2020年08月29日

こんなのは初めてです!

 先日筑波サーキットのスポーツ走行中に黒旗を振られ、急遽走行を中止してピットに戻るという事件がありました。黒旗というのは「お前のバイク何かヤバいことが起こってるぞ!」という事で、即走行中止です。ピットロードでオフィシャルが点検しましたが、原因がはっきりしません。そこでピットに戻ってカウルを外して点検すると、前側気筒のエキパイにオイルが垂れて燃えた痕跡があり、この時の煙のために黒旗が振られたようです。多少なりともオイル漏れをしていることは確かですが、それが何処なのか判断できない状況です。
 とりあえずバイクを持ち帰り、工場で原因を究明します。街乗りバイクならオイルを脱脂した後その辺を一回り乗りまわしてくればオイル漏れの場所が見つかります。しかし競技専用車両となると公道走行不可ですからその辺で乗り回すわけにもいかず、暖機運転だけでオイルが漏れてくればラッキーですが、なかなかそんな状況は有りません。
 そこでシャシダイの登場です。エンジンを脱脂した状態でシャシダイに載せ、エンジン始動してぶん回せば何処から漏れているか即判明します。で、やってみたところ、どうも漏れているのはセルモーター取り付け部のガスケットからのようです。そんなところからオイルが漏れた経験は今まで無いので、イマイチ腑に落ちません。
 とりあえずオイルを抜いてみます。ドレンボルトを取り外しましたが、出てくるオイルにまるで勢いが無く、まるでドレンの穴が詰まっているイメージです。これは穴の上に何かが居る、と判断して棒を突っ込んでそれをどけると、オイルは通常通り排出されるようになりました。

IMG_3050 で、ドレンの横のオイルサンプの蓋を開けてオイルパンの底を探ってみると、出て来たのはこいつです。セルモーター取り付けのボルトです。それも緩んで落ちたのではなく、折損しています。どういうこと???




IMG_3056 エンジン左側のカバーを開けて確認すると、折れた残りはセルモーターのネジ穴の中です。おまけにもう1本の取り付けボルトも緩んで脱落寸前です。セルモーター側に残っていたボルトの先端部分は特にカジっているわけではなく、針先でつつくとクルクル回って簡単に取り外すことが出来ました。



IMG_3058 緩んでいたもう1本の取り付けボルトです。よく見るとこちらも折損寸前!千切れかけて伸びたので緩んでしまったという事です。パンタエンジンがこの世に登場してから約40年、1198系迄セルモーターの取り付け方法は同じです。今迄こういったトラブルは皆無で、40年やっていて初めての経験です。ボルトは2本とも新品でした。そうすると考えられるのは新品で供給されたボルトが不良品だったという事でしょうか?このボルトは頭に10.9の刻印があるグレードで、強度区分としては上から2番目です。そこで今回はその上の最上位グレードである12.9の刻印があるボルトを使用して取り付け直しました。
 こんな訳のわからないトラブルを経験すると不安になりますね。経験を積めば積むほど、注意すべき事項がどんどん積み重なって増えていきます。


  

Posted by cpiblog00738 at 23:20

2020年08月25日

エンジンカバーのクラック

 自分のレース用バイクのメンテ中にエンジン左側カバーからのオイル漏れを発見しました。見つけたからにはそのままとはいかず、とりあえずカバーを外して確認することに。

IMG_3806 クラックチェッカーで確認作業をすると、こんな感じです。画像はカバー内部の眺めです。発電機のコイル取り付けのボス周りに明らかにクラックが発生していました。このまま放置して乗り続けるとクラックが一周してとんでもないことが起こるんでしょうね。
 仕方が無いので別のカバーを取り付けて修復しました。しかしちょっと不安は残ります。今迄の経験上この手のクラックが発生する場合、原因はクランクケースのクラックやクランクシャフト支持ベアリングのボール破損であることが少なからずあったからです。要するにクランクシャフトエンドの振れが許容範囲を超えた場合にこの部分が破損するという事です。今回カバーを外した際にケースのクラックとベアリングのボールの状態はしつこくチェックしましたし、クランクの先端の振れはダイアルゲージを用いてこちらもしつこくチェックしました。その結果とりあえずおかしなところは見つかりませんでした。実際にサーキットを何回か走行して問題が出なければ単純にケースカバーの寿命だったという事になりますが、是非そうであってほしいです。
  
Posted by cpiblog00738 at 23:06

2020年08月02日

ステップ

IMG_2979 コルサタイプと呼ばれているステップキットが装着されたバイクですが、ステップバーがピカピカのツルツルです。こんな状態になるとステップが滑って危ないです。こうなってしまった場合、まずはステップの左右を入れ替えて対応します。そうするとフレッシュな面が上面に来て新品のフィーリングに戻ります。
 でもこのバイクの場合、すでに左右は入れ替え済みです。写真には写っていませんが、ステップの下側も同様な状態です。いったいどんだけ走ったの?ということになりますが、じゅうにまんkmです。今回はステップバーを根本から切り落としてバーのみを付け替えました。未だに順調に距離は伸びています。
  
Posted by cpiblog00738 at 20:23

2020年07月27日

爆発!

IMG_2966 こんな事や、、、。







IMG_2965 こんな事も。







IMG_2948 レースをやっているといろいろありますね。昔、「芸術は爆発だぁ!」っていうのがありましたが、レースも色々な意味で「爆発」です。
  
Posted by cpiblog00738 at 09:47

2020年06月11日

燃調セッティング終了

1098Rパワーチェック めでたくシャシダイ上での燃調セッティングが終了しました。予想通りそんなに大きな変更は不要でした。画像のシャシダイデータグラフはスロットル全開時のパワーチェックで、今迄のエンジンとの比較です。今迄のエンジンはボアφ106mmストローク64.7mmの1,141cc、今回はボアは変わらずφ106mmでストロークが67.9mmになった1,198cc。排気量増加の分、きっちりパワーアップしちゃってますね。この馬力は扱える自信がありません。
 数年前に自己ベストが出たときの排気量は1,098ccで162馬力くらい。この時は筑波走行していてS字の2個目とCXから先の2ヘアの手前でスロットルを全開にすることが出来ました。その次のエンジン(今迄使用していたエンジン)はそこから約15馬力アップで、こうなると既に上記2ヶ所では全開に出来ません。全開にしたら何処かへ飛んで行ってしまいそうです。また2ヘアの立ち上がりでは、立ち上がったギアから一つシフトアップして不用意に全開にするとその瞬間にフロントがリフトアップしてしまいます。安心して全開に出来るのはもう一つシフトアップしてからです。
そんなエンジンから更に馬力アップです。絶対に乗りこなせない自信があります。(笑)どうなる事やら、、、、。
  
Posted by cpiblog00738 at 11:26

2020年06月10日

エンジン修理中

 筑波TTのレースまでそんなに時間が無いのでせっせとエンジンを修復しています。時間的なことと費用的なことを考えて、部品はTFDに在るもので何とかします。ということでクランク、コンロッド、ピストンは1098Rのノーマル部品になりました。要するに1098Rのノーマルエンジンになるということです。

IMG_2702 クランクシャフトです。ノーマル部品としては歴代ドゥカティのストリートバイクの中でダントツに過激でお金がかかっているクランクでしょう。






IMG_2703 コンロッドは削りではなく型物のチタンコンロッドですが、通常のタイプよりも2点間がちょっと短いです。1198系はロングストロークなので各部の寸法合わせのしわ寄せがコンロッドの長さということになっています。数的に希少なのでなかなか中古部品として市場に出回りません。



IMG_2704 クランクとコンロッドのAssyです。







IMG_2731 こちらはシリンダヘッドです。メンテナンス作業をしていつも思うのですが、チタンバルブのヘッドはバルブ周りのダメージが少ないです。バルブの大きさが半端ではないのでバルブの重量によって動弁系の負担にかなり差があるようです。



IMG_2737 話は飛びますが、エンジンは出来上がって車体に搭載され、現在燃調のセッティング中です。今の季節だとベンチ室の中の気温は30度を超えますから冷却が厳しいです。夏場でなければ車載のラジエーターに送風ファンの風を当てれば特に問題は起きませんが、今の季節だとそうはいきません。
 で、写真を見るとラジエーターが装着してありません。


IMG_2739 どうなっているかというと、冷却水は外部からの供給です。ベンチ室の外の地中にある水タンクからベンチ室内のタンクにポンプで水を循環させ、その水をエンジン冷却に使用しています。地中の温度というのは安定しているようで、今の季節だと供給される水は冷たく感じます。夏に井戸水が冷たく感じられるのと一緒でしょうか?


IMG_2738 勿論水温はサーモスタットで管理しています。使用しているのはドゥカティ純正の部品です。このシステムの恩恵で長時間エンジンを回し続けても水温は非常に安定しています。今回のセッティング中でも水温は71±2度の範囲から外れることは皆無でした。ちなみにベンチ室内の気温は32度です。



  
Posted by cpiblog00738 at 11:59

2020年05月25日

ウォーターポンプ

IMG_2694 更に問題は発覚します。ウォーターポンプのメカニカルシールです。セラミック?の部分が割れてしまっています。エンジンから抜いたオイルの状態からはまだオイルに水は混入しているような雰囲気は無かったのですが、実際のところは解りません。オイルに少量でも水が混入するとオイルの性能はガタ落ちになるといわれていますから、これがコンロッド大端の固着の原因だった可能性も捨てきれません。
 ちなみにこの手のメカニカルシールは年代によって3種類のものが存在します。今回割れたタイプは純正品番93050062Aで1999〜2000年のモデルに使用されていました。採用されていた期間が短いことからも窺い知れますが、私個人的にはクラックが発生する頻度が非常に高い部品という認識があります。ですからこの件に関しては想定内の出来事でした。
  
Posted by cpiblog00738 at 11:41

シリンダ

IMG_2699 シリンダですがこちらも消耗が激しいです。新品ではありませんでしたが殆どダメージの無い部品を使用し、組む前には簡易的とはいえホーニングを施してあったにもかかわらず、走行1,652kmでこんなです。リングが摺動していた部分のホーニング跡が殆ど残っていません。特に上下端はツルツルで鏡面になってしまっています。段差も出現しています。鋳鉄シリンダならいざ知らす、こいつはメッキシリンダです、相応の出力が発揮されていたということでしょうか。これもとりあえずは再使用したくありません。
  
Posted by cpiblog00738 at 11:24

セルモーター

 自分のバイクのメンテナンスを開始しました。去年の秋に筑波に走りに行って、走行2本目の開始時にセルモーターがいきなり動かなくなって走行不能になってしまいました。帰ってからセルモーターに直接電源を繋いでみても反応が無いので、とりあえずセルモーターが壊れてしまったところまでは確認していました。そこだけの修理も考えましたが、走行距離もこのエンジンを製作してから1,652km、そろそろオーバーホールが必要な時期と考え、エンジンをフルオーバーホールすることにしました。

IMG_2685 まずは問題のセルモーターです。ブラシの消耗は激しく、原因は不明ですがブラシをコミュテーターに押し付けるスプリングが外れ落ちていました。いきなりセルモーターが動かなくなった直接の原因はこれでした。エンジン製作時にブラシは新品にしていたのですが、サーキット走行1,652kmでこの状態はイマイチ理解できません。エンジンの始動性は確かに良好とは言えませんでしたが、始動に苦労することも特に有りませんでした。セルモーターについては消耗部品を交換して作業終了です。
  
Posted by cpiblog00738 at 09:42

2020年05月23日

フレームの溶接

 コロナ騒ぎでサーキット走行ができないシーズンが過ぎていきますが、そろそろ走行が可能になりそうな雰囲気になってきました。ということで、去年の秋から不動車になってしまっている自分のバイクの修理に取り掛かりました。
IMG_2680 久しぶりに自分のバイクを見ると、純然たるレース用バイクはやっぱり良いなあ!と改めて思ってしまいます。フレームは996RS2001ですが、溶接は市販車と違ってTig溶接です。Tig溶接のフレームが使用されているのはRS2000からRS2006迄だったと記憶しています。スーパーバイクレギュレーションに合致している筈なのに何でフレームが市販車と違うんだ?という疑問はありましたが、実際にこういったフレームが正式に使われていたのでそれなりのレギュレーションの解釈というか抜け道が存在していたのでしょうね。

IMG_2683 こちらは同時期の市販車のフレームの同じ部分です。こちらは見慣れたMig溶接です。外部からクレームが来たのかどうかは不明ですが、1098RSでは溶接が市販車と同じMigに戻ってしまいました。
  
Posted by cpiblog00738 at 15:22

2020年05月17日

これで安心

IMG_2645 Mauro Lucchiari 選手のサインです。ペイント屋さんに頼んでオーバースプレイしてもらいました。入手した時からかなり消えかかった状態で、怖くて今迄一度も磨いたことがありませんでした。これで安心してワックスもかけられます。
  
Posted by cpiblog00738 at 19:53

2020年02月15日

これはこれでアリですね

 先日のスイングアーム、理想を言えば表面処理は陽極酸化処理で仕上げたかったのですが、、、、。例の茶色い陽極酸化処理をいつもお願いしているところに相談してみたのですが、大きすぎて処理槽に入らないので出来ません、と残念な回答が。それではといろいろ考えた結果、結局化成処理という表面処理で行くことにしました。化成処理は陽極酸化処理と比較すると明らかに耐食性は劣りますが、この際仕方がありません。ペイントという選択肢もあったのですが、個人的にスイングアームにペイントはちょっとふさわしくない、と思っているので、化成処理だとどうなるのかという興味を優先しました。化成処理にもいろいろありますが、その中でも一番耐食性が優れているというタイプで施工していただきました。今時の流れでは環境にやさしいクロムフリーの方法が主流みたいですが、それに逆行した6価クロムをバリバリに使用するタイプだそうです。

137_3757 これは随分前にやった化成処理で、キンキラに仕上がるタイプですが、耐食性はあまり良くありません。
ビクロマートと呼ばれているタイプだと思います。今回の化成処理はこれではないタイプです。




IMG_2276 今回のやつはこんなタイプです。化成処理はキズが付きやすく、そこから腐食が発生しやすいということでクリアコートをかけてあります。今回使用したのはツヤ消しのクリアです。ツヤ有りも試してみましたが、ツヤ消しの方が格好良く見えたのでそうしました。これはこれで悪くないと思います。


IMG_2278 あとは腐食に対してどのくらい持つかということですね。経過を見守ることにします。





IMG_2294 スイングアームに付属部品の取り付けが完了しましたが、なかなか格好良いのではないでしょうか?エキセントリックハブにはいつもの陽極酸化処理を施しました。

  
Posted by cpiblog00738 at 23:49

2020年01月28日

スイングアームの脱皮

IMG_2170 マグスイングアームの塗装がボロボロになってきたので何とかしたいとのご相談を受けました。この塗装はかなり昔のパウダーコートですね。マグネシウム製の製品にパウダーコートを施す場合は適正な下地処理を行わないと塗料の密着が悪く、こんな状態になっているものをよく見かけます。



IMG_2171 試しに塗膜が浮いているところをつまんで引っ張ってみました。笑えます。このスイングアームの表面処理をどのような方法で行うのかはまだ未定ですが、いずれにせよ既存の塗膜は剥離が必要です。最初は知り合いの塗装業者に塗装の剥離をお願いしようと考えていましたが、これなら自分でやっても何とかなるかも、とやってみました。


IMG_2173 パリパリと気持ちよく剥がれるので止められなくなり(笑)、気付いたらいつの間にか脱皮終了です。
 パウダーコートが悪いとは言いませんが、少なくともこのスイングアームの場合は完全にNGです。工場などの鉄の扉とか、ガードレールとかにはパウダーコートはよく使われていて優れた耐久性を発揮しているという話もありますから、要は適材適所という話になるのでしょうね。少なくともこのスイングアームがペイントされた時代においては、マグネシウム製品にパウダーコートはNGだったとということです。今は技術が進んで優れた下地処理の方法が確立していて、こうした問題は解決しているのだと思います。
  
Posted by cpiblog00738 at 10:57

2019年12月24日

エンジンがかからない?

 2000年代前半のバイク、例えば998シリーズ等の話ですが、「セルモーターは回るんですがエンジンがかからないんです。でも何かの拍子にかかるんです。かかってしまえばそれからは普通なんです。」という話を今でもまだ聞くことが有ります。

IMG_1896 その原因はだいたいこれです。サービスマニュアルにちゃんと書いてあります。キーをONにしてから15秒以内にエンジンをかけないとエンジンがかからなくなるようになっている、という事です。壊れているわけではなく、これが正常なのです。15秒経過してエンジンがかからない状態になったとしても、その時にセルボタンを押すとセルモーターは回るんですね。だから余計ややこしい。
 例えばバイクに乗る時にまずキーをONにしてインジケーター(例えばニュートラルランプ)を見て通電を確認する。それからヘルメットを被り、グローブを装着する。そしておもむろにセルボタンを押す。多分キーをONにしてから15秒以上経過しています。セルは回れど、エンジンは絶対にかかりません。さすがにおかしいと感じたあたりでいったんキーをOFFにするでしょう。そしてもう一度ONにしてセルボタンを押します。今度はエンジンが始動します。そういうことです。
 この年代のバイクに乗っている方はサービスマニュアルを確認してみるのが良いですね。まあそんなことをしなくても、キーをONにしたら15秒以内に始動すれば良いだけのことですが。
  
Posted by cpiblog00738 at 18:57

2019年12月03日

あるある

IMG_1832 整備中のこの996、妙に車高が低いように感じます。。。。なんで?







IMG_1834 という訳でスプロケットを外してみました。エキセントリックハブが逆を向いてます。そりゃ低く感じるわけです。この状態だと正規の状態と比較して25mm程度車高が下がります。足付き性は良くなりますけど、それ以外は良いことは無いような気が。ちなみにこの状態になっている916系は何年かに1台くらいの頻度で目にします。


IMG_1835 これが正規な状態です。チェーンの張り調整を行っていて、エキセントリックハブを回しているうちに反対を向いてしまったのでしょう。正規の状態からチェーンを張ろうとしてハブを左回りに回していくと、リアブレーキキャリパーサポートの回り止めのピンが干渉して、ある位置からそれ以上ハブが回らなくなりハブが逆向きになることは有りません。でもハブを右回りに回していくとハブは回り続けて逆向きになるまで回ってしまうんですね。  
Posted by cpiblog00738 at 18:36

2019年11月11日

断線

 筑波走行中にエンジンが不調になりピットイン。最初は空ぶかしはOKだけど8,000rpm以上回らない、という状態だったのですが、時間がたつにつれて症状が酷くなり、最後には片肺状態に陥りました。
 そんな状態でTFDに入庫。試しに外部の燃料タンクから燃料を供給した状態でエンジン始動を試みると前バンクのインジェクターから燃料が出ていません。しかしこれで少なくとも燃料タンクに問題は無いことが確認できました。
 次はインジェクター交換を試みましたが症状は変わらずで、これでインジェクターに問題は無いことが確認できました。そうなると問題があるのはECUもしくは配線のどちらかということになります。
 このバイクのECUはM197ですが、交換してテストする代わりの部品が無いのでとりあえず配線をテスターで探ってみることに。その結果、前バンクのインジェクターに繋がる信号線の導通が無いことが判明。通常断線などは配線がどこかに挟まったとか、外観的に削れているとか、そういった外から見て確認できる場合が殆どなのですが、今回はそれらしき状況は発見できません。仕方が無いので導通を計りながら配線のいろいろな場所を押したり引いたり曲げたり伸ばしたりしてみます。するととある部分を曲げ伸ばしすると導通が復活したり切れたりする症状が発生しました。しかしその部分はどう見ても外見的には正常っぽいです。しかし仕方が無いので半信半疑でその部分を切開してみると。。。。

IMG_1772 ちゃんと切れていました。しかも揃った状態でバッサリという感じです。いったい何が起こったのか理解できません。繰り返し書きますが、外見的には全く問題のない状態です。とりあえず切れたところを繋いでバイクは正常に戻ったのですが、イマイチ釈然としません。う〜ん、どういう事なんでしょう????  
Posted by cpiblog00738 at 17:07

2019年10月20日

マグネシウム製カバー

IMG_1666 ウォーターポンプカバーを外したらこんなです。マグネシウム製部品の中に水を入れてはダメですよね。アルミ製の部品よりかなり軽量なので本気のレースの場合はアリですが、その場合は毎年交換が前提でしょう。経験的には長持ちしてもせいぜい2年くらいでしょうか。そのあとは飾り物にするのが良いと思います。


IMG_1675 ちなみに内側はこんなに綺麗なんですけどね。  
Posted by cpiblog00738 at 00:05

2019年09月15日

ピストン割れ 最新

IMG_1436 昨日の筑波TT予選中に発生した不幸な出来事です。タイムアタックに入ろうとしたまさにその時にエンジンが失速。その直後の運転手の適切な対応のおかげでピストンのみの交換で済みそうです。




IMG_1440 定番のピストン真っ二つパターンです。エンジンが速いってことです。レースになるとピストンも消耗品です。ピストン2個で約10万円。タイヤ2セットとほぼ同じ価格。ピストン1セットとタイヤ2セット、どちらが長持ちかというと、圧倒的にピストンです。ピストンを責めては可哀そうです。
  
Posted by cpiblog00738 at 19:46

2019年09月03日

チェーンのトラブル

002 チェーンがエライ事になっています。ローラーが割れてます。割れた場所以外のローラーにも明らかなダメージが認められます。原因は何なのでしょう?
 チェーン自体はDIDのERV3ですから問題の有るわけもありません。このパターンの問題が起こる場合の多くは使用しているスプロケットに原因があると私は考えています。リアではなくエンジン側のスプロケットです。純正以外のスプロケットで一見して歯の形状が純正と異なって見えるものが有ります。簡単に表現すると、歯が短い、歯の高さが低い、頂点が低い、という感じの製品です。そうしたスプロケットを使用した場合、加速中は問題無いのでしょうが減速時のチェーンの上側がたるんだ時にチェーンのローラーがスプロケットの歯の上に乗り上げる状態になるのだと思います。とはいっても完全に乗り上げるほどチェーンの長さに余裕はありませんから部分的に乗り上げた状態でチェーンには物凄い引っ張り力がかかります。その結果として画像のようなことが起こると私は考えます。ローラーにスプロケットの頂点の角が食い込むというか突き刺さるのです。ローラーが割れるところまで行かなくても、そうしたスプロケットの場合はチェーンの伸びが著しいという特徴が有ります。
 もしこの記事が気になった方は自分のバイクのスプロケットをちょっと覗いて確認してみるのが良いかもしれません。純正に準じた形状のスプロケットを使用していても、歯が折れている可能性もありますから。  
Posted by cpiblog00738 at 14:53

2019年08月20日

シャシダイでの燃調セッティング

IMG_1375 先日行ったシャシダイでの燃調セッティング中のひとコマです。季節的に非常に気温が高く、十分な換気を行っているにもかかわらずダイナモ室内の気温は35.9度。ほぼ外気温と同じかちょっと高いくらいでしょうか?こうなると心配なのは水温ということになります。もしラジエーターに送風機で風を当てるだけで対応していたとしたらセッティング開始直後に水温が上がりきってしまってセッティングどころではなくなってしまいます。しかしTFDのダイナモ室には室外に貯水槽が備えられており、このタンクとエンジンをサーモスタットを介して直結すれば水温の心配は皆無となります。今回の場合はこの気温の中、例えば30分間連続でエンジンを回しっぱなしでデータの収集を行っても水温は70±3度の範囲から全く動きません。水温に関しては外部水タンクにお任せして、設置してある送風機をオイルクーラーやエンジン本体、タイヤ等に向けることが出来ます。
 唯一の問題は、携わる私が暑くてたまらないということでしょうか。(笑)

  
Posted by cpiblog00738 at 10:59

2019年07月26日

916SPS 1997 その3

IMG_1241 その後作業は順調に進んでいます。クランクケースを閉じる寸前の状態です。各部品の位置決めのためのシム調整は地味ながら非常に重要な作業です。例えばギアの入り具合はミッションシャフトとドラムの位置関係、それとシフトフォークの状態によって決まりますから、組んであった通り元に戻すだけということはあり得ません。


IMG_1293 バルタイの計測と調整を行っています。916/996SPSの場合は最初からタイミングシャフト側のプーリー2ヶ所に10度のオフセットキーが使われています。工場出荷時に最初から組んであるのですからその目的は当然ながらバルブタイミングを適正な値にすることなのですが・・・・。今までの経験から言えることは、その状態ではかなり正しい数字からはかけ離れたバルタイになっています。


IMG_1294 エンジンの完成です。







IMG_1304 エンジンを車体に載せ、ベンチ室内でエンジンを始動してスロットルボディーの調整を行っています。この段階では燃料は外部のタンクから供給しています。この状態の方がスロットルボディーにアクセスしやすいので作業効率が良いのです。
 



IMG_1306 完成です。  
Posted by cpiblog00738 at 09:48

2019年07月09日

916SPS 1997 その2

916SPSの続きです。

IMG_1229 クランクです。最初からヘビーウェイト入りです。何故か1次ギア側のウェブに3個、もう一方のフライホイール側のウェブには2個、打ち込まれています。常識的に考えると左右対称になりそうなものですけど、この3個と2個の組み合わせは結構目にした記憶が有ります。この状態でバランスはとれているということなのでしょうけど、なぜこうなっているのか理由は解りません。


IMG_1232 さて、コンロッドです。すでにお伝えした通りこのコンロッドの材質はスチールです。で、ハーフメタルですが2個の小さな穴が開いています。






IMG_1236 メタルを外すとこうなっています。溝状のオイル通路になっていて中央に穴が開いています。ちなみにコンロッドのキャップ側にはオイル通路は存在しませんから、メタルに穴が開いている必要はありません。穴あきのメタルは非常に高額(万単位の値段です)なので、自分が組む場合はキャップ側には穴のない普通のメタルを組むことが多いです。


IMG_1234 この穴が何処に通じているかというと、此処、小端部です。つまり大端部を潤滑するオイルの一部がコンロッドの真ん中の穴を通って小端部分まで来て、ピストンピンを潤滑するという訳です。凝ってますね!
 このシステムは888SPSやSP5にも使われていましたが、その時はメタルに開いている穴は3個でした。いつの間にか品番変更になって穴が2個のタイプになっています。

IMG_1235 メタルの裏側はこんな感じです。オイル通路の跡が明瞭に確認できます。しかし考えてみるとオイル通路の跡が付いている部分は荷重を受け止めないということになります。自分の考えでは、この部分は出来るだけ単位面積あたりにかかる荷重を小さくしたい場所なので、そういった意味でこの状況はあまりよろしくないかもしれません。何はともあれ理由は不明ですがこのシステムはこのエンジン以降は使われなくなりました。ここまでしなくてもオイル飛沫の管理や小端部に開けるオイル穴の最適化でピストンピンの潤滑に問題は無いという結論に達したのかもしれません。

IMG_1238 メタル合わせの後、再び組み上げられたクランクとコンロッドです。  
Posted by cpiblog00738 at 21:49

2019年07月03日

916SPS 1997

IMG_3526 1997年型916SPSです。TFDの倉庫に長い間(10年以上)眠っていました。走行距離は実走行で2,000km未満です。長期間TFDに仕舞い込んであったとは言え、元々は何処かからか縁あってやってきたバイクで私が携わっていたバイクではありません。走行距離が少ないとはいえ、TFDに来るまでにどこの誰に何をされているかわかりませんし、年代物なのは確かなのでレストア作業に着手しました。ちなみにこのバイクの行き先は既に決まっていますので悪しからず。
 1997年型は996になった最初のモデルです。この年式はまだチタンコンロッドは採用されておらず、コンロッドはPANKL製の削り出しH断面スチールコンロッドが使われています。チタンコンロッドが採用されるのは翌1998年型からです。チタンコンロッドではない代わりにと言っては何ですが、97年型のクランクにはヘビーウェイトが打ち込まれた状態でバランス取りされています。コルサやRSのクランクには普通にヘビーウェイトは使われていますが、市販街乗りバイクでこの916SPS1997以外にヘビーウェイト入りのクランクが使われているのは私の記憶では888SPS、888SP5、748R2002、それと1098R、1198Rくらいではないでしょうか。(他にもあったかもしれませんが今は思い出せません。それとパニガーレ以降は私は門外漢で知識がないため除きます)
 1996年の全日本のレースシーズンが終わった頃にドゥカティコルセから来年のコルサは996ccになるというインフォメーションが来ました。レースレギュレーションではスーパーバイクのホモロゲモデルも同じ排気量であることが求められるので、来年は996の街乗り市販車が出るんだ、とピンときて、すぐに当時の輸入元の村山モータースに97年に出る996のバイクを注文した思い出が有ります。その時はまだ発表も何もされておらず、輸入元の人も半信半疑だったのですけれどね。購入したTFDのそのバイクはまず最初にエンジンを組みなおし(と言ってもチューニングはせずにノーマル状態のままでちゃんと組みなおしたというレベルです)、そして黄色く塗られて当時のバイク雑誌にたびたび登場したので記憶にある方も多いかもしれません。
 当時某雑誌でゼロヨン&最高速という有名な連載記事があって、そのバイクでFISCOで行われた最高速チャレンジに出場した覚えがあります。その時にFISCOのストレートで記録した最高速は270km/hだった記憶が有ります。メーター読みではなく光電管もしくはスピードガンによる計測だったので実速です。今のレベルで考えてもなかなか立派な記録だと思います。

IMG_1166 作業していて今更ながらに感心するのは、例えばこのインテークポートの仕上げです。ガイドは新品に交換してありますがそれ以外はドノーマル。工場出荷時のままです。中央の仕切りは鋭利な刃物状態で下手をすると手が切れます。何かの拍子に虫とかが吸い込まれたりしたら虫の体が真っ二つになりそうです。常識では考えられませんよね、この仕上げ。デスモクアトロ系のエンジンのポートはおしなべてこんな感じになっていますが、特にこの97年型SPSは気合が入っているように感じます。

IMG_1168 こちらはエキゾーストポート。同様にガイドは新品になっていますがその他は工場出荷時のままです。エキゾーストポートなんてちょっと走ればカーボンが付着して真っ黒になってしまうのに・・・・。




IMG_1170 こちらはヘッドのロッカーピンを塞ぐ蓋で、ドゥカティがセントラルカバーと呼んでいる部品です。ガスケットではなくオーリングでシールしています。916レーシング95からコルサにはもれなくこの部品が使われていて私的には見慣れた部品だったのですが、市販街乗りバイクでこの部品が使われたのはこの916SPS97のみです。今後ここは全部のモデルでオーリング式になるんだろうなあと当時思った記憶が有りますが、なぜか街乗りバイクで採用されたのはこのバイクだけでそれ以降は普通のガスケット仕様のままでした。

 まあポートがどうとか、なんだかんだ言っても結局馬力が出てる方が偉いでしょ!という言い分もありますが(特に最近世の中がこのような風潮になってきている気がします)、これは趣味の世界の話ですから。趣味の世界は結局自己満足に帰結すると私は考えます。これを仕事にしている私でさえ、普段はエンジンの奥に有って見えない部分をエンジンを開けたときに目の当たりにして、改めて凄いと思ったり感心したり良いなと思ったりすることは多いです。

 続きはまた後で。
   
Posted by cpiblog00738 at 19:46

2019年05月24日

ヘッドガスケット吹き抜け?

 走行の度に冷却水通路の内圧が上がって、走る度に大量の冷却水がキャッチタンクに溜まる場合があります。何らかの理由で燃焼ガスが冷却水通路に吹き抜けているのが原因です。そのために冷却水通路内の内圧が急上昇し、ラジエーターキャップのバルブを押しのけて冷却水が吹いてしまうのです。原因は殆どの場合ヘッドガスケットの吹き抜けです。稀にシリンダ壁にクラックが発生して燃焼室とウォータージャケットが通じてしまったという例も見ています。参考までに、ヘッドガスケットの吹き抜けが原因だった場合、単純にヘッドガスケットを新品に交換しただけでは吹き抜けの症状がすぐに再発すると考えて間違いありません。その理由は、ヘッドガスケットが吹き抜ける場合は多かれ少なかれ既にヘッド面とシリンダ面が歪んでしまっているからです。ということで、ヘッド面とシリンダ面を研磨するなどして平面を出したうえでガスケットの交換を行うことが必須です。
 で、今回のトラブルですが、エンジンは104mmボアの998/999Rです。キャッチタンクに水が戻るので燃焼ガスの吹き抜けは間違いないのですが、このエンジンのヘッドガスケットは一般的な板状のものではなく、Wills Ring とかCooper Ring と呼ばれているタイプのもので、細いリング状の形状をしている部品です。
 付け加えますとドゥカティに使われているこのリングの内部は空洞のドーナツ形で、内部には高圧のガスが充填されている模様です。取り外す時にドリルで細い穴をあけますが、穴が開いた瞬間に「プシュッ」と音がするのでそれは間違いないと思います。
 そして冷却水通路はオーリングでシールしてありますから、燃焼ガスが冷却水通路に侵入する可能性は無いのでは?と考えました。そうするとシリンダのクラックでしょうか?

IMG_1052 実際にヘッドを外してみるとこんなになっていました。冷却水通路のオーリングが内側に吹き抜けています。このタイプのガスケットの場合、街乗りでは特に問題無いのですがレーシングユースでは恒常的に少しづつ燃焼ガスが吹き抜けます。画像のシリンダ上面についた縞模様からもそれを窺い知ることが出来ます。走行時間が何時間かを過ぎるとヘッドとシリンダの接合面からタールのような燃焼ガスとオイルの混合物と思われるものが滲みだしてきます。この症状は当たり前なので特に気にしなくてもOKという認識です。高性能として知られるWills Ringタイプのガスケットですが、ドゥカティに純正採用されたのは後にも先にも998/999Rだけだったというのは、性能的な評価がイマイチ芳しくなかったということでしょうね。良ければ後継モデルにも使用され続けたと思われます。

IMG_1053 で、話を戻しますと、吹き抜けた燃焼ガスの圧力でオーリングが内側に落ちてしまったということです。設計上このオーリングは内側からの水圧に耐えるものであって、外側からの圧力がかかることは想定外だったということでしょう。





IMG_1060 ところが、こちらのシリンダをご覧ください。このシリンダは製造時期が後の対策型と思われるものですがオーリングの溝の形状が異なっています。オーリングが内側に動かないように内側もちゃんと壁になっています。これなら内外両方向からの圧力に対応できます。ちゃんと対策してありますね。初期シリンダーに当たった場合は残念でした、ということでした。(笑)  
Posted by cpiblog00738 at 17:26

2019年05月06日

修復完了です

IMG_0990 派手に逝ったエンジンですが、修復完了しました。あまりにも派手な壊れ方だったので内部部品の破損がそもそもの原因のように見えましたが、分解してみると単純にクランクケースの寿命が尽きて割れてしまった、という結論でした。
 クランク、コンロッド、ミッション等の主要部品は各部の計測を行って状態を確認しましたが、特に問題無いことが確認できました。

IMG_0991 当然ながら割れてしまったものは交換です。クランクケース、ジェネレーターカバー、後方気筒のシリンダ、等は交換しました。結果的にはそんなに大したことが無くて良かったです。もちろんそれなりの重整備になりましたが、最初に感じた「エンジン全損」のイメージからするとラッキーな結果でした。


  
Posted by cpiblog00738 at 20:21

2019年04月21日

こんな事になってます

IMG_0962 分解中ですが、かなり衝撃的な画像ではあります。







IMG_0963 完全に分離しちゃってますね。







IMG_0964 でも心を落ち着けて観察すると、その他の主要部品のダメージは少ないようにも見えます。果たしでどうでしょうか?  
Posted by cpiblog00738 at 10:08

2019年04月19日

派手に逝きましたね・・・・。

IMG_0955 久しぶりに派手な奴がやってきました。







IMG_0960 転倒することもなく、コース上にオイルを撒くこともなく、その危機回避能力は人間業とは思えません。そして何事もなかったようにご帰還。(なわけねーだろ!)




IMG_0958 リアバンクが持ち上がっちゃってますね!クランクケースがリアシリンダの周り1周にわたって分離です。
 中がどうなっているか見るのが楽しみ(不謹慎な発言!!)ですが、実はたいしたことが無いような気もします。

 
続く・・・  
Posted by cpiblog00738 at 13:20

2019年03月04日

926

IMG_0907 926のレストアがどのくらい進んでいるかというと、現在こんな感じです。最近時間が取れずに作業がストップしていましたが、やっと先日入手したキャリパーその他を取り付けました。




IMG_0908 フロント周りですが、フロントホイールもマルケジーニの5本スポークになりました。フォークステムがナロースパンのタイプ用のコルサ専用ホイールは今やなかなか見つかりません。お客様の協力もあって入手することが出来ました。感謝です。こうしてみるとやっぱり格好良いです。とりあえずディスクはφ290mmを装着してあります。

IMG_0910 車体右側の眺めです。当時の状態そのままではなく、若干進化しちゃってます。でもまとまりは決まってますね。もう少ししたらシェイクダウンが出来そうです。  
Posted by cpiblog00738 at 20:29

2018年12月16日

クランクケース合わせボルト

IMG_0744 車種によってクランクケース左右を締結しているM8のボルトの中に中空になっていてオイルラインの働きをしているものが1本あります。ボルトの中心にφ3.5mmほどの穴が開いていて、それがボルトの首下にあるφ2.0mmくらいの穴とつながっていてオイルジェットに行くオイルの通路になっています。  
 このボルトがヤワで締め付ける時にすぐに伸びてしまうんですね。M8のボルトですから締め付けトルクは23〜25Nm位は掛けたいところです。しかしこのボルト、モノによっては20Nm位から伸び始めてしまい、それ以上トルクがかけられなくなることが良くあります。

IMG_0747 左が伸びてしまったボルト、右が正常なボルトです。伸びてしまった方は途中からネジピッチが広がっているのが判ると思います。クランクケース左右の締結にはM8のボルトがほかにも多数使用されていますが、それらは中空では無いので特に問題は起こりません。いずれにせよボルトの強度が足りないのが原因です。


IMG_0750 ボルトの頭に数字が書いてありますね。伸びてしまう方のボルトの頭のペイントを取り除くと8.8という数字が表れます。黒い方(クロモリと呼ばれている材質のボルト)には12.9という数字が見えます。この数字はボルトの強度区分を表しています。最初の数字は最小引っ張り荷重、次の数字が降伏荷重を表します。
 具体的に言うと、8.8は1平方ミリメートル当たり80キロの引っ張り荷重に耐え、80キロの8割の64キロまでは弾性変形で荷重を抜けば元の長さに戻るということです。12.9なら120キロまで切れずに120キロの9割の108キロまでは元に戻る、ということです。この数字を見ればボルトの強度が一目瞭然です。

IMG_0749 で、当然ですが伸びないボルトも製作しています。強度区分12.9のボルトに穴をあけて製作したのがこれです。最近製作を思いついたわけではなく、ずいぶん昔から自分のエンジンにだけ使っています。(笑)今迄多くの使用例がありますが、さすがに伸びた例は皆無です。締め込んでいくときの剛性感が全く違って安心感があります。最近は穴の開いていない方の合わせボルトもこの手のボルトを使い始めました。ただ表面処理が黒染めなので耐食性を考えて競技車両のエンジンにしか使っていませんが。こっちの方が締め込んて行くときの感触に安心感があって良いんです。弱いボルトだと弾性変形内とはいえボルトが伸びてくる感触が雌ネジが壊れて抜けてしまう前触れの感触ではないかと疑ってしまい、精神衛生上非常に良くないのです。










  
Posted by cpiblog00738 at 19:55

2018年12月12日

開けられたことのないエンジン

IMG_0731 手持ちの999R05エンジンですがこれをベースに競技専用のエンジンを製作することになりました。保管している時には気にしていませんでしたが、いざ開けてみると殆ど新車時のままで開けられた形跡があるのはフライホイール側のカバーだけでした。TFDに来る前もレース専用車だったのですけどね。開けられていないかどうかの判断基準は主に液体ガスケットの状態です。新車時のエンジンは各接合面にグレーのシリコンガスケットが過剰に塗布されているのでそのはみ出し方が独特です。そこに透明や黒のシリコンガスケットが使われていたりすれば開けた履歴があるのは一目瞭然ですし、新車時と同じガスケットを使用したとしてもあんなに派手にはみ出すほどは使いません。純正と見分けがつかないようにわざと多く使う人もいるかもしれませんが、その場合は例外ですけど。
 何はともあれ開けられたことのないエンジンには非常に安心感があります。おかしなことをされていないことが保証されますからね。安心して作業を進めることが出来ます。  
Posted by cpiblog00738 at 20:21