さて、ここからはシリンダーヘッドの作業に取り掛かります。前バンクは例の腐食による粉問題がありますが、後バンクに関してもいかにも調子が悪かったであろうと思われる見た目です。




DSC01491 シリンダーヘッド内部の部品です。意外と言っては何ですが、特に大きな問題はありません。






DSC01492 とりあえずヘッドを洗って綺麗にしました。







DSC01493 DSC01495ここがポート内に問題があった場所ですが、バルブガイドがおかしなことになっています。割れて欠けた?融けた?状況は確認できましたが何が起ったのかは判りません。ただガイド以外に問題は無さそうなので、ガイド交換を行えば問題なさそうな印象です。


DSC01504 DSC01505ガイド交換はオーバーホール作業に於いてルーティンです。抜いたガイドは銀色のものがインテーク、銅色のものがエキゾーストです。エキゾーストの方が過酷な環境に置かれるので高級な材料で製作されていると思われます。


DSC01507 バルブはリフェースして再使用します。粉事件の起こった場所のバルブの状態も特に問題はありませんでした。左がリフェース前の洗っただけの状態、右がそれにリフェースを施した状態です。
  
Posted by cpiblog00738 at 08:47

2024年05月31日

888SP4 再生 その2

 とりあえず出来ることから作業を進めていきます。ちなみにこのエンジンの走行距離は1万キロ以内なので、基本的には良い状態を保っていると予想しています。しかし出だしから前述のような問題が露呈していて不安を感じているのも事実ですが。

DSC01451 クランクケースです。問題ありません。ベアリングも含めて再使用します。







DSC01452 エンジン右側の部品です。乾式クラッチ、1次ギア、オイルポンプ等が存在します。状態は問題ありません。交換するシール類やベアリングは既に取り外してあります。





DSC01449 オイルポンプです。こちらも状態は良好です。







DSC01453 エンジン左側のカバー類です。ウォーターポンプのローターとカバーはオーナー様の希望により916系の部品に交換予定です。ローターのプロペラの形状が改良され、それに合わせてカバーの内部形状も変わり、冷却水の圧送能力が高められています。



DSC01454 エンジン左側の部品、フライホイール、タイミングギア、シフトアーム、発電機のローター等が存在します。これらの部品にも特に問題はありません。






DSC01455 セルモーターを分解しています。オイルシールとベアリングは新品に交換します。ブラシセットは交換しようかどうか迷いましたが、ブラシの減りは大したことは無く状態も良いので再使用することにしました。コミュテーターは研磨によるリフレッシュで対応しました。




  
Posted by cpiblog00738 at 09:16

2024年05月29日

888SP4 再生 その1

 不動となっている888SP4のレストアをご依頼いいただきました。今回はその作業の様子をご報告していきたいと思います。

 まずバイクの状態ですが、屋内保管ではあるものの放置期間は16年にわたります。オーナー様は仕事の都合で長期間の海外勤務となり、その間の保管場所は非常に環境の良い場所を確保したものの、さすがに16年という期間は長すぎたようです。

DSC01423 バイクは陸送で運ばれてきました。まずは燃料タンク内部の状態を確認しようとしましたが燃料キャップに鍵を差し込んで回そうとしても鍵が回りません。何をやってもいうことを聞かないので、仕方がなくキャップのフランジごと取り外しました。するとキャップの裏はこんな感じで、瞬く間に辺りに異臭がたちこめます。腐ったガソリンの臭い、これは強烈ですね。これでは鍵が回らないのにも納得です。


DSC01425 タンク内部はこんな感じです。これはNGでしょう。普通ならどうしたものかと悩むところですが、流石オーナー様はスペアの燃料タンクAssyをお持ちです。あっさりそっちを使うという結論になりました。




DSC01428 まずはとにかく分解して行きます。汚れと積もった埃が半端ではないので、とにかく掃除です。しかしこの状態になるまでにすでに発覚していたのですが、前バンクのインマニの中の様子が異常です。




DSC01430 インマニの中がこんなになっています。粉が積もっている状態で、粉は微粒でちょうどきな粉みたいに見えます。これって何なんでしょう?さすがに見たことが無いものです。




DSC01431 早速エンジンをスタンドに載せて分解して行きます。







DSC01439 前バンクのシリンダーを外したところ、内部はこんな感じです。う〜ん、このピストンとシリンダーは果たして使えるのか?ちょっと疑問です。






DSC01441 一方こちらは後バンク側の燃焼室です。普通です。見慣れた光景ですが今回はこれを見て何故だかホッとした気分になり、なごみました。






DSC01442 とりあえずですが、概ね分解して各部の状態を把握しているところです。







DSC01447 今のところ最も心配なのはこの粉の件です。いったい何が原因だか見当がつきませんし、この粉の正体も判りません。
 とりあえずこの粉の件は棚上げして他の作業を進めていきます。最悪の場合これ等の部品が使えなくても代わりの部品は何とかなるのでそんなに心配はしていませんが。
  
Posted by cpiblog00738 at 09:43