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2024年04月04日
今週末は筑波TTレースです、が…。

2023年11月17日
筑波TT
2023年03月31日
★ 1990年代後半のレース事情 ★ その1
公開にあたって
既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、私は先日筑波サーキット走行中に転倒し、腕を骨折してしまいました。その結果、当然ですが仕事が出来ない状況となってしまい、少なくとも4月の声を聴くまでは療養に専念することとなり、現在開店休業ならぬ閉店休業中です。多くのお客様に多大なご迷惑をおかけする事態になってしまい、誠に申し訳なく思っております。営業を再開した暁にはより一層頑張ってお仕事に精を出しますので、それまでの間は何卒ご容赦ください。
で、仕事が出来ない時間を利用していろいろな資料を整理していたところ、読み物として面白い記事が出て来ましたのでそれをこの機会にこの場で公開したいと思います。この記事は原稿の形式でかなり前から手許にあったのですが、それは用紙にプリントしたものでした。それをウェブにアップするには全体をテキストに打ち直し、尚且つ校正も必要ということでかなりの手間がかかることが予想されました。そのため行動に移すタイミングを逸したまま現在に至ったのですが、今回の怪我をこれ幸いとこの機会に公開することにしました。
この文章は1996年の年末に作成されたものです。当時我々チーム・ファンデーションは全日本ロードレースのスーパーバイククラスに、1994年は芳賀選手、1995年は生見選手、1996年は生見選手と井筒選手の2人を擁してフル参戦中でした。1996年シーズン終了後、来たる1997年シーズンに向けてのレース活動資金の調達を目的にその方法を探ろうと、モータースポーツ関係の雑誌を二輪四輪問わず手広く出版している某雑誌社にお邪魔し、二輪レース専門誌の編集部員の方にその当時のバイクレース業界の内情等をいろいろと伺った時のやり取りをインタビュー記事として起こしたものです。
1996年ということは今から27年前のバイクレース業界の裏話です。ほぼ30年前のことですから内容的にはもう時効という認識でお読みください。ただ、あれから30年経った今の状況が当時の状況とどう変わったのか、変わっていないのか。この辺りに関しては読者によってはかなり興味深く感じるかもしれません。本文は非常に長い文章で申し訳ありませんが是非最後までお読みいただければと思います。
インタビュアーは当時からずっとTFDをサポートしていただいていたライターの辻森慶子さん(本文中ではTとなっています)。質問にお答えいただいたのは当時某二輪レース専門誌の編集部員だったXさんです。本来であれば真っ先に掲載のご連絡をすべきところですが、年月が経ち、Xさんとは当時以来長い間音信不通となってしまいました。お元気でいらっしゃるでしょうか? もしこの記事をお読みになるような機会があれば、ぜひご連絡いただけると嬉しく思います。
念のため重ねて申し上げますが、あくまでこの記事は1996年の時点で当時の状況を当事者の主観を交えて受け答えした内容が記されたものです。その点をご理解の上お読みいただくよう、お願い申し上げます。
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以下 本文
ワークス VS. メディアの攻防
T: 四輪に比べて二輪はメディアの露出度が極端に少ないと思いますが、原因はどんな所に有るのでしょうか?
X: 四輪の国内最高峰っていうとフォーミュラ日本、今年からフジテレビがやっていますけど。あそこのチームの運営母体がスポンサー様なんですよ。まずスポンサー様が第一人者で、それをフォローしている広告代理店がいらっしゃる。この広告代理店が動いているんですよ。その下っていうとおかしいけど、そこにようやくチームがあっていわゆる監督さんがいたりドライバー、メカニックがいたりするんです。
ウチの四輪の編集部員が、例えば「さっきのリタイア原因を教えてください」だとか「テスト項目の中の何をやってたんですか?」って取材すると、ちゃんとスポンサーのスポークスマン、つまり広告代理店のどなたかが「先日のテストの模様はこうでしたよ」とか「リタイアの原因はこうでしたよ」ってちゃんとまとめてくれるんですよ。
それはあくまでも自分のところのチームが雑誌に露出してほしいし、マイナスの内容でもプラスの内容でも、とにかく伝えなくちゃ、という気持ちを持ってくれているからなんです。だから四輪の編集部員たちはラクっていうか、非常に取材しやすいんですよ。
二輪はね、ご存知のように、全くといっていいほどスポンサーがいないんです、四輪に比べて。で、何処で止まっているかというと、バイクのメーカーがやっているんですよ。メーカー主導型ですと、どうしても企業秘密があるじゃないですか。当然レースだけじゃなく、自社の市販車、市販レベルにフィードバックしてオートバイを売るわけですよね。つまり、レース車両っていうのはテスト車両なわけで、いろんな技術だとかテスト項目だとかをつぎ込んでいくから、一見さんの編集者が行っても話を聞かしてくれないんですよね。ひどいところに行くとピットのシャッターを閉めちゃったり。
T:そうなんですか。じゃ、個人的なコネクションやいろんなルートを使って、そして親しくなってやっと情報が出る…。
X:…ようやく。まあ、ほんとに駆け出しの編集者の人なんて苦労しますよね。現に、平日の鈴鹿サーキットでHONDAのテストをやってて僕が行けなかった時に、たまたまF3000のテストやってるから現場に行ってたウチの四輪の編集部員に「相乗りで覗いてきてくれないか。タイム聞いてきてくれよ」って頼んだんです。とりあえず僕の名前出さないで。「ちょっと四輪の取材で来てて、バイクも好きなんですけど。今、あの人どのくらいで走っているんですか?」と平身低頭に聞けば、結構教えてくれるかもしれないからって。
そうしたら、一切シャットアウト。一見さんには絶対教えない。で、四輪の編集部員が、「何なのいったいコイツら。おかしいよ、二輪…」って言いますからね。
T:そうなんですか(笑)
X:だから、もうライダーなんか人格なしですよ。ワークスライダーと言われる人たちは。
T:言いなり。
X:そう。下手なことは喋れない。そんなもんですからね〜。どこのメーカーさんも敷居が高いですよね。
T:同じワークスチームの中でも、ライダーによってチューニングが違ったり、一番いいバイクはこのライダーとかいうのは有るんですか?
X:やっぱり、現実にはあるんですよ。優先順位というのはあって、例えばHONDAという会社が2人のライダーを抱えてるとしますよね。メーカーとしてはレースをするんですから、まず勝ち負けですよね。そのシーズンのチャンピオンを獲りたいというのがある。
まず開幕前、2人のライダーAさん、Bさんを抱えてた場合に、どっちの方がタイトルに近いかな、と実力のサジ加減を見るわけですよ。で、これはAさんだ。じゃ、とりあえずメンバー的にも、お金的にも、Aさんの方にいいもの付けたり人員を増やす。…というのが何処のメーカーも差はあれやってることは事実です。
もう一方では、先程申しましたように、新しいオートバイの開発っていう目的も担っています。勝ち負け以外の方ですね。新しいクルマを作っていかなきゃいけない、技術を試して行かなきゃいけない、という側面もありまして…。Aさんをレースに勝つ方に向けたら、じゃBさんにはちょっと泣いてもらって、新しい技術の開発ライダーとして頑張ってもらおうという側面もあるんですよ。
だからレースの勝ち負けってことでは優先順位があるかもしれないけども、仕事を2つの目的に分けると、それぞれ次元が元々違うんで。両方に違う目的でやってるチーム、というかメーカーという感じがありますよね。
T:でも。ライダーって勝ちたいじゃないですか。みんなちょっとでもいい条件、いいバイクに乗りたいと思っているわけですよね。
X:ほんとにおっしゃる通り!開発を担う、「今年はちょっと泣いてもらうよ」とお達しされたライダーはやっぱりショックですよね。それでもって言い訳もできないんですよ。つまり、いろんなテスト項目があるということは、遅いじゃないですか。要は、未来につながる市販車のオートバイだったり、はたまた自分のところの素材を使ってレースをやってくれている人たち向けのレーシングパーツ開発なんで。不良品もあるかもしれないし、耐久テストもやんなきゃいけないし。こっち(レース主体)は速くて軽いバイク、逆にこっち(テスト用)は重くて耐久性あるバイク。そうなるとレースに勝てないですよね、タイムも伸びないし。
とすると、僕らが取材に行って「なぜタイムが伸びないんですか」って聞くと、ほんとはもう言い訳したくてしょうがないんですよ。だけどワークスライダーっていうのは人格なしですから、企業秘密は全く語りません。「いや〜、僕の実力不足です」としか言えないんですよ。
それは僕ら雑誌屋がですね、ライダーに聞いてもそういう返事しか返ってこない。だから僕らが監督さんとかエンジニアの人に、「あの人が使っているのは、どういう目的のクルマなんですか?」「今回どういうパーツが付いているんですか?」「どんなテストをしてきたんですか?」というふうな取材をすると、ライダーの言い訳がスッと読める。自分じゃ言えないけども、上の人が言ってくれたんなら全然問題無いし、逆にその言い訳をしたかった部分なんだから非常に助かる。…ってそんな感じなんですね。
T:なるほど…。なかなか複雑なんですね。
X:すごい複雑ですね〜。ハードだけじゃなくって、メカニックの人事だとかチーム監督さんの性格だとか。もともと持っているメーカーのキャラクターだとか、それはもう普遍的なものだし。ちょっとでもメカニックとの相性が悪かったりしてもダメだし。
ライダーとメカニックってピッチャーとキャッチャーみたいなもんで、メカニックと意思疎通できないライダーっていうのは、どんなに速いライダーでも上位に行けませんね。名ライダーの陰に名メカニックありですよ。決して、名ライダーがあってダメなメカニックさんがいる状況でチャンピオンは生まれない。
バイク業界は社会のアブレ者!?
T:バイクレースがあるのは知ってるし、世界グランプリは時々観たりします。そういうものが存在して、頂点がどこにあって、国内ではどこが最高峰でっていうことぐらいは認識できるんですけれども、内部がどういう仕組みになっているかがよく分からないんですよね。それが今回お話を伺いたいなと思ったきっかけにもなってるんです。
モータースポーツの日本国内での市場、特に二輪の場合はどこらへんの位置にあって、どういうポテンシャルとか面白味があるのか、どういう醍醐味があるのか。例えばスポンサー探しとかをする時に、どういうアプローチをすればいいものなのか。ご意見を伺いたいなと思っていたんです。
X:なるほど〜。名越さんがどう言うか分かんないですけど、全くTさんのお仕事を無視したところで、私なりの私見っていうか持論を言うとですね、二輪のレース業界というのは社会のアブレ者状態です(笑)。
これはですね、産業構造上欠陥があるんですよ。たとえばF1ですとかフォーミュラ日本では、必ず儲けてる人たちがいるんですよ。それは広告代理店さんとか、ものすごいお金を持っているスポンサーさんだとか。ま、メーカーさんだったり、とにかく必ず儲かってる人がいる。
二輪のレース業界っていうのはですね、儲かってる人が1人もいないんですよ。まず、レースを運営している主催者さん。で、そこで走るライダーさん。え〜、それからライダーを連れてきているメーカーさん。それを取材している僕等雑誌屋。この4者、誰1人儲かってないんですよ。誰か一人でも儲かってれば、そこに金があるんだっていうことで、みんなそこから「お金ちょうだいよ」とか。なんかお金の出所というのが分かればうまく回ると思うんですけど。みんなみんな、お金がないとこでやってますんで…。全くですね、資本主義の社会からアブレちゃってるんですよ。
ライダーの契約金なんていうのは、ほんとに四輪の選手から比べると10分の1くらい。高〇虎〇介っていうのが日本にいますけど、あの人のパーソナルスポンサー、メインのPIAAさんとか、いろいろ広告に出られたりとか、そういうのも入れて推定年棒は1億円くらいなんです。
かたや二輪の今年のチャンピオン。HONDAの青〇琢〇っていうのがいるんですけど、ヤツと話をしている限りでは、HONDAから貰ってる契約金なんていうのは2千万円。だいたい5分の1ぐらい。高〇虎〇介なんてタイトル獲ってないんですよ、別に。青〇琢〇は2年連続の国内最高峰クラスでチャンピオン獲ったにもかかわらず、たった2千万円。所属しているチームの1番シートにいても、「そんなにあげられないよ」って言われる。だから、まずライダーからして儲かっていない。
で、メーカーは二輪車を造っても儲からない。レースなんて莫大なお金がかかりますよね。それがそれだけ営業用のおいしいツールになってるかっていうと、なってない。
それから主催者。観客動員、要は観客の人がチケットを買ってくれるかどうか。あとは大会スポンサーにどっかの会社がついてくれたかどうか。シチュエーション見ると全くこれも良くないですよ。
で、私ら雑誌屋。こ〜れもですね、ご多分に漏れず他が潤ってなければ儲かるはずがない。
T:雑誌の発行部数は四輪より全然少ないんですか?
X:総体的には四輪よりは低いですね。世の中に出回っているレース専門誌やなんかでも、単純に二輪誌/四輪誌って数を見ただけでも。二輪誌って全国に30誌ぐらいしかない。四輪誌は100誌ぐらいあるらしいですからね、エリアマガジンも含めて。それだけ四輪のマーケットは大きいですし。
T:二輪ファンの年齢層は低いんですか?高級車にはちょっと違う層の人達がいるようですけど。
X:まず、サーキットに来てくれている観客の内訳っていうのは分からないですけど。ウチの読者でいうと20〜30歳代前半ぐらい。世の中の雑誌を買おうというのは、やっぱり20歳代が中心になってますけど、それからは外れていない。けれどもウチの読者はですね、新しい方、10歳代とか若い人たちの読者は全く増えていないといっても過言じゃない。
じゃ、どういう読者たちかというとですね、二輪のレースって80年代後半からすごい盛り上がったんですよ。それが90〜91年ぐらいでピークを迎えて、後はもう落ち傾向なんですよね。それは雑誌だけじゃなくて、メーカーももちろんそうなんですけど。その80年代に一緒に盛り上がったファンの人達が、そのまま歳食ってもいまだに買ってくれてるっていうことなんですよ。
サーキットに来てくれてるお客さんっていうのは、ウチの読者みたいな人達プラス、ライダーの追っかけみたいな親衛隊みたいのがいまして、女の子を中心に。その子たちが全体の3分の1ぐらい。まぁ、体感的ですけど。あとの3分の2は、やっぱり昔からレースを好きだった80年代のファン。昔やってたけれども今は家庭を持ってる、でもやっぱり二輪が好きっていう人たちが来てる。
T:ということは、だんだん二層になってくる。若い子たち、グルーピーのような層と、どんどん年齢が上がっていく層と。今後の可能性はそういうことなんでしょうか。
X:ほんとに女の子たちって動向がつかめない。たとえば、お目当てのライダーが彼女を連れてるのを見ちゃったりだとか、結婚しちゃったりすると、もうプイッと興味なくしますんで。そうすると彼女たちは新しいライダーを見つけるか、見つからなければそれこそジャニーズ系に行っちゃったりとか。
T:アイドル代わりなんですね。
X:そうなんですよ!こういうファンももちろん大切なんですけども、非常に難しい。だから、純粋に二輪のレースが好きだっていう人たちを増やさなきゃいけないんですよ。そのためには僕等雑誌だけじゃなくて、メーカーさんにも協力していただいて、主催者にも何とか努力していただかなければ。
T:あまりにもメディアの露出度が少なすぎますよね。
X:四輪よりもメディアは少ないし出る機会も少ないんですけれども、お客さんのだいたい3分の2が昔からレースをやって来て年齢を重ねた人たちというのを見るとですね、僕は逆に目は肥えてるんだと思うんですよね。自分で勉強されているし、単純にレースの勝ち負けじゃなくてコースの走りを見たりとか、そういう玄人の人達が増えてると思うんですよ。
四輪だと、見た目の派手さだとか「きらびやかさ」という部分で観ている感じもアリだと思う。ところが、二輪の人達は研究熱心で見るところがほんとに専門誌、僕等編集者なみの見る目を持ってたりしますんで、非常にレベルが高いと思うんです。
T:例えば、ヨーロッパなどではレースが人気ですよね。日本よりはるかに歴史がありますでしょうし。ファンの年齢層は高いんですか?
X:ヨーロッパとアメリカはですね、すごい年齢層が幅広いんですよ。
T:観る方も乗る方もですか?レースをスポーツとして観るような土壌があるとか。
X:スポーツというか、文化というか…、言葉だと陳腐になっちゃうんですけど。ほんとに二輪っていうものが、テニスやらフットボールやら、その辺のスポーツと変わらない目で観てもらっている。もちろん、例えばアメリカであればバスケットボールとか野球が人気で、二輪が好きだっていう人は少ないんですけれども。内容がですね、日本とは比べ物にならないくらいスポーツとして捉えられているんですよね。まあ、お国柄って言ったら簡単すぎちゃいますけどね。やっぱり基本的に走ってるライダーがスターだったり、夢だったり、普段観られない存在だったり。レース自体もすごく興行的で見せ場が多く1日楽しめる。そんな感じになってるんですね。
日本のレースですと、とにかくやってる人達が借金抱えてますんで〜、悲壮感が漂ってくるんですよ。
T:そういう事情があるんですね(笑)。
X:そうなんですよ。例えばSMAPのキムタクがですね、あれだけカッコよくても実は銭湯に通ってたとか、石鹸はお歳暮で済ましてるとかいうと、ガッカリしちゃうじゃないですか。やっぱりSMAPのキムタクは突き抜けてて欲しいっていうのがありますでしょう?
それが日本のレースだと、どうしても石鹸はお歳暮で間に合わせるとか、タオルは読売新聞の販売ツールとか、見えて来ちゃうんですよ。いくらワークスライダーといえども、その辺がヨーロッパとかと比べるとまず違う。
あと、レースの内容的にもはるかに周回数が多かったり、抜きどころが多かったり、激しく喜怒哀楽があったり。ドラマ仕立てでお客さんを楽しませようという努力を、主催者側もライダーもメーカーもしているという感じがするんです。
T:そうするとアメリカとかヨーロッパのライダーは結構優遇されているんですか?経済的にもある程度保証されている状況ですか?
X:総体的には日本よりも優遇されていると思います。アメリカは賞金レースが殆どですし、ヨーロッパでも賞金レースは多いです。イギリスではライダーで世界選手権を戦うと貴族の称号を貰えたりとか、イタリアでは英雄になる。スペインもほんとにすごい。やはり日本よりはライダーは優遇されてるだろうと思いますね。遥かにメジャーですし。
T:世界GPでは原田選手がかつてチャンピオンになってますし、岡田選手もすごいですよね。ノリックも頑張ってる。そういうのって記事としてちょこっとしか出ないですよね。ここまで頑張っているスポーツって日本では実はあんまりなかったりするのに。
X:そうなんですね〜。それがモータースポーツを難しく見せちゃってるんですよ。陸上競技とかテニスとか道具がすごいシンプルじゃないですか。例えば陸上競技だったら、シューズとかウェアくらい。素材にはメーカーさんもこだわって、最新素材とかありますけども。まぁ、たかだかシューズとウェアくらいですよね。あとは、ほんとに人間対人間の勝負ですから。
ところがモータースポーツっていうのは道具が複雑怪奇なオートバイとか車になって、まず道具を知らなければできない。面白くないんじゃないか。しかも負けたライダーは、やれタイヤがどうのこうの、あそこがブッ壊れたからどうのこうの、言い訳するじゃないですか。そうすると、ますます一見のお客さんは「それは何処なの?」「全体の、走るうえで何の支障があるわけ?」「なんでそんなものを付けるわけ?」となる。
単純に勝ち負けを楽しみたいのに、あまりにも道具が複雑だったりライダーが言い訳するもんで、トラブルだとかを分かってないと楽しめなくなる。…っていうように見せちゃってる我々メディアの責任もあると思うんですよ。
アメリカのレースなんて、「難しいことヌキで単純に同じ道具で戦いましょうや」というレースが多いんですよね。
逆にそういうレースもありつつ、「何でもやっていいよ、道具何でも使ってください。排気量なんて50ccでも1000ccでもいいから、とにかく勝ち負けやってごらん」っていうレースも有ったりして、海外のレースは非常に分かりやすいんですね。
T:日本では構造的に難しいんでしょうかねえ。
X:まずメーカー主導というのがあって。企業秘密とか最新技術みたいなものがあって、テストの場でもあるわけですよ。そんな傾向は、一方ではしょうがない。逆にアメリカとかヨーロッパというのはバイクを造っているメーカーなんか1つか2つくらいしかないし、日本のクルマよりはるかにレベルが低いじゃないですか。だから、日本のクルマを買ってくるか自分とこの細々とやってるメーカーのクルマでやるしかないんですけども。自分とこで造ってないから、ライダーもチーム運営してる人たちも、「じゃ、もう運ちゃん勝負でいこうよ」ということになるんですよ。だから、向こうのチームはライダー主体でやってるんですよね。
T:やっぱり、日本的な構造って感じしますよね。陰湿さっていうか。
X:私の前任の担当者が、今は四輪の方に行っちゃったんですけどね、ある時YAMAHAワークスに取材に行ったんですよ。で、さっきのレースでトラブルでリタイアしちゃったんで原因を聞きに行った。そしたら、その人を見つけるや否やピットのシャッターを閉めだした。「ちょっ、ちょっ、ちょっと待ってください。さっきリタイアしたトラブル原因聞きたいんですが…」「我々は報道されるためにレースをやっているわけじゃない!!」バシャッと閉められちゃった。四輪だったらこんなの絶対通用しないんですよ。だけど、そういう気持ちがメーカーにはありますし、日本のレースを運営しているのはメーカーなんで、そういうスタンスを取られると、伝える側としても限度がありますね。難しいですよ。
<続く>
2023年03月27日
★ 1990年代後半のレース事情 ★ その2
衝撃のチーム・ファンデーション
T:ワークス主導っておっしゃってましたけど、
X:すごいですよ!画期的ですねえ。
チーム・
T:構造的なところはすぐには変わらなくても、
X:これは名越さんの活躍も含めてなんですけど、
全日本のスパーバイククラスっていうのは国内の最高峰なんですが
しかもドゥカティというのは売れてまして。
かたや日本の4メーカーの4気筒750ccは、
で、全日本のレースでもプライベートのチーム・
T:どうなんですか、売れ行きは。
X:ん〜〜〜・・・(笑)。
T:コメントしにくいですか(笑)。
X:ドゥカティが売れているから、
T:以前バイクに乗ってた時に、
X:分かります。私もその世代ですから。
T:そういう人たちは、
X:ん〜とですね、すごい話が広くて絞りにくいんですけども・
今の日本のメーカーさんが作るオートバイって研ぎ澄まされちゃっ
それっていうのは、ほんとに余計なお世話の範疇で・・・。
T:輸入車に乗ってる人は国内で増えてるんですか。
X:すっごい増えてますね。それは、
T:購買層ってどうなんでしょうか。
X:若い子が買うんですよ。特にね、
じゃ、ハーレーがレースで勝ってるか、
で、若い子たちはハーレーが壊れても治せないんですよ。もう、
T:かつてはマニアック志向、
X:アメリカのハーレーはワルっていうイメージで、
T:その人達はツーリングに行ったりするんですか?
X:行ったりしますね。
T:見学に行くんですね。
X:そうなんですよ。レースそのものを観るっていう側面と、
あとメンテサイクル的には、
T:ということは、
X:もう、
例えば、
みんなドゥカティを走らせたいんだけど、
T:年間、何回かのレースがありますよね。大会によっては2ヒ
X:ま、1日のうち2ヒートある時はそんなに変わらないと思う
それよりも金・土曜の2日間のうちにですね、
バイクが転んじゃってほとんどエンジンだけしか生きていない状況
だから、パーツのマネージメントはもちろんですけども、
日本のメーカーさんで同じクラスを走らせようと思うと、
ドゥカティの名越さんみたいな人は、
T:フルマニュアルっていう感じでしょうか。
X:そうです。本来ならイタリアから、
T:今年の結果では、〇山さんのチームも、
X:増えてますね〜。ドゥカティだとHONDAのバイクの10
最初は名越さんの1チームで、
T:ライダーの芳賀さんがワークスにヘッドハンティングされた
X:若いライダーっていうのは、
T:安定するから。
X:そうなんですよ。やっぱり雑誌の取材も違いますし、
T:名越さんに話を聞くと、
X:そうなんです。レースに勝つ負けるっていうことになると、
今の若いライダーっていうのは、
そういった部分では、
イニシアチブを握れないんですよね。
X:割とトレーニング、
T:これってオフレコかもしれませんけど、
例えば、比較できるものじゃないかもしれないですけど、
X:ただ、ライダーの年齢がおしなべて若いですから。
T:あ〜、厳しいですね。
X:要は、
何がおかしいとか、ここにトラブルが出るとか、メーカーの方でコンピューター予測しとくんですよ。だから、
<続く>
★ 1990年代後半のレース事情 ★ その3
チーム・ファンデーション 歴代ライダーたち
T:今までのチーム・
X:僕は、
それがチーム・ファンデーションに入ったら、
T:今年の8耐では優勝もしましたしね。
X:ええ。今は生見君っていう人が乗ってますけども。
国内最高峰のクラスでワークス勢に割って入っているチーム・
T:確実にポイントを積み重ねていくようなタイプですね。
X:井筒仁康!!ん〜〜〜〜〜〜。正直、僕、
X:結構、怪我してまして、井筒君。その後遺症だとかで、
T:言葉が出てこないですね〜。
X:いや、
ドゥカティを走らせる時、
今年チーム〇山から走った鈴木さんっていうライダーは250cc
スペシャルな“8耐”
T:8耐はまたちょっと意味合いが違いますか?二輪レースの中では話題になりますが。
X:8耐は概況的にはですね、日本の国産メーカーが世界GP以上に力を入れているレースなんですよ。何故かというと、8耐でいいレース、優勝したりすると、8月・9月・10月のオートバイの売れ行きがドッと上がるんですよ。イメージ戦略的にも非常にいい。だから国産4メーカーさんは、全日本ロードのシリーズを十何戦してますけども、次の年の8耐のクルマを作っていると言っても過言じゃないくらいですね。優先順位的には全日本のシリーズよりも8耐の方が上なんですよ。営業上の問題もあるし。
8耐というのは非常に高温多湿な状況で、しかも8時間ぶっ続けで走らなきゃいけないですから、技術的には非常に厳しいんですよ。オートバイにとっては、温度が上がったり湿度が上がったりすると、パワーダウンするんです。パーツの消耗になりますから。そんな過酷な場で優勝したりすると、営業戦略上もよろしいし、そこで勝てたクルマっていうのは非常に技術的に優れているということになるんですよ。だから全日本の春先に、エンジンにやさしい時期に勝ったとしても、それは全然全体の評価にはならなくて。8耐を乗り切らなければ技術的な進歩は無かったということで、ほんとに各メーカーとも全日本のシリーズ戦は、極端な話、8時間耐久レースのためのテストみたいなものですね。
ですから8耐にはメーカーがマシン的にもメンツ的にも力を注ぐ、世界各国からライダーを呼んできますし、それに伴ってメカニック、チーム母体も呼んできますしね。その中で、例えばドゥカティを走らせてどうかと言いますと、あの〜、状況的には厳しいと思いますね。
T:素人っぽい質問ですけど、ドゥカティは8時間もつんでしょうか?
X:鋭いですね〜。普通に考えるともたないですね。やっぱりドゥカティはパーツの耐久性というのが良くないんで。スプリントレースでも、よくエンジン壊しちゃったりしてますんで。あの過酷な状況では、8時間も走りきれただけで、もう御の字じゃないかと思いますね。
ただ逆にですね、「あの状況の8時間を走り切れちゃったドゥカティって、どうなってんの?」って見てみたいというのはみんな思ってますよ。
それこそ日本のメーカーのエンジニアは絶対バカにしてますからね。もし8時間ドゥカティが走るっていったら、「もつわけねえよ!」っていうと思いますよ。「エンジンブローして終わりだよ」って。
だから、それが走り切っちゃって、さらにトップ10なんかに入っちゃった日にはですね、それこそ「うちの雑誌」でそこのドゥカティを特集して解説してもらいたい。エンジン全部バラしてみて、どういう風な状況になっているのか見てみたいっていうのは、みんな思ってますね。
T:名越さん、来年の8耐にチャレンジすると言っているので何とか頑張って欲しいと思うんですけど。
X:もうね、完走出来たらすごい。もう、ドゥカティなんて壊れまくるんですから。ほんとに(笑)。
全日本ロードレースの未来・・・
T:これまで伺っていると、8耐は一応頑張れば話題性とかでそれなりにメリットがあるっていう感じはしますけども。全日本の方は先行き暗いじゃないですか。例えばスポンサーを探したりする時に、どういうものをアピールするとグッとくるんでしょうね?専門家の目から見て。
X:グッとくる…ですか?
T:はい、いろんな人がいますし、個人的にドゥカティが好きとか、そういう方ももしかしたらいらっしゃるかもしれませんけど。例えば広告代理店とかに企画を持っていく時に、代理店の人って必ず「スポンサーメリットは何ですか」と聞くじゃないですか。
X精神論じゃないところで、ですね(笑)。
T:ええ、そういう時、実際に躊躇することなく、こうです!って言えることってあるんでしょうか?
X:「俺の心意気を買ってくれ!」(笑)
弱いですよね、今のご時世では・・・・。
T:展望はどうなんでしょう?これから時代がどういうふうに変わっていくのかよく分からないですけど、可能性はどうなんでしょう?レース自体が持つ。
X:去年と今年と比べて、ます各サーキット、全日本ロードレースの観客動員数というのはですね、95年から96年にかけて微増したんですよ。平均的に絶対数から見て上がったんですよ。
先日WOWOWのプロデューサーの方とお話しする機会があったんですね。WOWOWは今世界グランプリを中継してますけども、去年から今年を比べると視聴者は微増したんですって。そういった部分でいくと、これはメディアを含めてメーカーも努力しているってことで。まずはサーキットに来てレースを見てくださいっていう仕掛けがあったので、微増したんですけども、これは今後も続けていくと思いますし。観客動員数からしてみますと、今まで尻下がりだったのがちょっと上向き加減になっていますから。注目度という点では、まだまだ可能性は残している。
T:景気がまだ底を打っていますけど、まあ少しは回復するかもしれないと仮定して、今後はどうでしょうか。
X:可能性はあると思いますよ。平均的には、おおまかな数字なんですけど、日本のオートバイレースの集客動員数っていうのが3万人前後なんですよ。じゃ、四輪が流行ってるかって言ったら、フォーミュラ日本はあれだけTVがテコ入れしているにもかかわらず、4万人前後なんですよ。1万人くらいしか変わらないんです。このメディアの少なさとスター選手の少なさからして、二輪は健闘してるんですね。
そういうことを考えて行けば、今ハーレーでファッション的に乗っかっている若い子たちに、うまいことレースの魅力を浸透させていけば、まだまだ可能性は残っていると思いますね。
でもファンデーションの代理店向けの営業トークということではですね……。
T:これはKさんに伺う筋じゃないんですけど、参考にご意見をお聞かせいただきたいと。
X:外堀はそういった形で埋まる。盛り返しているぞ、という部分がありますよね。
T:バイクが好きで、そこそこ経済的に安定したゆとりある生活をしていて、バイクを趣味でやってて、レースでスポンサードしてみようかなという人達を探すしかないのかなと思ったりもするのですが。
X:今の時代、ツライですよね〜。ワークスでもスポンサーのつかない状況ですからね。
T:四輪は代理店が付いてるから、スポンサーを引っ張ってきたり?
X:そうですね、代理店さんとスポンサーさんの結びつきっていうのがもともとあって、そこから引っ張ってくることが多いですね。
T:二輪はワークスの内部の人がスポンサーを探してきたりするんですか?協賛してくれるところとか。
X:いや、代理店は入ってます。SUZUKIですと読売広告社さんとか、HONDAでも代理店さんが入って、SUZUKIだからHONDAだから大丈夫だよ、アピール度も高いよ、と。TVのメディアもタイアップしてやっていきましょうよっていう、メーカーとスポンサーの橋渡しをする代理店は必ずいらっしゃいますね。
T:プライベーターは完璧にその人達で動いてるんですか。〇山さんとかはネームバリューありますよね。
X:もう無いすけどね。
T:現実にはかなり厳しいんですか。
X:厳しいですね。皆さん手弁当で働いてますね。昔付き合いがあったところから、とりあえずお金を貰ってくる。それも10万円、100万円の単位ですけども。貰えるだけでも御の字ということで、いただいてきてる状況じゃないですか。
チーム監督さんなんかは企画書を何十枚も何冊も作ってですね、いろんなところに回ってると思いますよ。で、回ってる先もですね、あまりナショナルクライアントなんていうのは望めないですから、関係しているクライアントさんに回らざるを得ない。そういったところだとお金的にも余裕ないし、逆に他の所も来ちゃってますから、小出しになってしまう。だけど、それだけでも10万円、20万円くれるんだったら貰ってきちゃいましょう、そういうところですね。
業界のドンはだれだ?
X:二輪のレースを仕切っているのは、だいたいMFJっていうところなんですけども。誰が構成してる団体かっていうと、4大メーカーなんですよ。だから絶対的に、この4メーカーを牛耳ってさらに上の立場で「お前ら興行的にも、ファンにも、メディアにも、何に関しても楽しくやってアピール度の高いモータースポーツにしていこうよ」と言い切れる人がいないんですよ。
で、四輪は何処が仕切っているかっていうと、JAFがやってる。あそこはメーカーはメーカーなんですけども、四輪の方が成熟してますから、全く独立してJAFが統括しています。牛耳ってるとこがどこって言った時の、JAFとMFJの差が出てるわけですよ。
T:MFJの中で4社の力関係ってあるんでしょうか。
X:ありますね。やっぱりHONDAが業界の盟主ですよ。
T:二輪の先駆者だから。
X:そうなんですよ。これはですね、各メーカーさんの部長さん以上の取締役とお話をしていても、HONDAはライバルであり絶対負かしたいところなんだけども、HONDAが先陣を切ってモータースポーツで勝ってってくれないと全体的な繁栄が無い。と、みんな口々に言ってますから。一種、矛盾ははらんでいるんですけれども。HONDAには何時でも君臨して、業界の盟主であってほしい、と。
T:四輪の世界でも国内の事情はそうじゃないんですか?F1は撤退しましたけど。
X:HONDAの四輪はF1を撤退してから、日本のレースだとかアメリカのレースにテコ入れしてるんですけど。特に日本のレースですと、ついこの間まではTOYOTA、NISSANが力を握ってたんですよ、ご意見番っていうか。二輪でいうHONDAだったんですけども。ここに来てHONDAがボーンと突き出てきた。
で、みんなが出る杭で、もうTOYOTAもNISSANも、それこそレースを主催してる団体も、みんなでHONDAを打ち崩そうという動きがあるんです。
T:なるほど、いろいろ難しいことがあるんですね。
X:で、HONDAは「日本の4輪レース界は汚くて子供じみててイヤだ。撤退してやれ」って、そういう話になってます。
T:F1に参入してた頃は本田宗一郎さんがいらした時代ですから、あそこまでできたんでしょうけども。二輪にその精神って受け継がれていないんですか。もともとスーパーカブから始まったわけですよね、HONDAって。ドリーム号とかあったじゃないですか。
どうして二輪はHONDAが君臨しているのに閉鎖的なんだろうと思うんです。まあ、お金がないせいもあるのかもしれないですけど、不思議ですね。
X:HONDAの中でも、四輪班と二輪班というのがバッチリ分かれてるんですよ。全く交流が無いっていうほど、二輪は独自の路線を行っちゃってるんですよね。
HONDAには、本田宗一郎さんが創った本田技研工業っていう大もとのHONDA本社っていうのがありますよね。それから、市販車を開発していくホンダ技術研究所っていうのがあるんですよ。これは材料の基本研究から新車の開発までやってるんですけど。四輪のレース部隊っていうのは、本田技術研究所の中にあるんですよ。そして二輪は、悪いことに(笑)また別会社なんですよ。ホンダレーシングコーポレーション、通称HRCって呼ばれてるんですが。もうここまでくると、本田宗一郎さんのキャラクターなんていうのは行き届かないんですよ。
しかも、本田技研工業、本田技術研究所、ホンダレーシングコーポレーションの3社が並ぶと、二輪と四輪の間には深〜いミゾがあるんですよ。これはですね、ホンダ技術研究所としては「我々は営業利益を生む市販車を造ってる。にもかかわらずHRCは青天井で経費を使っている。お前ら、何の営業利益も生んでおらんじゃないか!」と、もう叩きまくるんですよ。
HRCはHRCで、「うるせい!こっちはレースで戦ってんだから、経費青天井でも致し方ないんだ!」と睨み合ってるんですよ。
本田技研工業が二輪のレースもやっていれば、もしくは本田技術研究所がやっていれば、まだちょっと違うかもしれないけども。全く別立てのHRCという二輪のレース専門会社というのがありますので。これが、ビジネストークが出来る一般常識が備わっている人たちとは隔絶された、閉鎖的な社会を作ってるんです。
ですからMFJという団体が実質は4メーカーさんで構成されているんで、ルール的には4メーカーのご意見をいただいてからルールを決めましょう、という面もありますからね。要は、レギュレーションやらレースを企画していく時に、アメリカとかヨーロッパだったら、「まずお客さんが来てくれて楽しめるためのレースをやりましょうや」ということからスタートしていくんですが、こと日本の場合、MFJが「こういうレースをしたいんですけども4メーカーさん、技術的にはどうですか?」とご意見を伺う。
そうすると、4メーカーが「そんなの出来ねえよ!」とか、「こういうふうにしてくれ」とか。
要は、メーカーの技術者サイドでルールなりレースを決めていくもんですから、非常に偏っちゃうんですよね。だから、レースそのものを難しくしていて、一見のお客さんには解りにくい。
対極にあるアメリカのAMA、日本でいうMFJみたいなものなんだけど、そこはメーカーの絡みなんかないですから、興行的にもお客さんに優しくて、観て楽しいレースを考えてる。メーカーの奴らなんていうのは全くご意見無用。「ほんとに観客を楽しませるためのレースを俺たちはやっていく。参入したかったら日本のメーカーさん、来てもいいですよ」と。
そういうスタンスなんで、まずここが違う。そこの違いは大きいですよね。観客動員にしてもレースの内容も。
T:今日伺っていて内情が良く解りました。
X:これはですね、知れば知るほど目を覆いたくなるような子供じみた話がいっぱいあるんですよね。
T:ほんと、日本の村的な感じですね。
X:そう!!名越さんみたいな人はアメリカのレースとかに行ったら、ほんとに楽しいんじゃないかと思いますね。やってて楽しいだろうし、お客さんの方も分け隔てなく平等に見てくれますから。もっともっと、あそこのチームの良さっていうのが出ると思うんですよ。だから日本の4メーカー主導のレースに出ていたりすると、どうしても4メーカーがまず頭に立つっていうレースになっちゃうし。話題もそこが中心になって、非常に狭い業界になっちゃいますよね。
T:改善されたり改革されていく余地は、今後あるんですか。
X:ないでしょう!!ただ、これだけ4メーカーがギッチギチに固めた世界の中で、ファンデーションみたいなプライベートチームで外車を使って4メーカーに割って入ってくればですね、お客さんの方から人気度が上がっていくと思いますね。
4メーカーも認めたくないんでしょうけども、観ている人たちが素直に「あれだけ4メーカーがお金をかけてやっているのに、たった3人くらいのちっぽけなチームが割って入っていいレースやれるんだ!」っていうことで。

2022年07月25日
筑波TT


2022年06月20日
Supermono

2022年04月29日
28年前ですか
2021年10月09日
59秒台

2020年12月27日
Supermono レース用カウル

2020年11月21日
新品スイングアーム

2019年08月26日
8枚羽のフライホイール


電気周りに関してはOKならOK 、NGならNG、と物事がはっきりしている印象が有りますが、今迄OKだったものがある時を境にNGになってしまう、ということを極稀に経験します。今回もその一連の出来事だったのでしょうか?しかし今まで4枚羽で問題無かったのが8枚羽の部品を入手したタイミングで問題発生という、何か不思議な出来事でした。
2019年07月05日
レーシングパーツ


ピックアップ用のトリガー(羽)の数も通常とは異なります。普通は4枚羽なのですがこの部品は倍の8枚羽です。これについては使用しているECUが対応出来なければ使いようが無いのですが、こうすることによってより細かな制御が可能となります。自分のバイクはMotec制御なのでこの辺は何とでもなります。そのうち付け替えて試してみますが、果たして私がその違いを体感できるのでしょうか?
2019年01月31日
鍛造ビッグブレンボ
最初は新品を購入しようとも考えましたが、たまたまヤフオクでこのキャリパーを見つけて購入し、ブレンボジャパンにオーバーホールに出して先日戻ってきたところです。

2018年08月21日
リアハブ周りの部品を刷新しました。

2018年07月19日
筑波TT

無理せずに大事にしてくださいという温かいお言葉を沢山いただいて感謝の極みではありましたが、年齢的にのんびりしていると後がどんどん押して来るのでそんなわけにはいきませんでした。
で、レース当日はとにかく暑かったです。一時は路面温度が64度ということで、人間はもちろんですがどんなタイヤも正常に機能しない状況です。そんな環境でツナギやヘルメット等の装備を装着した状態でいるのは殆ど拷問でした。表彰台の自分を見ても額の血管がブチ切れそうになっていますね。(笑)
後日動画サイトで当日のレースのオンボード映像をいろいろと鑑賞しましたが、面白いことに気付きました。トップグループの人達は別ですが、中段以降の人達の場合は全10周のレースのうちの7周目あたりから急に「止めた」ような走りになるんですね。動画を見ていて、今チェッカーが降られたのか、と思うのですがそのまま次の周も走り続けるのです。あ、まだチェッカーじゃないんだ、という感じで、要するにライダーの電池切れ状態です。いかに過酷な環境であったかということですね。そんな中、トップグループの人達は全くペースが落ちません。変態です。
2018年03月13日
自分用競技車両
しかし自身の年齢を考えるとのんびりしている余裕はありません。やるしかないです。ということで作業に着手しました。おかげでここ最近はこれにかなりの時間を費やすことになり、他の仕事が手に付きませんでした。
作業の様子を以下に紹介します。ちなみにベースエンジンは1098Rです。









しかし私の場合はレース仕様の場合に限り、バルブの状態に少しでも疑問があれば躊躇なくリフェースを施してしまいます。その場合バルブの酸化皮膜は当然ながら削り落とされてチタンの材質そのものが露出して直接バルブシートに当たるようになりますが、そんなことはお構いなしです。バルブとシートがちゃんと当たることこそが本来の目的です。
これをやってしまうとバルブスプリングを用いたエンジンではバルブフェースがバルブシートに激しく叩きつけられるようで硬質酸化被膜が無いバルブフェースは急速に摩耗が進むと聞きますが、私の経験上ドゥカティのデスモドロミックの場合はどうもそんなことは無いようで、オーバーホール時に確認しても大したダメージが見受けられないことが多いのです。例えば1999年以降ドゥカティの市販レーシングマシンにはチタンバルブが使用されていましたが、1999、2000、2001年型のチタンバルブには表面のコーティングがありませんでした。表面はチタンそのものです。それでも定期的なオーバーホールで状態を確認しながら継続使用していましたが特に問題が起こることは無く、チタンバルブといえども普通の感覚でハンドリング出来ていました。

1098Rのストロークダウン仕様なので当然ですが圧縮比も確認しています。燃焼室容量とピストン上面の容量を実測し、スキッシュの容量も含めて計算します。その結果圧縮比は13.5前後でした。予想よりもかなり高いです。通常単純にストロークダウンしただけだと圧縮比はかなり落ちますからね。ちなみにこのエンジンに1098Rのノーマルピストンを組んだと仮定して計算すると圧縮比は12.8となりました。また今回使用したピスタルのピストンをノーマル状態の1098R(1198cc)に組んだらどうなるかと計算してみたところ、その場合はなんと圧縮比は14.2です。
ただし実のところベースとして今回使用した中古の1098Rエンジンですが、既にヘッドの面研が施されていたであろうと私は認識しています。それは目視でのヘッド面の風合いと上記の圧縮比の件からそう思っています。




ここで新たな不安が頭をもたげてきました。最新バイクと違ってトラクションコントロールややウイリーコントロールなんかは存在しない野獣のようなバイクです。果たして俺にちゃんと扱えるのだろうか?
2017年09月11日
筑波TT

で、肝心のレースですが、なんとスタートでエンスト!!!後ろの方々に追突されてもおかしくないような状況だったのですが、皆さんうまいこと避けていってくださって大感謝です。心からお礼を申し上げます。次からはこのようなことが無いようにしますのでご勘弁を!
レースは結果的に総合で5位だったのですが、当然ながらトップは遥か彼方です。トップグループの人たちと一緒に走りたかった・・・・。
2017年06月26日
自分用NEWエンジン
自分のレーススタイルを正直に申し上げると、「コーナーを抜かれない程度に走って直線で前に出る!」というものですから、自分のバイクよりも直線が速いバイクがいると非常に困ったことになるわけです。(笑)自分の走行技術のレベルはせいぜい「並み」程度と自覚していますが、商売柄?自分のバイクを速くすることは出来ます。なので同じ2気筒同士であればこの自分のスタイルはそれなりに通用することが多いです。しかし4気筒が相手となると・・・・。今回もS1000にはてこずりました。
ということで、以前から温めていたエンジングレードアップの計画を実行に移そうと思っているところです。あとは実行する時間がとれるかどうかが一番大きな問題ですが。

ベースエンジンは1098Rですが、今回製作するエンジンの仕様を判りやすく言うと「1098のボアアップ仕様」もしくは「1098Rのストロークダウン仕様」ということになります。1098Rのままではイマイチ面白くないのと、1098Rのエンジン特性は下からパワーがありすぎて自分の腕では扱える自信が無いからです。
続きは乞うご期待、ということで。
2017年04月24日
筑波TT

今日はお天気もまあまあ。レース日和と言えるでしょう。もちろん私もBOTTのWCTクラスにエントリーです。目標は順位よりもタイムで59秒台を記録すること。エイジシュートです。

さて、参加者の皆さんがそろそろ予選が始まるということで準備に取り掛かり始めた頃です。コース上で行われた他クラスの予選が赤旗中断。何が起こったかと情報を確認すると、オイルを撒いて1周以上走行したヤツがいて転倒車両続出。コース清掃のためしばらく予選中断とのこと。
いきなり参加者全員のテンションが下がって不機嫌状態に。自分の場合も目標はタイムを出すことなので、コース全周オイル処理ではいきなりやる気ゼロです。
そんな中でWCTクラスの予選が始まりましたが、やはりコース上には要所要所に石灰やおが屑のオイル処理跡があってまともなラインを走れません。とりあえず予防線を張ってということでしょうが、全てのポストでオイルフラッグを振っています。「全ポストでオイルフラッグを振るんだったらそんな状態で予選なんか走らせるんじゃねえよ!」みたいな精神状態での予選開始でした。まともなタイムを出そうとすると何処かで必ずオイル処理跡を横断することになるのですが、何処を通れば安全ではないにしろ大丈夫なのか、それが最重要課題の走行です。しかしそんな状況でもタイムを出す人はちゃんと出すんですよね。特殊な才能だと思いますが、それを持ち合わせていない我々にとってはなかなか理解できません。悔しまぎれにそういう人たちを「アタマの悪い人」と呼んだり「予選順位は頭の悪い順」などとおちゃらけては大変失礼ではありますが、自分もちょっとはそういう人たちの仲間に入りたいと思ったりもします。無理だけど。
自分の予選タイムは0秒台真ん中くらいであのコースコンディションにしては上出来でした。 終わってみれば結構グリップ有ったよね、という印象で、それは実はオフィシャルの方々が一生懸命オイル処理をしてくれたおかげなわけで、今度は感謝です。感情がコロコロ変わります。(笑)
で、次は決勝レースです。もうコース上のオイルもそれなりにこなれて気にしなくても良い状態になった感じで、よし頑張るぞ、という感じだったのですが、ウォームアップラップでまた事件が発生です。数台前を走っていた1台がダンロップの右で派手にスリップダウン。あの転び方は何かに乗って滑ったという転倒でした。おまけにそのあと後ろの方で裏ストレートでも転倒があり、結局スタートディレイに。「ただいまオイル処理中です」というアナウンスにまたテンションが下がります。
そこで再開を待っている間に何気なく 1コーナー方面に目をやると、何やらオフィシャルの方々が忙しく働いています。何をしているのかよく見ると、何と皆でデッキブラシを使ってコースをゴシゴシ清掃しているではないですか!「えええ!!今あそこに滑るものがいっぱいあるってこと!?今から俺たちレーススタートしてそこに突っ込んでいくんだぜえ!?」これは精神的に結構効きましたね。
おかげでレースのスタートは失敗で何台かに抜かれ、おまけに1コーナーの進入速度もかなり控えたのでそこでも何台かにかわされ、1コーナーを立ち上がったら順位は9位でした。周りのみんな、頭悪すぎです。(笑)
やっと頭がレースモードになったところで順位を取り戻すべく頑張って走り、決勝レースの結果は総合で4位でした。決勝中のベストラップはかろうじて1分を切ったので、今回も目標達成です。めでたしめでたしの結果で良かったです。
後で思ったのですが、スタート前1コーナーでの オフィシャルのデッキブラシパフォーマンス、結果的にスタート直後に有りがちな1コーナーでの多重クラッシュを防いだかもしれません。全員少しは抑えて1コーナーに入っていったような気がしますから。スタート直後の1コーナーでのクラッシュ防止にはデッキブラシパフォーマンスが有効かも?でも何時もやっていたら効果は無くなるどころか、今度は1コーナーは路面がきれいだから思いっきり行ってOK、となるかもしれませんね。(笑)

2016年12月28日
帰って来た926

随分前から買い戻したいと思ってはいたのですがなかなか思ったようにいかず、今回やっと念願叶ったというわけです。
ただ、やはり長期間放置されただけあって状態ははっきり言って良くありません。何から何まで全てをフルオーバーホールというか、フルレストアする必要があります。しかし言い方を変えれば、保存状態は悪かったとはいえ20年間所持していてくれただけでも感謝するべきとも言えます。
完璧に蘇らせた暁には、まずは自分が乗ってレースに出るのが目標です。当時芳賀選手はこのバイクで筑波のベストが58秒台でしたから、自分的には1分1秒台くらいが目標でしょうか?

当時のことを思い出してみると、94年の全日本では93年型888レーシングとこの94年型926レーシングの2台を使ってレースをしていました。ただライダーがよく転んでバイクを壊すもので修復が間に合わず、実質的にはこの2台を2個イチにしたバイク1台でレースをしていたように思います。シーズン終了後に時間が出来たところで各々1台ずつをちゃんと復活させて2台とも売却しました。93年型の方はその後も全日本等のレースに出ているのをよく目にしていましたが、そのうち何処かへ売却され、行方が分からなくなってしまいました。あろうことか一度何とヤフオクで出品されている変わり果てた姿を目にした記憶がありましたが、それでもあの時買っておけば良かったと今でも思います。
2016年10月30日
20161029筑波選手権 TC-Formula

筑波選手権の最終戦、クラスはTC-Formula、要するに何でもアリのクラスです。
何時もならこのクラスはJSB等との混走になるのですが、何故か今回はエントリーが多くて単独開催のクラスとなりました。
バイクは何でもアリで縛りが無いクラスなのに、何故かタイヤだけ溝付きという縛りがあって、そのためにスリックタイヤで走る自分は賞典外出走ということになりました。
バイクが何でもアリならタイヤだって何でもアリでいいじゃん、と思うのは私だけでしょうか?
国産溝付きプロダクションレース用タイヤはしかるべき所でしかるべき手続きを行わないと購入が出来ませんが、スリックタイヤなら例えばネット通販でも入手可能なくらいで誰でも購入が可能です。
そういった意味で入手に関してはスリックタイヤの方が格段に容易です。
公平性に拘るが故のレギュレーションであるなら、完全に時代遅れというか間違いですね。
そもそも現代のプロダクションレース用溝付きタイヤというものは完全にレース専用としてメーカーが製作しているシロモノで、公道用ではありません。
国産メーカー製品の場合、この類のタイヤ購入に関しては、何時何処のサーキットで何に使用する、ということを申請することが必要なことからも、メーカーが自ら認めている程それは明らかです。
元々公道用のタイヤが必要に迫られて特殊な進化を遂げた「奇形タイヤ」ですね。
だったら最初からレース専用のスリックタイヤの方が潔いし、カッコ良いと思うアマチュアライダーも多いと思います。
それに例えば自分程度のアマチュアレベルではスリックだろうと溝付きだろうとタイムに大差は無いと思います。
いい歳をしたおっさんの趣味なんだから好きなタイヤを履かせてくれたっていいじゃん、というのが自分の正直な想いです。
レースの主催者側には依然として「初心者は公道用溝付きタイヤ、スリックは上級者のみが使用できる」みたいな,TT100のタイヤ時代のままの意識があって、いまだにそういったことに拘るんでしょうね。
でも昔ならエントリーさえ受け付けられなかったでしょうが、今は章典外とはいえ走らせてくれるのですから感謝してもいますけど。
その辺のことはさておき、今回のレースの最も大きな目標はエイジシュートのタイムを記録することです。
(要するに59歳で59秒台を出すということです)
でもこの日は路面コンディションがあまり良く無いようでした。
直前に行われていた国際ライセンスのライダーが走るJSBクラスの予選タイムを見てもそれは明らかで、タイムは何時もより少なくとも0.5秒以上は落ちているようでした。
正直に言って目標達成はちょっと厳しいかな、と思いました。

59秒963
かろうじて59秒台にかすりました。(笑)
それでも59秒台は59秒台。
立派に目標達成です!
「よーし、今日はこれにて終了、みんな、飲みに行くぞ!」
自分的にはそんな気分ではあったのですが。(笑)
一応真面目に決勝レースに備えます。

決勝の後半は一台の後続車にピッタリと付かれて、いつ抜かれてもおかしくない状態だったのですが、当の本人はそれに全く気付いていませんでした。
自分の場合レース中に後ろを振り返って確認することは皆無で、唯一2ヘアの立ち上がりで視野の右端に2ヘアに進入してくるバイクが見えるのが唯一の後方の情報です。
この時はそれが見えなかったので後続はそれなりに離れているのだろうと思っていましたが、実は直後にピタリと張り付いていたので視野に入らなかったのですね。
そういえば思い返してみると自分の排気音に不協和音が混じるように感じたことが何度かありました。
最近のR1は排気音が低いので自分のバイクの排気音と混じって不協和音として聞こえたのでしょう。
15周目あたりでしょうか、確か1ヘアを立ち上がってのダンロップの侵入だったと思いますが、アウトから横に並ばれて初めて後続車の存在に気付いてびっくり!
横に並ばれた瞬間、そのライダーから「こらー、おせーぞ!ちゃんと走れー!!!」とこっちを向いて気合を入れられた気がして、いきなり心が引き締まりました。
それまでは前との差も縮まらないし、後ろも居なさそうだし、と、ある意味気の抜けた巡行走行状態だったのですが、いきなり緊急事態を認識しました。
このレースでのベストラップは次の16周目でした。
やはり人間追い詰められないとダメみたいです。
おかげで何とか順位をキープしてゴール出来ました。
話は変わりますが、自分が趣味でレースを始めてから既に30年、その中で今が一番充実しているし結果も出ていると思います。
その要因は長年の経験や、積み重ねてきたハードウェアに関する技術によるものがあるのは勿論ですが、その上にある一番大きなものは「追い詰められている」ことではないかと最近思ったりします。
6月のレースでこの年齢になって1分切りを達成した時、人間というのは追い詰められればこのくらいのことは出来るもんだ、と改めて思い直しました。
何に追い詰められているかというと、それは「自分の年齢」です。
僅か10年前には考えもしなかったことですが、今は自分に残された時間というものをとても意識します。
あと何年レースが出来るのか、1年に3回レースに出れたとして5年でたった15回。
そもそもあと5年も体力的にレースが出来るのか?
そう思うと何事に関しても、やりたいこと、やらなければならないこと、は今やらないと、という思いを強くします。
そして大事なことのためには犠牲にしなければいけないことが存在することも理解する必要があります。
またそれに伴って周囲に対する感謝の思いも大きくなります。
今の年齢でまだレースが出来るような肉体を与えてくれた神様と両親に感謝しています。
レース活動は周囲の人たちに支えられて初めて出来るものなので、関わりあう人々にも感謝です。
こんな自分を支えてくれて好きにさせてくれるパートナーにも感謝です。
そして直接私が大きく支えられているのは何といってもお客様であることは間違いありません。
特にレースをやっているお客様に関しては、皆さんが今の自分の心境になるもっと先まで、サポートし続けることが出来るように精進したいと思いを新たにするこの頃です。
2016年09月14日
殿堂ページをアップしました。
是非ご覧ください。
2016年09月11日
筑波TT
最近天候が不順な日々が続いたのでどうなることかと思っていたのですが、幸いなことに当日は好天に恵まれました。
というか、好天過ぎて路面温度は50度を遥かに超越し、かなり過酷なコンディション。
テントの下でもバイクを触ると、まだ朝だというのに、エンジンをかけて暖機もしていないのに強烈な紫外線の影響なのでしょうか、カーボン製のタンクもシートカウルもアッチッチッ状態になる始末。
そんな状況下でツナギとヘルメットその他の装備を着込んで、まるでフライパンの上のような状態のコース上を走るというのは、殆ど変態的な行為のような気がしたのは自分だけでしょうか?
そんな中で行われた予選、自分は感触が今一つでタイムも伸び悩み、0秒542で予選順位は6番手でした。
そしてポールポジションを獲得したのは我らがツジバ選手。
この過酷なコンディションの中、999を駆り59秒164という驚異的なタイムを叩き出し、コースレコードを樹立です!
ツジバ選手のポテンシャルが本領を発揮して大きくものを言ったのは間違いありませんが、それに加えてコースレコードホルダーが999という13年落ちのバイクであるという事実!
これこそホビーレースの神髄ではないでしょうか?
ただ一言、素晴らしいと思います!
自分的には今回も59秒台のタイムを記録することを目標としてレースに臨んだのですが、その目標はかないませんでした。
今回の状況が前回6月のコースコンディションと 大きく異なることはさておき、バイクの感触がどうもしっくりこない感じで、その原因が掴めないままレースが終わってしまった感は否めません。
まあそんな事は良くあることで、前回の走行で良いタイムが出て、何一つ変更せずに臨んだ筈の次回の走行では 全くうまく行かない、という経験は良くある事で、レースをかじっていれば日常茶飯事のような気がします。
自分の場合はコースインして1周すれば、その感触で今回はイケるかイケないかは、大体判別できます。
その原因まですぐに判別できれば言うこと無しなのですが、その能力は全く有りません。
そのあたりのことをああでもないこうでもないといろいろ考えるのが楽しいところでもあるのですが。
今回の場合はリアタイヤの仕様に若干の変更があったのが大きな要因の一つだったのは確かだと思います。
これに関してはハード面で明らかに前回と異なる要素だったので、間違いは有りません。
とりあえず事前の練習で一度は試していたのですが、レースの予選や決勝のような本気モードで走らないと本質が見えてこないというのが自分の場合は確かなところです。
プロのライダーはテスト走行でそのあたりのことを正しく判断できますが、それがプロのプロたる所以です。
自分なりに考えた結果、新型の方がグリップが若干高くなっていると思われるので、その結果プッシングアンダーの傾向が出ているのではないかという結論に達しました。
決勝レースに向けて、こうすれば良くなるのでは?と思う本当に些細な変更を施しました。
それと暑い日が続く中で良く判らなくなってしまったのがタイヤの空気圧です。
最近はタイヤウォーマーを十分にかけてタイヤが完全に温まったと思われる状態で空気圧を測定し、その時の値を基準にしていました。
そして走行直後に空気圧を測定しますが、そうすると大雑把に言えば、寒い季節では走行前より空気圧は高くなっています。
もう少し暖かい季節になると、走行の前後での空気圧は同じ値になってきます。
そして暑い季節になると、走行後の空気圧の方が低くなってきます。
どうも今のような暑い季節の場合、タイヤウォーマーが効きすぎて温度が高くなりすぎるのではないでしょうか?
今回もタイヤウォーマーをかけたタイヤは強烈に温まって、ホイールが素手で持てなくなるくらいの高温になっていました。
そんな状態で基準値に空気圧を合わせて走行し、走行翌日のタイヤが常温に戻った状態でもう一度空気圧を測定すると、空気圧はびっくりする位低い値になっています。
こうしたことを考えると、空気圧の件はもう少しちゃんとした基準を決めて管理する必要があるように思いました。

今回のレース、予選も決勝も前後新品タイヤという超贅沢な仕様で臨んだのですが、少なくとも決勝では新品タイヤの恩恵をそれなりに受けることが出来たようです。
KTM勢との3位争いを何とか凌ぐことが出来て、レースの内容的には今の自分としてはベストな結果だったと思います。
でも過酷なコンディションの中、決勝レースではほぼ全員のタイムが伸び悩む中において、ツジバただ一人だけが予選とほぼ同じタイムを出して堂々の優勝を飾ったのには脱帽です。
何だかんだ言っても今日は「ツジバの日」だったのは間違いありません。
また次も頑張るぞ!
2016年07月28日
速いエンジンの仕様 (テスタストレッタ編)

そういった自他ともに「速い」と認められているエンジンは、果たしてどのような仕様になっているのでしょうか?
ここではそういった「速い」エンジンの仕様を、TFDで製作した998/999系のテスタストレッタエンジンを例に解説してみます。
当然ながら排気量のアップはパワーアップに直結しますが、ひとまずここではそれは置いておいて、それ以外の要素について解説します。

現時点での定番はピスタル製のハイコンプレッションピストンです。
画像は仕様違いで両方とも998/999用ですが、左が現在一般的なもの、右は一昔前に出回ったものです。
左の方が重量的にいえば圧倒的に軽量ですし、基本的にそのまま組めます。
ただしトップとヘッドの干渉の有無の確認は必要です。
右のものは重量がノーマルに近いですし、そのまま組むとトップが部分的にヘッドと明らかに干渉するので燃焼室の形状を対策する必要が生じます。
ただ左のピストンも、何故かピン上の高さがノーマルより若干高く製作されており、そのまま組むとスキッシュの値が「私の基準では狭すぎ」という感じになります。
そのため私が組む時はシリンダベースのガスケットの厚さを調整して、スキッシュの値が私が思う適正な数値になるように調整しています。
また、重量が圧倒的に軽量ということで本来の性能を発揮させるためにはクランクバランスのとり直しが必須となります。
ちなみに998ノーマルピストンの重量は一般的に475グラム前後、ピスタル製ピストン(左側)の重量は同じく425グラム前後です。

これはPANKL製の削り出しタイプのチタンコンロッドです。
これを使用出来ればベストですが、何しろ高価なのでなかなかそうは行きません。
(参考重量:329.9グラム)

ドゥカティ純正のPANKL製チタンコンロッドです。
削り出しではなく「型モノ」ですが、性能は必要十分だと思います。
マトモに買うとこれもとんでもなく高価ですが、上級車種にはもともと使われていますから多くの場合は新たに購入の必要はありませんし、たとえ新たに入手する必要が生じても中古品を比較的容易に安価で手に入れることが出来ると思います。
(参考重量:377.4グラム)

(参考重量:528.2グラム)

ピストンとコンロッドに合わせてバランスを取るとこんな姿になります。

こういったクランクシャフトの素材であるスチールよりも質量が大きい素材をクランクの中心よりも可能な限り遠くへ配置することによって、バランスが取れた状態のクランクシャフト本体の質量を軽くすることが出来ます。
要するにコンパクトなクランクシャフトになります。


「速いエンジン」の基本的なキモは基本的に以上の要素だけです。
カムやバルブはノーマルのまま、吸気系もノーマルのままです。
ECUも基本的にドゥカティパフォーマンスのレース用ECUで全く問題ありません。
エキゾースト系に関しては、ドゥカティの場合は基本的にエキパイが太いほどパワーアップする傾向が有るので、 可能であれば「出来るだけ太いフルエキ」を入手したいところです。
ブランドとしてはやはりテルミニョーニが無難で、性能が保証されています。
実績のないメーカーのものや一品製作品の場合、太いけどパワーが出ないとか、過渡特製がイマイチとか、振動が多い等の問題が有るものも見受けられるようです。
それと言い忘れましたが、テルミの998用φ54mmフルエキはエキパイがスイングアームの下側に干渉するので対策が必要です。(なぜこんなことが起きるのかは不明ですが)
街乗りであればリアの車高を下げる(スイングアームの角度を寝かせる)ことで干渉を防げますが、サーキット走行でそれをするのは致命的ですから エキパイを切った貼ったして何とかしなくてはなりません。
以下は上記以外の細かいことですが、場合によっては非常に重要になることもある要素です。

画像は1次ギアとスターターのインターミディエイトギアです。
昔は単純に機械加工で穴を開けていましたが、現在は放電加工で施工しています。
特にインターミディエイトギアは硬質なので、機械加工では刃物の歯が立たないので加工は無理、と言われたことも過去にはありました。

左が一般的に使われているノーマル部品。
右が749Rや999Sの2005年モデル以降に使われている純正部品です。

エンジンに装着されているピックアップの位置からも窺い知れるように、ギアの横方向から信号を拾っています。
この方式の場合、ピックアップが拾う信号が非常に不安定になる場合が有ります。
一般的に多く見られる不具合の症状としては、エンジンが高回転で失火するということが有ります。
ノーマルのギアで全く問題無くエンジンが作動する場合も多いですが、そうでない場合は何をやってもダメで、その場合はギアを画像左の後期型に交換すると症状はピタリと改善します。
良く見るとギアの歯に凝った加工が施してあります。
後期型がこの仕様になったということはメーカーもこの問題を認めて対策したということですね。
(ちなみに現在はピックアップの位置を変更し、ギアの上側から信号を拾うようになっています)
レースで使用する場合はこのタイプのタイミングギアを使用することを強く推奨します。
とりあえず今回はこの辺で終わりにしますが、最後に一つ。
以上の仕様はあくまでサーキットを全開で走るという限定された状況において「調子が良くて速い」となる仕様です。
公道では全くと言ってよいほどそのアドバンテージを発揮することはないと思われ、かえって中低速のパーシャル域ではギクシャクして「不調」となる可能性が高いので念のため。
公道からサーキットまで、オールマイティーに調子よいエンジンは、やはりメーカーが製作したノーマルエンジンであることは間違いが無いと思います。
2016年06月30日
59秒台出ました。 おまけ

自分が本気で美味いと思う料理はやはり日本食ですね。
こういったものを食しながらの日本酒は本当に最高です。
温泉で腰痛を治療、ゆっくり骨休み、という目的もあったのですが、実はメインの目的は他にありました。

渓流の中に大岩が有って、その上にしめ縄で囲まれたスポットがあります。
ここは伊豆の某所で、結構メジャーな観光スポットでもあります。

3個のうちの1個でもそのスポットに載せることが出来れば、願い事が叶うと言われています。
これを「大願成就」にかけて「大岩上受」と呼ぶそうです。

その時に咄嗟に口をついて唱えたお願いが、「筑波で59秒お願いします!」だったんです。
何故か 「ナナマルのバスを釣らせて下さい!」では無かったので、自分の心の奥の本心では筑波59秒の優先順位が特別に高かったんだと後から思った記憶があります。
願い事が叶った時は必ずその年のうちにこの岩に手を合わせに来るのが礼儀となっているそうなので、今回はお礼と報告と、新たな石乗せ挑戦にやって来たというわけです。
私はこういった一連の出来事を特に信じたりする人間ではありませんけど、今回の流れの出来事が現実として起こったことは事実なので、将来的に私は定期的にここを訪れることを避けられそうにありません。(笑)
ちなみに今回も3個の石のうちの1個を載せることに成功しました!
2016年06月23日
59秒台出ました。その3
レースはスタートが肝心ですが、私はスタートが下手です。
大抵は予選結果より順位を落として1コーナーに入ることになります。
今回はまだマシな方で、1コーナーへの進入は3番目でした。
しかしいつも感心することですが、上位の皆さんは スタートが上手ですね。
自分的には80点くらいのスタートだったので上出来ではあったのですが、
それでは太刀打ちできません。
上位陣の予選タイムの差なんてせいぜいコンマ数秒ですから、レースになると抜いたり抜かれたりなんてことはなかなか起こりません。
今回スタートで自分の前に出た選手はレース関係者ならだれでも知っている選手権上がりの有名な猛者だったので、いったんその選手に前に出られてしまったら、まず自分の順位を上げることは不可能でしょう、と思っていました。
その後は前走者の後ろについて周回を重ねることになりますが、 でもそうしているうちに相手より自分が早いところ、自分が遅いところが見えてくるのです。
幸運なことに今回は自分のバイクの方がストレートの伸びがちょっと上回っていましたね。
2ヘアを立ち上がって加速していくとストレートエンドで並びかけることが出来ました。
とはいえ、並んで飛び込む勇気というか、そんな事をする気は最初から全くありません。
何せ相手は歴戦の猛者ですからね、こっちは完全にビビってしまっていて、横に並びかけるくらいが関の山です。
ストレートエンドで並びかけることを3〜4回 繰り返して、まあ今回はこんなもんか、と思っていたところ、次の周回の2ヘアの立ち上がりで前との差が今までより明らかに接近しました。
この差ならストレートエンドまでに完全に前に出て安全にパスできる、という確信が生まれたので、 この時ばかりは頑張ってパスさせてもらいました。
そうすると1位を走る選手はもうだいぶ先に行ってしまっていたので、自分の前はもうクリアです。
これでやっと自分のラインで走れるという状態になりました。
それまでは前走者の直後を走るためにどうしても走行ラインを前走者のそれよりも1本外に取らざるを得なかったからです。
で、2ヘアに差し掛かりました。
自分の本来のラインを通ると、後から聞きましたがそこに直前のレース(ピレリカップ)の赤旗の時に出たオイル処理の跡が有ったんですね。
自分は全く知りませんでしたが、判って走っている人もいたので自分に足りないところが有ったということです。
ブレーキを離して加速に移る直前の、所謂何もしていない時に、フロントタイヤがスローモーションで内側に切れて行っての転倒です。
えっ、俺このまま転ぶの?という感じでした。
1位の選手には追い付きそうもないので残りの周回は無難に消化して、と思っていた矢先で、特に攻めているわけでもなく、タイヤからのインフォーメーションも危険を知らせるものは何もなかったので、自分としては意外な転倒でした。
そんな地面との落差ゼロの転倒なので、自分は肘と膝周辺でアスファルトの上を数メートル滑っただけ。
転がりもしませんでした。
あ〜あ、良いことばかりは続きませんね、とその時思いました。
神様に次回も頑張りなさいと言われたみたいです。
2016年06月21日
59秒台出ました。その2

季節的には梅雨時なので天気の心配がありましたが、幸運なことに降雨の気配はなく、そこそこのレース日和でした。
ゼッケン94番が私のバイクです。
このバイクのレースデビューは4月の筑波TTでした。
その時はやはりタイヤを始めとする各要素のバランスが今一つではありましたが、それでもベストタイムは0秒319だったので、今回こそはと期待を込めて筑波に乗り込みました。
朝はテントの設営や荷物の配置等が落ち着くまではそれなりに忙しいものなのですが、ところがそんな状況下で個人的に予想もしなかった事件が起こってしまいました。
荷物の配置を整えようとちょっと重めの箱を持ち上げた時に腰に「ビキッ」と強烈な痛みというか衝撃が!
ぎっくり腰です!!!

正直なところ神を呪いましたね。(笑)←(今だからこう書ける)
この画像はポジションを確認中、ではなく、オレ、本当にバイクに乗れるのか?の確認をしているところです。
闘志に燃えて目が三角になっているわけでは決してありません!
痛みに耐えるが故の表情です。(笑)
努めて平静を保っていましたが、一時は立っているのが精一杯、後ずさりも出来ません、というような情けない状態だったのです。
まあ人間の体というのは良く出来たもので、いったんバイクに跨ってコースに出てしまえば走行中は何とかなるだろうと予想はしていましたが。
(骨が折れているわけではないですからね)
でも走行後にバイクから降りるのが大変そうだなという想像までしていました。
で、私の個人的な事情には全くお構いなしに予選が開始されました。
ここからはメーターダッシュのディスプレイに残されたデータから予選の状況を再現してみます。
説明は自分の記憶によるものなのでかなり曖昧なところがありますがそれはご勘弁を。

各数字はその周に記録された最高値を示しています。

補足説明しますと、この周のラップタイムは1分2秒24、スロットルポジションの最高値は100%(全開ということですが、アウトラップの画像では100%まで開けていないですよね)、水温の最高値が71度、最高速が229km/h、エンジン回転数の最高値が10,779rpm、ということです。
ラップタイムはダッシュ左上にマジックテープで止まっているGPSセンサーによる計測です。
当然ながら公式に記録されるラップタイムとは若干の誤差があります。
タイヤは新品で出て行ってますからまだ様子見で、タイヤの皮むきと言われる状態です。

まだ様子見ですが、そろそろ行ってもいいかなという雰囲気になってきたところです。

とりあえず行ってみますか〜、となった時です。
早くも59秒台に突入です。
私の場合、新品のタイヤを履いてコースインするとタイヤの皮むきが終わった4周目あたりでポンと良いタイムが出ます。
その後頑張って走ってもそのタイムを更新できないこともあったりします。
この事実の裏に、より速く走るためのヒントが隠されているような気がします。
今後の課題ですね。
正直なところ今回の走行中はディスプレイを全く見なかったので(そんな余裕はありませんでした)、この時にとりあえずの目標を達成したことは知りませんでした。

周りのバイクと絡んでいますね。

頑張って前のバイクを抜きながら走っていると思われます。

前周回と同じ状況だと思われます。

転倒者がいてそれに気を取られ、ギアを1速間違えて走行してしまい、加速中にエンジン回転をリミッターに当ててしまった周があったのを記憶していましたが、それがこの周だったようです。
お察しの通り、このエンジンの回転リミットは11,900rpmに設定してあります。
998RSだとメーカーが決めた回転リミットは13,000rpm、996RSでも12,600rpmですから、それらと比較すると低めの設定です。
このエンジンは基本的にノーマルですからそんなに上まで回してもメリットは無いし、エンジンの寿命やノーマルエンジン故の中低速トルクの太さが有るのでこうした設定にしてあります。

実を言うとこの周まで前走者が抜けずに悶々とした状態で、なかなか思ったような走りが出来ずにいました。
そのバイクは4気筒だったので直線は当然ながら恐ろしい速さで、かといってインフィールドも遅いわけではなくてそれなりに速く、ちょっとパスするのは無理かなと判断し、いったん後ろに下がって前のスペースを空けてからアタックしようと考えました。
そこでそれを実行に移そうと念のために後続を確認すると、後ろには何台も後続車が続いています。
それを見て、この方たちを全員前に出してそれからクリアを見つけるのも大変だと思い直しました。
前の1台を抜けばその前はかなり遠くまでクリアだったからです。

前走者を何とかパスし、クリアが取れたので頑張ってみました。

結果的にこの周がベストタイムです。
公式には59秒605でした。

何と!トップではないですか!
本人はそんなことは全く知らずに走行していました。

まだ59秒台です。

まだ頑張っています。

ここで前走者の存在がちょっと前に見えてきました。
アタックを止めたわけではありませんが、やはりそう簡単にはパス出来そうにはありません。

前走者にグッと近づいたところでチェッカーが出ました。

なので自分がどのくらいのタイムを出せたか、果たして1分を切れたのか、全く見当が付きませんでした。
で、チェッカー後1コーナーを回ったところでコントロールタワー上の表示を確認しました。
ここにはトップから6番目か7番目までが表示されます。
おそらく自分のゼッケン94番はここに有るはずだという確信はありましたが、速い人がいっぱい走っているクラスですから何時もの習性で下から確認していきました。
すると何と上から2番目に94番の表示があります。
この時初めて、自分は59秒台を出せたんだ、と確信できました。
11年前のタイムは出てしまったタイム。
今回は出そうと思って出したタイム。
この差は大きいと思います。
これから先ももうちょっと頑張ってみようと思える展開でした。
ぎっくり腰で余分な力を入れられなかったのが良かったのか、結果的にぎっくり腰になったことに感謝するべきなのか、今本気で迷っています。(笑)
59秒台出ました!その1
これは2005年3月21日に行われたBOTTのエキスパートツインクラスの予選で記録したものです。
もう11年も前のことになりますね。
バイクは998RS2003、タイヤはダンロップのスリック(16.5インチ)でした。
(このバイクはもちろんまだ所有しています。そのうちまた走らせてやろうと思っていますが、なかなかその機会が、、、)

(当然ですが公式に計測されたタイムとPラップで計測されたタイムには若干の相違があります)
それ迄の自分のベストタイムは確か1秒台だったと記憶していますが、この時は直前の練習走行で 0秒台が何度か出て、その次の走行だったBOTTの予選でこのタイムが出ました。
この時は僅か1週間ほどの期間で自分のベストタイムが2秒近く縮んだんですね。
タイヤ、サスのセッティング、自分の走り、その他、あらゆる要素のバランスが偶然にも出会い頭でバッチリハマったのだと思います。
その後は、その時使用していたタイヤがモデルチェンジして入手出来なくなってしまい、代替えのタイヤでバイク全体のバランスが崩れたのでしょう、いくら頑張ってもせいぜい0秒台真ん中から後半のタイムを2〜3回記録しただけでした。
今考えるとこの時のタイムは「出てしまった」タイムでしたね。
出そうとして出したタイムではなかったのです。
それでもやはり1分切りはアマチュアレーサーにとっては絶対的な区切りですから(当時も今も)、自分の一生の目標を達成した気持ちになって、「これから先のレースは自分にとってはオマケみたいなもんだ」と本気で思いました。
私は1957年生まれなので、年齢的、肉体的にレースが出来る期間もあと数年かな、と思い始めたのは最近のことです。
そこで11年前の出来事を思い出して良く考えてみると、今なら当時よりも走りに関しては多少賢くなっているし、バイクもタイヤも良くなっている、便利なフルコンも持っている。
もう一度59秒台を真面目に目指して行動すれば今ならまだ何とかなるのではないか?
もう一回頑張ってみる価値はあるんじゃないか?(でもただの勘違いかも?)
そう思って行動に移ったのが去年の秋も深まった頃です。
今乗っている996RS2001の車体に1098エンジンを載せた競技車両の製作を始めました。