2024年06月13日

MAX10レース in 富士スピードウェイ

FSW-8 先週末の日曜日、富士スピードウェイに於いて「大人のレースごっこ」MAX10のレースが開催されました。私が参加したクラスはSUPER MAXというクラスでしたが、全体の参加台数が少ないために全クラス混走ということでかなりスペクタクルな展開が予想されます。


FSW-2 予選は3番手。クリアラップが取れなかったこともありますが、それよりも良かれと思って変更したフロントフォークのセッティングが結果的にハズレで、セッティングを元に戻して決勝に臨むことになりました。
 スタートは下手くそなのは自覚していますので、今回はスタートに関してはレーシングスタートという意識ではなく街乗りの延長で、とりあえずエンストとバク転は避ける、という心構えで行くことにしました。



 結果は久しぶりのお立ち台の真ん中。何はともあれ嬉しいものです。富士スピードウェイの場合はやはりエンジンパワーが頼りになります。コーナーが速くない自分ですが、直線番長大いに結構、安全第一、何と言われようがストレートでの順位の入れ替えは安全ですから。
 1098Rエンジン、現在でも十分すぎるほど通用しますね。
  

Posted by cpiblog00738 at 01:07

2024年04月04日

今週末は筑波TTレースです、が…。

 今週末は今年最初のレース、筑波TTが開催されます。私もBOTTWCTクラスにエントリーしており、先週、先々週と練習走行も行い、今日は週末のレースに向けての整備作業を行っていました。オイルをはじめとする油脂類を交換、タイヤも新品に履き替え、クラッチその他を一通り点検し、よし、これでOK、となったところでしたが…。

 そのタイミングでクラッチカバーの下部付近に若干のオイルの流れた痕跡を発見しました。オイルはクランクケース最下部迄は到達していませんから、量としては微量です。普通ならパーツクリーナーをスプレーして清掃して終了、としてしまうような状態です。しかし職業柄、一応オイル漏れの場所を確認しておかねばと考えチェックを開始しました。

 クラッチカバーの下ですから、まず疑うのは乾式クラッチからのオイル漏れです。しかしチェックするとオイル漏れの場所はそこではありません。オイルの流れた痕跡をたどるとそこより前側のオイルクーラーへのオイルホース取り付け部分に辿り着きます。しかしそこでもない。もっと上の方から伝ってきています。その上にはタイミングシャフトのプーリーが存在するのですが、このあたりで嫌な予感が‥‥。

 タイミングシャフトのオイルシールからのオイル漏れであれば対応は簡単で全く問題無いのですが、私が自分で組んだエンジンですからその可能性は限りなく低い‥‥。

 DSC01514タイミングプーリーを外して点検するとクランクケースにクラックが発生していました。自分は慣れているので目視すれば判断できるのですが、確認と撮影のために染色浸透探傷剤(クラックチェッカー)を使用してみました。

 う〜ん、昔やっていた全日本のような本気のレースならケース交換をしてレースに間に合わせるということになるのですが、現状ではそこまでしなければならない理由が有りません。従って今回のレースは潔くDNS、応援お手伝い&観戦ということにします。
  
Posted by cpiblog00738 at 18:20

2023年11月17日

筑波TT

 お知らせです。
 明日11月18日は筑波サーキットで筑波ツーリストトロフィーのレースが開催されます。名越はスーパーモノでエントリーしておりますので、筑波まで来ればスーパーモノが実際に走行している様子を見られます。天気も良さそうなので如何でしょう?
  
Posted by cpiblog00738 at 15:00

2023年03月31日

★ 1990年代後半のレース事情 ★ その1

公開にあたって

既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、私は先日筑波サーキット走行中に転倒し、腕を骨折してしまいました。その結果、当然ですが仕事が出来ない状況となってしまい、少なくとも4月の声を聴くまでは療養に専念することとなり、現在開店休業ならぬ閉店休業中です。多くのお客様に多大なご迷惑をおかけする事態になってしまい、誠に申し訳なく思っております。営業を再開した暁にはより一層頑張ってお仕事に精を出しますので、それまでの間は何卒ご容赦ください。

で、仕事が出来ない時間を利用していろいろな資料を整理していたところ、読み物として面白い記事が出て来ましたのでそれをこの機会にこの場で公開したいと思います。この記事は原稿の形式でかなり前から手許にあったのですが、それは用紙にプリントしたものでした。それをウェブにアップするには全体をテキストに打ち直し、尚且つ校正も必要ということでかなりの手間がかかることが予想されました。そのため行動に移すタイミングを逸したまま現在に至ったのですが、今回の怪我をこれ幸いとこの機会に公開することにしました。

この文章は1996年の年末に作成されたものです。当時我々チーム・ファンデーションは全日本ロードレースのスーパーバイククラスに、1994年は芳賀選手、1995年は生見選手、1996年は生見選手と井筒選手の2人を擁してフル参戦中でした。1996年シーズン終了後、来たる1997年シーズンに向けてのレース活動資金の調達を目的にその方法を探ろうと、モータースポーツ関係の雑誌を二輪四輪問わず手広く出版している某雑誌社にお邪魔し、二輪レース専門誌の編集部員の方にその当時のバイクレース業界の内情等をいろいろと伺った時のやり取りをインタビュー記事として起こしたものです。

1996年ということは今から27年前のバイクレース業界の裏話です。ほぼ30年前のことですから内容的にはもう時効という認識でお読みください。ただ、あれから30年経った今の状況が当時の状況とどう変わったのか、変わっていないのか。この辺りに関しては読者によってはかなり興味深く感じるかもしれません。本文は非常に長い文章で申し訳ありませんが是非最後までお読みいただければと思います。

インタビュアーは当時からずっとTFDをサポートしていただいていたライターの辻森慶子さん(本文中ではTとなっています)。質問にお答えいただいたのは当時某二輪レース専門誌の編集部員だったさんです。本来であれば真っ先に掲載のご連絡をすべきところですが、年月が経ち、Xさんとは当時以来長い間音信不通となってしまいました。お元気でいらっしゃるでしょうか? もしこの記事をお読みになるような機会があれば、ぜひご連絡いただけると嬉しく思います。

念のため重ねて申し上げますが、あくまでこの記事は1996年の時点で当時の状況を当事者の主観を交えて受け答えした内容が記されたものです。その点をご理解の上お読みいただくよう、お願い申し上げます。


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以下 本文



ワークス VS. メディアの攻防

T: 四輪に比べて二輪はメディアの露出度が極端に少ないと思いますが、原因はどんな所に有るのでしょうか?

X: 四輪の国内最高峰っていうとフォーミュラ日本、今年からフジテレビがやっていますけど。あそこのチームの運営母体がスポンサー様なんですよ。まずスポンサー様が第一人者で、それをフォローしている広告代理店がいらっしゃる。この広告代理店が動いているんですよ。その下っていうとおかしいけど、そこにようやくチームがあっていわゆる監督さんがいたりドライバー、メカニックがいたりするんです。

 ウチの四輪の編集部員が、例えば「さっきのリタイア原因を教えてください」だとか「テスト項目の中の何をやってたんですか?」って取材すると、ちゃんとスポンサーのスポークスマン、つまり広告代理店のどなたかが「先日のテストの模様はこうでしたよ」とか「リタイアの原因はこうでしたよ」ってちゃんとまとめてくれるんですよ。

 それはあくまでも自分のところのチームが雑誌に露出してほしいし、マイナスの内容でもプラスの内容でも、とにかく伝えなくちゃ、という気持ちを持ってくれているからなんです。だから四輪の編集部員たちはラクっていうか、非常に取材しやすいんですよ。

8_20 二輪はね、ご存知のように、全くといっていいほどスポンサーがいないんです、四輪に比べて。で、何処で止まっているかというと、バイクのメーカーがやっているんですよ。メーカー主導型ですと、どうしても企業秘密があるじゃないですか。当然レースだけじゃなく、自社の市販車、市販レベルにフィードバックしてオートバイを売るわけですよね。つまり、レース車両っていうのはテスト車両なわけで、いろんな技術だとかテスト項目だとかをつぎ込んでいくから、一見さんの編集者が行っても話を聞かしてくれないんですよね。ひどいところに行くとピットのシャッターを閉めちゃったり。

T:そうなんですか。じゃ、個人的なコネクションやいろんなルートを使って、そして親しくなってやっと情報が出る

ようやく。まあ、ほんとに駆け出しの編集者の人なんて苦労しますよね。現に、平日の鈴鹿サーキットでHONDAのテストをやってて僕が行けなかった時に、たまたまF3000のテストやってるから現場に行ってたウチの四輪の編集部員に「相乗りで覗いてきてくれないか。タイム聞いてきてくれよ」って頼んだんです。とりあえず僕の名前出さないで。「ちょっと四輪の取材で来てて、バイクも好きなんですけど。今、あの人どのくらいで走っているんですか?」と平身低頭に聞けば、結構教えてくれるかもしれないからって。

 そうしたら、一切シャットアウト。一見さんには絶対教えない。で、四輪の編集部員が、「何なのいったいコイツら。おかしいよ、二輪」って言いますからね。

T:そうなんですか(笑)

X:だから、もうライダーなんか人格なしですよ。ワークスライダーと言われる人たちは。

T:言いなり。

X:そう。下手なことは喋れない。そんなもんですからね〜。どこのメーカーさんも敷居が高いですよね。

T:同じワークスチームの中でも、ライダーによってチューニングが違ったり、一番いいバイクはこのライダーとかいうのは有るんですか?

X:やっぱり、現実にはあるんですよ。優先順位というのはあって、例えばHONDAという会社が2人のライダーを抱えてるとしますよね。メーカーとしてはレースをするんですから、まず勝ち負けですよね。そのシーズンのチャンピオンを獲りたいというのがある。

 まず開幕前、2人のライダーAさん、Bさんを抱えてた場合に、どっちの方がタイトルに近いかな、と実力のサジ加減を見るわけですよ。で、これはAさんだ。じゃ、とりあえずメンバー的にも、お金的にも、Aさんの方にいいもの付けたり人員を増やす。というのが何処のメーカーも差はあれやってることは事実です。

 もう一方では、先程申しましたように、新しいオートバイの開発っていう目的も担っています。勝ち負け以外の方ですね。新しいクルマを作っていかなきゃいけない、技術を試して行かなきゃいけない、という側面もありましてAさんをレースに勝つ方に向けたら、じゃBさんにはちょっと泣いてもらって、新しい技術の開発ライダーとして頑張ってもらおうという側面もあるんですよ。

 だからレースの勝ち負けってことでは優先順位があるかもしれないけども、仕事を2つの目的に分けると、それぞれ次元が元々違うんで。両方に違う目的でやってるチーム、というかメーカーという感じがありますよね。

T:でも。ライダーって勝ちたいじゃないですか。みんなちょっとでもいい条件、いいバイクに乗りたいと思っているわけですよね。

X:ほんとにおっしゃる通り!開発を担う、「今年はちょっと泣いてもらうよ」とお達しされたライダーはやっぱりショックですよね。それでもって言い訳もできないんですよ。つまり、いろんなテスト項目があるということは、遅いじゃないですか。要は、未来につながる市販車のオートバイだったり、はたまた自分のところの素材を使ってレースをやってくれている人たち向けのレーシングパーツ開発なんで。不良品もあるかもしれないし、耐久テストもやんなきゃいけないし。こっち(レース主体)は速くて軽いバイク、逆にこっち(テスト用)は重くて耐久性あるバイク。そうなるとレースに勝てないですよね、タイムも伸びないし。

 とすると、僕らが取材に行って「なぜタイムが伸びないんですか」って聞くと、ほんとはもう言い訳したくてしょうがないんですよ。だけどワークスライダーっていうのは人格なしですから、企業秘密は全く語りません。「いや〜、僕の実力不足です」としか言えないんですよ。

 それは僕ら雑誌屋がですね、ライダーに聞いてもそういう返事しか返ってこない。だから僕らが監督さんとかエンジニアの人に、「あの人が使っているのは、どういう目的のクルマなんですか?」「今回どういうパーツが付いているんですか?」「どんなテストをしてきたんですか?」というふうな取材をすると、ライダーの言い訳がスッと読める。自分じゃ言えないけども、上の人が言ってくれたんなら全然問題無いし、逆にその言い訳をしたかった部分なんだから非常に助かる。ってそんな感じなんですね。

T:なるほど。なかなか複雑なんですね。

X:すごい複雑ですね〜。ハードだけじゃなくって、メカニックの人事だとかチーム監督さんの性格だとか。もともと持っているメーカーのキャラクターだとか、それはもう普遍的なものだし。ちょっとでもメカニックとの相性が悪かったりしてもダメだし。

 ライダーとメカニックってピッチャーとキャッチャーみたいなもんで、メカニックと意思疎通できないライダーっていうのは、どんなに速いライダーでも上位に行けませんね。名ライダーの陰に名メカニックありですよ。決して、名ライダーがあってダメなメカニックさんがいる状況でチャンピオンは生まれない。

 

 バイク業界は社会のアブレ者!?

T:バイクレースがあるのは知ってるし、世界グランプリは時々観たりします。そういうものが存在して、頂点がどこにあって、国内ではどこが最高峰でっていうことぐらいは認識できるんですけれども、内部がどういう仕組みになっているかがよく分からないんですよね。それが今回お話を伺いたいなと思ったきっかけにもなってるんです。

 モータースポーツの日本国内での市場、特に二輪の場合はどこらへんの位置にあって、どういうポテンシャルとか面白味があるのか、どういう醍醐味があるのか。例えばスポンサー探しとかをする時に、どういうアプローチをすればいいものなのか。ご意見を伺いたいなと思っていたんです。

X:なるほど〜。名越さんがどう言うか分かんないですけど、全くTさんのお仕事を無視したところで、私なりの私見っていうか持論を言うとですね、二輪のレース業界というのは社会のアブレ者状態です(笑)。

 これはですね、産業構造上欠陥があるんですよ。たとえばF1ですとかフォーミュラ日本では、必ず儲けてる人たちがいるんですよ。それは広告代理店さんとか、ものすごいお金を持っているスポンサーさんだとか。ま、メーカーさんだったり、とにかく必ず儲かってる人がいる。

8_9 二輪のレース業界っていうのはですね、儲かってる人が1人もいないんですよ。まず、レースを運営している主催者さん。で、そこで走るライダーさん。え〜、それからライダーを連れてきているメーカーさん。それを取材している僕等雑誌屋。この4者、誰1人儲かってないんですよ。誰か一人でも儲かってれば、そこに金があるんだっていうことで、みんなそこから「お金ちょうだいよ」とか。なんかお金の出所というのが分かればうまく回ると思うんですけど。みんなみんな、お金がないとこでやってますんで。全くですね、資本主義の社会からアブレちゃってるんですよ。

 ライダーの契約金なんていうのは、ほんとに四輪の選手から比べると10分の1くらい。高〇虎〇介っていうのが日本にいますけど、あの人のパーソナルスポンサー、メインのPIAAさんとか、いろいろ広告に出られたりとか、そういうのも入れて推定年棒は1億円くらいなんです。

かたや二輪の今年のチャンピオン。HONDAの青〇琢〇っていうのがいるんですけど、ヤツと話をしている限りでは、HONDAから貰ってる契約金なんていうのは2千万円。だいたい5分の1ぐらい。高〇虎〇介なんてタイトル獲ってないんですよ、別に。青〇琢〇は2年連続の国内最高峰クラスでチャンピオン獲ったにもかかわらず、たった2千万円。所属しているチームの1番シートにいても、「そんなにあげられないよ」って言われる。だから、まずライダーからして儲かっていない。

で、メーカーは二輪車を造っても儲からない。レースなんて莫大なお金がかかりますよね。それがそれだけ営業用のおいしいツールになってるかっていうと、なってない。

それから主催者。観客動員、要は観客の人がチケットを買ってくれるかどうか。あとは大会スポンサーにどっかの会社がついてくれたかどうか。シチュエーション見ると全くこれも良くないですよ。 

で、私ら雑誌屋。こ〜れもですね、ご多分に漏れず他が潤ってなければ儲かるはずがない。

T:雑誌の発行部数は四輪より全然少ないんですか?

X:総体的には四輪よりは低いですね。世の中に出回っているレース専門誌やなんかでも、単純に二輪誌/四輪誌って数を見ただけでも。二輪誌って全国に30誌ぐらいしかない。四輪誌は100誌ぐらいあるらしいですからね、エリアマガジンも含めて。それだけ四輪のマーケットは大きいですし。

T:二輪ファンの年齢層は低いんですか?高級車にはちょっと違う層の人達がいるようですけど。

X:まず、サーキットに来てくれている観客の内訳っていうのは分からないですけど。ウチの読者でいうと2030歳代前半ぐらい。世の中の雑誌を買おうというのは、やっぱり20歳代が中心になってますけど、それからは外れていない。けれどもウチの読者はですね、新しい方、10歳代とか若い人たちの読者は全く増えていないといっても過言じゃない。

 じゃ、どういう読者たちかというとですね、二輪のレースって80年代後半からすごい盛り上がったんですよ。それが9091年ぐらいでピークを迎えて、後はもう落ち傾向なんですよね。それは雑誌だけじゃなくて、メーカーももちろんそうなんですけど。その80年代に一緒に盛り上がったファンの人達が、そのまま歳食ってもいまだに買ってくれてるっていうことなんですよ。

 サーキットに来てくれてるお客さんっていうのは、ウチの読者みたいな人達プラス、ライダーの追っかけみたいな親衛隊みたいのがいまして、女の子を中心に。その子たちが全体の3分の1ぐらい。まぁ、体感的ですけど。あとの3分の2は、やっぱり昔からレースを好きだった80年代のファン。昔やってたけれども今は家庭を持ってる、でもやっぱり二輪が好きっていう人たちが来てる。

T:ということは、だんだん二層になってくる。若い子たち、グルーピーのような層と、どんどん年齢が上がっていく層と。今後の可能性はそういうことなんでしょうか。

X:ほんとに女の子たちって動向がつかめない。たとえば、お目当てのライダーが彼女を連れてるのを見ちゃったりだとか、結婚しちゃったりすると、もうプイッと興味なくしますんで。そうすると彼女たちは新しいライダーを見つけるか、見つからなければそれこそジャニーズ系に行っちゃったりとか。

T:アイドル代わりなんですね。

X:そうなんですよ!こういうファンももちろん大切なんですけども、非常に難しい。だから、純粋に二輪のレースが好きだっていう人たちを増やさなきゃいけないんですよ。そのためには僕等雑誌だけじゃなくて、メーカーさんにも協力していただいて、主催者にも何とか努力していただかなければ。

T:あまりにもメディアの露出度が少なすぎますよね。

X:四輪よりもメディアは少ないし出る機会も少ないんですけれども、お客さんのだいたい3分の2が昔からレースをやって来て年齢を重ねた人たちというのを見るとですね、僕は逆に目は肥えてるんだと思うんですよね。自分で勉強されているし、単純にレースの勝ち負けじゃなくてコースの走りを見たりとか、そういう玄人の人達が増えてると思うんですよ。

 四輪だと、見た目の派手さだとか「きらびやかさ」という部分で観ている感じもアリだと思う。ところが、二輪の人達は研究熱心で見るところがほんとに専門誌、僕等編集者なみの見る目を持ってたりしますんで、非常にレベルが高いと思うんです。

T:例えば、ヨーロッパなどではレースが人気ですよね。日本よりはるかに歴史がありますでしょうし。ファンの年齢層は高いんですか?

X:ヨーロッパとアメリカはですね、すごい年齢層が幅広いんですよ。

T:観る方も乗る方もですか?レースをスポーツとして観るような土壌があるとか。

9X:スポーツというか、文化というか、言葉だと陳腐になっちゃうんですけど。ほんとに二輪っていうものが、テニスやらフットボールやら、その辺のスポーツと変わらない目で観てもらっている。もちろん、例えばアメリカであればバスケットボールとか野球が人気で、二輪が好きだっていう人は少ないんですけれども。内容がですね、日本とは比べ物にならないくらいスポーツとして捉えられているんですよね。まあ、お国柄って言ったら簡単すぎちゃいますけどね。やっぱり基本的に走ってるライダーがスターだったり、夢だったり、普段観られない存在だったり。レース自体もすごく興行的で見せ場が多く1日楽しめる。そんな感じになってるんですね。

 日本のレースですと、とにかくやってる人達が借金抱えてますんで〜、悲壮感が漂ってくるんですよ。

T:そういう事情があるんですね(笑)。

X:そうなんですよ。例えばSMAPのキムタクがですね、あれだけカッコよくても実は銭湯に通ってたとか、石鹸はお歳暮で済ましてるとかいうと、ガッカリしちゃうじゃないですか。やっぱりSMAPのキムタクは突き抜けてて欲しいっていうのがありますでしょう?

 それが日本のレースだと、どうしても石鹸はお歳暮で間に合わせるとか、タオルは読売新聞の販売ツールとか、見えて来ちゃうんですよ。いくらワークスライダーといえども、その辺がヨーロッパとかと比べるとまず違う。

 あと、レースの内容的にもはるかに周回数が多かったり、抜きどころが多かったり、激しく喜怒哀楽があったり。ドラマ仕立てでお客さんを楽しませようという努力を、主催者側もライダーもメーカーもしているという感じがするんです。

T:そうするとアメリカとかヨーロッパのライダーは結構優遇されているんですか?経済的にもある程度保証されている状況ですか?

X:総体的には日本よりも優遇されていると思います。アメリカは賞金レースが殆どですし、ヨーロッパでも賞金レースは多いです。イギリスではライダーで世界選手権を戦うと貴族の称号を貰えたりとか、イタリアでは英雄になる。スペインもほんとにすごい。やはり日本よりはライダーは優遇されてるだろうと思いますね。遥かにメジャーですし。

T:世界GPでは原田選手がかつてチャンピオンになってますし、岡田選手もすごいですよね。ノリックも頑張ってる。そういうのって記事としてちょこっとしか出ないですよね。ここまで頑張っているスポーツって日本では実はあんまりなかったりするのに。

X:そうなんですね〜。それがモータースポーツを難しく見せちゃってるんですよ。陸上競技とかテニスとか道具がすごいシンプルじゃないですか。例えば陸上競技だったら、シューズとかウェアくらい。素材にはメーカーさんもこだわって、最新素材とかありますけども。まぁ、たかだかシューズとウェアくらいですよね。あとは、ほんとに人間対人間の勝負ですから。

 ところがモータースポーツっていうのは道具が複雑怪奇なオートバイとか車になって、まず道具を知らなければできない。面白くないんじゃないか。しかも負けたライダーは、やれタイヤがどうのこうの、あそこがブッ壊れたからどうのこうの、言い訳するじゃないですか。そうすると、ますます一見のお客さんは「それは何処なの?」「全体の、走るうえで何の支障があるわけ?」「なんでそんなものを付けるわけ?」となる。

 単純に勝ち負けを楽しみたいのに、あまりにも道具が複雑だったりライダーが言い訳するもんで、トラブルだとかを分かってないと楽しめなくなる。っていうように見せちゃってる我々メディアの責任もあると思うんですよ。

 アメリカのレースなんて、「難しいことヌキで単純に同じ道具で戦いましょうや」というレースが多いんですよね。

 逆にそういうレースもありつつ、「何でもやっていいよ、道具何でも使ってください。排気量なんて50ccでも1000ccでもいいから、とにかく勝ち負けやってごらん」っていうレースも有ったりして、海外のレースは非常に分かりやすいんですね。

T:日本では構造的に難しいんでしょうかねえ。

X:まずメーカー主導というのがあって。企業秘密とか最新技術みたいなものがあって、テストの場でもあるわけですよ。そんな傾向は、一方ではしょうがない。逆にアメリカとかヨーロッパというのはバイクを造っているメーカーなんか1つか2つくらいしかないし、日本のクルマよりはるかにレベルが低いじゃないですか。だから、日本のクルマを買ってくるか自分とこの細々とやってるメーカーのクルマでやるしかないんですけども。自分とこで造ってないから、ライダーもチーム運営してる人たちも、「じゃ、もう運ちゃん勝負でいこうよ」ということになるんですよ。だから、向こうのチームはライダー主体でやってるんですよね。

T:やっぱり、日本的な構造って感じしますよね。陰湿さっていうか。

X:私の前任の担当者が、今は四輪の方に行っちゃったんですけどね、ある時YAMAHAワークスに取材に行ったんですよ。で、さっきのレースでトラブルでリタイアしちゃったんで原因を聞きに行った。そしたら、その人を見つけるや否やピットのシャッターを閉めだした。「ちょっ、ちょっ、ちょっと待ってください。さっきリタイアしたトラブル原因聞きたいんですが…」「我々は報道されるためにレースをやっているわけじゃない!!」バシャッと閉められちゃった。四輪だったらこんなの絶対通用しないんですよ。だけど、そういう気持ちがメーカーにはありますし、日本のレースを運営しているのはメーカーなんで、そういうスタンスを取られると、伝える側としても限度がありますね。難しいですよ。

<続く>

  
Posted by cpiblog00738 at 19:50

2023年03月27日

★ 1990年代後半のレース事情 ★ その2

衝撃のチーム・ファンデーション


T:ワークス主導っておっしゃってましたけど、メーカーの中に名越さんのようなプライベーターが入って来て、おまけにチーム・ファンデーションって成績いいですよね。画期的なことだと聞いているんですけど。


X:すごいですよ!画期的ですねえ。全日本ロードレースでスーパーバイクといえば最高峰で、そこには4メーカーがひしめきあってるわけですよ。もう、お金かけてまして。その中にプライベーターの参入というのはまずない。さらに外車なんか使うとなると、パーツですとかデータですとか、情報っていうのが少なくなる。不利な条件が多いですよね。


 チーム・ファンデーションのドゥカティがワークス勢に割って入るレースを見せてくれると、非常に私ら雑誌屋としても企画性が出てくるし、観てる人たちも頑張れ!っていう判官贔屓みたいなところもありますね。そのおかげで、ぼちぼちとドゥカティを使って、「あそこができるなら俺たちもやろうじゃないか」っていうチームがここんとこ増えて来ましたからね。そういった意味では、非常にプライベーターの人たちには夢がある。


T:構造的なところはすぐには変わらなくても、プライベーターの活躍は何がしかの影響、意識の変化は与えているんでしょうか。


X:14これは名越さんの活躍も含めてなんですけど、かなりありますね。

 全日本のスパーバイククラスっていうのは国内の最高峰なんですがもう一つ世界選手権のスーパーバイクっていうのがあるんですよ。これ、全く日本と世界が同じレギュレーションのルールでやってるんですけども。スーパーバイクのレースっていう意味ではですね、全日本よりも世界選手権の方が実はおっきいんですよ。そこで頑張っているのが、名越さんが使っているイタリアのドゥカティというクルマなんです。それが今年、去年と日本の4メーカーを蹴散らしているんですよ。日本の4メーカーはこぞって750ccの4気筒エンジンで走ってるんですけども、ドゥカティみたいな2気筒だったら1000ccまでいいというルールなんですね。750ccは、すごくお金をかけて莫大な計画で人員を世界に送り込んでワークス活動をやっておるんですけども、ドゥカティ2気筒1000ccイクに負けちゃうんですよ。


 しかもドゥカティというのは売れてまして。レースの波及効果っていうのもあるんですけど、乗ってて楽しいしカッコイイし。日本だけじゃなくて世界各国で売れている。特にアメリカではすっごい売れてるんですよ。


 かたや日本の4メーカーの4気筒750ccは、あれだけレースをやってるのに全然日本で売れてないんですよ。ちょろっとアメリカでKAWSAKISUZUKIが売れましたけど・・・。4大メーカーにしてみたら、ドゥカティはレースでも勝ってるし売れ行きもいい。


 で、全日本のレースでもプライベートのチーム・ファンデーションみたいなチームが俺たちのレースに割って入って来ている。・・・ということで、色々鑑みたんでしょうけども、ここに来てHONDASUZUKIがドゥカティと同じスペックでルックスの似たようなクルマを出して来たんですよ。


T:どうなんですか、売れ行きは。


X:ん〜〜〜・・・()


T:コメントしにくいですか()


X:ドゥカティが売れているから、そのスペックで出すというのがHONDASUZUKIのクルマなんですけど。どこまで日本のクルマを世界のユーザーさんが受け入れてくれるか・・・。日本のクルマってモノ的にはいい、耐久性もあるしパーツもしっかりしてる、スペックもいいでしょうけど。もともと2気筒の1000ccで走っていたドゥカティとかハーレーダビッドソンに比べて、その〜、心情的な部分で売れるかどうかというのは非常に難しい。


T:以前バイクに乗ってた時に、上の世代の人達とツーリングに行ってたんですけど、日本の昔のバイクって味わいがあっていいって、すごい丁寧に整備するんですよ。「可愛い、可愛い」って感じで。


X:分かります。私もその世代ですから。


T:そういう人たちは、すごい楽しんでる感じがしたんですけど。ある時期からバイクは、便利で乗りやすい、故障が少ない。そういうところで人気が出ちゃった感じがするんですけど。


X:ん〜とですね、すごい話が広くて絞りにくいんですけども・・・。僕が感じているのは、今Tさんがおっしゃった通り、昔はオーナーの人が手塩にかけてオートバイに乗っていた。いわゆるバカな子ほど可愛いという状況だったんですよ。適当に風邪をひいてくれたりですね、何か心配をかけてくれた方が可愛がられるんですけど。


 今の日本のメーカーさんが作るオートバイって研ぎ澄まされちゃって、もう格好も何もかも。ユーザーさんが何か手を加えるっていう余地がないんですね。性能的にも、デザイン的にも。それこそ昔は、みんなと同じじゃイヤだからハンドルを換えてみたり、マフラーを換えてみたりとか、この音が今までと違っていいんだとか。そういうこだわりみたいなものがありましたけど、今は手を加えると逆に性能ダウンになったり。まとまりの良すぎるデザインだから、何か一つ換えてしまうと浮いちゃったりとか。もうユーザーが手を下す余地がないんですよね。


8_8 それっていうのは、ほんとに余計なお世話の範疇で・・・。メーカーがやりすぎちゃってると思うんですよ。まあ、ここんところメーカーさんも気付かれて。というか時代は繰り返されるじゃないですけども、昔のオートバイの復刻版みたいのが出たりですね。今オートバイに乗って楽しんでる人たちというのは、オリジナルのオートバイに乗りたいだとか、自分の手塩をかけて面倒見て行きたいっていう人が多いんで。そういった余地を残したバイクというのが、最近になって出るようになりましたね。


T:輸入車に乗ってる人は国内で増えてるんですか。


X:すっごい増えてますね。それは、今の話じゃないですけども、日本のクルマがつまらないから。手は下せないからみんなと同じバイク、同じカラーリングで、同じスタイルで、それじゃイヤだからちょっと大型免許でもとって、ハーレーに乗ろう、ドゥカティに乗ろう。ロードバイクだけじゃなくってオフロード車っていわれるイタリア○○○○に乗ろうだとか、外車ブームですよね。


T:購買層ってどうなんでしょうか。


X:若い子が買うんですよ。特にね、最近はハーレーダビッドソンが非常に売れてまして。何て言うのか、ハーレー=イージーライダーだとかアメリカ映画みたいに、ちょっと不良っぽいじゃないですか。渋谷にたむろしている若い子達の間で、人と違ってハーレーを買う子達が増えてるんですね。


 じゃ、ハーレーがレースで勝ってるか、いい成績を上げてるかっていうと、全然そんな事ないんですよ。性能は上がってるかというと、相変わらずマイナートラブルがあったりですね、結構故障も多いんですよ。けど、やっぱりね、若い子に受け入れられてるんですよ。


 で、若い子たちはハーレーが壊れても治せないんですよ。もう、完全にルックス。ワルっていうイメージがカッコイイ。ほんとに80年代、僕らが興味を持った意識と、今外車を買おうっていう人たちっていうのは違いますよ。


T:かつてはマニアック志向、今はファッション志向っていう感じなんですかね。ドゥカティも今、そうなんですか。


X:アメリカのハーレーはワルっていうイメージで、割とスタイリッシュなところからみんなファッションでとっていますけど。逆にイタリアのドゥカティはですね、これは玄人。さんざん国産に乗ったんだけども、つまんない。もう性能なんてどうでもいい。何百キロ出ようと関係ない。もっと楽しくて、他にはなくて、そういったものを求めた20代後半から30歳代、40歳代の人、オートバイの酸いも甘いも知っちゃった人がドゥカティに乗る。これは渋谷のハーレー族の人たちとは違った年齢層だし、意識的にも違う。そういった人たちは工具も持っているし、仲のいい、名越さんみたいなショップとはリレーションを持っているし。そういう方は乗り手として非常に玄人ですね。


T:その人達はツーリングに行ったりするんですか?


X:行ったりしますね。いろんなパーツが出回ってるんですけども、あれだけのメーカーになると。世界各国いろんなパーツメーカーさんがあって、ドゥカティ対応パーツが出てる。で、たとえばツーリング先でドゥカティの916っていうクルマに誰かが乗ってたりすると、何付けてんのかとか、レースの現場に行ってチーム・ファンデーションってあそこどうやっているのか見る。


T:見学に行くんですね。


X:そうなんですよ。レースそのものを観るっていう側面と、もう一つはクルマに何がくっついてたり、どういうものに対応してたりするのか見る。見る目がすごく肥えていて、「俺はこういうふうに駆動方式を変えているのに、チーム・ファンデーションはこうやってるんだ」とか。


 あとメンテサイクル的には、耐久性のないエンジンパーツってどこなのか。そういったこと。


T:ということは、名越さんはメカニックとしてすごいってことですよね。


X:もう、僕ら業界内で国内ではドゥカティを触らせたら名越さんは日本一じゃないかと言っているんですよ。それほどですね、イタリアのバイクっていうのはほんとにダメな子でして()パーツの耐久性は勿論のこと、フィッティング技術、要はバイクをメンテナンスする時に一度バラしますよね、それを正しいパーツで元に戻す時の単なるフィッティングだけでも非常に難しいらしいんですよ。


 例えば、合わせ目がちょっと狂っていたりとか相性が悪かったりすると、簡単に馬力が落ちちゃうし性能も落ちちゃうんですけど。そういうフィッティング技術も名越さんの腕は確かだし、パーツを見定める目とか、サーキットを走らせるコーディネート能力も確か。いろんなセッティングパーツがありますけども、それをわずか短時間で組み合わせてタイムの出るセットに持っていくセッティング能力。いろんな側面を併せてみても、名越さんは一番。


 みんなドゥカティを走らせたいんだけど、そのメカニックたる人がいないから走れない。基本性能を保つのが非常に大変なバイクですよね。イタリアから買って来て、1発目はいいかもしれないけど、すぐガタがきますよ。じゃ、それを2発目のレースで保たせようとすると、非常に大変。



8_7T:年間、何回かのレースがありますよね。大会によっては2ート制の時もありますが、そういう場合のセッティングは大変なんでしょうか。


X:ま、1日のうち2ヒートある時はそんなに変わらないと思うんですよ。タイヤが消耗したとか、タイヤを新しいものに換えるとか。ちょっとセッティングを変えたんで説明しとくとか。もうレースの決勝となれば、何もできない状態ですから。


 それよりも金・土曜の2日間のうちにですね、どれだけそのバイクの特徴を生かして良いタイムで走れるクルマが作れるか、というのが非常に大変だと思うんですよね。


 バイクが転んじゃってほとんどエンジンだけしか生きていない状況になると、イタリアに電話かけたり、日本の代理店の村山モータースに早くパーツをくれって言っても、イタリア人はなっかなかいい加減ですからレスポンスは非常に悪いんですよ。


 だから、パーツのマネージメントはもちろんですけども、そういったところに気を遣っていく。さっきのフィッティング技術もそうだけど、そのためにケアしていかなきゃいけないところが非常に多いんですね。


 日本のメーカーさんで同じクラスを走らせようと思うと、相手が日本にいてくれますからラクなんですよ。サービス体制もしっかりしていますし。ワークスチームってそれぞれ自分のチームのライダーを走らせてるだけじゃなくて、レース専用バイクを売ってるんですよ。すごい高くてね、2千万円とか3千万円とかしちゃうんですよ。だからみんな借金して買う。そうすると各メーカーからですね、金額もおっきいですしレースは難しいですから、ちゃんとサービスマンが付いてくれるんです。レースの現場に行くと、自分とこのチームでセッティングをやんなきゃいけないんだけどもメーカーの人が買ってくれたお客さんってことでアドバイスしてくれるんですよ、パーツをくれたり。だからこのクラスは、たいてい日本のメーカーで走る人が多いんです。


 ドゥカティの名越さんみたいな人は、誰も助けてくれないんですよ。


T:フルマニュアルっていう感じでしょうか。


X:そうです。本来ならイタリアから、世界的に発信されてるレースですからサービスマンが付いてもいいぐらいなんです。名越さんはほんとに一人。よくやってるなって感じですよね。


T:今年の結果では、〇山さんのチームも、あとドゥカティのプライベートチームも上位に入って来てましたね。さっきおっしゃってた効果とか、出場する車両は増えてますか。


X:増えてますね〜。ドゥカティだとHONDAのバイクの10分の1ぐらいのお金で済みますし。パーツの供給とか、メカニックがいないとできないっていうネガ要素はありますけどもまあ安価でできるっていうのと話題性の部分ではいいんで増えましたよね。


 最初は名越さんの1チームで、ドゥカティがまともに戦えんのかなとか思ってたんですけど、戦えちゃって。で、こうして他のチームもドゥカティを使うようになって来て、これは名越さん効果以外の何ものでもないですね。


T:ライダーの芳賀さんがワークスにヘッドハンティングされたのもそういう効果ですね。その後の本人の活躍もありますけども。


X:若いライダーっていうのは、ゆくゆくはメーカーのお抱えになりたいんですよ。


T:安定するから。


X:そうなんですよ。やっぱり雑誌の取材も違いますし、勝てるバイクも来ますし。ま、ほんとに職業ライダーとして名刺も持てるだろうから、上手くチームに入りたいでしょう。そうすると4メーカーのお膝元に行きたいわけですよ。ほんとはドゥカティで走りたいんだけれども、今はHONDAのバイクで走っていて、ゆくゆくは目をつけられて雇ってもらえないかなっていう下心があるから、なかなか難しい。痛し痒しで。


T:名越さんに話を聞くと、業界は狭いし若いヤツらは頭悪いし、ライダーはただ乗るだけ、みたいな印象を受けるんですが。頭のいい子とかカンのいい子もいるんでしょうけど、やっぱり全体にあんまりものを考えていないというか()


X:そうなんです。レースに勝つ負けるっていうことになると、じゃ誰が最終的にレースに向かうのか。やっぱりライダーだと思うんですよ。もちろん名メカニックというのも必要ですし、エンジニアも必要になってくるんですけども。基本的にスタート切っちゃったら、どうにかするしかないんですから。その、金・土曜の2日間の煮詰め方だとか、クルマはこういう方向で今回のレースに望みたいんだっていうのはですね、やっぱり乗っかってレースをやっている運ちゃんがイニシアチブを握っていないと。それを運ちゃんから聞いて、メカニックなりにアレンジしてクルマを作っていくのが、美しい形、理想だと思うんですけども。


 今の若いライダーっていうのは、あんまりクルマのこと知らないんですよ。どうしてこういう挙動になって、どうしてタイムが伸び悩むんだろうっていうと、全然分かってないんですよ。で、すぐこのタイヤが悪いんだとかですね、○○○が動いてないからだとか言うんですけども、ほんとにそうなのか。実はエンジンの部分で何か不都合が生じてるんじゃないか。これはもう、メカニックの名越さんじゃわからない範疇ですから。ライダーから教えてもらわない限り分かんないですよね。


 そういった部分では、今の若いライダーって完璧に乗り手一本槍になっちゃって、クルマを詰めるのはメカニックに任せっきりってことがおおいですから。タイムが伸び悩んでいて「どうなの?」っというとですね、「ん〜、何となく・・・」とか。


 イニシアチブを握れないんですよね。どこのメーカーのメカニックさんもですね、ライダーにイニシアチブを握ってもらいたい。ライダーがレースで勝つクルマを煮詰めていって、それを聞いてメカニックはフィッティングしたり、いろんなパーツをモディファイさせてったり。ま、そんな部分で今の若いライダーっていうのは、出来きれてないですよね。


16T:ライダーの育成を企業は考えてないんでしょうか。


X:割とトレーニング、体力面ですとかメンタル面では育成はしているんですよ。ただ、クルマを作っていかなきゃいけないんだとか、どうしてワークス契約になっているかっていう、仕事の内容、意義みたいなものは育成しきれてないんですよ。


T:これってオフレコかもしれませんけど、企業の意識の低さなんですか。


 例えば、比較できるものじゃないかもしれないですけど、セナは天才的だったと言われてますよね。どういうふうに踏み込めば、どういうふうにクルマが動くかがコンピューターのように分かったと言いますけど。そこまでは望まないにしても、F1の人たちはそういう意識を持ってレースに臨んでるじゃないですか。お抱えになるっていうのはそういうことだと。二輪の場合には難しいんでしょうか。


X:ただ、ライダーの年齢がおしなべて若いですから。例えば小学生の低学年の頃からミニバイクレースとか、わりと親がクルマを作ってあとは乗るだけっていう状態で甘やかされてきてるんです、なかなか勉強する機会が巡ってこなかった。それで10歳代後半になって、全日本ロードレースっていう場で活躍し出したその子にですね、もう1回オートバイの構造でも勉強し直してこいと言ったって、なかなか難しいですよね。だったらメンタル面と体力面でフォローしてやって、クルマを作っていく部分ではもう泣こう、と。そのかわり「お前らには人格なしだよ」ってことですね。


T:あ〜、厳しいですね。


X:要は、技術者がコンピューターかキャドとかで設計しますよね。で、実験室でエンジンスペックを測ってみたら、鈴鹿のこの気温でこの湿度でこういう路面状況だったら、このぐらい出る、っていうのがコンピューターではじき出せるんですよ。だからライダーには、「これだけ出るんから、これだけを目標値として走ってください」となる。


 何がおかしいとか、ここにトラブルが出るとか、メーカーの方でコンピューター予測しとくんですよ。だから、構造的にライダーに期待しない。それが出来る日本のサーキットは問題無いんですけども。名越さんみたいに相手がイタリアで、しかもいい加減なイタリア人で、パーツをくれって言ってても来なかったりすると、じゃ、しょうがない、現場で名越さんの器量で何とかして踏ん張っていかなきゃならない。となると、やっぱりそこにはライダーのイニシアチブが必要になって来ますよね。「ここは泣くから、ここはこうして欲しい」とか「ここはこういう症状が出てるから、ここの部分で補おう」とか。そういったイニシアチブを握れるライダーが、ほんとにああいうチームには必要になってくるんじゃないですか。


<続く>

  
Posted by cpiblog00738 at 19:40

★ 1990年代後半のレース事情 ★ その3

チーム・ファンデーション 歴代ライダーたち


T:今までのチーム・ファンデーションのライダーはどうですか。


X:僕は、芳賀紀行はすごい目の付け所が良かったと思いますね。アイツは名越さん泣かせで、よく転けるんですけども・・・。アイツがA級に上がって、国内最高峰クラスに上がって来た頃は、全然うだつが上がんなかったんですよ。いいものは持ってたんですけど、マシーンに恵まれなくてあんまり陽の目は見なかった。


94_6 それがチーム・ファンデーションに入ったら、みんなが驚いたんですね。「芳賀紀行、こんなに速いヤツだったんだ!」と。あの活躍が今のYAMAHAークスライダーに繋がると思いますし。ほんとセンセーショナルでしたね、成績も良かったし。


T:今年の8耐では優勝もしましたしね。


X:ええ。今は生見君っていう人が乗ってますけども。彼はずっとワークスライダー畑をきて、年齢的にはもう30歳かな。だから酸いも甘いも知っている人だと思うんです。そういった意味では、今の若い子みたいな派手さは無いですけども、非常に玄人好み。


95_3 国内最高峰のクラスでワークス勢に割って入っているチーム・ファンデーション、名越さんのチームってドゥカティに乗っている人たちのお手本だと思うんですよね。ちょっと大きくしちゃえば、夢みたいな部分で。そんな意味で、生見さんの起用っていうのは共感を得ると思うんですよ。年齢的にも近いですし、単にバカな若いライダーでもないですし。インパクトは薄いですけども非常に玄人好み。


T:確実にポイントを積み重ねていくようなタイプですね。井筒選手はどうでしょう。


X:井筒仁康!!ん〜〜〜〜〜〜。正直、僕、井筒選手とは繋がり無いんですよ。ただね、ルックス的にはカッコイイんですよ。両極端でいいと思いますよ。生見さんでオヤジドゥカティを引き寄せといて、井筒君で若いミーハーの女の子たちを引きつけるという・・・・。


97_suzuka8T:ライダーとしてはどうなんでしょうか。


X:結構、怪我してまして、井筒君。その後遺症だとかで、なかなか上がってこれませんよね〜。


T:言葉が出てこないですね〜。


X:いや、僕個人的にはドゥカティは子供に乗って欲しく無いんですよ。さっき紀行の話が出ましたけど、紀行はバカすぎて、まあ可愛いんですけども。あんまり子供の人はですね、あの〜、ドゥカティというイメージじゃないんですよね。


 ドゥカティを走らせる時、国産には無い味みたいなものがあるんですよ。2気筒ゆえのパワーの出方だとか走らせ方だとか、タイヤの滑るポイントも違いますから。ほんとにクルマの挙動だとかポテンシャルをうまく分かんないと走らせられないバイクだと思うんですよ。そういった部分では、大人の人に乗ってもらった方が見てて楽しいし、応援のしがいがあるんです。


 今年チーム〇山から走った鈴木さんっていうライダーは250ccやってたんですけど、この人はドゥカティ乗りです。今年はチームが悪かったのか、本人が悪かったのかわかんないですけど、あんまり成績上がらなかったんです。けど、鈴木誠さんみたいな人がもう一回ファンデーションに入って来て、その昔バトル・オブ・ザ・ツインだとかを席巻していたあの頃のチーム体制で全日本に臨めば、かなりいい成績を収められるしファンもできるかもしれない。そう思いますけどね。


スペシャルな“8耐”

T:8耐はまたちょっと意味合いが違いますか?二輪レースの中では話題になりますが。

X:8耐は概況的にはですね、日本の国産メーカーが世界GP以上に力を入れているレースなんですよ。何故かというと、8耐でいいレース、優勝したりすると、8月・9月・10月のオートバイの売れ行きがドッと上がるんですよ。イメージ戦略的にも非常にいい。だから国産4メーカーさんは、全日本ロードのシリーズを十何戦してますけども、次の年の8耐のクルマを作っていると言っても過言じゃないくらいですね。優先順位的には全日本のシリーズよりも8耐の方が上なんですよ。営業上の問題もあるし。

 8耐というのは非常に高温多湿な状況で、しかも8時間ぶっ続けで走らなきゃいけないですから、技術的には非常に厳しいんですよ。オートバイにとっては、温度が上がったり湿度が上がったりすると、パワーダウンするんです。パーツの消耗になりますから。そんな過酷な場で優勝したりすると、営業戦略上もよろしいし、そこで勝てたクルマっていうのは非常に技術的に優れているということになるんですよ。だから全日本の春先に、エンジンにやさしい時期に勝ったとしても、それは全然全体の評価にはならなくて。8耐を乗り切らなければ技術的な進歩は無かったということで、ほんとに各メーカーとも全日本のシリーズ戦は、極端な話、8時間耐久レースのためのテストみたいなものですね。

 ですから8耐にはメーカーがマシン的にもメンツ的にも力を注ぐ、世界各国からライダーを呼んできますし、それに伴ってメカニック、チーム母体も呼んできますしね。その中で、例えばドゥカティを走らせてどうかと言いますと、あの〜、状況的には厳しいと思いますね。

T:素人っぽい質問ですけど、ドゥカティは8時間もつんでしょうか?

X:鋭いですね〜。普通に考えるともたないですね。やっぱりドゥカティはパーツの耐久性というのが良くないんで。スプリントレースでも、よくエンジン壊しちゃったりしてますんで。あの過酷な状況では、8時間も走りきれただけで、もう御の字じゃないかと思いますね。

 ただ逆にですね、「あの状況の8時間を走り切れちゃったドゥカティって、どうなってんの?」って見てみたいというのはみんな思ってますよ。

 それこそ日本のメーカーのエンジニアは絶対バカにしてますからね。もし8時間ドゥカティが走るっていったら、「もつわけねえよ!」っていうと思いますよ。「エンジンブローして終わりだよ」って。

 だから、それが走り切っちゃって、さらにトップ10なんかに入っちゃった日にはですね、それこそ「うちの雑誌」でそこのドゥカティを特集して解説してもらいたい。エンジン全部バラしてみて、どういう風な状況になっているのか見てみたいっていうのは、みんな思ってますね。

T:名越さん、来年の8耐にチャレンジすると言っているので何とか頑張って欲しいと思うんですけど。

X:もうね、完走出来たらすごい。もう、ドゥカティなんて壊れまくるんですから。ほんとに(笑)。


全日本ロードレースの未来・・・

T:これまで伺っていると、8耐は一応頑張れば話題性とかでそれなりにメリットがあるっていう感じはしますけども。全日本の方は先行き暗いじゃないですか。例えばスポンサーを探したりする時に、どういうものをアピールするとグッとくるんでしょうね?専門家の目から見て。

X:グッとくる…ですか?

T:はい、いろんな人がいますし、個人的にドゥカティが好きとか、そういう方ももしかしたらいらっしゃるかもしれませんけど。例えば広告代理店とかに企画を持っていく時に、代理店の人って必ず「スポンサーメリットは何ですか」と聞くじゃないですか。

精神論じゃないところで、ですね(笑)。

T:ええ、そういう時、実際に躊躇することなく、こうです!って言えることってあるんでしょうか?

X:「俺の心意気を買ってくれ!」(笑)

弱いですよね、今のご時世では・・・・。

T:展望はどうなんでしょう?これから時代がどういうふうに変わっていくのかよく分からないですけど、可能性はどうなんでしょう?レース自体が持つ。

X:去年と今年と比べて、ます各サーキット、全日本ロードレースの観客動員数というのはですね、95年から96年にかけて微増したんですよ。平均的に絶対数から見て上がったんですよ。

 先日WOWOWのプロデューサーの方とお話しする機会があったんですね。WOWOWは今世界グランプリを中継してますけども、去年から今年を比べると視聴者は微増したんですって。そういった部分でいくと、これはメディアを含めてメーカーも努力しているってことで。まずはサーキットに来てレースを見てくださいっていう仕掛けがあったので、微増したんですけども、これは今後も続けていくと思いますし。観客動員数からしてみますと、今まで尻下がりだったのがちょっと上向き加減になっていますから。注目度という点では、まだまだ可能性は残している。

T:景気がまだ底を打っていますけど、まあ少しは回復するかもしれないと仮定して、今後はどうでしょうか。

X:可能性はあると思いますよ。平均的には、おおまかな数字なんですけど、日本のオートバイレースの集客動員数っていうのが3万人前後なんですよ。じゃ、四輪が流行ってるかって言ったら、フォーミュラ日本はあれだけTVがテコ入れしているにもかかわらず、4万人前後なんですよ。1万人くらいしか変わらないんです。このメディアの少なさとスター選手の少なさからして、二輪は健闘してるんですね。

 そういうことを考えて行けば、今ハーレーでファッション的に乗っかっている若い子たちに、うまいことレースの魅力を浸透させていけば、まだまだ可能性は残っていると思いますね。

でもファンデーションの代理店向けの営業トークということではですね……。

T:これはKさんに伺う筋じゃないんですけど、参考にご意見をお聞かせいただきたいと。

X:外堀はそういった形で埋まる。盛り返しているぞ、という部分がありますよね。

T:バイクが好きで、そこそこ経済的に安定したゆとりある生活をしていて、バイクを趣味でやってて、レースでスポンサードしてみようかなという人達を探すしかないのかなと思ったりもするのですが。

X:今の時代、ツライですよね〜。ワークスでもスポンサーのつかない状況ですからね。

T:四輪は代理店が付いてるから、スポンサーを引っ張ってきたり?

X:そうですね、代理店さんとスポンサーさんの結びつきっていうのがもともとあって、そこから引っ張ってくることが多いですね。

T:二輪はワークスの内部の人がスポンサーを探してきたりするんですか?協賛してくれるところとか。

X:いや、代理店は入ってます。SUZUKIですと読売広告社さんとか、HONDAでも代理店さんが入って、SUZUKIだからHONDAだから大丈夫だよ、アピール度も高いよ、と。TVのメディアもタイアップしてやっていきましょうよっていう、メーカーとスポンサーの橋渡しをする代理店は必ずいらっしゃいますね。

T:プライベーターは完璧にその人達で動いてるんですか。〇山さんとかはネームバリューありますよね。

X:もう無いすけどね。

T:現実にはかなり厳しいんですか。

X:厳しいですね。皆さん手弁当で働いてますね。昔付き合いがあったところから、とりあえずお金を貰ってくる。それも10万円、100万円の単位ですけども。貰えるだけでも御の字ということで、いただいてきてる状況じゃないですか。

 チーム監督さんなんかは企画書を何十枚も何冊も作ってですね、いろんなところに回ってると思いますよ。で、回ってる先もですね、あまりナショナルクライアントなんていうのは望めないですから、関係しているクライアントさんに回らざるを得ない。そういったところだとお金的にも余裕ないし、逆に他の所も来ちゃってますから、小出しになってしまう。だけど、それだけでも10万円、20万円くれるんだったら貰ってきちゃいましょう、そういうところですね。


業界のドンはだれだ?

X:二輪のレースを仕切っているのは、だいたいMFJっていうところなんですけども。誰が構成してる団体かっていうと、4大メーカーなんですよ。だから絶対的に、この4メーカーを牛耳ってさらに上の立場で「お前ら興行的にも、ファンにも、メディアにも、何に関しても楽しくやってアピール度の高いモータースポーツにしていこうよ」と言い切れる人がいないんですよ。

 で、四輪は何処が仕切っているかっていうと、JAFがやってる。あそこはメーカーはメーカーなんですけども、四輪の方が成熟してますから、全く独立してJAFが統括しています。牛耳ってるとこがどこって言った時の、JAFMFJの差が出てるわけですよ。

T:MFJの中で4社の力関係ってあるんでしょうか。

X:ありますね。やっぱりHONDAが業界の盟主ですよ。

T:二輪の先駆者だから。

X:そうなんですよ。これはですね、各メーカーさんの部長さん以上の取締役とお話をしていても、HONDAはライバルであり絶対負かしたいところなんだけども、HONDAが先陣を切ってモータースポーツで勝ってってくれないと全体的な繁栄が無い。と、みんな口々に言ってますから。一種、矛盾ははらんでいるんですけれども。HONDAには何時でも君臨して、業界の盟主であってほしい、と。

T:四輪の世界でも国内の事情はそうじゃないんですか?F1は撤退しましたけど。

X:HONDAの四輪はF1を撤退してから、日本のレースだとかアメリカのレースにテコ入れしてるんですけど。特に日本のレースですと、ついこの間まではTOYOTANISSANが力を握ってたんですよ、ご意見番っていうか。二輪でいうHONDAだったんですけども。ここに来てHONDAがボーンと突き出てきた。

 で、みんなが出る杭で、もうTOYOTANISSANも、それこそレースを主催してる団体も、みんなでHONDAを打ち崩そうという動きがあるんです。

T:なるほど、いろいろ難しいことがあるんですね。

X:で、HONDAは「日本の4輪レース界は汚くて子供じみててイヤだ。撤退してやれ」って、そういう話になってます。

T:F1に参入してた頃は本田宗一郎さんがいらした時代ですから、あそこまでできたんでしょうけども。二輪にその精神って受け継がれていないんですか。もともとスーパーカブから始まったわけですよね、HONDAって。ドリーム号とかあったじゃないですか。

 どうして二輪はHONDAが君臨しているのに閉鎖的なんだろうと思うんです。まあ、お金がないせいもあるのかもしれないですけど、不思議ですね。

X:HONDAの中でも、四輪班と二輪班というのがバッチリ分かれてるんですよ。全く交流が無いっていうほど、二輪は独自の路線を行っちゃってるんですよね。

 HONDAには、本田宗一郎さんが創った本田技研工業っていう大もとのHONDA本社っていうのがありますよね。それから、市販車を開発していくホンダ技術研究所っていうのがあるんですよ。これは材料の基本研究から新車の開発までやってるんですけど。四輪のレース部隊っていうのは、本田技術研究所の中にあるんですよ。そして二輪は、悪いことに(笑)また別会社なんですよ。ホンダレーシングコーポレーション、通称HRCって呼ばれてるんですが。もうここまでくると、本田宗一郎さんのキャラクターなんていうのは行き届かないんですよ。

 しかも、本田技研工業、本田技術研究所、ホンダレーシングコーポレーションの3社が並ぶと、二輪と四輪の間には深〜いミゾがあるんですよ。これはですね、ホンダ技術研究所としては「我々は営業利益を生む市販車を造ってる。にもかかわらずHRCは青天井で経費を使っている。お前ら、何の営業利益も生んでおらんじゃないか!」と、もう叩きまくるんですよ。

 HRCHRCで、「うるせい!こっちはレースで戦ってんだから、経費青天井でも致し方ないんだ!」と睨み合ってるんですよ。

 本田技研工業が二輪のレースもやっていれば、もしくは本田技術研究所がやっていれば、まだちょっと違うかもしれないけども。全く別立てのHRCという二輪のレース専門会社というのがありますので。これが、ビジネストークが出来る一般常識が備わっている人たちとは隔絶された、閉鎖的な社会を作ってるんです。

 ですからMFJという団体が実質は4メーカーさんで構成されているんで、ルール的には4メーカーのご意見をいただいてからルールを決めましょう、という面もありますからね。要は、レギュレーションやらレースを企画していく時に、アメリカとかヨーロッパだったら、「まずお客さんが来てくれて楽しめるためのレースをやりましょうや」ということからスタートしていくんですが、こと日本の場合、MFJが「こういうレースをしたいんですけども4メーカーさん、技術的にはどうですか?」とご意見を伺う。

 そうすると、4メーカーが「そんなの出来ねえよ!」とか、「こういうふうにしてくれ」とか。

 要は、メーカーの技術者サイドでルールなりレースを決めていくもんですから、非常に偏っちゃうんですよね。だから、レースそのものを難しくしていて、一見のお客さんには解りにくい。

 対極にあるアメリカのAMA、日本でいうMFJみたいなものなんだけど、そこはメーカーの絡みなんかないですから、興行的にもお客さんに優しくて、観て楽しいレースを考えてる。メーカーの奴らなんていうのは全くご意見無用。「ほんとに観客を楽しませるためのレースを俺たちはやっていく。参入したかったら日本のメーカーさん、来てもいいですよ」と。

 そういうスタンスなんで、まずここが違う。そこの違いは大きいですよね。観客動員にしてもレースの内容も。

T:今日伺っていて内情が良く解りました。

X:これはですね、知れば知るほど目を覆いたくなるような子供じみた話がいっぱいあるんですよね。

T:ほんと、日本の村的な感じですね。

X:そう!!名越さんみたいな人はアメリカのレースとかに行ったら、ほんとに楽しいんじゃないかと思いますね。やってて楽しいだろうし、お客さんの方も分け隔てなく平等に見てくれますから。もっともっと、あそこのチームの良さっていうのが出ると思うんですよ。だから日本の4メーカー主導のレースに出ていたりすると、どうしても4メーカーがまず頭に立つっていうレースになっちゃうし。話題もそこが中心になって、非常に狭い業界になっちゃいますよね。

T:改善されたり改革されていく余地は、今後あるんですか。

X:ないでしょう!!ただ、これだけ4メーカーがギッチギチに固めた世界の中で、ファンデーションみたいなプライベートチームで外車を使って4メーカーに割って入ってくればですね、お客さんの方から人気度が上がっていくと思いますね。

 4メーカーも認めたくないんでしょうけども、観ている人たちが素直に「あれだけ4メーカーがお金をかけてやっているのに、たった3人くらいのちっぽけなチームが割って入っていいレースやれるんだ!」っていうことで。

 ここで頭角を現せば、もうどこの国のどんなレースに行ったって恥ずかしくないですよ。


ーーーーーーー本文終わりーーーーーーーーーーーーーーー

 いかがでしたでしょうか。ちょっと尻切れトンボっぽい終わり方ですが、当時の原稿はここで終わっています。しつこく重ねて申し上げますが、この原稿は1996年に書かれたものです。決して現在の状況を反映したものではありません。当時の状況を当事者の主観を含めて表現したものです。

 しかし、およそ30年前の話とはいえ、今読んでみても色々と考えさせられることは多い気がします。何時まで経っても日本ではモータースポーツの地位、認知度、といったものは低いままのように思えます。現在でもバイク業界のシステムが上手く機能しているように見えないのは私だけでしょうか? 未だに暴走族(死語)のイメージを引きずっている?気もしますが、これは国民性なのでしょうか。

 しかし最近のバイクレース界では若者の活躍が目立つようになってきている印象があります。何時の時代でも、どの世界でも、未来を切り開いていくのは若者です。世の中はどんどんデジタル方向へ変化していきますが、停止すると倒れてしまうバイクはあくまでアナログな存在です。アナログだから面白いと思う次世代の若者にバイクレースやバイクそのものを引き継いでいっていただきたいと思います。そのうち停まっても倒れないバイクがどこからか出現しそうな気もしますが。

 話はちょっと飛躍しますが、私個人的にはレーシングバイクに電子制御は無い方が良いと思っています。あくまで操る人間の能力を競う方が健全で解りやすく、人気も出ると思います。例えばオリンピックの射撃競技、アーチェリー、弓道、等に超ハイテクを施した自動照準のメカニズムを持ち込むということになったら、それは無いだろう、止めてよ、と普通の人は思いますよね? 最新の電子制御は一般公道を走る乗り物のほうにこそ必要です。

 まぁ、自分はまだ走り続けるつもりです。ある意味老害かもしれませんが、勘弁してください(笑)。

sky


  
Posted by cpiblog00738 at 19:31

2022年07月25日

筑波TT

0003 先日行われた筑波TTのレース、BOTTのWCTクラスに於いて久しぶりにお立ち台の真ん中に立つことが出来ました。レースは一人では出来ません。お手伝いしていただいた方々、ありがとうございます。いつものことながら感謝に堪えません。
 思えば私がアマチュアレースに参加し始めたのは20代の頃でした。生まれて初めて筑波を走った時のバイクはベベルでしたが、実際にレースに参加した際はパンタ系のバイクからでした。そしてアマチュアレースに参加し続けて長い年月が経過し、生れて初めて筑波で公式に1分を切るタイムを記録したのは私が48歳の時でした。アマチュアレーサーにとって筑波の1分切りは夢のような遠い目標だったので、これで自分のレースはアガリ。これからあとはオマケだ、と本気で思いました。
 しかしそれから10年後の58歳の時にこのタイムを更新しました。この時のタイムが自分の生涯におけるベストタイムです。(今のところ、と言っちゃいます)その翌年は59歳59秒台を目標に走行して、レースの予選や決勝で2回その目標を達成できました。これで本当にアガリだと思っていたのですが、その5年後の去年の筑波選手権において再度1分切りのタイムを記録することが出来ました。今更ながら「継続は力なり」という言葉の重みを噛み締めることとなっています。レースに限らず何事においても、こうしたい、こうありたい、と思うことがまず最初にありきだと思いますが、まさにその通りだと思います。強く欲して、それに向かって自分なりに努力し続けること、となりますでしょうか。

0005 ところで今回自分に優勝をプレゼントしてくれた愛すべきバイクの998RSですが、このバイクは自分が48歳の時に生れて初めて筑波で1分切りをした時のバイクそのものです。バイクの立ち位置として当時は最先端、今現在はビンテージ。感慨深いものがありますね。

 そういえばこんな話を聞いたことがあります。ちょっと昔のことですが、アメリカのデイトナウィークに行われた旧車レースでヤマハのTD-3というバイクで人生初優勝を遂げたおじいちゃんライダーがいたそうです。この方は若い頃にTD-3を新車で購入してレースに参加するようになりましたが、なかなか結果が付いてこなかったらしいです。ちなみにTD-3とは1970年代前半に販売されていたヤマハの市販レーシングマシンでTZ250の前身です。そのバイク一筋でレースを続けていくうちに時は流れていつの間にか最新の市販レーサーだったTD-3が思いっきり旧車になってしまったんですね。それでとうとう優勝する順番が回ってきた。良い話だと思います。

 まあレースというのは結局その時に走っていた周りのメンバー次第という要素が大きいと自分は思っています。その時に自分より速いメンバーがいなければ自分が優勝、そうでなければそれなりの順位、ということです。もちろん複雑なあらゆる要素が絡み合ったうえでのレース結果ではありますからそう簡単に結論付けることは出来ませんが、自分は上記のように単純に考えることが多いです。長くレースを続けていると良く判りますが、自分より明らかに速い人が沢山存在するという事実から目をそらすことは不可能です。そうすると始まる前から優勝の可能性がないレースはつまらないじゃないか、という話になりますが、そんなことは決してありません。レースは自分との戦いに帰結すると自分は考えています。例えばあるレースでぶっちぎりの優勝を遂げたとしてもタイムが自己ベストには全く届かなかったとすれば、優勝は嬉しくてもその喜びはそれなりで大したことはありません。逆にレベルの非常に高いレースに参戦して結果は周回遅れになってしまったとしても、それまでの自己ベストを大幅に更新できた、というような状況となれば自分としてはその方が嬉しさ、達成感、満足度、次回へのモチベーション、その他あらゆる要素に於いてぶっちぎりに上です。そういった意味で自分よりも速い人と一緒に走りたいという欲望が強いです。レースという場は大げさに言えば自分の限界を高めることが出来る現在においては非常に稀有な場所です。若い頃は勢いで行っちゃうような状況も散見されてその結果転倒したりすることも多いですが、この歳になると転倒ははっきり「悪」だと言い切れますから、かえって自分を高めるハードルは若い時よりも高いと思います。
 自分の場合は何はともあれ体が言うことを聞くうちは走り続けるつもりです。
  
Posted by cpiblog00738 at 10:53

2022年06月20日

Supermono

IMG_9903 先週末の6/19、FISCOでのMAX10のレースにSupermonoで参戦してきました。まあ参戦という大げさなものではなく、完成検査を兼ねたツーリングという認識でしたが。それでも実際に走行するとそれなりに頑張って走ることになってしまいます。しかしこの日のベストタイムは2分6秒が精一杯でした。エントリー表を見るとエンジンの馬力的にはどう見てもこのバイクが最少だったのでストレートでは思いっきり抜かれまくりましたね。特にV4Rに抜かれた時はその速度差が100km/hという感じで、それはそれはすさまじかったです。

 ところでSupermonoは今となっては非常に珍しいバイクで、写真は見たことがあるが実物を見るのはこれが初めてです、という声も随分いただきました。我々のピットにこのバイクを見にいろいろな方が訪れてくれたのですが、一点だけ気になることがあったので書かせていただきます。
 世間一般の常識では見ず知らずの人のバイクを写真撮影する時には通常「写真撮っても構いませんか?」という感じで一言声をかけるのが当たり前ですよね。少なくとも私の認識ではそうです。ところが何の断りも挨拶もなしで勝手にバシャバシャ写真を撮って去っていく人が沢山いて、驚くとともにそのことで自分は結構不機嫌になってしまいました。悲しいことに印象としてはどちらかというとそういった人の割合の方が多かったかもしれません。自分的には信じられません。日本人ってこんなだったっけ?それともバイクが好きな人は個性が強い人が多いのでこんななの?中には何の断りもなくいきなりバイクに張り付いて長時間にわたって舐めるように接写状態で詳細な写真を撮り続ける人まで出現しました。さすがにこの人には一言声をかけさせていただきましたけど。着ているシャツからこの人が何処のショップのお客さんかは何となく想像が付きましたが、こんな行為をしていてはそのショップの品格迄貶めてしまいますよ。TFDのお客さんの中には旧知の仲なのに、SNSには出しません、あくまで自分だけで見て楽しみますから写真撮って良いですか?と聞いて下さる方さえもいらっしゃいます。うちはお客様に恵まれていて幸せです。感謝しかないですね。

 また別件ですが、今回もFISCOの長いストレートでの接触事故が発生しました。原因は明らかで、追い抜かれる側のストレートでの進路変更です。FISCOのストレートでは速いバイクの場合300km/hに近いスピードが出ます。このスピードでスロットル全開の走行をしていると急な進路変更は不可能です。追い越す寸前で追い抜かれる方のバイクが進路変更して自分の進路に入ってきたらそれを避けることはほぼ不可能です。速度の遅い側の言い分としては、自分は後が見えないのだから避ける義務は追い越す側にある、と言うかもしれませんが、それは完全な間違えです。相対的に速度が速いバイクもそうですが、特に相対的に遅いバイクの場合はストレートでの進路変更は厳禁ですとあえて言います。それは何より自分の身を守るためにそうする必要があるということです。例えば自分のバイクの最高速200km/hでその時にFISCOを走行しているバイクの中では遅い方だとしても、その走行時間には50ccの最高速100km/hが精一杯のレーサーも走っていて、それがストレートエンドで前にいて不自然な進路変更をしそうな怪しい動きをしているという状況を想像してみて下さい。私の言っていることが判ると思います。
 また特に最高速のあまり速くないバイクの場合、FISCOの最終コーナーを立ち上がってバイクが直立したらその時のラインを守ったまま1コーナーを目指してください。自分のバイクはあまり速くないと認識しているのにたまたまアウトいっぱいで立ち上がってしまったとしても、あわてて走行ラインをイン側に振る必要はありません。それはかえって危険極まる行為となります。後ろの速いバイクはインから抜きにかかりますから接触の可能性が非常に高いです。この場合はアウト一杯のまま1コーナーまで走るのが一番安全です。速いバイクはストレート上でイン側から勝手に追い抜いて行ってくれます。また、ストレートで真ん中あたりのラインを走り続けた後にブレーキングポイント近くになってラインをアウトに振る行為もよく見かけますが、これも非常に危険です。後ろから来る速いバイクが300km/hくらいのスピードからフルブレーキングで侵入してくる場合、当然ながらその状況での進路変更は不可能です。前にいる追い越すバイクがそれまでストレートの中央を走行しているのを見てアウトから進入していたとすると、いきなりその前に出てこられたら100%突っ込みます。
 サーキット走行での常識は一般公道のそれとは大きく異なる場合も多いです。自分が突っ込まれたり突っ込んだりしないためにはどのようなことを心掛けるべきなのか、相手の立場になったつもりで考えれば解りやすいと思います。サーキットなので目的は速く走ることです。それを前提とした上でいかに自分の身を守るかを考えて欲しいと思います。それは自分だけでなく相手の身を守る事にもなります。サーキットでの事故が多いとサーキットに対する世間一般の印象が悪くなります。サーキットを走行したいと考える人の新規参入も妨げます。我々はレースもするけどそれは趣味で、目的は楽しむことです。速く走る事だけではなく、安全に楽しむことが大切です。
  
Posted by cpiblog00738 at 20:23

2022年04月29日

28年前ですか

こんなのあるよ、とイタリアの友人から連絡が来ました。

5:33あたりですね。若いです!

 当時は何とも思わなかったんですが、今改めて考えてみるといろいろな意味で凄いところにいますね。今まで誰も知らなかったポット出のプライベートチームとライダーです。
 第1ヒートのレースでは1周目、2周目ともに6位で帰って来て3周目に転倒、再スタート。ほぼ最後尾の36位から21位まで追い上げてチェッカー。帰ってきたバイクを見たら転倒時に左のステップバーが無くなっていて、シフトレバーも曲がってあらぬ方向を向いていました。「左足はサイレンサーの上に置いて、シフトは曲がったレバーを蹴り込んだり蹴り上げたりして運転してたッス」とのことでした。あきれ返るほど凄いヤツでした。
 レースウィークの練習走行時にコース上で初めて芳賀選手に遭遇したフォガティ選手に、「あいつは誰だ!」と言わしめた、という逸話を思い出しました。

  
Posted by cpiblog00738 at 08:27

2021年10月09日

59秒台

!cid_49F3E9CA-BE5E-4D08-A094-2A3CFFFC0F8C-L0-001 最近面白いネタが無いので更新が滞っていましたが、久しぶりに嬉しいことがありました。今日は筑波選手権のTC-Formuraクラスに参戦していましたが、決勝走行中に59秒台が出ました。前回59秒台を出したのは5年前で、その時は「やったぜ59歳59秒!エイジシュート達成だぜ!」と喜んでいたのですが、今となってみればまだまだ青かったですね。(笑)
 今日のレースではこの後マシントラブルが発生したために18周のレースの12周目でリタイヤとなってしまいましたが、またこのタイムに返り咲いたということでモチベーションアップしました。私の今年のレースはこれで終了ですが、来年のレースが待ち遠しいです。やるべきことは山積みですが、仕事の合間にいかにしてそれを消化するかが一番の課題でしょうか?まだまだ頑張りますよ!
  
Posted by cpiblog00738 at 19:58

2020年12月27日

Supermono レース用カウル

IMG_3635 仕事が一段落したのでスーパーモノにレース用のカウルを取り付けました。元々純粋なレーサーにレース用カウルって、何?と思われる方もいらっしゃると思いますが、当時は現在と違ってオイル受けのアンダーカウル装着が義務付けられていませんでした。つまりオイル受けの無い当時のオリジナルのカウルを装着した状態では現在のレースレギュレーションに合致せず、レースに参加できません。そうかといってせっかくのオリジナルカウルを改造してしまうのはもったいなさすぎます。という事で、アメリカからレプリカのカウルを取り寄せ、それを基にしてオイル受け付きのカウルを製作したという訳です。

IMG_3636 オリジナルはアッパーと左右の3ピース構造でしたが、あまりに整備性が悪いので同じ3ピース構造ながら上下に分割できるように製作しました。
 バイクは既に9月にFISCOで初走行を済ませています。FISCOはオイル受けがどうのこうのとか、うるさいことを言いません。古き良き時代の要素を残した私が一番好きなサーキットです。来春からは筑波でも走行してみようと思っています。
  
Posted by cpiblog00738 at 00:56

2020年11月21日

新品スイングアーム

IMG_3516 10年以上工場の壁にぶら下げてあった998RS純正の新品スイングアームです。当時ドゥカティ本社に有った在庫の最後の1個だったもので、これを購入したところパーツリストのアイテムステイタスが供給不可という表示になりました。
 純正マグネシウムスイングアームには前期型と後期型があって、2001年の996RSまでが前期型、2002年の998RSからが後期型です。どこが違うかというと、当時の流れでタイヤの外径と幅が大きくなる傾向に対応してそうした大型化したタイヤに対応する形状に変わりました。今となってはそれでも大きさが全く足りないのですが。

IMG_3517 それで、そのスイングアームに付属品を取り付けている様子です。このスイングアームのために保管していた新品部品です。






IMG_3518 社外品ではない純正の各部品は立て付けが非常に良いです。カーボンカバーはスイングアームの出っ張りにぴったり嵌って、ボルトで固定しなくても動かないくらいです。




IMG_3520 このスイングアームをどうするのかというと、自分が乗っているバイクに装着しちゃいます。今迄使用していたスイングアームは前期型だったので、タイヤとのクリアランスの確保が目的です。




IMG_3522 スイングアーム交換の結果、タイヤとのクリアランスが今までと比較して5割程度増えました。心機一転頑張って走ります。
  
Posted by cpiblog00738 at 19:05

2019年08月26日

8枚羽のフライホイール

IMG_1172 先日入手した8枚羽のフライホイールを自分のバイクに取り付けてみました。実は自分のバイクが先日から不調で、前回の筑波TTでは予選中にエンジンが片肺になりそのままリタイヤということになりました。そのレース直前の練習走行から症状が出始めたのですが原因が判らず、とりあえずピックアップを交換してレース当日に臨んだのですが結果的に改善されていなかったということでした。片肺の症状もその時によって不調をきたすシリンダが異なるという非常に厄介な状態で、とりあえず原因究明のためにロガーで拾うデータ量を大幅に増加させた状態でシャシダイに載せ、原因を追究しました。その結果、シャシダイ上では片肺の症状は再現できなかったのですが回転信号にノイズが入ってエラーになっていることが判明。ピックアップからECUまでの配線をシールド線に交換してテストしてみようとも考えたのですが、せっかく入手したフライホイールがあるのでそちらを使ってみようということになりました。今まではクランク1回転に付き信号の数が4個でしたが、今回からは倍の8個となり、クランク角度の精度が単純に倍になりました。これなら多少のノイズが入ったところでECUがクランクの位置を見失うことにはなりにくいと考えました。

IMG_1391 取り付けるとこんな眺めになります。タイミングギアのトリガーも位置が合わなくなるので新たに製作しました。そして先日筑波サーキットにて試乗を行い、問題が解決していることを確認できました。良かったです。
 電気周りに関してはOKならOK 、NGならNG、と物事がはっきりしている印象が有りますが、今迄OKだったものがある時を境にNGになってしまう、ということを極稀に経験します。今回もその一連の出来事だったのでしょうか?しかし今まで4枚羽で問題無かったのが8枚羽の部品を入手したタイミングで問題発生という、何か不思議な出来事でした。  
Posted by cpiblog00738 at 13:20

2019年07月05日

レーシングパーツ

IMG_1172 こんな部品が売りに出ていたので購入しました。999RS、もしくは999F03/04のフライホイールです。でもよく目にするこの手の部品とは外見的に趣が異なります。





IMG_1174 構成部品はこんな感じで、セルモーターによるエンジンスタートが可能な構造です。正規のパーツリストには載っていないと思います。そもそも何故こんなものが存在するのかというと、これはAMAのスーパーバイクレースに対応するために製作されたものだったと記憶しています。AMAのレースにはレギュレーションがWSBと異なるところが散見されます。当時そうしたルールの中に、セルフスターターでエンジンスタートが可能でなければならない、というのが有ったと記憶しています。ファクトリーマシンでもセル付きだったということですね。そうした流れでファクトリーが製作した部品です。
 ピックアップ用のトリガー(羽)の数も通常とは異なります。普通は4枚羽なのですがこの部品は倍の8枚羽です。これについては使用しているECUが対応出来なければ使いようが無いのですが、こうすることによってより細かな制御が可能となります。自分のバイクはMotec制御なのでこの辺は何とでもなります。そのうち付け替えて試してみますが、果たして私がその違いを体感できるのでしょうか?
  
Posted by cpiblog00738 at 11:18

2019年01月31日

鍛造ビッグブレンボ

 レストア中の926レーシング用にキャリパーを調達しました。元々の純正は40mmピッチ削り出しの2ピースビッグブレンボだったのですが、当時はこのブレーキシステムがデリバリーが開始されて間もないタイミングで、使用しているといろいろと初期トラブルが出現しました。主に問題はキャリパーではなくローター側に発生していたのですが、その対策としてキャリパーとローターを普通のレーシングキャリパーと鋳鉄ローターの組み合わせにしてレースをしていました。という訳で926レーシングのオリジナル状態に戻すためにはとりあえず2ピースビッグブレンボのキャリパーが必要となったわけです。通常であればこの手の中古部品は在庫していることが多いのですが、今回はたまたまそういったものが無かったので新たに調達する必要がありました。
 最初は新品を購入しようとも考えましたが、たまたまヤフオクでこのキャリパーを見つけて購入し、ブレンボジャパンにオーバーホールに出して先日戻ってきたところです。

IMG_0850 これが今回調達したキャリパーです。鍛造品の2ピースビッグブレンボです。モノとしてはかなりのレアアイテムです。元々はホンダの市販レーシングマシンであるNSR500Vというマシンの純正部品として企画設計されたものですが、鍛造時に鍛造の型にかかるストレスが半端ではなく、型がすぐにダメになってしまうので型を製造する業者がお手上げしてしまい実際に生産された製品の数量はかなり少量だそうです。ブレンボの人によると生産したのはせいぜい100セット程度ではないかということです。当時は削り出し製品とは異なるのっぺりとした質感やプリントによるブレンボのロゴが不評で、不人気アイテムだったそうです。しかし鍛造ボディーですから剛性の高さも相俟って性能は文句無し。今回は良いものを入手できたと思っています。  
Posted by cpiblog00738 at 11:59

2018年08月21日

リアハブ周りの部品を刷新しました。

IMG_0508 今自分が乗っている競技車両の車体は基本的に996RS01ですが、そろそろリアハブ周りにガタが来ているのでは?という懸念が最近捨てきれなくなってきました。特にベアリング類は街乗りバイクと比較して結構華奢な造りに見えます。純粋なレーシングマシンというのはそんなものなんですけど、乗り手が不安に思うとタイムは出ませんからね。そこで時間を見てリアハブ周りの部品を新品に交換しました。これでタイムが上がるかも?多分変わらないんでしょうね。(笑)  
Posted by cpiblog00738 at 22:10

2018年07月19日

筑波TT

BOTT 6 遅くなりましたが先週末の筑波TT参戦のご報告です。結果的には予選4位、決勝5位という成績でした。骨盤4か所を骨折する怪我をしたのが4月12日でしたからそれから丁度3か月です。おかげさまで回復も歳の割には順調で、まあ何とかなるだろう、という思いでエントリーしましたが、まあ何とかなった感じで良かったです。(笑)
 無理せずに大事にしてくださいという温かいお言葉を沢山いただいて感謝の極みではありましたが、年齢的にのんびりしていると後がどんどん押して来るのでそんなわけにはいきませんでした。
 で、レース当日はとにかく暑かったです。一時は路面温度が64度ということで、人間はもちろんですがどんなタイヤも正常に機能しない状況です。そんな環境でツナギやヘルメット等の装備を装着した状態でいるのは殆ど拷問でした。表彰台の自分を見ても額の血管がブチ切れそうになっていますね。(笑)
 後日動画サイトで当日のレースのオンボード映像をいろいろと鑑賞しましたが、面白いことに気付きました。トップグループの人達は別ですが、中段以降の人達の場合は全10周のレースのうちの7周目あたりから急に「止めた」ような走りになるんですね。動画を見ていて、今チェッカーが降られたのか、と思うのですがそのまま次の周も走り続けるのです。あ、まだチェッカーじゃないんだ、という感じで、要するにライダーの電池切れ状態です。いかに過酷な環境であったかということですね。そんな中、トップグループの人達は全くペースが落ちません。変態です。  
Posted by cpiblog00738 at 20:16

2018年03月13日

自分用競技車両

 随分前にクランク、コンロッド、ピストン、という主要部品3点は用意できていたのですが、そのまま暫く放置状態が続いていました。2018年シーズンの開幕までに完成を間に合わせることが出来るかどうか自信が無かったのです。最悪の場合は去年までのバイクのままで行くしかないのですが、新しいエンジンは今までのエンジンの部品もかなり流用するので、作業を開始すると今まで使用していたエンジンもバラバラになります。つまり元の状態には戻れない、作業を開始した場合後戻りは出来ないということです。 
 しかし自身の年齢を考えるとのんびりしている余裕はありません。やるしかないです。ということで作業に着手しました。おかげでここ最近はこれにかなりの時間を費やすことになり、他の仕事が手に付きませんでした。
 作業の様子を以下に紹介します。ちなみにベースエンジンは1098Rです。

IMG_3360 クランクシャフトです。1098Rの部品ではなく普通の1098の部品ですからストロークは64.7mm。ヘビーウエイト入りのバランス取りが施されています。






IMG_3358 コンロッドです。パンクル製の削り出しチタンコンロッド。61と62の数字はクランクピンとのメタルクリアランスで、それぞれ0.061mmと0.062mmということです。992や994といった数字は使用することになったハーフベアリングの厚さで、例えば992なら1.992mmということです。通常目にするノーマルのハーフベアリングの厚さは1.5mmですから、これらの2mmという厚みはかなり特殊です。昔のRSの部品です。クランクピンの直径は42mmで変わりありませんから、コンロッドのビッグエンドの内径が大きいということですね。それに伴いコンロッドボルト2本のピッチも若干広くなっています。

IMG_3362 クランクにコンロッドを組んだところです。今この時点ではこれらの部品の組み合わせでエンジンが成立するのかどうか、まだ不確定要素があります。






IMG_3347 とりあえずクランクケースの中にピストン、コンロッド、クランクを仮組してみて問題なく回転するかどうか確認していますが、やはり干渉する部分が存在しました。クランクケースとシリンダは1098Rの部品です。1098Rのクランクシャフトはウェブの径が若干小さいということですね。ここまで来たら後戻りは出来ないので今回はシリンダ側を削ってしまいます。次回、同仕様のエンジンを製作する機会があるとすれば、クランクのバランスをとる前にウェブの方を削ることになりますが。

IMG_3363 クランクケースを組み立てる下準備が整いました。。使用するミッションはDP部品としても販売されていた1098RSのレーシングミッションです。従来のレーシングミッションとギア比は同一ですが各部に改良が施されています。ドッグの形状が変わっていますし、かなりの軽量化も施されています。



IMG_3364 エンジン右側です。こちらはかなりノーマル然としています。







IMG_3369 エンジン左側です。こちらはノーマルとはかなり眺めが異なります。Motecによってエンジンの制御を行いますからエンジンの回転信号とカムタイミングを別々のピックアップで拾うためにピックアップが2個必要で、その結果このようになります。



IMG_3371 ヘッドの作業に取り掛かります。まずはバルブガイドをTFDオリジナルのベリ銅製に交換し、その後バルブシートをリフェースしています。手前のシートは加工前でオリジナル状態、右奥がリフェース中、左奥がリフェース終了した状態です。TFDの場合当たり幅はオリジナルより狭くしています。



IMG_3372 ヘッドが完成し、組み立て前の状態です。ヘッドは1098Rの部品なので組み込むバルブは6mmステムのチタンバルブです。通常チタンバルブの場合はバルブフェースのリフェースはおろか、バルブシートとのすり合わせも厳禁とされています。その理由はそうした行為を行うとチタンバルに施されている硬質の酸化皮膜が削れて無くなってしまうからです。
 しかし私の場合はレース仕様の場合に限り、バルブの状態に少しでも疑問があれば躊躇なくリフェースを施してしまいます。その場合バルブの酸化皮膜は当然ながら削り落とされてチタンの材質そのものが露出して直接バルブシートに当たるようになりますが、そんなことはお構いなしです。バルブとシートがちゃんと当たることこそが本来の目的です。 
 これをやってしまうとバルブスプリングを用いたエンジンではバルブフェースがバルブシートに激しく叩きつけられるようで硬質酸化被膜が無いバルブフェースは急速に摩耗が進むと聞きますが、私の経験上ドゥカティのデスモドロミックの場合はどうもそんなことは無いようで、オーバーホール時に確認しても大したダメージが見受けられないことが多いのです。例えば1999年以降ドゥカティの市販レーシングマシンにはチタンバルブが使用されていましたが、1999、2000、2001年型のチタンバルブには表面のコーティングがありませんでした。表面はチタンそのものです。それでも定期的なオーバーホールで状態を確認しながら継続使用していましたが特に問題が起こることは無く、チタンバルブといえども普通の感覚でハンドリング出来ていました。

IMG_3386 ちょっと飛びますが、既にエンジンは大体組み上がりバルブタイミングの調整も済んでいます。カムはレースキット用のカムなので基本的にノーマルの1098R用とプロフィールは同一のはずですがノーマルとは指定されているバルブタイミングが若干異なります。簡単に言えばオーバーラップを大きくとるようなタイミングです。このエンジンはストロークも本来と異なるのでバルブリセスとバルブのクリアランスを確認しました。バルブリセスに粘土を付けてエンジンを組み、クランクを回転させてみるという原始的な方法です。黄色い粘土にバルブの跡が付いていますが、さすがに問題はありませんね。
 1098Rのストロークダウン仕様なので当然ですが圧縮比も確認しています。燃焼室容量とピストン上面の容量を実測し、スキッシュの容量も含めて計算します。その結果圧縮比は13.5前後でした。予想よりもかなり高いです。通常単純にストロークダウンしただけだと圧縮比はかなり落ちますからね。ちなみにこのエンジンに1098Rのノーマルピストンを組んだと仮定して計算すると圧縮比は12.8となりました。また今回使用したピスタルのピストンをノーマル状態の1098R(1198cc)に組んだらどうなるかと計算してみたところ、その場合はなんと圧縮比は14.2です。
 ただし実のところベースとして今回使用した中古の1098Rエンジンですが、既にヘッドの面研が施されていたであろうと私は認識しています。それは目視でのヘッド面の風合いと上記の圧縮比の件からそう思っています。

IMG_3391 さて、エンジンが完成し、車体にも載った状態になったのでシャシダイを使用してマッピングに取り掛かります。ニューエンジンのマッピングをイチから始める場合、通常はまずエンジンが始動するまでに高いハードルがあります。初爆を得るまでが大変で、一旦エンジンがかかるようになってしまえば一安心なのです。特にドゥカティの場合はエンジンがかかりにくい状態でいろいろトライしているとスターターのワンウェイクラッチがすぐに壊れてしまいます。この件を当初からかなり不安に思っていたので、エンジンのかかりが良さそうなマップを製作したりして用意周到な状態でエンジンの始動にチャレンジしました。とりあえずは今迄使用していたマップを基に作業開始しましたが、幸運なことにあっけなくエンジンの始動に成功し、マッピングを順調にこなすことが出来ました。

Before シャシダイセッティングのグラフですが、3段あるうちの上段が馬力、中段が1番シリンダの空燃比、下段が2番シリンダの空燃比です。このグラフはこんなもんだろうという最初に作成したフューエルマップでの結果です。%の表示はスロットル開度です。もっとひどい結果になると予想していましたが意外とちゃんとしています。このままでも走れそうです。スロットル開度によっては馬力のグラフの線が鋸歯のようにギザギザしていますが、これはシャシダイが自動で負荷をかけたり抜いたりして回転上昇をコントロールしているためにこういった表示になります。当然ですが馬力を正しく表示していません。

After 何度かマップに修正を施した後に計測したグラフです。空燃比はかなり揃ってきています。





1098&1148 比較 最後にスロットル全開のグラフです。去年まで使用していたエンジンと今回のエンジンの比較です。青線が去年まで使っていたエンジン、赤線が今回製作したエンジンです。表示されている馬力の数字が本当に正確かどうかはさておき、単純に言えることは去年のエンジンよりも最高出力が15馬力増えた、ということです。この後はとりあえず実走して詰めていくことになります。
 ここで新たな不安が頭をもたげてきました。最新バイクと違ってトラクションコントロールややウイリーコントロールなんかは存在しない野獣のようなバイクです。果たして俺にちゃんと扱えるのだろうか?


  
Posted by cpiblog00738 at 16:23

2017年09月11日

筑波TT

DSC_0755 先週末、筑波TTに参戦しました。予選は目標の59秒台まで0.05秒足りなくて1分00秒04。このタイムが出た次の周、もうちょっとと頑張ってみたのですが、結局ダメでした。それでもグリッドは3番手でフロントロウのイン側でしたから、ここまでは全く問題ありませんでした。
 で、肝心のレースですが、なんとスタートでエンスト!!!後ろの方々に追突されてもおかしくないような状況だったのですが、皆さんうまいこと避けていってくださって大感謝です。心からお礼を申し上げます。次からはこのようなことが無いようにしますのでご勘弁を!
 レースは結果的に総合で5位だったのですが、当然ながらトップは遥か彼方です。トップグループの人たちと一緒に走りたかった・・・・。  
Posted by cpiblog00738 at 19:41

2017年06月26日

自分用NEWエンジン

 先日筑波TTのレースがありました。今回のレースはBOTTクラスとMIPクラスが混走だったので、4気筒の外車勢も一緒です。1000ccの4気筒ですから速いんですね、そのバイク達。いったん前に出られるとパスすることはなかなか難しいものがあります。
 自分のレーススタイルを正直に申し上げると、「コーナーを抜かれない程度に走って直線で前に出る!」というものですから、自分のバイクよりも直線が速いバイクがいると非常に困ったことになるわけです。(笑)自分の走行技術のレベルはせいぜい「並み」程度と自覚していますが、商売柄?自分のバイクを速くすることは出来ます。なので同じ2気筒同士であればこの自分のスタイルはそれなりに通用することが多いです。しかし4気筒が相手となると・・・・。今回もS1000にはてこずりました。
 ということで、以前から温めていたエンジングレードアップの計画を実行に移そうと思っているところです。あとは実行する時間がとれるかどうかが一番大きな問題ですが。

IMG_2683 とりあえずエンジンの主要部品であるクランク、コンロッド、ピストンは揃いました。クランクは1098純正を加工したヘビーウェイト入り。ピストン、コンロッドに合わせてバランス取りが完了しています。ピストンはピスタル製の1098R用φ106mm。コンロッドはパンクル製。削り出しのチタンコンロッドで、通常のモデルと異なり2mm厚のハーフベアリングを使用するタイプです。経験的にハーフベアリングが厚い方がコンロッドとメタルが接触する面のダメージが小さいので、それを期待しています。
 ベースエンジンは1098Rですが、今回製作するエンジンの仕様を判りやすく言うと「1098のボアアップ仕様」もしくは「1098Rのストロークダウン仕様」ということになります。1098Rのままではイマイチ面白くないのと、1098Rのエンジン特性は下からパワーがありすぎて自分の腕では扱える自信が無いからです。
 続きは乞うご期待、ということで。  
Posted by cpiblog00738 at 13:01

2017年04月24日

筑波TT

DSC_0033 先週末、筑波TTのレースが開催されました。2017年度の初戦です。初戦が4月開催だと楽で良いですね。私ももちろんですが、参戦するお客様も歳のせいか冬眠からのお目覚めが年々遅くなってきており、3月に開催されると2月から練習走行を始めなければならず、気分が乗らないので第1戦はパス、というようなことになりがちです。
 今日はお天気もまあまあ。レース日和と言えるでしょう。もちろん私もBOTTのWCTクラスにエントリーです。目標は順位よりもタイムで59秒台を記録すること。エイジシュートです。

DSC_0049 今日はイタリアの友人がはるばる応援に駆けつけてくれました。彼にとって3度目の訪日ですが、今回は筑波TTの観戦が出来るように旅行のスケジュールを立てての来日です。 もちろん大のドゥカティスタで、自分の998RS をフルオリジナルの状態にするレストアがほぼ終了したと言っていました。


 さて、参加者の皆さんがそろそろ予選が始まるということで準備に取り掛かり始めた頃です。コース上で行われた他クラスの予選が赤旗中断。何が起こったかと情報を確認すると、オイルを撒いて1周以上走行したヤツがいて転倒車両続出。コース清掃のためしばらく予選中断とのこと。
 いきなり参加者全員のテンションが下がって不機嫌状態に。自分の場合も目標はタイムを出すことなので、コース全周オイル処理ではいきなりやる気ゼロです。
 そんな中でWCTクラスの予選が始まりましたが、やはりコース上には要所要所に石灰やおが屑のオイル処理跡があってまともなラインを走れません。とりあえず予防線を張ってということでしょうが、全てのポストでオイルフラッグを振っています。「全ポストでオイルフラッグを振るんだったらそんな状態で予選なんか走らせるんじゃねえよ!」みたいな精神状態での予選開始でした。まともなタイムを出そうとすると何処かで必ずオイル処理跡を横断することになるのですが、何処を通れば安全ではないにしろ大丈夫なのか、それが最重要課題の走行です。しかしそんな状況でもタイムを出す人はちゃんと出すんですよね。特殊な才能だと思いますが、それを持ち合わせていない我々にとってはなかなか理解できません。悔しまぎれにそういう人たちを「アタマの悪い人」と呼んだり「予選順位は頭の悪い順」などとおちゃらけては大変失礼ではありますが、自分もちょっとはそういう人たちの仲間に入りたいと思ったりもします。無理だけど。
 自分の予選タイムは0秒台真ん中くらいであのコースコンディションにしては上出来でした。 終わってみれば結構グリップ有ったよね、という印象で、それは実はオフィシャルの方々が一生懸命オイル処理をしてくれたおかげなわけで、今度は感謝です。感情がコロコロ変わります。(笑)

 で、次は決勝レースです。もうコース上のオイルもそれなりにこなれて気にしなくても良い状態になった感じで、よし頑張るぞ、という感じだったのですが、ウォームアップラップでまた事件が発生です。数台前を走っていた1台がダンロップの右で派手にスリップダウン。あの転び方は何かに乗って滑ったという転倒でした。おまけにそのあと後ろの方で裏ストレートでも転倒があり、結局スタートディレイに。「ただいまオイル処理中です」というアナウンスにまたテンションが下がります。
 そこで再開を待っている間に何気なく 1コーナー方面に目をやると、何やらオフィシャルの方々が忙しく働いています。何をしているのかよく見ると、何と皆でデッキブラシを使ってコースをゴシゴシ清掃しているではないですか!「えええ!!今あそこに滑るものがいっぱいあるってこと!?今から俺たちレーススタートしてそこに突っ込んでいくんだぜえ!?」これは精神的に結構効きましたね。
 おかげでレースのスタートは失敗で何台かに抜かれ、おまけに1コーナーの進入速度もかなり控えたのでそこでも何台かにかわされ、1コーナーを立ち上がったら順位は9位でした。周りのみんな、頭悪すぎです。(笑)
 やっと頭がレースモードになったところで順位を取り戻すべく頑張って走り、決勝レースの結果は総合で4位でした。決勝中のベストラップはかろうじて1分を切ったので、今回も目標達成です。めでたしめでたしの結果で良かったです。
 後で思ったのですが、スタート前1コーナーでの オフィシャルのデッキブラシパフォーマンス、結果的にスタート直後に有りがちな1コーナーでの多重クラッシュを防いだかもしれません。全員少しは抑えて1コーナーに入っていったような気がしますから。スタート直後の1コーナーでのクラッシュ防止にはデッキブラシパフォーマンスが有効かも?でも何時もやっていたら効果は無くなるどころか、今度は1コーナーは路面がきれいだから思いっきり行ってOK、となるかもしれませんね。(笑)

image1 自分はスリックタイヤを履いていたので別クラスとなり、単独一人での表彰台です。これは殆どさらしものになっている気分なのでちょっと止めて欲しいです。 もういい歳なんだからタイヤなんか何履いたって良いじゃん、とまた言ってみます。(笑)  
Posted by cpiblog00738 at 12:02

2016年12月28日

帰って来た926

IMG_2246 20年ぶりです。1994年に全日本で走らせていた926レーシングがTFDに帰って来ました。芳賀選手が乗っていたバイク、ノリユキ号です。確か1995年か96年の初めに売却した記憶があります。その後ワンオーナーではあったのですが、最後に走ったのが99年あたりでその後は放置状態だったようです。
 随分前から買い戻したいと思ってはいたのですがなかなか思ったようにいかず、今回やっと念願叶ったというわけです。
 ただ、やはり長期間放置されただけあって状態ははっきり言って良くありません。何から何まで全てをフルオーバーホールというか、フルレストアする必要があります。しかし言い方を変えれば、保存状態は悪かったとはいえ20年間所持していてくれただけでも感謝するべきとも言えます。
 完璧に蘇らせた暁には、まずは自分が乗ってレースに出るのが目標です。当時芳賀選手はこのバイクで筑波のベストが58秒台でしたから、自分的には1分1秒台くらいが目標でしょうか?

IMG_2242 ちなみに外装を外すとこんな感じです。かなり汚いです。錆も多いです。レストアのやりがいが有りそうです。現代においては入手不可な部品が随所に使われていますが、そうした部品がダメになっていないことを祈ります。





 当時のことを思い出してみると、94年の全日本では93年型888レーシングとこの94年型926レーシングの2台を使ってレースをしていました。ただライダーがよく転んでバイクを壊すもので修復が間に合わず、実質的にはこの2台を2個イチにしたバイク1台でレースをしていたように思います。シーズン終了後に時間が出来たところで各々1台ずつをちゃんと復活させて2台とも売却しました。93年型の方はその後も全日本等のレースに出ているのをよく目にしていましたが、そのうち何処かへ売却され、行方が分からなくなってしまいました。あろうことか一度何とヤフオクで出品されている変わり果てた姿を目にした記憶がありましたが、それでもあの時買っておけば良かったと今でも思います。  
Posted by cpiblog00738 at 01:22

2016年10月30日

20161029筑波選手権 TC-Formula

DSC_1255自分にとっての今年最後のレースに参戦しました。
筑波選手権の最終戦、クラスはTC-Formula、要するに何でもアリのクラスです。
何時もならこのクラスはJSB等との混走になるのですが、何故か今回はエントリーが多くて単独開催のクラスとなりました。
バイクは何でもアリで縛りが無いクラスなのに、何故かタイヤだけ溝付きという縛りがあって、そのためにスリックタイヤで走る自分は賞典外出走ということになりました。
バイクが何でもアリならタイヤだって何でもアリでいいじゃん、と思うのは私だけでしょうか?
国産溝付きプロダクションレース用タイヤはしかるべき所でしかるべき手続きを行わないと購入が出来ませんが、スリックタイヤなら例えばネット通販でも入手可能なくらいで誰でも購入が可能です。
そういった意味で入手に関してはスリックタイヤの方が格段に容易です。
公平性に拘るが故のレギュレーションであるなら、完全に時代遅れというか間違いですね。
そもそも現代のプロダクションレース用溝付きタイヤというものは完全にレース専用としてメーカーが製作しているシロモノで、公道用ではありません。
国産メーカー製品の場合、この類のタイヤ購入に関しては、何時何処のサーキットで何に使用する、ということを申請することが必要なことからも、メーカーが自ら認めている程それは明らかです。
元々公道用のタイヤが必要に迫られて特殊な進化を遂げた「奇形タイヤ」ですね。
だったら最初からレース専用のスリックタイヤの方が潔いし、カッコ良いと思うアマチュアライダーも多いと思います。
それに例えば自分程度のアマチュアレベルではスリックだろうと溝付きだろうとタイムに大差は無いと思います。
いい歳をしたおっさんの趣味なんだから好きなタイヤを履かせてくれたっていいじゃん、というのが自分の正直な想いです。
レースの主催者側には依然として「初心者は公道用溝付きタイヤ、スリックは上級者のみが使用できる」みたいな,TT100のタイヤ時代のままの意識があって、いまだにそういったことに拘るんでしょうね。
でも昔ならエントリーさえ受け付けられなかったでしょうが、今は章典外とはいえ走らせてくれるのですから感謝してもいますけど。

その辺のことはさておき、今回のレースの最も大きな目標はエイジシュートのタイムを記録することです。
(要するに59歳で59秒台を出すということです)
でもこの日は路面コンディションがあまり良く無いようでした。
直前に行われていた国際ライセンスのライダーが走るJSBクラスの予選タイムを見てもそれは明らかで、タイムは何時もより少なくとも0.5秒以上は落ちているようでした。
正直に言って目標達成はちょっと厳しいかな、と思いました。

IMG_2077で、予選結果です。
59秒963
かろうじて59秒台にかすりました。(笑)
それでも59秒台は59秒台。
立派に目標達成です!



「よーし、今日はこれにて終了、みんな、飲みに行くぞ!」
自分的にはそんな気分ではあったのですが。(笑)
一応真面目に決勝レースに備えます。

DSC_0197決勝レースの結果は予選と同じ4位でした。(ただし章典外です)
決勝の後半は一台の後続車にピッタリと付かれて、いつ抜かれてもおかしくない状態だったのですが、当の本人はそれに全く気付いていませんでした。
自分の場合レース中に後ろを振り返って確認することは皆無で、唯一2ヘアの立ち上がりで視野の右端に2ヘアに進入してくるバイクが見えるのが唯一の後方の情報です。
この時はそれが見えなかったので後続はそれなりに離れているのだろうと思っていましたが、実は直後にピタリと張り付いていたので視野に入らなかったのですね。
そういえば思い返してみると自分の排気音に不協和音が混じるように感じたことが何度かありました。
最近のR1は排気音が低いので自分のバイクの排気音と混じって不協和音として聞こえたのでしょう。
15周目あたりでしょうか、確か1ヘアを立ち上がってのダンロップの侵入だったと思いますが、アウトから横に並ばれて初めて後続車の存在に気付いてびっくり!
横に並ばれた瞬間、そのライダーから「こらー、おせーぞ!ちゃんと走れー!!!」とこっちを向いて気合を入れられた気がして、いきなり心が引き締まりました。
それまでは前との差も縮まらないし、後ろも居なさそうだし、と、ある意味気の抜けた巡行走行状態だったのですが、いきなり緊急事態を認識しました。
このレースでのベストラップは次の16周目でした。
やはり人間追い詰められないとダメみたいです。
おかげで何とか順位をキープしてゴール出来ました。

話は変わりますが、自分が趣味でレースを始めてから既に30年、その中で今が一番充実しているし結果も出ていると思います。
その要因は長年の経験や、積み重ねてきたハードウェアに関する技術によるものがあるのは勿論ですが、その上にある一番大きなものは「追い詰められている」ことではないかと最近思ったりします。
6月のレースでこの年齢になって1分切りを達成した時、人間というのは追い詰められればこのくらいのことは出来るもんだ、と改めて思い直しました。
何に追い詰められているかというと、それは「自分の年齢」です。
僅か10年前には考えもしなかったことですが、今は自分に残された時間というものをとても意識します。
あと何年レースが出来るのか、1年に3回レースに出れたとして5年でたった15回。
そもそもあと5年も体力的にレースが出来るのか?
そう思うと何事に関しても、やりたいこと、やらなければならないこと、は今やらないと、という思いを強くします。
そして大事なことのためには犠牲にしなければいけないことが存在することも理解する必要があります。
またそれに伴って周囲に対する感謝の思いも大きくなります。
今の年齢でまだレースが出来るような肉体を与えてくれた神様と両親に感謝しています。
レース活動は周囲の人たちに支えられて初めて出来るものなので、関わりあう人々にも感謝です。
こんな自分を支えてくれて好きにさせてくれるパートナーにも感謝です。
そして直接私が大きく支えられているのは何といってもお客様であることは間違いありません。
特にレースをやっているお客様に関しては、皆さんが今の自分の心境になるもっと先まで、サポートし続けることが出来るように精進したいと思いを新たにするこの頃です。





  
Posted by cpiblog00738 at 12:51

2016年09月14日

殿堂ページをアップしました。

先日行われた筑波TTレースに於いて、コースレコード樹立とともに見事優勝を飾った辻林選手を殿堂ページにアップしました。
是非ご覧ください。   
Posted by cpiblog00738 at 20:07

2016年09月11日

筑波TT

9/10に秋の筑波TTが開催されました。
最近天候が不順な日々が続いたのでどうなることかと思っていたのですが、幸いなことに当日は好天に恵まれました。
というか、好天過ぎて路面温度は50度を遥かに超越し、かなり過酷なコンディション。
テントの下でもバイクを触ると、まだ朝だというのに、エンジンをかけて暖機もしていないのに強烈な紫外線の影響なのでしょうか、カーボン製のタンクもシートカウルもアッチッチッ状態になる始末。
そんな状況下でツナギとヘルメットその他の装備を着込んで、まるでフライパンの上のような状態のコース上を走るというのは、殆ど変態的な行為のような気がしたのは自分だけでしょうか?

そんな中で行われた予選、自分は感触が今一つでタイムも伸び悩み、0秒542で予選順位は6番手でした。
そしてポールポジションを獲得したのは我らがツジバ選手。
この過酷なコンディションの中、999を駆り59秒164という驚異的なタイムを叩き出し、コースレコードを樹立です!
ツジバ選手のポテンシャルが本領を発揮して大きくものを言ったのは間違いありませんが、それに加えてコースレコードホルダーが999という13年落ちのバイクであるという事実!
これこそホビーレースの神髄ではないでしょうか?
ただ一言、素晴らしいと思います!

自分的には今回も59秒台のタイムを記録することを目標としてレースに臨んだのですが、その目標はかないませんでした。 
今回の状況が前回6月のコースコンディションと 大きく異なることはさておき、バイクの感触がどうもしっくりこない感じで、その原因が掴めないままレースが終わってしまった感は否めません。
まあそんな事は良くあることで、前回の走行で良いタイムが出て、何一つ変更せずに臨んだ筈の次回の走行では 全くうまく行かない、という経験は良くある事で、レースをかじっていれば日常茶飯事のような気がします。

自分の場合はコースインして1周すれば、その感触で今回はイケるかイケないかは、大体判別できます。
その原因まですぐに判別できれば言うこと無しなのですが、その能力は全く有りません。
そのあたりのことをああでもないこうでもないといろいろ考えるのが楽しいところでもあるのですが。

今回の場合はリアタイヤの仕様に若干の変更があったのが大きな要因の一つだったのは確かだと思います。
これに関してはハード面で明らかに前回と異なる要素だったので、間違いは有りません。
とりあえず事前の練習で一度は試していたのですが、レースの予選や決勝のような本気モードで走らないと本質が見えてこないというのが自分の場合は確かなところです。
プロのライダーはテスト走行でそのあたりのことを正しく判断できますが、それがプロのプロたる所以です。
自分なりに考えた結果、新型の方がグリップが若干高くなっていると思われるので、その結果プッシングアンダーの傾向が出ているのではないかという結論に達しました。
決勝レースに向けて、こうすれば良くなるのでは?と思う本当に些細な変更を施しました。

それと暑い日が続く中で良く判らなくなってしまったのがタイヤの空気圧です。
最近はタイヤウォーマーを十分にかけてタイヤが完全に温まったと思われる状態で空気圧を測定し、その時の値を基準にしていました。
そして走行直後に空気圧を測定しますが、そうすると大雑把に言えば、寒い季節では走行前より空気圧は高くなっています。
もう少し暖かい季節になると、走行の前後での空気圧は同じ値になってきます。
そして暑い季節になると、走行後の空気圧の方が低くなってきます。
どうも今のような暑い季節の場合、タイヤウォーマーが効きすぎて温度が高くなりすぎるのではないでしょうか?
今回もタイヤウォーマーをかけたタイヤは強烈に温まって、ホイールが素手で持てなくなるくらいの高温になっていました。
そんな状態で基準値に空気圧を合わせて走行し、走行翌日のタイヤが常温に戻った状態でもう一度空気圧を測定すると、空気圧はびっくりする位低い値になっています。
こうしたことを考えると、空気圧の件はもう少しちゃんとした基準を決めて管理する必要があるように思いました。

25決勝レースは結果的には面白く楽しめました。
今回のレース、予選も決勝も前後新品タイヤという超贅沢な仕様で臨んだのですが、少なくとも決勝では新品タイヤの恩恵をそれなりに受けることが出来たようです。
KTM勢との3位争いを何とか凌ぐことが出来て、レースの内容的には今の自分としてはベストな結果だったと思います。
でも過酷なコンディションの中、決勝レースではほぼ全員のタイムが伸び悩む中において、ツジバただ一人だけが予選とほぼ同じタイムを出して堂々の優勝を飾ったのには脱帽です。
何だかんだ言っても今日は「ツジバの日」だったのは間違いありません。

また次も頑張るぞ!




   
Posted by cpiblog00738 at 07:38

2016年07月28日

速いエンジンの仕様 (テスタストレッタ編)

034サーキット走行に於いて、「あのバイクは直線速いよね」と周りから言われるバイクが確かに存在します。
そういった自他ともに「速い」と認められているエンジンは、果たしてどのような仕様になっているのでしょうか?
ここではそういった「速い」エンジンの仕様を、TFDで製作した998/999系のテスタストレッタエンジンを例に解説してみます。
当然ながら排気量のアップはパワーアップに直結しますが、ひとまずここではそれは置いておいて、それ以外の要素について解説します。

005まずはピストンです。
現時点での定番はピスタル製のハイコンプレッションピストンです。
画像は仕様違いで両方とも998/999用ですが、左が現在一般的なもの、右は一昔前に出回ったものです。
左の方が重量的にいえば圧倒的に軽量ですし、基本的にそのまま組めます。
ただしトップとヘッドの干渉の有無の確認は必要です。
右のものは重量がノーマルに近いですし、そのまま組むとトップが部分的にヘッドと明らかに干渉するので燃焼室の形状を対策する必要が生じます。
ただ左のピストンも、何故かピン上の高さがノーマルより若干高く製作されており、そのまま組むとスキッシュの値が「私の基準では狭すぎ」という感じになります。
そのため私が組む時はシリンダベースのガスケットの厚さを調整して、スキッシュの値が私が思う適正な数値になるように調整しています。
また、重量が圧倒的に軽量ということで本来の性能を発揮させるためにはクランクバランスのとり直しが必須となります。
ちなみに998ノーマルピストンの重量は一般的に475グラム前後、ピスタル製ピストン(左側)の重量は同じく425グラム前後です。

IMG_3093コンロッドです。
これはPANKL製の削り出しタイプのチタンコンロッドです。
これを使用出来ればベストですが、何しろ高価なのでなかなかそうは行きません。
(参考重量:329.9グラム)




IMG_1894現実的に使用することが多いのはこのタイプのコンロッドです。
ドゥカティ純正のPANKL製チタンコンロッドです。
削り出しではなく「型モノ」ですが、性能は必要十分だと思います。
マトモに買うとこれもとんでもなく高価ですが、上級車種にはもともと使われていますから多くの場合は新たに購入の必要はありませんし、たとえ新たに入手する必要が生じても中古品を比較的容易に安価で手に入れることが出来ると思います。
(参考重量:377.4グラム)

IMG_1895ちなみにこちらはスチール製のノーマルコンロッドです。
(参考重量:528.2グラム)






016クランクシャフトです。
ピストンとコンロッドに合わせてバランスを取るとこんな姿になります。






021クランクウェブにはタングステン系のヘビーウェイトが打ち込まれています。
こういったクランクシャフトの素材であるスチールよりも質量が大きい素材をクランクの中心よりも可能な限り遠くへ配置することによって、バランスが取れた状態のクランクシャフト本体の質量を軽くすることが出来ます。
要するにコンパクトなクランクシャフトになります。



022凶器みたいで結構おっかない印象ですね。(笑)

 





025コンロッドを組んで組み立てたところです。

 





「速いエンジン」の基本的なキモは基本的に以上の要素だけです。
カムやバルブはノーマルのまま、吸気系もノーマルのままです。
ECUも基本的にドゥカティパフォーマンスのレース用ECUで全く問題ありません。
エキゾースト系に関しては、ドゥカティの場合は基本的にエキパイが太いほどパワーアップする傾向が有るので、 可能であれば「出来るだけ太いフルエキ」を入手したいところです。
ブランドとしてはやはりテルミニョーニが無難で、性能が保証されています。
実績のないメーカーのものや一品製作品の場合、太いけどパワーが出ないとか、過渡特製がイマイチとか、振動が多い等の問題が有るものも見受けられるようです。
それと言い忘れましたが、テルミの998用φ54mmフルエキはエキパイがスイングアームの下側に干渉するので対策が必要です。(なぜこんなことが起きるのかは不明ですが)
街乗りであればリアの車高を下げる(スイングアームの角度を寝かせる)ことで干渉を防げますが、サーキット走行でそれをするのは致命的ですから エキパイを切った貼ったして何とかしなくてはなりません。

以下は上記以外の細かいことですが、場合によっては非常に重要になることもある要素です。

008ギアの軽量化です。
画像は1次ギアとスターターのインターミディエイトギアです。
昔は単純に機械加工で穴を開けていましたが、現在は放電加工で施工しています。
特にインターミディエイトギアは硬質なので、機械加工では刃物の歯が立たないので加工は無理、と言われたことも過去にはありました。



009これはタイミングギアです。
左が一般的に使われているノーマル部品。
右が749Rや999Sの2005年モデル以降に使われている純正部品です。





010タイミングギアの歯はピックアップのトリガーを兼ねています。
エンジンに装着されているピックアップの位置からも窺い知れるように、ギアの横方向から信号を拾っています。
この方式の場合、ピックアップが拾う信号が非常に不安定になる場合が有ります。
一般的に多く見られる不具合の症状としては、エンジンが高回転で失火するということが有ります。
ノーマルのギアで全く問題無くエンジンが作動する場合も多いですが、そうでない場合は何をやってもダメで、その場合はギアを画像左の後期型に交換すると症状はピタリと改善します。
良く見るとギアの歯に凝った加工が施してあります。
後期型がこの仕様になったということはメーカーもこの問題を認めて対策したということですね。
(ちなみに現在はピックアップの位置を変更し、ギアの上側から信号を拾うようになっています)
レースで使用する場合はこのタイプのタイミングギアを使用することを強く推奨します。

とりあえず今回はこの辺で終わりにしますが、最後に一つ。
以上の仕様はあくまでサーキットを全開で走るという限定された状況において「調子が良くて速い」となる仕様です。
公道では全くと言ってよいほどそのアドバンテージを発揮することはないと思われ、かえって中低速のパーシャル域ではギクシャクして「不調」となる可能性が高いので念のため。
公道からサーキットまで、オールマイティーに調子よいエンジンは、やはりメーカーが製作したノーマルエンジンであることは間違いが無いと思います。


   
Posted by cpiblog00738 at 12:40

2016年06月30日

59秒台出ました。 おまけ

IMG_1820レースが終わって暫くしたある日、久しぶりに温泉に旅行に行ってきました。
自分が本気で美味いと思う料理はやはり日本食ですね。
こういったものを食しながらの日本酒は本当に最高です。
温泉で腰痛を治療、ゆっくり骨休み、という目的もあったのですが、実はメインの目的は他にありました。



IMG_1826目的地はここです。
渓流の中に大岩が有って、その上にしめ縄で囲まれたスポットがあります。
ここは伊豆の某所で、結構メジャーな観光スポットでもあります。





IMG_1824簡単に説明すると、手すり沿いの貯金箱みたいな箱に100円を入れて、手前の鉢の中の石を3個取り、願い事を心で唱えながら岩の上のしめ縄で囲まれたスポット目がけて投げます。
3個のうちの1個でもそのスポットに載せることが出来れば、願い事が叶うと言われています。
これを「大願成就」にかけて「大岩上受」と呼ぶそうです。


P1070828実は私は過去に何回か此処を訪れたことがあるのですが 、去年の初冬に訪れた時に3個投げた石のうちの一つが上手く岩の上に乗ったんですね。
その時に咄嗟に口をついて唱えたお願いが、「筑波で59秒お願いします!」だったんです。
何故か 「ナナマルのバスを釣らせて下さい!」では無かったので、自分の心の奥の本心では筑波59秒の優先順位が特別に高かったんだと後から思った記憶があります。
願い事が叶った時は必ずその年のうちにこの岩に手を合わせに来るのが礼儀となっているそうなので、今回はお礼と報告と、新たな石乗せ挑戦にやって来たというわけです。

私はこういった一連の出来事を特に信じたりする人間ではありませんけど、今回の流れの出来事が現実として起こったことは事実なので、将来的に私は定期的にここを訪れることを避けられそうにありません。(笑)

ちなみに今回も3個の石のうちの1個を載せることに成功しました!

   
Posted by cpiblog00738 at 10:16

2016年06月23日

59秒台出ました。その3

肝心の決勝レースはあっけなく転倒リタイヤとなってしまいましたが、一応その顛末を。

レースはスタートが肝心ですが、私はスタートが下手です。
大抵は予選結果より順位を落として1コーナーに入ることになります。
今回はまだマシな方で、1コーナーへの進入は3番目でした。
しかしいつも感心することですが、上位の皆さんは スタートが上手ですね。
自分的には80点くらいのスタートだったので上出来ではあったのですが、
それでは太刀打ちできません。

上位陣の予選タイムの差なんてせいぜいコンマ数秒ですから、レースになると抜いたり抜かれたりなんてことはなかなか起こりません。
今回スタートで自分の前に出た選手はレース関係者ならだれでも知っている選手権上がりの有名な猛者だったので、いったんその選手に前に出られてしまったら、まず自分の順位を上げることは不可能でしょう、と思っていました。
その後は前走者の後ろについて周回を重ねることになりますが、 でもそうしているうちに相手より自分が早いところ、自分が遅いところが見えてくるのです。
幸運なことに今回は自分のバイクの方がストレートの伸びがちょっと上回っていましたね。
2ヘアを立ち上がって加速していくとストレートエンドで並びかけることが出来ました。
とはいえ、並んで飛び込む勇気というか、そんな事をする気は最初から全くありません。
何せ相手は歴戦の猛者ですからね、こっちは完全にビビってしまっていて、横に並びかけるくらいが関の山です。
ストレートエンドで並びかけることを3〜4回 繰り返して、まあ今回はこんなもんか、と思っていたところ、次の周回の2ヘアの立ち上がりで前との差が今までより明らかに接近しました。
この差ならストレートエンドまでに完全に前に出て安全にパスできる、という確信が生まれたので、 この時ばかりは頑張ってパスさせてもらいました。
そうすると1位を走る選手はもうだいぶ先に行ってしまっていたので、自分の前はもうクリアです。
これでやっと自分のラインで走れるという状態になりました。
それまでは前走者の直後を走るためにどうしても走行ラインを前走者のそれよりも1本外に取らざるを得なかったからです。
で、2ヘアに差し掛かりました。
自分の本来のラインを通ると、後から聞きましたがそこに直前のレース(ピレリカップ)の赤旗の時に出たオイル処理の跡が有ったんですね。
自分は全く知りませんでしたが、判って走っている人もいたので自分に足りないところが有ったということです。
ブレーキを離して加速に移る直前の、所謂何もしていない時に、フロントタイヤがスローモーションで内側に切れて行っての転倒です。
えっ、俺このまま転ぶの?という感じでした。
1位の選手には追い付きそうもないので残りの周回は無難に消化して、と思っていた矢先で、特に攻めているわけでもなく、タイヤからのインフォーメーションも危険を知らせるものは何もなかったので、自分としては意外な転倒でした。
そんな地面との落差ゼロの転倒なので、自分は肘と膝周辺でアスファルトの上を数メートル滑っただけ。
転がりもしませんでした。
あ〜あ、良いことばかりは続きませんね、とその時思いました。
神様に次回も頑張りなさいと言われたみたいです。

   
Posted by cpiblog00738 at 10:09

2016年06月21日

59秒台出ました。その2

222016年6月19日、筑波TTの当日がやってまいりました。
季節的には梅雨時なので天気の心配がありましたが、幸運なことに降雨の気配はなく、そこそこのレース日和でした。
ゼッケン94番が私のバイクです。
このバイクのレースデビューは4月の筑波TTでした。
その時はやはりタイヤを始めとする各要素のバランスが今一つではありましたが、それでもベストタイムは0秒319だったので、今回こそはと期待を込めて筑波に乗り込みました。

朝はテントの設営や荷物の配置等が落ち着くまではそれなりに忙しいものなのですが、ところがそんな状況下で個人的に予想もしなかった事件が起こってしまいました。
荷物の配置を整えようとちょっと重めの箱を持ち上げた時に腰に「ビキッ」と強烈な痛みというか衝撃が!
ぎっくり腰です!!!

48私は腰痛持ちで、何年かに1回くらいはぎっくり腰になることがあるのですが、それがこのタイミングで来るのか!
正直なところ神を呪いましたね。(笑)←(今だからこう書ける)
この画像はポジションを確認中、ではなく、オレ、本当にバイクに乗れるのか?の確認をしているところです。
闘志に燃えて目が三角になっているわけでは決してありません!
痛みに耐えるが故の表情です。(笑)
努めて平静を保っていましたが、一時は立っているのが精一杯、後ずさりも出来ません、というような情けない状態だったのです。
まあ人間の体というのは良く出来たもので、いったんバイクに跨ってコースに出てしまえば走行中は何とかなるだろうと予想はしていましたが。
(骨が折れているわけではないですからね)
でも走行後にバイクから降りるのが大変そうだなという想像までしていました。




で、私の個人的な事情には全くお構いなしに予選が開始されました。
ここからはメーターダッシュのディスプレイに残されたデータから予選の状況を再現してみます。
説明は自分の記憶によるものなのでかなり曖昧なところがありますがそれはご勘弁を。

IMG_1790予選開始のアウトラップです。
各数字はその周に記録された最高値を示しています。






IMG_1791予選2周目です。
補足説明しますと、この周のラップタイムは1分2秒24、スロットルポジションの最高値は100%(全開ということですが、アウトラップの画像では100%まで開けていないですよね)、水温の最高値が71度、最高速が229km/h、エンジン回転数の最高値が10,779rpm、ということです。
ラップタイムはダッシュ左上にマジックテープで止まっているGPSセンサーによる計測です。
当然ながら公式に記録されるラップタイムとは若干の誤差があります。
タイヤは新品で出て行ってますからまだ様子見で、タイヤの皮むきと言われる状態です。

IMG_1792予選3周目。
まだ様子見ですが、そろそろ行ってもいいかなという雰囲気になってきたところです。






IMG_1793予選4周目。
とりあえず行ってみますか〜、となった時です。
早くも59秒台に突入です。
私の場合、新品のタイヤを履いてコースインするとタイヤの皮むきが終わった4周目あたりでポンと良いタイムが出ます。
その後頑張って走ってもそのタイムを更新できないこともあったりします。
この事実の裏に、より速く走るためのヒントが隠されているような気がします。
今後の課題ですね。
正直なところ今回の走行中はディスプレイを全く見なかったので(そんな余裕はありませんでした)、この時にとりあえずの目標を達成したことは知りませんでした。

IMG_1794予選5周目。
周りのバイクと絡んでいますね。






IMG_1795予選6周目。
頑張って前のバイクを抜きながら走っていると思われます。






IMG_1796予選7周目。 
前周回と同じ状況だと思われます。






IMG_1797予選8周目。
転倒者がいてそれに気を取られ、ギアを1速間違えて走行してしまい、加速中にエンジン回転をリミッターに当ててしまった周があったのを記憶していましたが、それがこの周だったようです。
お察しの通り、このエンジンの回転リミットは11,900rpmに設定してあります。
998RSだとメーカーが決めた回転リミットは13,000rpm、996RSでも12,600rpmですから、それらと比較すると低めの設定です。
このエンジンは基本的にノーマルですからそんなに上まで回してもメリットは無いし、エンジンの寿命やノーマルエンジン故の中低速トルクの太さが有るのでこうした設定にしてあります。

IMG_1798予選9周目。
実を言うとこの周まで前走者が抜けずに悶々とした状態で、なかなか思ったような走りが出来ずにいました。
そのバイクは4気筒だったので直線は当然ながら恐ろしい速さで、かといってインフィールドも遅いわけではなくてそれなりに速く、ちょっとパスするのは無理かなと判断し、いったん後ろに下がって前のスペースを空けてからアタックしようと考えました。
そこでそれを実行に移そうと念のために後続を確認すると、後ろには何台も後続車が続いています。
それを見て、この方たちを全員前に出してそれからクリアを見つけるのも大変だと思い直しました。
前の1台を抜けばその前はかなり遠くまでクリアだったからです。

IMG_1799予選10周目。
前走者を何とかパスし、クリアが取れたので頑張ってみました。






IMG_1800予選11周目。
結果的にこの周がベストタイムです。
公式には59秒605でした。





31この瞬間のピットにある公式ディスプレイの表示です。
何と!トップではないですか!
本人はそんなことは全く知らずに走行していました。

 


IMG_1801予選12周目。 
まだ59秒台です。






IMG_1802予選13周目。 
まだ頑張っています。 






IMG_1803予選14周目。 
ここで前走者の存在がちょっと前に見えてきました。
アタックを止めたわけではありませんが、やはりそう簡単にはパス出来そうにはありません。 




IMG_1804予選15周目。 
前走者にグッと近づいたところでチェッカーが出ました。






35予選中は自分のバイクのディスプレイも、コントロールタワー上の表示も全く見ていませんでした。 
なので自分がどのくらいのタイムを出せたか、果たして1分を切れたのか、全く見当が付きませんでした。 
で、チェッカー後1コーナーを回ったところでコントロールタワー上の表示を確認しました。
ここにはトップから6番目か7番目までが表示されます。
おそらく自分のゼッケン94番はここに有るはずだという確信はありましたが、速い人がいっぱい走っているクラスですから何時もの習性で下から確認していきました。
すると何と上から2番目に94番の表示があります。
この時初めて、自分は59秒台を出せたんだ、と確信できました。

11年前のタイムは出てしまったタイム。
今回は出そうと思って出したタイム。
この差は大きいと思います。
これから先ももうちょっと頑張ってみようと思える展開でした。 

ぎっくり腰で余分な力を入れられなかったのが良かったのか、結果的にぎっくり腰になったことに感謝するべきなのか、今本気で迷っています。(笑)   
Posted by cpiblog00738 at 12:53

59秒台出ました!その1

筑波サーキットにおける今迄の私の公式ベストタイムは59秒988でした。
これは2005年3月21日に行われたBOTTのエキスパートツインクラスの予選で記録したものです。
もう11年も前のことになりますね。 
バイクは998RS2003、タイヤはダンロップのスリック(16.5インチ)でした。
(このバイクはもちろんまだ所有しています。そのうちまた走らせてやろうと思っていますが、なかなかその機会が、、、)

126_2608その時の車載Pラップがこれです。
(当然ですが公式に計測されたタイムとPラップで計測されたタイムには若干の相違があります)
それ迄の自分のベストタイムは確か1秒台だったと記憶していますが、この時は直前の練習走行で 0秒台が何度か出て、その次の走行だったBOTTの予選でこのタイムが出ました。
この時は僅か1週間ほどの期間で自分のベストタイムが2秒近く縮んだんですね。
タイヤ、サスのセッティング、自分の走り、その他、あらゆる要素のバランスが偶然にも出会い頭でバッチリハマったのだと思います。
その後は、その時使用していたタイヤがモデルチェンジして入手出来なくなってしまい、代替えのタイヤでバイク全体のバランスが崩れたのでしょう、いくら頑張ってもせいぜい0秒台真ん中から後半のタイムを2〜3回記録しただけでした。

今考えるとこの時のタイムは「出てしまった」タイムでしたね。
出そうとして出したタイムではなかったのです。
それでもやはり1分切りはアマチュアレーサーにとっては絶対的な区切りですから(当時も今も)、自分の一生の目標を達成した気持ちになって、「これから先のレースは自分にとってはオマケみたいなもんだ」と本気で思いました。  

私は1957年生まれなので、年齢的、肉体的にレースが出来る期間もあと数年かな、と思い始めたのは最近のことです。
そこで11年前の出来事を思い出して良く考えてみると、今なら当時よりも走りに関しては多少賢くなっているし、バイクもタイヤも良くなっている、便利なフルコンも持っている。
もう一度59秒台を真面目に目指して行動すれば今ならまだ何とかなるのではないか?
もう一回頑張ってみる価値はあるんじゃないか?(でもただの勘違いかも?)
そう思って行動に移ったのが去年の秋も深まった頃です。 
今乗っている996RS2001の車体に1098エンジンを載せた競技車両の製作を始めました。   
Posted by cpiblog00738 at 09:54